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第17話 敵兵蹂躙
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「――対話の時間は終了だ。一握の慈悲も残すなッ!!」
憤怒に侵された俺の言葉は、この世に召喚されたアンデッドたちにとって待ちに待った号令だったに違いない。
知っての通り、普段の彼らは温和だ。
俺の言うことを聞き、可愛いところもある。だが、彼らは元々、ゲームの敵モンスター。
主人公たちを殺す機会を窺う、獰猛な獣たちなのだ。
「――ォォォォオオオオッッッ!!!!!」
俺の背後から唸る叫び声は誰のものともわからない。
強いて言うなら、村全体が雄叫びを上げているようだ。
村中に散らばった120体のアンデッド。
彼らは主の命に応え、蹂躙を開始する。
空をいくつかの影が高速で移動した。
村の家屋の屋根から鋭い跳躍を見せたのは、身体全体が骸骨と腐った肉で作られ、四足歩行をする死の獣『暗闇に消えた獣槍』である。
全長は人間の成人男性ほどあり、かなりの大型だ。
三体の『獣槍』は目に見えない速度で建物の屋根を飛び移っていき、敵の五十人ほどの兵士たちの頭上に突っ込んだ。
「ひぃぃ! 助けてくれーーー!」
『獣槍』が槍と称される所以は、その前脚にある。
地を走る時は犬のような形をしているが、獲物に飛びかかる寸前、骨でできた前脚は鋭く槍の先端のように尖った。
そうして、その鋭い槍先で兵士の肩を貫くと、『獣槍』たちの歩行形態を二足歩行に切り替える。
両腕を振り回し、恐怖に染まった兵士たちは四方に散り散りになった。
『暗闇に消えた獣槍』は、四足歩行と二足歩行を切り替えるというコンセプトの基にデザインされたモンスターだ。
四足歩行時は敏捷性のパラメータが上がり、二足歩行時は攻撃力、防御力のパラメータが上がる。
攻略に一手間必要な、B級モンスターとして生み出された。
「なんで村に敵の召喚モンスターがいるんだよぉ!」
『獣槍』から逃れ、涙目で逃走する兵士たち。
その前には、彼らの身長の倍はあるだろう巨大な影が立ちはだかる。
「ば、化けものッ!」
目を見開き、戦うしかないと剣を構える六人の兵士たち。そうして相手を注視した彼らは、それが一つの存在ではないことに気づいた。
「よいしょ、よいしょ」
「よいしょ、よいしょ」
「よいしょ、よいしょ」
抑揚のない無感情な掛け声と共に、それは前進する。
下部で支えるのは、俺が設定した中でも最弱のD級モンスター『雑魚と呼ばれる死後』たち。
そして、彼らが一生懸命担ぎあげているのは王座であり、そこには王冠を被った骸骨系アンデッド、『堕落した王冠』が優雅に坐している。
「着きました~親分!」
「良い。なら王座を設置しろ」
『雑魚死後』たちは目的地に到着したことに歓喜の歓声を上げ、王座が地面に下ろされる。
その謎の行動に兵士たちは面食らってただその様子を見ていた。
というか、王様と配下のはずなのに、『雑魚死後』は『堕落した王冠』のことを親分とか呼んでいる。
確かに俺は、設定を作る時にそこまでちゃんと決めていなかった。
クリエイターとしての自分の設定の甘さが妙な形で露呈して、少し恥ずかしくなる。
「上手くできました、親分!」
『雑魚死後』たちは王座を地面に設置し、『堕落した王冠』は満足げに頷く。
「うむ。なら敵を攻撃しろ」
「わかりました!」
『堕落した王冠』の命令に、六人の『雑魚死後』たちはぐるりっと全員が一斉に、兵士たちを見た。
一瞬、怯んだ兵士たちだったが、『雑魚死後』たちの数は六人で兵士たちと同じ。
体格的にも大した差はなく、勝てると踏んだようで、叫び声を上げながら『雑魚死後』たちに突進する。
その様子にびくっとなる『雑魚死後』たち。
兵士たちには看破されてしまったようだが、『雑魚と呼ばれる死後』のランクは最弱のD級。確かに兵士たちでも押し切れるレベルかもしれない。
だが、『堕落した王冠』は配下が襲われる様子を見ても、ただ欠伸をするのみで全く動こうとしなかった。
配下を助けに立ち上がる動作もなく、つまらなそうに戦闘の行方を見守る。
『雑魚死後』たちは各一人が、敵の兵士一人を相手に戦闘を開始した。
『雑魚死後』には特に武器がない。よって、長い腕を振り回して攻撃を繰り出すが、敵の兵士の方が上手だ。
剣で攻撃を受け流すと、『雑魚死後』の身体を真横に一閃した。
「い、いたい~~~!」
六人の『雑魚死後』は大して時間もかからず、容易く切り伏せられてしまった。
兵士たちは初めてこちらのアンデッドを討伐したことに、歓声を上げる。
「やった! こいつら、そこまで強くないぞ! もしかしたら、見かけ倒しかも――」
そうやって、目先の戦果だけでこちらの戦力を見誤った兵士は。
次の瞬間、背後の石壁の中に叩きこまれていた。
「……は?」
残った五人の兵士たちは何が起こったのか理解できなかった。
石壁に身体をめり込ませた兵士は頭から血を流して沈黙している。
みんな、自分に対応する敵は倒したはずだ、と彼らは思う。
だが、彼らは忘れていた。
戦闘に参加していなかった王座の主のことを。
一人の兵士が異変に気付く。
「あ、ああ……!」
彼が指差した先、そこには――空席となった王座。
兵士たちが状況を理解したその時。
「ご苦労だった、配下たち。諸君の健闘で、敵の分析が終わったぞ」
いつのまにか、五人の兵士たちの中心に『堕落した王冠』が醜悪な笑みと共に立っていた。
兵士たちは突然のことに絶叫しながら、剣を振り下ろす。だが、その全ては見えない壁によって弾き返される。
「物理攻撃はもう効かぬ。なぜなら、お主たちの攻撃は我がこの眼で見たのだから」
「うわああああああああッ!!!!!!!!!」
兵士たちは『堕落した王冠』の言う意味がわからず、錯乱したように剣を振り回す。
しかし、その攻撃は一太刀も『堕落した王冠』に当たることはなかった。
A級モンスター『堕落した王冠』に備えられた特殊スキル。
それは『攻撃認知・完全抵抗』である。
『堕落した王冠』はゲーム内で必ず、数匹の『雑魚と呼ばれる死後』を引き連れて登場する。
『雑魚死後』が全滅するまで、『堕落した王冠』は攻撃を行わない。
その代わり、『雑魚死後』を全滅させないと、彼らが身代わりとなるため『堕落した王冠』にダメージは与えられない。
そして、『堕落した王冠』はその戦闘の経過を見ている。
主人公たちが『雑魚と呼ばれる死後』を倒すために使った技や魔法の全ては、『堕落した王冠』に見極められ、その戦闘中、同じ攻撃方法で『堕落した王冠』に傷をつけることはできない。
今回は剣による物理攻撃を見極められてしまったため、兵士たちは『堕落した王冠』に触れることさえできなかったのだ。
本来なら必殺の一撃を別に用意しておくのが攻略法なのだが……もちろん初見であり、魔法や技など多様な攻撃方法を持たない一般兵士にとっては、ほぼ無敵といえるだろう。
五人の兵士が声一つ出さずに地面に横たわった後、『堕落した王冠』は両手をさっと周囲にかざす。
すると、漆黒の闇が出現し、倒れた『雑魚死後』たちを包み込んだ。
「う、うーん。終わりましたか、親分」
次々と起き上がる『雑魚死後』たち。
『堕落した王冠』は『雑魚死後』限定で完全治癒するスキルも持ち合わせていた。だから、彼は容赦なく彼らを捨て駒にするのだ。
「ああ。さあ、王座を運べ諸君。凱旋だ」
「へい、親分!」
そうして担ぎ上げられた王座は新たな敵を求めて、再び進行を始めた。
憤怒に侵された俺の言葉は、この世に召喚されたアンデッドたちにとって待ちに待った号令だったに違いない。
知っての通り、普段の彼らは温和だ。
俺の言うことを聞き、可愛いところもある。だが、彼らは元々、ゲームの敵モンスター。
主人公たちを殺す機会を窺う、獰猛な獣たちなのだ。
「――ォォォォオオオオッッッ!!!!!」
俺の背後から唸る叫び声は誰のものともわからない。
強いて言うなら、村全体が雄叫びを上げているようだ。
村中に散らばった120体のアンデッド。
彼らは主の命に応え、蹂躙を開始する。
空をいくつかの影が高速で移動した。
村の家屋の屋根から鋭い跳躍を見せたのは、身体全体が骸骨と腐った肉で作られ、四足歩行をする死の獣『暗闇に消えた獣槍』である。
全長は人間の成人男性ほどあり、かなりの大型だ。
三体の『獣槍』は目に見えない速度で建物の屋根を飛び移っていき、敵の五十人ほどの兵士たちの頭上に突っ込んだ。
「ひぃぃ! 助けてくれーーー!」
『獣槍』が槍と称される所以は、その前脚にある。
地を走る時は犬のような形をしているが、獲物に飛びかかる寸前、骨でできた前脚は鋭く槍の先端のように尖った。
そうして、その鋭い槍先で兵士の肩を貫くと、『獣槍』たちの歩行形態を二足歩行に切り替える。
両腕を振り回し、恐怖に染まった兵士たちは四方に散り散りになった。
『暗闇に消えた獣槍』は、四足歩行と二足歩行を切り替えるというコンセプトの基にデザインされたモンスターだ。
四足歩行時は敏捷性のパラメータが上がり、二足歩行時は攻撃力、防御力のパラメータが上がる。
攻略に一手間必要な、B級モンスターとして生み出された。
「なんで村に敵の召喚モンスターがいるんだよぉ!」
『獣槍』から逃れ、涙目で逃走する兵士たち。
その前には、彼らの身長の倍はあるだろう巨大な影が立ちはだかる。
「ば、化けものッ!」
目を見開き、戦うしかないと剣を構える六人の兵士たち。そうして相手を注視した彼らは、それが一つの存在ではないことに気づいた。
「よいしょ、よいしょ」
「よいしょ、よいしょ」
「よいしょ、よいしょ」
抑揚のない無感情な掛け声と共に、それは前進する。
下部で支えるのは、俺が設定した中でも最弱のD級モンスター『雑魚と呼ばれる死後』たち。
そして、彼らが一生懸命担ぎあげているのは王座であり、そこには王冠を被った骸骨系アンデッド、『堕落した王冠』が優雅に坐している。
「着きました~親分!」
「良い。なら王座を設置しろ」
『雑魚死後』たちは目的地に到着したことに歓喜の歓声を上げ、王座が地面に下ろされる。
その謎の行動に兵士たちは面食らってただその様子を見ていた。
というか、王様と配下のはずなのに、『雑魚死後』は『堕落した王冠』のことを親分とか呼んでいる。
確かに俺は、設定を作る時にそこまでちゃんと決めていなかった。
クリエイターとしての自分の設定の甘さが妙な形で露呈して、少し恥ずかしくなる。
「上手くできました、親分!」
『雑魚死後』たちは王座を地面に設置し、『堕落した王冠』は満足げに頷く。
「うむ。なら敵を攻撃しろ」
「わかりました!」
『堕落した王冠』の命令に、六人の『雑魚死後』たちはぐるりっと全員が一斉に、兵士たちを見た。
一瞬、怯んだ兵士たちだったが、『雑魚死後』たちの数は六人で兵士たちと同じ。
体格的にも大した差はなく、勝てると踏んだようで、叫び声を上げながら『雑魚死後』たちに突進する。
その様子にびくっとなる『雑魚死後』たち。
兵士たちには看破されてしまったようだが、『雑魚と呼ばれる死後』のランクは最弱のD級。確かに兵士たちでも押し切れるレベルかもしれない。
だが、『堕落した王冠』は配下が襲われる様子を見ても、ただ欠伸をするのみで全く動こうとしなかった。
配下を助けに立ち上がる動作もなく、つまらなそうに戦闘の行方を見守る。
『雑魚死後』たちは各一人が、敵の兵士一人を相手に戦闘を開始した。
『雑魚死後』には特に武器がない。よって、長い腕を振り回して攻撃を繰り出すが、敵の兵士の方が上手だ。
剣で攻撃を受け流すと、『雑魚死後』の身体を真横に一閃した。
「い、いたい~~~!」
六人の『雑魚死後』は大して時間もかからず、容易く切り伏せられてしまった。
兵士たちは初めてこちらのアンデッドを討伐したことに、歓声を上げる。
「やった! こいつら、そこまで強くないぞ! もしかしたら、見かけ倒しかも――」
そうやって、目先の戦果だけでこちらの戦力を見誤った兵士は。
次の瞬間、背後の石壁の中に叩きこまれていた。
「……は?」
残った五人の兵士たちは何が起こったのか理解できなかった。
石壁に身体をめり込ませた兵士は頭から血を流して沈黙している。
みんな、自分に対応する敵は倒したはずだ、と彼らは思う。
だが、彼らは忘れていた。
戦闘に参加していなかった王座の主のことを。
一人の兵士が異変に気付く。
「あ、ああ……!」
彼が指差した先、そこには――空席となった王座。
兵士たちが状況を理解したその時。
「ご苦労だった、配下たち。諸君の健闘で、敵の分析が終わったぞ」
いつのまにか、五人の兵士たちの中心に『堕落した王冠』が醜悪な笑みと共に立っていた。
兵士たちは突然のことに絶叫しながら、剣を振り下ろす。だが、その全ては見えない壁によって弾き返される。
「物理攻撃はもう効かぬ。なぜなら、お主たちの攻撃は我がこの眼で見たのだから」
「うわああああああああッ!!!!!!!!!」
兵士たちは『堕落した王冠』の言う意味がわからず、錯乱したように剣を振り回す。
しかし、その攻撃は一太刀も『堕落した王冠』に当たることはなかった。
A級モンスター『堕落した王冠』に備えられた特殊スキル。
それは『攻撃認知・完全抵抗』である。
『堕落した王冠』はゲーム内で必ず、数匹の『雑魚と呼ばれる死後』を引き連れて登場する。
『雑魚死後』が全滅するまで、『堕落した王冠』は攻撃を行わない。
その代わり、『雑魚死後』を全滅させないと、彼らが身代わりとなるため『堕落した王冠』にダメージは与えられない。
そして、『堕落した王冠』はその戦闘の経過を見ている。
主人公たちが『雑魚と呼ばれる死後』を倒すために使った技や魔法の全ては、『堕落した王冠』に見極められ、その戦闘中、同じ攻撃方法で『堕落した王冠』に傷をつけることはできない。
今回は剣による物理攻撃を見極められてしまったため、兵士たちは『堕落した王冠』に触れることさえできなかったのだ。
本来なら必殺の一撃を別に用意しておくのが攻略法なのだが……もちろん初見であり、魔法や技など多様な攻撃方法を持たない一般兵士にとっては、ほぼ無敵といえるだろう。
五人の兵士が声一つ出さずに地面に横たわった後、『堕落した王冠』は両手をさっと周囲にかざす。
すると、漆黒の闇が出現し、倒れた『雑魚死後』たちを包み込んだ。
「う、うーん。終わりましたか、親分」
次々と起き上がる『雑魚死後』たち。
『堕落した王冠』は『雑魚死後』限定で完全治癒するスキルも持ち合わせていた。だから、彼は容赦なく彼らを捨て駒にするのだ。
「ああ。さあ、王座を運べ諸君。凱旋だ」
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