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第19話 主の意思を汲む、素晴らしい配下たち
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ギルダム中央村を襲った帝国兵たちは、すでに村から姿を消していた。
フェガジア・アーガルトを指揮官とした帝国兵は、意識を失ったアーガルトや負傷した兵を担いで敗走。
平和を取り戻した村の中央広場にて、俺たちは戦後会議を行っていた。
120体のアンデッド、アリカの牛たち、そして我が愛弟子レーナ、アリカと村人たち。彼らは帝国兵撃退の功績者ということになった俺を前にして、言葉を待つ。
俺は皆の前に立ち、そして、アンデッドたちに向かってしみじみと呟く。
「……お前たちは本当にいい配下だな」
先程まで獰猛な気配を隠そうともしなかったアンデッドたちは、全員がにっこにこの笑顔で俺を見ていた。
普通に敵の返り血とかついてるから逆に怖いわ、と思いつつも、彼らの戦果を考えると、今日ばかりはツッコむのをやめようと思う。
俺の言う彼らの戦果とは、帝国兵を追い払ったことではない。
もう一歩踏み込んだもの。
俺は村の内部をじっと見回した。
血痕は多々確認できる。だが、道に転がっている帝国の負傷兵などは見つけられない。
そう、あれだけの地獄絵図の中、自分たちの力で逃げられない程の負傷を負った者は、敵味方両方合わせてもいなかった。
それこそが最大の戦果。
「俺は今回、敢えて言わなかった。傷つけろとは言ったが、相手の生死に関しては言及しなかったんだ」
それは、手加減をしても勝てる相手なのかがわからなかったからだ。
だから俺は、いつもなら必ず命令する「殺すな」という言葉を使わなかった。
それなのに。
「だけど、お前たちは自分たちで判断してくれたんだな」
俺はアンデッドたちと視線を交わす。初めは怖いと思っていた彼ら。
だが、彼らは俺に忠誠を誓っており、そしてついには、俺の言外の意思も汲んでくれた。
だから、認めよう。
俺は彼らの主になりたいと思った。
今までは、俺の後ろをついてくるから成り行きで共に行動していたアンデッドたち。
彼らの本物の、主に。
「今、ここに明言するよ。お前たちは俺の大切な配下だ。そして――俺はお前たちの主だ」
アンデッドたちは一瞬、沈黙を貫いた後。
全員が村を揺らすほどの大歓声を上げた。
せっかく、警戒を解き始めていた村人たちが一斉に耳を塞いで、アンデッドたちから離れる。
しかし、それでもアンデッドたちの歓喜の声は収まらない。
あーあ……またアンデッドと村人の間に溝が……と、これからどう取り繕うかを考えて頭を悩ます。
だが、今日くらいはいいだろう。
恐らくあとで振り返れば、今日はオレとアンデッドたちにとって、特別な一日になる。
そんな時に水を差すというのは、野暮というものだった。
「シュウトさま~~! 魔王就任おめでとうございまーす!」
アーガルトにやられた箇所も軽傷で、すっかり元気を取り戻したレーナがまた余計なことを言った。
「だから、魔王じゃないって!」
「え? 120体のアンデッドを率いている人が魔王じゃなきゃなんなんですか?」
急に真顔になった彼女にそう質問を返されると、返答に詰まる。
「……確かに」
ぞろぞろと大量のアンデッドを従えて闊歩する人間は、どう考えても一般人ではない。
え、もしかして、俺はもう魔王なんですかね……?
「魔王……?」、「あの人、魔王らしいよ」と今度は村人の間でひそひそ話が始ま
る。
マジで勘弁して、お願い。
俺は咳払いをしてから、今度は村人たちに向き直る。
彼らにも今後のことを伝えておかなければならない。
「ええと、俺はシュウトといいます。魔王じゃありません。あの丘の上にある暗黒城に住んでいる者です」
「丘の上だって……」、「あの骨で出来てるっていう城の?」、「やっぱ魔王じゃん……」とひそひそ話は最初の結論に戻る。
あーこれ、もうダメかもしれないわ。
「……とにかく、俺は敵じゃありません。それに無益な殺生も好みません。今日は敵から攻撃されたため、止むを得ませんでしたが、死者はゼロという結果を見て頂ければわかるはずです」
村人たちは複雑そうな顔で俺のことを見ていた。
助かって安堵したような、血を見て恐怖しているような。
彼らの気持ちはわかる。
俺だって、心の内がもやもやとして釈然としない。
事実、血は流れているのだ。
状況の推移をまだ理解できない子供たちはそれだけで怖がってしまうし、俺もまた、別の解決方法があったんじゃないかと思ってしまう。
だけど、この結果を否定しても仕方がないのだ。
これが今の俺たちの実力。もっと力をつけていけば、何か違う道が見えるかもしれない。
「辺境自治区であるギルダムは今後、帝国と王国、両国の板挟みになることでしょう。フェガジア・アーガルトは自分の部隊を帝国の侵略先遣隊と言っていた。つまり、これから帝国による本格的な侵略が始まる。そして、王国も黙ってはいないでしょう」
その言葉に村人たちは不安の色を隠さず、顔に出した。
あまりにも強大な力の前に、抵抗する術を持たない彼ら。
だが、彼らには今、俺という使えるカードがある。
だから、俺は彼らに向かって言う。
できるだけ優しく、怖がらせないように。
「安心してください。俺が力を貸します。この地を誰にも負けない最強の独立区にして見せます。最強で、そして、人々に優しい独立区に」
その宣言に、村人たちはまばらな拍手で応える。そして、その音はだんだんと大きくなっていった。
今はまだ複雑な気持ちを抱いたままでいい。だけど、誰かが守る術を持たなくてはならない。
それなら、俺がその役を担おう。
だって、俺はアンデッドを率いる――『魔王』なのだから。
フェガジア・アーガルトを指揮官とした帝国兵は、意識を失ったアーガルトや負傷した兵を担いで敗走。
平和を取り戻した村の中央広場にて、俺たちは戦後会議を行っていた。
120体のアンデッド、アリカの牛たち、そして我が愛弟子レーナ、アリカと村人たち。彼らは帝国兵撃退の功績者ということになった俺を前にして、言葉を待つ。
俺は皆の前に立ち、そして、アンデッドたちに向かってしみじみと呟く。
「……お前たちは本当にいい配下だな」
先程まで獰猛な気配を隠そうともしなかったアンデッドたちは、全員がにっこにこの笑顔で俺を見ていた。
普通に敵の返り血とかついてるから逆に怖いわ、と思いつつも、彼らの戦果を考えると、今日ばかりはツッコむのをやめようと思う。
俺の言う彼らの戦果とは、帝国兵を追い払ったことではない。
もう一歩踏み込んだもの。
俺は村の内部をじっと見回した。
血痕は多々確認できる。だが、道に転がっている帝国の負傷兵などは見つけられない。
そう、あれだけの地獄絵図の中、自分たちの力で逃げられない程の負傷を負った者は、敵味方両方合わせてもいなかった。
それこそが最大の戦果。
「俺は今回、敢えて言わなかった。傷つけろとは言ったが、相手の生死に関しては言及しなかったんだ」
それは、手加減をしても勝てる相手なのかがわからなかったからだ。
だから俺は、いつもなら必ず命令する「殺すな」という言葉を使わなかった。
それなのに。
「だけど、お前たちは自分たちで判断してくれたんだな」
俺はアンデッドたちと視線を交わす。初めは怖いと思っていた彼ら。
だが、彼らは俺に忠誠を誓っており、そしてついには、俺の言外の意思も汲んでくれた。
だから、認めよう。
俺は彼らの主になりたいと思った。
今までは、俺の後ろをついてくるから成り行きで共に行動していたアンデッドたち。
彼らの本物の、主に。
「今、ここに明言するよ。お前たちは俺の大切な配下だ。そして――俺はお前たちの主だ」
アンデッドたちは一瞬、沈黙を貫いた後。
全員が村を揺らすほどの大歓声を上げた。
せっかく、警戒を解き始めていた村人たちが一斉に耳を塞いで、アンデッドたちから離れる。
しかし、それでもアンデッドたちの歓喜の声は収まらない。
あーあ……またアンデッドと村人の間に溝が……と、これからどう取り繕うかを考えて頭を悩ます。
だが、今日くらいはいいだろう。
恐らくあとで振り返れば、今日はオレとアンデッドたちにとって、特別な一日になる。
そんな時に水を差すというのは、野暮というものだった。
「シュウトさま~~! 魔王就任おめでとうございまーす!」
アーガルトにやられた箇所も軽傷で、すっかり元気を取り戻したレーナがまた余計なことを言った。
「だから、魔王じゃないって!」
「え? 120体のアンデッドを率いている人が魔王じゃなきゃなんなんですか?」
急に真顔になった彼女にそう質問を返されると、返答に詰まる。
「……確かに」
ぞろぞろと大量のアンデッドを従えて闊歩する人間は、どう考えても一般人ではない。
え、もしかして、俺はもう魔王なんですかね……?
「魔王……?」、「あの人、魔王らしいよ」と今度は村人の間でひそひそ話が始ま
る。
マジで勘弁して、お願い。
俺は咳払いをしてから、今度は村人たちに向き直る。
彼らにも今後のことを伝えておかなければならない。
「ええと、俺はシュウトといいます。魔王じゃありません。あの丘の上にある暗黒城に住んでいる者です」
「丘の上だって……」、「あの骨で出来てるっていう城の?」、「やっぱ魔王じゃん……」とひそひそ話は最初の結論に戻る。
あーこれ、もうダメかもしれないわ。
「……とにかく、俺は敵じゃありません。それに無益な殺生も好みません。今日は敵から攻撃されたため、止むを得ませんでしたが、死者はゼロという結果を見て頂ければわかるはずです」
村人たちは複雑そうな顔で俺のことを見ていた。
助かって安堵したような、血を見て恐怖しているような。
彼らの気持ちはわかる。
俺だって、心の内がもやもやとして釈然としない。
事実、血は流れているのだ。
状況の推移をまだ理解できない子供たちはそれだけで怖がってしまうし、俺もまた、別の解決方法があったんじゃないかと思ってしまう。
だけど、この結果を否定しても仕方がないのだ。
これが今の俺たちの実力。もっと力をつけていけば、何か違う道が見えるかもしれない。
「辺境自治区であるギルダムは今後、帝国と王国、両国の板挟みになることでしょう。フェガジア・アーガルトは自分の部隊を帝国の侵略先遣隊と言っていた。つまり、これから帝国による本格的な侵略が始まる。そして、王国も黙ってはいないでしょう」
その言葉に村人たちは不安の色を隠さず、顔に出した。
あまりにも強大な力の前に、抵抗する術を持たない彼ら。
だが、彼らには今、俺という使えるカードがある。
だから、俺は彼らに向かって言う。
できるだけ優しく、怖がらせないように。
「安心してください。俺が力を貸します。この地を誰にも負けない最強の独立区にして見せます。最強で、そして、人々に優しい独立区に」
その宣言に、村人たちはまばらな拍手で応える。そして、その音はだんだんと大きくなっていった。
今はまだ複雑な気持ちを抱いたままでいい。だけど、誰かが守る術を持たなくてはならない。
それなら、俺がその役を担おう。
だって、俺はアンデッドを率いる――『魔王』なのだから。
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