39 / 86
第39話 逆転
しおりを挟む
『剣豪―三刀―』が『グラウンドイーター』の背中に突き立てた刃の傷。
その場所を中心に、白色の魔法陣のようなものが展開されていた。
恐らく、強制的に命令を聞かせる魔術の一種だ。
『グラウンドイーター』はその魔法陣に動くことを強制されたように、急に目を血走らせて、暴走を始めた。
『地獄暴食』と『剣豪―三刀―』が睨み合う中、俺たちは激しく上下左右する揺れる背中の上でバランスを大きく崩す。
「『地獄射手』をやったのはお前だな?」
『地獄暴食』は激しい揺れの中でも、その巨体によって体勢を維持し、『剣豪―三刀―』にドスの効いた声で訊ねる。
『剣豪―三刀―』もまた体勢を崩すことはなかった。
敵は『グラウンドイーター』の主であるのだ。鎧に何らかの魔術的な仕掛けが施されているといったところだろう。
『剣豪―三刀―』は『地獄紡織』の問いかけに何の反応もしない。
『地獄暴食』の厚い贅肉に大太刀が通らないということを確認した『剣豪―三刀―』は一度後退しようとするが、
「お前だなッ!?」
『地獄暴食』が痺れを切らして繰り出した右拳の一撃が、『剣豪―三刀―』を襲った。
二本の魔刀がその拳を強く弾くが、やはり肉を断つまでには至らない。
贅肉の少ない部分を観察した『剣豪―三刀―』は、狙う部位を『地獄暴食』の脚へと切り替えた。胴体部と違い、脚部にはそこまで厚い贅肉がついていない。
そして、魔刀のうちの一本が『地獄暴食』の右腿を捉えた。
「ぐぅぅ……!」
傷は浅いがダメージは確かにあったようで、『地獄暴食』は地面に手をつく。
それとほぼ同時、『グラウンドイーター』が激しく雄叫びを上げ、峡谷の壁に激突した。
「うわあああああああッ!!」
「召喚主ッ!」
俺の身体は容易く吹き飛ばされ、『グラウンドイーター』の背中の端まで転がっていく。危うく転落というところで、『地獄骸』に手を掴まれた。
どうすればいい?
『地獄骸』やオルビークは、この状況の中では満足に動けない。そもそも、平地でも互角の勝負なのだ。
こんな足場の悪い中で戦って勝てるとも思えなかった。
相手に攻撃を加えることができたとしても一撃が限界だ。その一撃で勝負を決めなくてはならない。
そんなことが可能なのだろうか。
今の戦闘で戦力となるのは『地獄骸』、オルビーク、『地獄暴食』の三人だけ。『邪神砲』を使うには距離が近すぎるし、『地獄射手』は瀕死状態だ。
文字召喚を行うにも今日一日の召喚で、クリエイトゲージは消耗している。『剣豪―三刀―』と渡り合えるレベルの強力なモンスターを新たに召喚するには少し足りない。
せめて、あと一人でも多ければ。
そう考えて、俺はあることに気づいた。
そうだ。ここにもう一人、いるじゃないか。
オルビークのような魔術は使えない。『地獄骸』たちのような身体能力は持ち合わせていない。
だから、純粋な戦力としては数えていなかった。だが、相手の動きを鈍らせる働きくらいならできるかもしれない。
――俺が、やるんだ。
俺はふらつく身体を起こして立ち上がる。心配そうに見守る『地獄骸』に対して、しっかりとした笑みを浮かべると俺は言った。
「そろそろ勝負もケリをつける時間だ。このまま戦っていても、個別にやられていくだけ。なら、最後は全員で一点突破の攻撃を仕掛けよう」
俺が前に足を踏み出すと、『地獄骸』は慌てて駆け寄ってくる。
「召喚主も戦いに参加するのですか?」
「ああ。『剣豪―三刀―』は俺を戦力とは見ていない。その油断を利用する」
「で、ですが、それには危険が――」
「危険を顧みていたら、何も始まらないぞ。『地獄骸』」
俺は次第に歩みを速めていく。『グラウンドイーター』の背中の中心では、足を引きずった『地獄暴食』とオルビークがなんとか『剣豪―三刀―』をその場に釘付けにしていた。
崖を削り取るように、轟音を立てながら進む『グラウンドイーター』のおかげで、俺の足音は聞こえない。
だから、俺は全力で駆け出した。
仲間を散々傷つけてくれた『剣豪―三刀―』を打ち倒すために。
「うぉおおおおおおおおッ!!!」
『剣豪―三刀―』の死角から、俺は全力でその懐へと潜り込む。
敵の大太刀はちょうど、『地獄暴食』に向けて振り上げられたところだった。
俺は振り下ろされたその刀の持ち手部分を、両手で押さえ留める。鉄の刀身が目の前まで接近し、冷汗が流れた。
だが、確かに『剣豪―三刀―』の動きが一瞬止まった。
このチャンスを逃してはならない。
魔刀二本がすぐさま反応し、俺を斬り殺そうとする。
俺は叫んだ。
「『地獄暴食』ッ! オルビークッ!」
二人はその意図をすぐに察し、『地獄暴食』は右から迫る魔刀を、オルビークは左から迫る魔刀を、素手と火炎球にて弾き返した。
「『地獄骸』ッ!!! 決めろッ!!!!!」
俺が命令した時にはもう『地獄骸』は跳躍し、『剣豪―三刀―』の背後を取っていた。
全く、本当に俺の意思を汲んでくれる配下である。
そして、『地獄骸』は八つの得物全てに力を込めて。
『剣豪―三刀―』を銀色の鎧ごと、粉砕した。
その場所を中心に、白色の魔法陣のようなものが展開されていた。
恐らく、強制的に命令を聞かせる魔術の一種だ。
『グラウンドイーター』はその魔法陣に動くことを強制されたように、急に目を血走らせて、暴走を始めた。
『地獄暴食』と『剣豪―三刀―』が睨み合う中、俺たちは激しく上下左右する揺れる背中の上でバランスを大きく崩す。
「『地獄射手』をやったのはお前だな?」
『地獄暴食』は激しい揺れの中でも、その巨体によって体勢を維持し、『剣豪―三刀―』にドスの効いた声で訊ねる。
『剣豪―三刀―』もまた体勢を崩すことはなかった。
敵は『グラウンドイーター』の主であるのだ。鎧に何らかの魔術的な仕掛けが施されているといったところだろう。
『剣豪―三刀―』は『地獄紡織』の問いかけに何の反応もしない。
『地獄暴食』の厚い贅肉に大太刀が通らないということを確認した『剣豪―三刀―』は一度後退しようとするが、
「お前だなッ!?」
『地獄暴食』が痺れを切らして繰り出した右拳の一撃が、『剣豪―三刀―』を襲った。
二本の魔刀がその拳を強く弾くが、やはり肉を断つまでには至らない。
贅肉の少ない部分を観察した『剣豪―三刀―』は、狙う部位を『地獄暴食』の脚へと切り替えた。胴体部と違い、脚部にはそこまで厚い贅肉がついていない。
そして、魔刀のうちの一本が『地獄暴食』の右腿を捉えた。
「ぐぅぅ……!」
傷は浅いがダメージは確かにあったようで、『地獄暴食』は地面に手をつく。
それとほぼ同時、『グラウンドイーター』が激しく雄叫びを上げ、峡谷の壁に激突した。
「うわあああああああッ!!」
「召喚主ッ!」
俺の身体は容易く吹き飛ばされ、『グラウンドイーター』の背中の端まで転がっていく。危うく転落というところで、『地獄骸』に手を掴まれた。
どうすればいい?
『地獄骸』やオルビークは、この状況の中では満足に動けない。そもそも、平地でも互角の勝負なのだ。
こんな足場の悪い中で戦って勝てるとも思えなかった。
相手に攻撃を加えることができたとしても一撃が限界だ。その一撃で勝負を決めなくてはならない。
そんなことが可能なのだろうか。
今の戦闘で戦力となるのは『地獄骸』、オルビーク、『地獄暴食』の三人だけ。『邪神砲』を使うには距離が近すぎるし、『地獄射手』は瀕死状態だ。
文字召喚を行うにも今日一日の召喚で、クリエイトゲージは消耗している。『剣豪―三刀―』と渡り合えるレベルの強力なモンスターを新たに召喚するには少し足りない。
せめて、あと一人でも多ければ。
そう考えて、俺はあることに気づいた。
そうだ。ここにもう一人、いるじゃないか。
オルビークのような魔術は使えない。『地獄骸』たちのような身体能力は持ち合わせていない。
だから、純粋な戦力としては数えていなかった。だが、相手の動きを鈍らせる働きくらいならできるかもしれない。
――俺が、やるんだ。
俺はふらつく身体を起こして立ち上がる。心配そうに見守る『地獄骸』に対して、しっかりとした笑みを浮かべると俺は言った。
「そろそろ勝負もケリをつける時間だ。このまま戦っていても、個別にやられていくだけ。なら、最後は全員で一点突破の攻撃を仕掛けよう」
俺が前に足を踏み出すと、『地獄骸』は慌てて駆け寄ってくる。
「召喚主も戦いに参加するのですか?」
「ああ。『剣豪―三刀―』は俺を戦力とは見ていない。その油断を利用する」
「で、ですが、それには危険が――」
「危険を顧みていたら、何も始まらないぞ。『地獄骸』」
俺は次第に歩みを速めていく。『グラウンドイーター』の背中の中心では、足を引きずった『地獄暴食』とオルビークがなんとか『剣豪―三刀―』をその場に釘付けにしていた。
崖を削り取るように、轟音を立てながら進む『グラウンドイーター』のおかげで、俺の足音は聞こえない。
だから、俺は全力で駆け出した。
仲間を散々傷つけてくれた『剣豪―三刀―』を打ち倒すために。
「うぉおおおおおおおおッ!!!」
『剣豪―三刀―』の死角から、俺は全力でその懐へと潜り込む。
敵の大太刀はちょうど、『地獄暴食』に向けて振り上げられたところだった。
俺は振り下ろされたその刀の持ち手部分を、両手で押さえ留める。鉄の刀身が目の前まで接近し、冷汗が流れた。
だが、確かに『剣豪―三刀―』の動きが一瞬止まった。
このチャンスを逃してはならない。
魔刀二本がすぐさま反応し、俺を斬り殺そうとする。
俺は叫んだ。
「『地獄暴食』ッ! オルビークッ!」
二人はその意図をすぐに察し、『地獄暴食』は右から迫る魔刀を、オルビークは左から迫る魔刀を、素手と火炎球にて弾き返した。
「『地獄骸』ッ!!! 決めろッ!!!!!」
俺が命令した時にはもう『地獄骸』は跳躍し、『剣豪―三刀―』の背後を取っていた。
全く、本当に俺の意思を汲んでくれる配下である。
そして、『地獄骸』は八つの得物全てに力を込めて。
『剣豪―三刀―』を銀色の鎧ごと、粉砕した。
0
あなたにおすすめの小説
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる