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第34話 戦闘激化
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燭台の光が届かない天井付近で、壁の隅で、その他至る所で、薄闇が静かに、そして素早く形を変えていく。
そうして、周囲の薄闇が全て矢の形へと変わった。
「――消えろ」
それは『地獄暴食』の汚い声とは違い、凛々しく、空間を震わせる声色。
オルビークよりもさらに後方の壁にもたれて、冷酷な指示を出したのは『地獄骸』の左を守る者、『地獄の射手』だった。
黒いマントに身を包み、顔立ちは非常に整っていて、人間と区別がつかない。
その黒髪は長く、目元まで垂れてきている。
そんな『地獄射手』の一言によって、全ての薄闇の矢は『剣豪―三刀―』の方に向き、そして一斉に高速で放たれた。
数十本を超える矢が『剣豪―三刀―』に襲い掛かる。
逃げ道はない。『剣豪―三刀―』の前方、頭上、そして後方の全てから矢は迫っていく。
銀色の鎧に矢の一本が衝突し、激しく弾かれる。
だが一本だけなら防ぐことのできる矢も、数が増えれば話は別だ。
さらに際限なく薄闇から生成されていく矢の数を見て、さすがの『剣豪―三刀―』も少しの動揺を見せた。
周囲の矢を三本の刀で叩き落としながら、『剣豪―三刀―』は後退していく。
だが、それを見逃す『地獄骸』たちではない。
「ど~こ! 行くつもりなのかな~~!」
一瞬、矢の雨が止んだ瞬間をついて、『地獄暴食』が正面から猛スピードで『剣豪―三刀―』に体当たりを加える。
銀色の鎧はその衝撃に耐えきれず、大きく後方へ吹き飛ばされた。
そのまま、地面に仰向けに倒れ込む『剣豪―三刀―』。
しかし、追撃は終わらない。
「さあ、終わりにしようか! 太古から生きる武人よッ!」
『地獄暴食』の巨体、それを背中側から駆け上り、頭上を越えて空中へと跳んだのは、『地獄骸』だった。
華麗に体勢を整え、倒れた『剣豪―三刀―』の喉元めがけて、八つの得物を振り下ろす。
しかし、直前で魔刀二本によって大きく弾かれた『地獄骸』は、体勢を崩して地面に着地。
すぐさま『剣豪―三刀―』を追撃しようとするが、銀色の鎧ははるか後方へと戦線を離脱する。
「ちっ! 『剣豪―三刀―』はあのまま外まで逃げる気だ! 追え!」
意図に気付いた俺が指示を出すが、すでに遅かった。
薄墨の矢が追いかけるが、魔刀によって防がれてしまう。
そうして、『剣豪―三刀―』は遠くに見える魔法石壁に空いた穴から外へと脱出した。
「逃げられたか……」
俺が苦い声で呟くと、背後からパチパチと手を叩く音が聞こえた。振り返ると、そこにはオルビークが立っている。
「……まさか顕現待ちのない文字召喚術とはな。お主らが高潔な魔術師を打ち倒せると自身の力を過信したことも、あながち根拠のない話ではないようじゃ。もちろん、正面から戦えば、魔術師の方が強いがな!」
そうやってオルビークは強がって見せるが、その瞳には驚愕の色が浮かんでいた。
顕現待ちなしの文字召喚。
それが魔術師の地位を脅かすものなのかどうか、判断しかねているようだ。
だが、今は緊急時、細かい議論をしている場合ではないという考えに至ったようで、オルビークは咳払いをして場を仕切り直す。
「お主、このまま『剣豪―三刀―』を追うつもりか?」
「もちろんだ。実際に被害者も出てる。ここで倒すことを断念するわけにはいかない」
「外には巨大な『グラウンドイーター』もいるのじゃぞ?」
「必要ならば、状況に応じて、こちらも新しいモンスターを召喚するだけだ」
そう答えると、オルビークは苦笑気味に顔を歪める。
「状況に応じてモンスターを召喚、か。魔術師の身としては脅威を感じる言葉じゃな。じゃが、この場では頼もしい限りじゃ。よかろう、わらわも引き続き同行する。周囲の闇はわらわが打ち払ってやろう。お主らの全力を見せてくれ」
「ああ」
俺は力強く頷いた。
「シュウトさま~~~!」
後方、村の方角から声が聞こえた。レーナの声だ。
『魔地馬』が馬車を曳く音も聞こえる。
俺たちのもとで停止したのは、『魔地馬』と馬車に乗っているレーナたち、そして見たことのない小型の獣型モンスターだった。
大きな耳の生えた愛らしい小動物的な見た目である。
それは数匹、馬車から降りてくると、負傷者の方へと一直線に走っていった。
「あの子たちは治療用の召喚モンスターです。まだ息がある人なら助かるはずですよ!」
レーナは馬車から降りると、村から持ってきた薬品を荷台から下ろす。
「治療はこの場所で行います。馬車はシュウトさんたちが使ってください。まだ、敵を倒せていないのでしょう?」
アリカも大量の包帯を抱えて、馬車から飛び降りてきた。
俺は彼女らに礼を言ってから、オルビークや『地獄骸』たちに馬車へ乗り込むように指示を出す。『地獄暴食』は大きすぎるため、徒歩での同行だ。
「いや~! これから勝負って感じがしていいねえ! 旦那ぁ、今度は俺様にも砲撃させてくれよな!」
馬車の屋根では『邪神砲』が戦闘を前にうずうずしているようだ。
「ああ、相手はドでかい化け物だ。一発、激しいヤツをくれてやれ」
「イエッサ―――!」
こうして、戦闘準備は整った。
『魔地馬』、『邪神砲』、俺、オルビーク、『地獄骸』、『地獄暴食』、『地獄射手』。戦力も随分と増えた。これなら十分戦える。
さあ、化け物狩りに出かけよう。
そうして、周囲の薄闇が全て矢の形へと変わった。
「――消えろ」
それは『地獄暴食』の汚い声とは違い、凛々しく、空間を震わせる声色。
オルビークよりもさらに後方の壁にもたれて、冷酷な指示を出したのは『地獄骸』の左を守る者、『地獄の射手』だった。
黒いマントに身を包み、顔立ちは非常に整っていて、人間と区別がつかない。
その黒髪は長く、目元まで垂れてきている。
そんな『地獄射手』の一言によって、全ての薄闇の矢は『剣豪―三刀―』の方に向き、そして一斉に高速で放たれた。
数十本を超える矢が『剣豪―三刀―』に襲い掛かる。
逃げ道はない。『剣豪―三刀―』の前方、頭上、そして後方の全てから矢は迫っていく。
銀色の鎧に矢の一本が衝突し、激しく弾かれる。
だが一本だけなら防ぐことのできる矢も、数が増えれば話は別だ。
さらに際限なく薄闇から生成されていく矢の数を見て、さすがの『剣豪―三刀―』も少しの動揺を見せた。
周囲の矢を三本の刀で叩き落としながら、『剣豪―三刀―』は後退していく。
だが、それを見逃す『地獄骸』たちではない。
「ど~こ! 行くつもりなのかな~~!」
一瞬、矢の雨が止んだ瞬間をついて、『地獄暴食』が正面から猛スピードで『剣豪―三刀―』に体当たりを加える。
銀色の鎧はその衝撃に耐えきれず、大きく後方へ吹き飛ばされた。
そのまま、地面に仰向けに倒れ込む『剣豪―三刀―』。
しかし、追撃は終わらない。
「さあ、終わりにしようか! 太古から生きる武人よッ!」
『地獄暴食』の巨体、それを背中側から駆け上り、頭上を越えて空中へと跳んだのは、『地獄骸』だった。
華麗に体勢を整え、倒れた『剣豪―三刀―』の喉元めがけて、八つの得物を振り下ろす。
しかし、直前で魔刀二本によって大きく弾かれた『地獄骸』は、体勢を崩して地面に着地。
すぐさま『剣豪―三刀―』を追撃しようとするが、銀色の鎧ははるか後方へと戦線を離脱する。
「ちっ! 『剣豪―三刀―』はあのまま外まで逃げる気だ! 追え!」
意図に気付いた俺が指示を出すが、すでに遅かった。
薄墨の矢が追いかけるが、魔刀によって防がれてしまう。
そうして、『剣豪―三刀―』は遠くに見える魔法石壁に空いた穴から外へと脱出した。
「逃げられたか……」
俺が苦い声で呟くと、背後からパチパチと手を叩く音が聞こえた。振り返ると、そこにはオルビークが立っている。
「……まさか顕現待ちのない文字召喚術とはな。お主らが高潔な魔術師を打ち倒せると自身の力を過信したことも、あながち根拠のない話ではないようじゃ。もちろん、正面から戦えば、魔術師の方が強いがな!」
そうやってオルビークは強がって見せるが、その瞳には驚愕の色が浮かんでいた。
顕現待ちなしの文字召喚。
それが魔術師の地位を脅かすものなのかどうか、判断しかねているようだ。
だが、今は緊急時、細かい議論をしている場合ではないという考えに至ったようで、オルビークは咳払いをして場を仕切り直す。
「お主、このまま『剣豪―三刀―』を追うつもりか?」
「もちろんだ。実際に被害者も出てる。ここで倒すことを断念するわけにはいかない」
「外には巨大な『グラウンドイーター』もいるのじゃぞ?」
「必要ならば、状況に応じて、こちらも新しいモンスターを召喚するだけだ」
そう答えると、オルビークは苦笑気味に顔を歪める。
「状況に応じてモンスターを召喚、か。魔術師の身としては脅威を感じる言葉じゃな。じゃが、この場では頼もしい限りじゃ。よかろう、わらわも引き続き同行する。周囲の闇はわらわが打ち払ってやろう。お主らの全力を見せてくれ」
「ああ」
俺は力強く頷いた。
「シュウトさま~~~!」
後方、村の方角から声が聞こえた。レーナの声だ。
『魔地馬』が馬車を曳く音も聞こえる。
俺たちのもとで停止したのは、『魔地馬』と馬車に乗っているレーナたち、そして見たことのない小型の獣型モンスターだった。
大きな耳の生えた愛らしい小動物的な見た目である。
それは数匹、馬車から降りてくると、負傷者の方へと一直線に走っていった。
「あの子たちは治療用の召喚モンスターです。まだ息がある人なら助かるはずですよ!」
レーナは馬車から降りると、村から持ってきた薬品を荷台から下ろす。
「治療はこの場所で行います。馬車はシュウトさんたちが使ってください。まだ、敵を倒せていないのでしょう?」
アリカも大量の包帯を抱えて、馬車から飛び降りてきた。
俺は彼女らに礼を言ってから、オルビークや『地獄骸』たちに馬車へ乗り込むように指示を出す。『地獄暴食』は大きすぎるため、徒歩での同行だ。
「いや~! これから勝負って感じがしていいねえ! 旦那ぁ、今度は俺様にも砲撃させてくれよな!」
馬車の屋根では『邪神砲』が戦闘を前にうずうずしているようだ。
「ああ、相手はドでかい化け物だ。一発、激しいヤツをくれてやれ」
「イエッサ―――!」
こうして、戦闘準備は整った。
『魔地馬』、『邪神砲』、俺、オルビーク、『地獄骸』、『地獄暴食』、『地獄射手』。戦力も随分と増えた。これなら十分戦える。
さあ、化け物狩りに出かけよう。
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