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第14話 最強の独立自治区
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「そうさなぁ……何から話せばいいものか。この村を中心としたギルダム辺境自治区についての立場から説明する必要があるだろうな」
村長は顔の皺を一段と強く寄せて、苦い顔をした。
彼の後を継いで、アリカが言葉を紡ぐ。
「ギルダムはその名の通り、ルフェリア王国という国の辺境に位置する土地なんです。草原や山脈、森林に恵まれた土地。ですが、王国中枢からはかなりの距離があり、王国の統治下から条件付きで外れているのですよ」
「なぜ、王国はわざわざ広大な土地を放置するんだ? アリカがやってきたように、転移ゲートのようなものがあるなら、距離はそれほどの問題じゃないだろ?」
俺は疑問を投げかける。できるなら、ここで大まかな周辺状況は把握しておきたかった。
「転移魔術によるゲートは、人間と小物しか転移できないのですよ。建築を行うにしても、土地の整備を行うにしても、資材や用具を持ち込めなければ、あまり効率的とは言えません」
アリカは首を横に振って否定してみせた。
「そしてもう一つ、王国にはギルダムに緩やかな独立を許す理由がある。それが、ギルダムが王国と逆側で接しているアルガリンガン帝国の存在なのだ」
今度はアリカの言葉を捕捉するように、村長が呟く。
「つまり、この場所は王国と帝国の緩衝地帯ということですか」
なるほど、なんとなく読めてきた。
「如何にも。王国と帝国は元からあまり友好的とは言えぬ。辺境自治区として望んでもいない一方的な独立の承認を与えられたギルダムは、確かにルフェリア王国の支配下でありながら、不意に帝国からの襲撃を受けても、王国側に救援の義務はないという何とも不当な条件を飲まされる立場になったのじゃ」
「それは……酷いですね……」
ギルダムは王国を守るための防御壁として見られているということか。
しかも、一応は王国の領土であるため、王国側から帝国に攻撃を仕掛ける時は容易い。
こちらの攻撃だけが貫通する魔法の盾と考えればいいだろう。
「しかも近頃、帝国の動きが怪しいんです。国政とは別で動く組織である召喚宮殿は、ギルダム辺境自治区への帝国襲撃を警戒していました。この中央村を基点とした十数の村だけで構成されている自治区は敵に攻め込まれたら一たまりもありません。だから、村の人々の命を守るため、警戒役としてレーナが派遣されていたのです」
アリカは複雑そうな顔で、すやすやと寝ているレーナの頬を撫でた。
「本当ならまだまだ半人前である彼女を派遣することはありえないはずでした。ですが、王国側の圧力で位の高い召喚術師を派遣することはかなわなかったのです。そんな余力があるのなら、敵がギルダムを攻め滅ぼしている間に王都の守りを固めろ、というのが王国中枢の意見でした」
聞けば聞くほど、王国中枢の考え方は歪んでいた。
自己を第一とするその思考。それは国を束ねる者の思考ではない。
「そういう経緯があったため、丘の上にあの城が現れた時、村の人間たちは帝国の攻撃の前触れではないかと恐怖したのだ。シュウトらには、悪いことをした」
そう言って、村長は再び頭を下げる。
「や、やめてください! もうわかりましたから!」
俺は必死に彼の頭を元に戻させた。
ただの気楽な異世界だと思っていたが、どうやら状況はそう簡単でもないらしい。
ってことは、俺は緊迫した地雷原でアンデッドたちとバカ騒ぎしてたってことか……こわ……。
最初に俺たちを見つけたのがレーナではなく、帝国の人間だったら、本当に戦いが始まっていたかもしれない。
そんなことにならなくてよかったと心底安堵する。
だが、安堵してばかりもいられない。
暗黒城はギルダム自治区の中にあるという。ということは、この中央村は同じ地域に住むご近所さんということになる。
そんな彼らが困っているのを見過ごせはしない。
俺は自分の右手を見つめた。
この手には力がある。
この世界の誰よりも、速く、強力な、文字召喚術が。
今まではこんな力、何に使えばいいかわからなかった。
だが、ようやく見えてきた気がする。
俺は決心すると、村長を正面から真面目な表情で見据えた。
「――この自治区、建前としては独立地帯なんですよね?」
「あ、ああ……そうだが?」
村長は俺が何を言おうとしているのかわからないようで、首を傾げる。
アリカはなんとなく察したようで、静かな笑みを浮かべて黙っていた。
そして、俺は宣言する。
「なら作りましょう、この地に。俺のこの文字召喚術を以って、王国にも、帝国にも、この世界のどこにも負けない最強の独立自治区、ギルダムを!」
村長は唖然として口を開いていた。
アリカは俺の目を見て大きく頷いた。
レーナは……まあ、変わらず寝ていた。
だが、それでいい。
気取らず、俺たちらしく、進めていけばいい。
最強の独立自治区ギルダム、その形成が始まった一日目の出来事だった。
村長は顔の皺を一段と強く寄せて、苦い顔をした。
彼の後を継いで、アリカが言葉を紡ぐ。
「ギルダムはその名の通り、ルフェリア王国という国の辺境に位置する土地なんです。草原や山脈、森林に恵まれた土地。ですが、王国中枢からはかなりの距離があり、王国の統治下から条件付きで外れているのですよ」
「なぜ、王国はわざわざ広大な土地を放置するんだ? アリカがやってきたように、転移ゲートのようなものがあるなら、距離はそれほどの問題じゃないだろ?」
俺は疑問を投げかける。できるなら、ここで大まかな周辺状況は把握しておきたかった。
「転移魔術によるゲートは、人間と小物しか転移できないのですよ。建築を行うにしても、土地の整備を行うにしても、資材や用具を持ち込めなければ、あまり効率的とは言えません」
アリカは首を横に振って否定してみせた。
「そしてもう一つ、王国にはギルダムに緩やかな独立を許す理由がある。それが、ギルダムが王国と逆側で接しているアルガリンガン帝国の存在なのだ」
今度はアリカの言葉を捕捉するように、村長が呟く。
「つまり、この場所は王国と帝国の緩衝地帯ということですか」
なるほど、なんとなく読めてきた。
「如何にも。王国と帝国は元からあまり友好的とは言えぬ。辺境自治区として望んでもいない一方的な独立の承認を与えられたギルダムは、確かにルフェリア王国の支配下でありながら、不意に帝国からの襲撃を受けても、王国側に救援の義務はないという何とも不当な条件を飲まされる立場になったのじゃ」
「それは……酷いですね……」
ギルダムは王国を守るための防御壁として見られているということか。
しかも、一応は王国の領土であるため、王国側から帝国に攻撃を仕掛ける時は容易い。
こちらの攻撃だけが貫通する魔法の盾と考えればいいだろう。
「しかも近頃、帝国の動きが怪しいんです。国政とは別で動く組織である召喚宮殿は、ギルダム辺境自治区への帝国襲撃を警戒していました。この中央村を基点とした十数の村だけで構成されている自治区は敵に攻め込まれたら一たまりもありません。だから、村の人々の命を守るため、警戒役としてレーナが派遣されていたのです」
アリカは複雑そうな顔で、すやすやと寝ているレーナの頬を撫でた。
「本当ならまだまだ半人前である彼女を派遣することはありえないはずでした。ですが、王国側の圧力で位の高い召喚術師を派遣することはかなわなかったのです。そんな余力があるのなら、敵がギルダムを攻め滅ぼしている間に王都の守りを固めろ、というのが王国中枢の意見でした」
聞けば聞くほど、王国中枢の考え方は歪んでいた。
自己を第一とするその思考。それは国を束ねる者の思考ではない。
「そういう経緯があったため、丘の上にあの城が現れた時、村の人間たちは帝国の攻撃の前触れではないかと恐怖したのだ。シュウトらには、悪いことをした」
そう言って、村長は再び頭を下げる。
「や、やめてください! もうわかりましたから!」
俺は必死に彼の頭を元に戻させた。
ただの気楽な異世界だと思っていたが、どうやら状況はそう簡単でもないらしい。
ってことは、俺は緊迫した地雷原でアンデッドたちとバカ騒ぎしてたってことか……こわ……。
最初に俺たちを見つけたのがレーナではなく、帝国の人間だったら、本当に戦いが始まっていたかもしれない。
そんなことにならなくてよかったと心底安堵する。
だが、安堵してばかりもいられない。
暗黒城はギルダム自治区の中にあるという。ということは、この中央村は同じ地域に住むご近所さんということになる。
そんな彼らが困っているのを見過ごせはしない。
俺は自分の右手を見つめた。
この手には力がある。
この世界の誰よりも、速く、強力な、文字召喚術が。
今まではこんな力、何に使えばいいかわからなかった。
だが、ようやく見えてきた気がする。
俺は決心すると、村長を正面から真面目な表情で見据えた。
「――この自治区、建前としては独立地帯なんですよね?」
「あ、ああ……そうだが?」
村長は俺が何を言おうとしているのかわからないようで、首を傾げる。
アリカはなんとなく察したようで、静かな笑みを浮かべて黙っていた。
そして、俺は宣言する。
「なら作りましょう、この地に。俺のこの文字召喚術を以って、王国にも、帝国にも、この世界のどこにも負けない最強の独立自治区、ギルダムを!」
村長は唖然として口を開いていた。
アリカは俺の目を見て大きく頷いた。
レーナは……まあ、変わらず寝ていた。
だが、それでいい。
気取らず、俺たちらしく、進めていけばいい。
最強の独立自治区ギルダム、その形成が始まった一日目の出来事だった。
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