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第6話 聖なる光
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「――なので、わ、た、し、もう、帰りませんっと……」
レーナを弟子とすることを認めた後。
無駄に豪華な台所で俺がお茶を入れて戻ると、彼女は石のようなものに人差し指を当てて、念じるような仕草をしていた。
「なにしてんの?」
「あ、これはですね。召喚宮殿にもう帰らないってメッセージを送ったんです。便利な魔法具なんですよっ」
「…………ん?」
さっきは勢いで承諾してしまったが、よく考えたら、レーナはこれからここに住むことになるのだろうか。
レーナは見たところ、元の世界でいう女子高生くらいの年齢。
年頃の少女と同居するというのはよろしくないような気がする。
「なあ、弟子にするのはいいけど、家には帰った方がいいんじゃないか? 心配する人もいるだろ?」
「いないですよ。文字召喚術の才能を幼児の時に認められてから、わたしは召喚宮殿に隔離されて暮らしてきましたから。お師匠もわたしのこと好きじゃないみたいですし」
「ほんとかよ? 家出娘が嘘ついてるだけじゃないだろうな?」
レーナは全く帰る気がないようだ。
この広すぎる暗黒城には余っている部屋が無数にあるから、居住スペースには困らないが、どうしたものかと頭を悩ませる。
「あ、返信来ました!」
レーナの手の内で石型魔法具が光る。どうやら通信端末的なものらしい。
「なんて書いてあったんだ? 帰ってこいとかじゃないの?」
「えへへ、はずれですよ。正解は『文字召喚術師を出会ってすぐに取り込み、傀儡とするなんて、そこにいるあなたの新しい師匠とやらは魔王に違いありません。レーナ、あなたは騙されているのです。今すぐに助けに行きます』でした!」
「大問題に発展してる!」
驚愕である。そして、レーナの馬鹿さ加減に恐怖さえする。
もっと上手く伝えられなかったのか。完全に俺が悪者である。
「よし、これで大丈夫ですねっ。さあ、シュウトさま、これからどうしましょう?」
「どうしましょうじゃねえ! 絶対、お前のお師匠攻めてくるって! マジで!」
「それはそうと、やっぱりシュウトさまは魔王だったんですね」
「だから、それはお前と、お前の師匠の誤解だから!」
あれ、もしかしてレーナはちょっとバカなのか?
全然会話が噛み合わないし、いつの間にか俺は魔王になっている。
「やべー、どうすんだ。レーナ、お師匠がこっちに来るとして、どれくらいかかる?」
「近くの村に瞬間移動の魔法具が設置されているので、早ければ二十分くらいでしょうか」
すぐだった。
というか、あの文面の感じだともうこちらに向かっていそうだ。
何が嫌われている、だ。お師匠の態度は明らかに心配している親のそれである。親の心子知らずとはよく言ったものだ。
「それで、お師匠は強いのか?」
「召喚宮殿の第三位文字召喚師です」
肩書きがもう絶対強い。
召喚速度は俺の方が早いかもしれないが、あらかじめ召喚宮殿とやらで超強力なモンスターを召喚済みだった場合、手も足も出ない可能性がある。
とにかく、アンデッドたちに防衛体制を取らせ、早急に相手との会話機会を作らなければ――。
と思った時だった。
「ま、眩しい~~~!!!」
俺たちがいる広間に『地獄骸』が転がり込んできた。
いつもの畏まった態度はなく、苦しむようにジタバタしている。
すでに敵の攻撃が!? と緊張感が走る。
それと同時に床が激しく振動する。
無数のモンスターがこの場所へと走ってきているようだ。
敵の軍勢が120体のアンデッドを倒して攻めてきたのかもしれない。
という俺の心配をよそに、部屋に大量になだれこんできたのは、その120体のアンデッドだった。
「ぐああああああああ!!」
「つ、辛い……」
叫んだり、息絶え絶えだったり、みんな酷いことになっている。
だが、戦闘の形跡はなかった。
「どうしたの?」
「召喚主さま……。申し訳ございません、我らが召喚主さまをお守りせねばならぬのに……。敵の攻撃です。いきなり上空に聖なる光を持つ存在が出現し、その神々しい浄化の光によって、我らはなす術もありませんでした……」
がくっと頭を垂れる『地獄骸』。
「…………」
全てを把握して、俺は窓の外を見る。
上空に浮かんでいるのは、さっき召喚した『天使翼』である。
これはまずいぞ、と俺は作り笑いを浮かべた。
お前たちを苦しめたのは俺です。とは口が裂けても言えない。
「そ、そうだな……。俺もあの存在が急に現れたことには気づいていた」
「そうでしたか。さすがは召喚主……」
「え? あれはさっきシュウトさまが召喚した――」
レーナが横から余計な口を挟もうとしたので、俺はそのほっぺたを両側から思い切り押し潰した。
「むぎゅっ! ひどい~、何するんですかあ!」
俺が上手くやり過ごそうとしているのに、何を全て白状しようとしているのだ、この娘は。
レーナの口を封じることに成功したので、俺は『地獄骸』に向き直る。不敵な笑みと共に。
「心配することはない、『地獄骸』よ。あれはすでに俺の配下になった」
仰々しい口調で細かいことをごまかす。
すると、狙い通りに『地獄骸』は「おおっ……!」と感嘆するように息を漏らした。
「なんと、それは本当ですか。あのような存在さえ、一瞬で従えてしまうとは」
「俺くらいになると、このくらいは簡単さ。あいつには戦闘時以外は神々しい光を弱めるよう言いつけておこう」
そして、俺は窓の外を向いて命令を下す。
「『拠点を守護する天使翼』よ! 通常時は聖なる光を弱めるのだ!」
もはや調子に乗って、そう偉そうに告げた俺に『天使翼』は答える。
『了解しました。召喚主』
「………………あ」
俺が恐る恐る後ろを振り返ると、『地獄骸』たちがじと~っとした目で俺を見ていた。
レーナを弟子とすることを認めた後。
無駄に豪華な台所で俺がお茶を入れて戻ると、彼女は石のようなものに人差し指を当てて、念じるような仕草をしていた。
「なにしてんの?」
「あ、これはですね。召喚宮殿にもう帰らないってメッセージを送ったんです。便利な魔法具なんですよっ」
「…………ん?」
さっきは勢いで承諾してしまったが、よく考えたら、レーナはこれからここに住むことになるのだろうか。
レーナは見たところ、元の世界でいう女子高生くらいの年齢。
年頃の少女と同居するというのはよろしくないような気がする。
「なあ、弟子にするのはいいけど、家には帰った方がいいんじゃないか? 心配する人もいるだろ?」
「いないですよ。文字召喚術の才能を幼児の時に認められてから、わたしは召喚宮殿に隔離されて暮らしてきましたから。お師匠もわたしのこと好きじゃないみたいですし」
「ほんとかよ? 家出娘が嘘ついてるだけじゃないだろうな?」
レーナは全く帰る気がないようだ。
この広すぎる暗黒城には余っている部屋が無数にあるから、居住スペースには困らないが、どうしたものかと頭を悩ませる。
「あ、返信来ました!」
レーナの手の内で石型魔法具が光る。どうやら通信端末的なものらしい。
「なんて書いてあったんだ? 帰ってこいとかじゃないの?」
「えへへ、はずれですよ。正解は『文字召喚術師を出会ってすぐに取り込み、傀儡とするなんて、そこにいるあなたの新しい師匠とやらは魔王に違いありません。レーナ、あなたは騙されているのです。今すぐに助けに行きます』でした!」
「大問題に発展してる!」
驚愕である。そして、レーナの馬鹿さ加減に恐怖さえする。
もっと上手く伝えられなかったのか。完全に俺が悪者である。
「よし、これで大丈夫ですねっ。さあ、シュウトさま、これからどうしましょう?」
「どうしましょうじゃねえ! 絶対、お前のお師匠攻めてくるって! マジで!」
「それはそうと、やっぱりシュウトさまは魔王だったんですね」
「だから、それはお前と、お前の師匠の誤解だから!」
あれ、もしかしてレーナはちょっとバカなのか?
全然会話が噛み合わないし、いつの間にか俺は魔王になっている。
「やべー、どうすんだ。レーナ、お師匠がこっちに来るとして、どれくらいかかる?」
「近くの村に瞬間移動の魔法具が設置されているので、早ければ二十分くらいでしょうか」
すぐだった。
というか、あの文面の感じだともうこちらに向かっていそうだ。
何が嫌われている、だ。お師匠の態度は明らかに心配している親のそれである。親の心子知らずとはよく言ったものだ。
「それで、お師匠は強いのか?」
「召喚宮殿の第三位文字召喚師です」
肩書きがもう絶対強い。
召喚速度は俺の方が早いかもしれないが、あらかじめ召喚宮殿とやらで超強力なモンスターを召喚済みだった場合、手も足も出ない可能性がある。
とにかく、アンデッドたちに防衛体制を取らせ、早急に相手との会話機会を作らなければ――。
と思った時だった。
「ま、眩しい~~~!!!」
俺たちがいる広間に『地獄骸』が転がり込んできた。
いつもの畏まった態度はなく、苦しむようにジタバタしている。
すでに敵の攻撃が!? と緊張感が走る。
それと同時に床が激しく振動する。
無数のモンスターがこの場所へと走ってきているようだ。
敵の軍勢が120体のアンデッドを倒して攻めてきたのかもしれない。
という俺の心配をよそに、部屋に大量になだれこんできたのは、その120体のアンデッドだった。
「ぐああああああああ!!」
「つ、辛い……」
叫んだり、息絶え絶えだったり、みんな酷いことになっている。
だが、戦闘の形跡はなかった。
「どうしたの?」
「召喚主さま……。申し訳ございません、我らが召喚主さまをお守りせねばならぬのに……。敵の攻撃です。いきなり上空に聖なる光を持つ存在が出現し、その神々しい浄化の光によって、我らはなす術もありませんでした……」
がくっと頭を垂れる『地獄骸』。
「…………」
全てを把握して、俺は窓の外を見る。
上空に浮かんでいるのは、さっき召喚した『天使翼』である。
これはまずいぞ、と俺は作り笑いを浮かべた。
お前たちを苦しめたのは俺です。とは口が裂けても言えない。
「そ、そうだな……。俺もあの存在が急に現れたことには気づいていた」
「そうでしたか。さすがは召喚主……」
「え? あれはさっきシュウトさまが召喚した――」
レーナが横から余計な口を挟もうとしたので、俺はそのほっぺたを両側から思い切り押し潰した。
「むぎゅっ! ひどい~、何するんですかあ!」
俺が上手くやり過ごそうとしているのに、何を全て白状しようとしているのだ、この娘は。
レーナの口を封じることに成功したので、俺は『地獄骸』に向き直る。不敵な笑みと共に。
「心配することはない、『地獄骸』よ。あれはすでに俺の配下になった」
仰々しい口調で細かいことをごまかす。
すると、狙い通りに『地獄骸』は「おおっ……!」と感嘆するように息を漏らした。
「なんと、それは本当ですか。あのような存在さえ、一瞬で従えてしまうとは」
「俺くらいになると、このくらいは簡単さ。あいつには戦闘時以外は神々しい光を弱めるよう言いつけておこう」
そして、俺は窓の外を向いて命令を下す。
「『拠点を守護する天使翼』よ! 通常時は聖なる光を弱めるのだ!」
もはや調子に乗って、そう偉そうに告げた俺に『天使翼』は答える。
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