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第18話 対話を拒んだから
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村中から敵兵士たちの悲鳴が上がる。
だが、こちらのアンデッドたちは何も考えなしに相手を蹂躙しているわけではない。
少しずつ、少しずつ、兵士たちを村から追い出す形で攻撃を加えていた。
おかげで、村人たちの安全は守られた。
現在、村人たちはアリカが連れている牛たちに護衛されているし、もう心配はないだろう。
「な、なんでだよ……! 敵に召喚モンスター? ありえない! クソが!」
フェガジア・アーガルトは散り散りになって敗走していく兵士たちを見ながら、顔を醜く歪めて悪態を吐く。
しかし、本人は一切その場から動こうとしなかった。
逃げることも、戦うこともしようとしない。
だから、俺は戦意を失った彼のことを不審に思いながらも後回しにして、周囲のアンデッドたちに指示を出していたのだが。
それがこの戦いにおいて、唯一の失敗だった。
相手は文字召喚術を使える騎士。
召喚術師相手のちゃんとした実戦が初めてだった俺は知らなかったのだ。
戦闘において、文字召喚術師が行う代表的な行為。
それが――顕現待ちの時間稼ぎだということを。
フェガジア・アーガルトの口元がぐしゃりと持ち上がった。
俺から見えないように隠していた彼の右手には、魔法記述具である万年筆があった。
そして青く光る文字が刻まれ、宙に浮かんでいるのは、同じく魔法記述具である羊皮紙。
やられた。アーガルトは文字召喚を起動していたのだ。
「ふははははははッ!! 一体、何人がかりでこんな数のアンデッドを召喚したのかは知らないが、指揮を執っているのがこんな素人だとはなッ! お前がオレ様を見逃した七分間ッ! それだけあれば、俺の身を守るモンスターくらい召喚できるッ! 何せ、オレ様は帝国の誉れ高き召喚騎士であるのだからッ!」
アーガルトの哄笑と共に、彼の背後の空間が歪曲して、円形の暗い穴が開く。
その穴から鉄骨よりも太い、巨大な青色の右腕が勢いよく突き出した。
巨人のものと言われて納得できるようなその腕はアーガルトの身体を包み込む。
「あ、あれは……省略召喚です! モンスターの身体の一部だけを優先的に顕現させることで、召喚時間を短縮できる秘法ですよ! だとしても、たった七分であんな凶悪なものを召喚するなんて……。気をつけてください、シュウトさん!」
俺の後方、見守る村人たちの中から、レーナが忠告をくれる。
なるほど、省略召喚。そんなこともできるのか。と感心しつつ、俺は巨人の腕を眺める。
硬質な筋肉に覆われた巨人の右腕を傷つけるのはなかなか大変そうだ。どうしたものか。
そんな時、ある声が俺の耳に届いた。
「――え? ああ、そうなの? じゃあ、お願い」
「はははははッ!! この『海王ガルゴーム』の右腕は低級なモンスターの攻撃など弾く! まずは守りだ……そしてこの後、二時間をかけて『海王ガルゴーム』の全身をじっくり召喚してやる! その時がお前たちの――」
アーガルトの言葉は最後まで終わらなかった。
彼の優越の叫びの途中、『海王ガルゴーム』の右腕および歪曲空間に対し、天から放たれた凄まじい裁きの稲妻が直撃したのだ。
一瞬、村全体が激しい発光に包まれ、次の瞬間、大爆発を起こした。
地面がめくれ、『海王ガルゴーム』の右腕は瞬時に蒸発する。歪曲空間はその形を保っていられず、元の空間に戻った。
「ぐああああああああああああああッ!!!」
激しい衝撃を受けたアーガルトは地面に叩きつけられ、その痛みに絶叫する。
しかし、不思議と俺や村人たち、また村への被害はゼロだった。
そんなことを可能にするのは、天に坐す神秘の翼の聖なる光だけだ。
『――召喚主。ギルダム自治区全体を守護領域として設定。敵性存在の排除を確認。以後、ギルダム自治区全体を拠点として守護致します』
俺の頭の中に響く声は、『拠点を守護する天使翼』のものだった。
俺がどうやって巨人の腕を排除するか悩んでいたあの瞬間、『天使翼』の方から、拠点情報のアップデートを提言されたのだ。
ギルダム自治区は拠点登録されていない、もし拠点登録するのであれば、暗黒城上空からの精密攻撃が可能である、と。
こうして、この結果が目の前に導かれた。
アーガルトへの直撃は避けてもらい、あくまでモンスターの排除を頼んだため、彼自身はまだ辛うじて動くことができた。
恨めしい視線で俺を睨み、彼はよろよろと立ち上がる。
「くそが……くそがぁぁぁ!!!」
彼は最後の抵抗のつもりか、もう一度強く指を鳴らした。
すると、周囲に倒れていた同じく瀕死の鳥人たちが三匹ほどふらふらと起き上がり、最期の一撃を加えるため、一斉に俺へと飛びかかってくる。
「召喚主ッ!」
それを間一髪で防いだのは『地獄骸』。
だがその隙を突いて、アーガルトは剣を抜き、満身創痍の身体で俺へと突進してきた。
「おおおおおおおおおッ!! お前だけでも――死ねッ!!」
アーガルトが『地獄骸』の横をすり抜ける。咄嗟に振り向いた『地獄骸』は叫ぶ。
「召喚主! これを!」
そう言って、彼は八本の腕に持った剣の一つを、俺に向かって投げた。
アーガルトが俺に到達するその数瞬前に、その剣は俺の手にわたる。
そして俺は、傷を負った身体で駆けてくるアーガルトのことを、彼の銀色の鎧の上から激しく叩き斬った。
「うぐぅ……ぁああ……」
その場に崩れ落ちていくのは、フェガジア・アーガルト。
彼の信じられないという瞳を一瞥して、俺は呟く。
「対話を拒むからこうなるんだ」
そうして、村の人々の無事を確かめるため振り返った俺の耳に、背後でフェガジア・アーガルトが地面に倒れ込む音が聞こえた。
だが、こちらのアンデッドたちは何も考えなしに相手を蹂躙しているわけではない。
少しずつ、少しずつ、兵士たちを村から追い出す形で攻撃を加えていた。
おかげで、村人たちの安全は守られた。
現在、村人たちはアリカが連れている牛たちに護衛されているし、もう心配はないだろう。
「な、なんでだよ……! 敵に召喚モンスター? ありえない! クソが!」
フェガジア・アーガルトは散り散りになって敗走していく兵士たちを見ながら、顔を醜く歪めて悪態を吐く。
しかし、本人は一切その場から動こうとしなかった。
逃げることも、戦うこともしようとしない。
だから、俺は戦意を失った彼のことを不審に思いながらも後回しにして、周囲のアンデッドたちに指示を出していたのだが。
それがこの戦いにおいて、唯一の失敗だった。
相手は文字召喚術を使える騎士。
召喚術師相手のちゃんとした実戦が初めてだった俺は知らなかったのだ。
戦闘において、文字召喚術師が行う代表的な行為。
それが――顕現待ちの時間稼ぎだということを。
フェガジア・アーガルトの口元がぐしゃりと持ち上がった。
俺から見えないように隠していた彼の右手には、魔法記述具である万年筆があった。
そして青く光る文字が刻まれ、宙に浮かんでいるのは、同じく魔法記述具である羊皮紙。
やられた。アーガルトは文字召喚を起動していたのだ。
「ふははははははッ!! 一体、何人がかりでこんな数のアンデッドを召喚したのかは知らないが、指揮を執っているのがこんな素人だとはなッ! お前がオレ様を見逃した七分間ッ! それだけあれば、俺の身を守るモンスターくらい召喚できるッ! 何せ、オレ様は帝国の誉れ高き召喚騎士であるのだからッ!」
アーガルトの哄笑と共に、彼の背後の空間が歪曲して、円形の暗い穴が開く。
その穴から鉄骨よりも太い、巨大な青色の右腕が勢いよく突き出した。
巨人のものと言われて納得できるようなその腕はアーガルトの身体を包み込む。
「あ、あれは……省略召喚です! モンスターの身体の一部だけを優先的に顕現させることで、召喚時間を短縮できる秘法ですよ! だとしても、たった七分であんな凶悪なものを召喚するなんて……。気をつけてください、シュウトさん!」
俺の後方、見守る村人たちの中から、レーナが忠告をくれる。
なるほど、省略召喚。そんなこともできるのか。と感心しつつ、俺は巨人の腕を眺める。
硬質な筋肉に覆われた巨人の右腕を傷つけるのはなかなか大変そうだ。どうしたものか。
そんな時、ある声が俺の耳に届いた。
「――え? ああ、そうなの? じゃあ、お願い」
「はははははッ!! この『海王ガルゴーム』の右腕は低級なモンスターの攻撃など弾く! まずは守りだ……そしてこの後、二時間をかけて『海王ガルゴーム』の全身をじっくり召喚してやる! その時がお前たちの――」
アーガルトの言葉は最後まで終わらなかった。
彼の優越の叫びの途中、『海王ガルゴーム』の右腕および歪曲空間に対し、天から放たれた凄まじい裁きの稲妻が直撃したのだ。
一瞬、村全体が激しい発光に包まれ、次の瞬間、大爆発を起こした。
地面がめくれ、『海王ガルゴーム』の右腕は瞬時に蒸発する。歪曲空間はその形を保っていられず、元の空間に戻った。
「ぐああああああああああああああッ!!!」
激しい衝撃を受けたアーガルトは地面に叩きつけられ、その痛みに絶叫する。
しかし、不思議と俺や村人たち、また村への被害はゼロだった。
そんなことを可能にするのは、天に坐す神秘の翼の聖なる光だけだ。
『――召喚主。ギルダム自治区全体を守護領域として設定。敵性存在の排除を確認。以後、ギルダム自治区全体を拠点として守護致します』
俺の頭の中に響く声は、『拠点を守護する天使翼』のものだった。
俺がどうやって巨人の腕を排除するか悩んでいたあの瞬間、『天使翼』の方から、拠点情報のアップデートを提言されたのだ。
ギルダム自治区は拠点登録されていない、もし拠点登録するのであれば、暗黒城上空からの精密攻撃が可能である、と。
こうして、この結果が目の前に導かれた。
アーガルトへの直撃は避けてもらい、あくまでモンスターの排除を頼んだため、彼自身はまだ辛うじて動くことができた。
恨めしい視線で俺を睨み、彼はよろよろと立ち上がる。
「くそが……くそがぁぁぁ!!!」
彼は最後の抵抗のつもりか、もう一度強く指を鳴らした。
すると、周囲に倒れていた同じく瀕死の鳥人たちが三匹ほどふらふらと起き上がり、最期の一撃を加えるため、一斉に俺へと飛びかかってくる。
「召喚主ッ!」
それを間一髪で防いだのは『地獄骸』。
だがその隙を突いて、アーガルトは剣を抜き、満身創痍の身体で俺へと突進してきた。
「おおおおおおおおおッ!! お前だけでも――死ねッ!!」
アーガルトが『地獄骸』の横をすり抜ける。咄嗟に振り向いた『地獄骸』は叫ぶ。
「召喚主! これを!」
そう言って、彼は八本の腕に持った剣の一つを、俺に向かって投げた。
アーガルトが俺に到達するその数瞬前に、その剣は俺の手にわたる。
そして俺は、傷を負った身体で駆けてくるアーガルトのことを、彼の銀色の鎧の上から激しく叩き斬った。
「うぐぅ……ぁああ……」
その場に崩れ落ちていくのは、フェガジア・アーガルト。
彼の信じられないという瞳を一瞥して、俺は呟く。
「対話を拒むからこうなるんだ」
そうして、村の人々の無事を確かめるため振り返った俺の耳に、背後でフェガジア・アーガルトが地面に倒れ込む音が聞こえた。
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