8 / 86
第8話 レーナのお師匠
しおりを挟む
さっきの大型モンスター召喚に失敗したことから、俺のクリエイトゲージは底を尽きかけていると見た方がいい。
となると、現状の戦力だけでレーナのお師匠を迎えなければならないことになる。
なんだかんだいっても、俺にはアンデッドたちを召喚した責任がある。
彼らの命を奪われることはあってはならない。
……って、思考も魔王になってきたような。
でも、そういう思考をするようになったことは別に悪いことではない気がした。
「だが、アンデッドたちにはよく言い聞かせておいたし、戦闘にはならないよな。今までの感じからすると、俺たちがお師匠を圧倒してしまう可能性もあるし……」
もちろん、相手を傷つけることも本意ではない。難しいところだ。
「あっ! あれ、お師匠さまですっ」
不意にレーナがテラスの手すりから身を乗り出して、遠くの草原を指さした。
ふらふらと危ないので、レーナの肩に手を置いて支えてやりながら――放っておいたら、その辺から転落しそう――俺は彼女の指の先を注視する。
「おお……!」
直立二足歩行をした筋肉質の牛のような化け物を五十体ほど従えた人影が、馬を駆ってこっちに向かってきていた。
二本のイカツい角を生やした牛型モンスターは馬に乗っているわけでもないのに、馬に乗った人影と同じ速度で走っている。
人影はフードを頭からかぶっていて、容姿はわからなかった。
彼らは高速で進軍を続けていた。
みるみるうちに集団は大きくなる。彼らはこの暗黒城に向けて、一直線に駆けてきているようだ。
「レーナ! 無事ですかッ!」
暗黒城の敷地のすぐそばまで接近し、アンデッドたちが作った簡易的な柵の前で止まって声を張り上げたのは、馬に乗った人影。
恐らくはレーナの師匠だ。
その声に、俺は少し違和感を覚える。そして、その原因にすぐ思い至った。
「あれ、レーナのお師匠って、女性だったのか?」
「はい、そうですよ? 男の人だと思っていたんですか?」
「あー、なんか、お師匠って聞くと、おじいさん的なものを連想しちゃってな……」
俺の想像とは違い、レーナの師匠は凛とした声色をしていた。
恐らく、二十代半ば辺りの女性。
お子さまのレーナよりも遥かに魅力的なお声である。
レーナの師匠は馬上で被っていたフードを脱ぐ。
そうして現れた御顔に俺は「おおっ!」とテンションが上がった。
背中まで伸びる長い黒髪。整った目鼻立ち。
目はすらりと切れ長で、唇はきゅっと毅然とした様子で締まっている。強気な内面が見て取れる凛々しい美人だった。
惜しむらくは胸が全然ないことだったが……まあ、それも魅力の一つである。
「じとー……」
「はっ、これは侮蔑の視線!」
見ると、レーナは何とも言えないジト目で俺の顔を見ていた。
彼女の師匠に見惚れていることを見抜かれたのだろう。
こういうところだけ鋭いなんて……。
「うっ……こほん」
無理やりに咳払いをして、俺は仕切り直す。レーナの侮蔑の視線がずっと注がれているが、気にしたら負けだ。
「よし、向こうもいきなり仕掛ける気はないようだな。牛たちも待機してるみたいだし。じゃあ、俺が直接、お師匠と話そう――」
そうして、テラスから交渉を始めようとした時だった。
簡易柵の内側で様子を窺っていたアンデッドたちがざわつき始めた。
……嫌な予感がする。
元々、相手を滅しようという本能が強いアンデッドたちのことだ。
もしかして、命令を無視して交戦しようとしているんじゃ……。
「大変です! 召喚主!」
顔色を変えてテラスへ飛び込んできたのは、『地獄骸』。
やはり、俺の予感は当たったようだ。
こういう時にはきちんと叱らないと、集団行動が成り立たない。
俺は心を鬼にして、彼の配下のアンデッドたちの管理責任を厳しく問う。
「おい、『地獄骸』。俺は攻撃をするなって命令したよな?」
「え? はあ……」
困惑した様子で首を傾げる『地獄骸』。
「なんだ、その態度は。お前の部下が交戦しようとしてるって報告だろ?」
「いいえ、違います。召喚主。我々はきちんと命令を遵守し、待機しております」
俺は眉をひそめる。どうも、会話が噛み合わない。
ならなぜ、『地獄骸』は血相を変えてやってきて、下はざわついているのか。
「じゃあ、何が大変なんだよ?」
「奴が敵に攻撃を加えようとしているのです!」
「アンデッドたちはちゃんと待機してるんじゃなかったのか?」
「ですから――『天使翼』が!」
「あっ」
あれ、もしかして俺、アンデッドには命令を出したけど――。
『こちらは天使翼。暗黒城周辺に敵性反応を多数感知。総数、六十二。敵対の意思を検出。よって、拠点守護のため、敵性反応に聖なる光の鉄槌を下します』
――『天使翼』には出してなかった?
次の瞬間、天空が激しい光を放ち。
雲が裂け、青空が広がり、そして聖なる白光の大槍がレーナの師匠たちがいる大地を爆煙と共に――薙ぎ払った。
「や、やりおったーーーーーー!!!」
俺は絶望に満ちた表情を浮かべ、その場で顔を覆いながら絶叫した。
となると、現状の戦力だけでレーナのお師匠を迎えなければならないことになる。
なんだかんだいっても、俺にはアンデッドたちを召喚した責任がある。
彼らの命を奪われることはあってはならない。
……って、思考も魔王になってきたような。
でも、そういう思考をするようになったことは別に悪いことではない気がした。
「だが、アンデッドたちにはよく言い聞かせておいたし、戦闘にはならないよな。今までの感じからすると、俺たちがお師匠を圧倒してしまう可能性もあるし……」
もちろん、相手を傷つけることも本意ではない。難しいところだ。
「あっ! あれ、お師匠さまですっ」
不意にレーナがテラスの手すりから身を乗り出して、遠くの草原を指さした。
ふらふらと危ないので、レーナの肩に手を置いて支えてやりながら――放っておいたら、その辺から転落しそう――俺は彼女の指の先を注視する。
「おお……!」
直立二足歩行をした筋肉質の牛のような化け物を五十体ほど従えた人影が、馬を駆ってこっちに向かってきていた。
二本のイカツい角を生やした牛型モンスターは馬に乗っているわけでもないのに、馬に乗った人影と同じ速度で走っている。
人影はフードを頭からかぶっていて、容姿はわからなかった。
彼らは高速で進軍を続けていた。
みるみるうちに集団は大きくなる。彼らはこの暗黒城に向けて、一直線に駆けてきているようだ。
「レーナ! 無事ですかッ!」
暗黒城の敷地のすぐそばまで接近し、アンデッドたちが作った簡易的な柵の前で止まって声を張り上げたのは、馬に乗った人影。
恐らくはレーナの師匠だ。
その声に、俺は少し違和感を覚える。そして、その原因にすぐ思い至った。
「あれ、レーナのお師匠って、女性だったのか?」
「はい、そうですよ? 男の人だと思っていたんですか?」
「あー、なんか、お師匠って聞くと、おじいさん的なものを連想しちゃってな……」
俺の想像とは違い、レーナの師匠は凛とした声色をしていた。
恐らく、二十代半ば辺りの女性。
お子さまのレーナよりも遥かに魅力的なお声である。
レーナの師匠は馬上で被っていたフードを脱ぐ。
そうして現れた御顔に俺は「おおっ!」とテンションが上がった。
背中まで伸びる長い黒髪。整った目鼻立ち。
目はすらりと切れ長で、唇はきゅっと毅然とした様子で締まっている。強気な内面が見て取れる凛々しい美人だった。
惜しむらくは胸が全然ないことだったが……まあ、それも魅力の一つである。
「じとー……」
「はっ、これは侮蔑の視線!」
見ると、レーナは何とも言えないジト目で俺の顔を見ていた。
彼女の師匠に見惚れていることを見抜かれたのだろう。
こういうところだけ鋭いなんて……。
「うっ……こほん」
無理やりに咳払いをして、俺は仕切り直す。レーナの侮蔑の視線がずっと注がれているが、気にしたら負けだ。
「よし、向こうもいきなり仕掛ける気はないようだな。牛たちも待機してるみたいだし。じゃあ、俺が直接、お師匠と話そう――」
そうして、テラスから交渉を始めようとした時だった。
簡易柵の内側で様子を窺っていたアンデッドたちがざわつき始めた。
……嫌な予感がする。
元々、相手を滅しようという本能が強いアンデッドたちのことだ。
もしかして、命令を無視して交戦しようとしているんじゃ……。
「大変です! 召喚主!」
顔色を変えてテラスへ飛び込んできたのは、『地獄骸』。
やはり、俺の予感は当たったようだ。
こういう時にはきちんと叱らないと、集団行動が成り立たない。
俺は心を鬼にして、彼の配下のアンデッドたちの管理責任を厳しく問う。
「おい、『地獄骸』。俺は攻撃をするなって命令したよな?」
「え? はあ……」
困惑した様子で首を傾げる『地獄骸』。
「なんだ、その態度は。お前の部下が交戦しようとしてるって報告だろ?」
「いいえ、違います。召喚主。我々はきちんと命令を遵守し、待機しております」
俺は眉をひそめる。どうも、会話が噛み合わない。
ならなぜ、『地獄骸』は血相を変えてやってきて、下はざわついているのか。
「じゃあ、何が大変なんだよ?」
「奴が敵に攻撃を加えようとしているのです!」
「アンデッドたちはちゃんと待機してるんじゃなかったのか?」
「ですから――『天使翼』が!」
「あっ」
あれ、もしかして俺、アンデッドには命令を出したけど――。
『こちらは天使翼。暗黒城周辺に敵性反応を多数感知。総数、六十二。敵対の意思を検出。よって、拠点守護のため、敵性反応に聖なる光の鉄槌を下します』
――『天使翼』には出してなかった?
次の瞬間、天空が激しい光を放ち。
雲が裂け、青空が広がり、そして聖なる白光の大槍がレーナの師匠たちがいる大地を爆煙と共に――薙ぎ払った。
「や、やりおったーーーーーー!!!」
俺は絶望に満ちた表情を浮かべ、その場で顔を覆いながら絶叫した。
0
あなたにおすすめの小説
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる