おしとやかな令嬢だと思われていますが、実は王国内で私だけ無限にスキルを取得できるので、裏では最強冒険者として暗躍しています。

月海水

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巨大魔獣

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 エルバルク家への襲撃という不安要素を取り除いた私は、全速で城下町を抜ける。

 王城までの道のりは一瞬だった。

 町中の私兵たちは騎士団や冒険者に複数人で囲まれ、徐々に鎮静化されつつあった。

 元々、魔法鎧という強力なアイテムで能力を向上させてはいたが、ベルドロール家の兵数は大貴族とはいえ、騎士団や冒険者の人数には遠く及ばない。

 魔獣化したバルゴが通り抜けた今、騎士団たちにも落ち着きが戻りつつあり、そうなれば、こうなるのも必然だった。

 やはり、問題は全てを破壊するバルゴにある。

 魔獣バルゴを討伐すれば、この騒動は終わりを迎えるだろう。

 そう思って、王城前までやってきた私の前に。

 ベルドロール家の当主、バルゴ・ベルドロールはいた……が。

 その姿は鉱石液を注入した時からさらに巨大化を続け、目と鼻の先に迫った王城の三分の一ほどの大きさまで膨張していた。

 まさに魔獣だ。もう人間の時の面影はない。

 しかし、周囲に集結した魔法鎧兵を蹴散らす様子はないため、最後の理性だけは残っていると思われる。

 私は彼の足下に立って、見上げるしかなかった。

 ベルドロールの屋敷では人間同士として対面できていたが、今となっては巨大なモンスターと小さな人間の関係だ。

「オウゾクを打ち倒し……我がベルドロール家によるシハイを……ッ!!」

 魔獣バルゴは叫ぶ。

 そしてーー城壁の一部を、魔獣化して生えた巨大な爪で破壊した。

 その様子を見て、ベルドロールの私兵たちがどよめく。それは歓声ではなく、困惑の声だ。

「バルゴ様! 王城を破壊しては、たとえ王族を滅ぼすことができても、ベルドロールが代わりに統治することが叶いませぬ! 破壊行為は行わないとの段取りだったはずですがっ!」

 魔法鎧を着た老人が必死にバルゴを見上げて制止しよう声をかける。

 彼はかぶとをつけておらず、戦闘兵ではないようだ。

 よく見ると、見覚えがある。

 貴族の集まりなどでバルゴの側についていた執事だ。

 仲間を蹴散らすことはせずとも、バルゴの自我は崩壊に向かっているのだろう。

 魔力汚染前の計画を正確に実行できるほど、思考能力が残っているわけではなさそうだ。

 そもそも、これほどまでに巨大化することも想定していたのかどうか。

 執事の制止もむなしく、巨大魔獣バルゴは再び城壁に向けて手を振り上げ。

 高速で飛び出した私は、振り下ろされたその大きな手を剣で受け止めた。

「もう終わりにしましょう、バルゴ……!」

 屋敷から持ってきた剣には『強度向上付与Ⅹ』のスキルを使用してある。

 最後まで折れずに持ってくれるといいが……。

「赤フードォォォォォ!!!!!」

 バルゴは攻撃を受け止めた私をにらみ、咆哮する。

 王城の前で向かい合う私たち。

 ここで、バルゴを倒す。
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