32 / 86
第32話 剣豪―三刀―
しおりを挟む
銀色の鎧に身を包み、頭全体を覆う鉄製の兜を装着し、両手で大きな刀を握った武者のような外見。
それが闇から現れた敵の正体だった。
体格は一般的な人間と同じ。これなら空いた穴も容易く通り抜けられるだろう。
だが、不思議とその中身が人間でないことは感じられた。
相手は兜の前面、横に細長く入れられた隙間から視界を得ているようで、顔面は確認できない。
だが、敵が纏う雰囲気は明らかに化け物のそれだ。
敵の外見で一番目を引いたのは、鎧でも手に握られた得物でもなかった。
それは、その両脇に浮遊する二本の日本刀擬きだ。
常にくるくると落ち着きなく縦横関係なく回転を続け、まるで獲物を探し続けているかのようだ。
そのうちの一本は先ほど、オルビークを狙ったものである。
「魔刀使いですな……」
『地獄骸』が険しい表情を浮かべて言う。
「魔刀……?」
「魔力を与えられ、完全に自立して動く刀のことです。奴は一人ではありますが、三人分の頭脳が存在すると思った方が良いでしょう」
ガシャン、ガシャン、と、銀色の鎧は空洞内の光を反射して、こちらとの距離を詰めてくる。
俺の後方にいたオルビークはその姿を注視し、やがて何かを思い出したように、苦々しげに呟いた。
「……『グラウンドイーター』に乗っていた時は距離があったせいで、鎧を着たモンスターとしか認識できておらんかったが……最悪じゃ。わらわはあれの正体に心当たりがあるぞ」
「知っているのか? あれを」
「ああ……『剣豪―三刀―』と呼ばれる――召喚モンスターじゃよ」
「召喚モンスター? 誰があんなものを?」
禍々しい気を放った『剣豪―三刀―』は明確な殺意を持って、得物を構えている。
あんなに憎しみに染まったモンスターを、俺は今まで見たことがない。
オルビークは『剣豪―三刀―』を鋭く睨みながら呟く。
「帝国じゃよ。わらわたちが生まれるよりも前、遥かなる過去の時代に召喚され、帝国を守り続けてきた伝説的存在じゃ。あらゆる戦場に現れ、敵を滅す。民衆の畏怖の対象……」
オルビークの言葉で、俺は気付く。
召喚モンスターは食事を取らない。寿命もない。
だから、何らかの手段で命を奪われる以外、消滅する方法はないのだ。
ということは、遥か昔からずっと存在し続けることも可能。
誰にも敗北しない、周囲に畏怖を抱かせるほどの力の持ち主であるならば。
長い月日を生き抜いてきたという事は、それそのものが『剣豪―三刀―』の驚異的な強さを証明する。
銀色鎧のモンスターは一切の感情を表さず、一定の速度で近づいてくる。
今回はさすがに対話を持ちかけるつもりはなかった。すでに重傷者が出ているし、相手に会話をする知能があるかどうかも怪しい。
「――どうしますか、召喚主」
『地獄骸』は八つの腕に、すでに剣を顕現させていた。
いつでも攻撃できる準備を整え、俺の指示を待っている。
「今回は、対話の試みはなしだ。相手は召喚モンスター、本気でやって構わない」
「了解しました。では、私が先陣を切りましょう」
戦闘の必勝法。それは相手が反応する前に先制攻撃をすることだ。
『地獄骸』は地面を強く踏み込むと、次の瞬間、高速で『剣豪―三刀―』までの距離を詰めた。
右側三本目の手に握った剣を大きく横に振り、下段から上段へと切り上げる。
しかし、『剣豪―三刀―』は微塵も反応しなかった。
代わりに、空中を舞っていた日本刀のうちの一本が『地獄骸』の剣戟を食い止め、受け流す。
『地獄骸』はすぐさま、左側の四本の腕を同時に使って、四方向からの追加剣撃を加える。
だが、『剣豪―三刀―』は身を躱すことで一本、浮遊魔刀で二本、自身が手に持った大きな太刀で一本。四本全ての攻撃を防いだ。
「ふん、私の攻撃を全て防ぐか。その禍々しい気配は紛い物ではないということだな」
『地獄骸』の言葉に、『剣豪―三刀―』は応答する様子を見せなかった。
というよりも、反応すらない。やはり、敵に会話能力は備わっていないようだ。
ただ、目の前の敵を討つ。
その目的で召喚された殺戮兵器ということだろう。
今度は、『剣豪―三刀―』が動いた。
銀色の鎧を怪しく輝かせ、足を大きく踏み込むと、その両手に握った大きな太刀で『地獄骸』に切りかかる。
「ぬっ……!」
『地獄骸』はそれを正面から受け止めるが、敵の腕力が予想以上に強かったのか、両足が一瞬、大きく折れる。
その隙を突くように、魔刀が『地獄骸』の頭上から襲いかかった。
「上だッ!」
俺は鋭く叫んだが、『地獄骸』の反応は間に合わない。
『地獄骸』めがけて、直進する魔刀。
だが、その攻撃が『地獄骸』に当たる直前、今度は撃ち出された拳大の火炎球が魔刀に直撃し、その軌道を大きく変える。
火炎球で『地獄骸』を助けた人物。
それは、魔術師レアナ・オルビークだった。
彼女はツインテールにした長い髪を揺らす。
「これで借りは返したぞ、アンデッド」
周囲に多数の火炎球を発生させながら、彼女はそう言って腕組みをした。
それが闇から現れた敵の正体だった。
体格は一般的な人間と同じ。これなら空いた穴も容易く通り抜けられるだろう。
だが、不思議とその中身が人間でないことは感じられた。
相手は兜の前面、横に細長く入れられた隙間から視界を得ているようで、顔面は確認できない。
だが、敵が纏う雰囲気は明らかに化け物のそれだ。
敵の外見で一番目を引いたのは、鎧でも手に握られた得物でもなかった。
それは、その両脇に浮遊する二本の日本刀擬きだ。
常にくるくると落ち着きなく縦横関係なく回転を続け、まるで獲物を探し続けているかのようだ。
そのうちの一本は先ほど、オルビークを狙ったものである。
「魔刀使いですな……」
『地獄骸』が険しい表情を浮かべて言う。
「魔刀……?」
「魔力を与えられ、完全に自立して動く刀のことです。奴は一人ではありますが、三人分の頭脳が存在すると思った方が良いでしょう」
ガシャン、ガシャン、と、銀色の鎧は空洞内の光を反射して、こちらとの距離を詰めてくる。
俺の後方にいたオルビークはその姿を注視し、やがて何かを思い出したように、苦々しげに呟いた。
「……『グラウンドイーター』に乗っていた時は距離があったせいで、鎧を着たモンスターとしか認識できておらんかったが……最悪じゃ。わらわはあれの正体に心当たりがあるぞ」
「知っているのか? あれを」
「ああ……『剣豪―三刀―』と呼ばれる――召喚モンスターじゃよ」
「召喚モンスター? 誰があんなものを?」
禍々しい気を放った『剣豪―三刀―』は明確な殺意を持って、得物を構えている。
あんなに憎しみに染まったモンスターを、俺は今まで見たことがない。
オルビークは『剣豪―三刀―』を鋭く睨みながら呟く。
「帝国じゃよ。わらわたちが生まれるよりも前、遥かなる過去の時代に召喚され、帝国を守り続けてきた伝説的存在じゃ。あらゆる戦場に現れ、敵を滅す。民衆の畏怖の対象……」
オルビークの言葉で、俺は気付く。
召喚モンスターは食事を取らない。寿命もない。
だから、何らかの手段で命を奪われる以外、消滅する方法はないのだ。
ということは、遥か昔からずっと存在し続けることも可能。
誰にも敗北しない、周囲に畏怖を抱かせるほどの力の持ち主であるならば。
長い月日を生き抜いてきたという事は、それそのものが『剣豪―三刀―』の驚異的な強さを証明する。
銀色鎧のモンスターは一切の感情を表さず、一定の速度で近づいてくる。
今回はさすがに対話を持ちかけるつもりはなかった。すでに重傷者が出ているし、相手に会話をする知能があるかどうかも怪しい。
「――どうしますか、召喚主」
『地獄骸』は八つの腕に、すでに剣を顕現させていた。
いつでも攻撃できる準備を整え、俺の指示を待っている。
「今回は、対話の試みはなしだ。相手は召喚モンスター、本気でやって構わない」
「了解しました。では、私が先陣を切りましょう」
戦闘の必勝法。それは相手が反応する前に先制攻撃をすることだ。
『地獄骸』は地面を強く踏み込むと、次の瞬間、高速で『剣豪―三刀―』までの距離を詰めた。
右側三本目の手に握った剣を大きく横に振り、下段から上段へと切り上げる。
しかし、『剣豪―三刀―』は微塵も反応しなかった。
代わりに、空中を舞っていた日本刀のうちの一本が『地獄骸』の剣戟を食い止め、受け流す。
『地獄骸』はすぐさま、左側の四本の腕を同時に使って、四方向からの追加剣撃を加える。
だが、『剣豪―三刀―』は身を躱すことで一本、浮遊魔刀で二本、自身が手に持った大きな太刀で一本。四本全ての攻撃を防いだ。
「ふん、私の攻撃を全て防ぐか。その禍々しい気配は紛い物ではないということだな」
『地獄骸』の言葉に、『剣豪―三刀―』は応答する様子を見せなかった。
というよりも、反応すらない。やはり、敵に会話能力は備わっていないようだ。
ただ、目の前の敵を討つ。
その目的で召喚された殺戮兵器ということだろう。
今度は、『剣豪―三刀―』が動いた。
銀色の鎧を怪しく輝かせ、足を大きく踏み込むと、その両手に握った大きな太刀で『地獄骸』に切りかかる。
「ぬっ……!」
『地獄骸』はそれを正面から受け止めるが、敵の腕力が予想以上に強かったのか、両足が一瞬、大きく折れる。
その隙を突くように、魔刀が『地獄骸』の頭上から襲いかかった。
「上だッ!」
俺は鋭く叫んだが、『地獄骸』の反応は間に合わない。
『地獄骸』めがけて、直進する魔刀。
だが、その攻撃が『地獄骸』に当たる直前、今度は撃ち出された拳大の火炎球が魔刀に直撃し、その軌道を大きく変える。
火炎球で『地獄骸』を助けた人物。
それは、魔術師レアナ・オルビークだった。
彼女はツインテールにした長い髪を揺らす。
「これで借りは返したぞ、アンデッド」
周囲に多数の火炎球を発生させながら、彼女はそう言って腕組みをした。
0
あなたにおすすめの小説
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる