クリエイタースキルを使って、異世界最強の文字召喚術師になります。

月海水

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第54話 第一位と第二位

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 回廊は血に染まっていた。
 そしてその全てが、俺たちのものではない。

 アリカの闘牛たちは敵文字召喚術師たちを躊躇なく切り裂いた。

 彼らの鮮血が廊下の床を満たし、闘牛たちは返り血で怪しく光る。

 だが、殺しはしなかった。

 肩が浅く裂けた者、殴打により複数の骨が砕けた者、様々な傷を負った者が床に転がっているが、死者は一人もいない。

 後ほど治癒魔法で治る程度のものだろう。

 だが、それがアリカの優しさなのか、非道さなのかは判断がつかない。

 少なくとも――

「うぐあああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!」

 ――しばらくの間は地獄よりもさらにむごい苦痛が、延々と続くのだから。
 
 アリカは肩に傷を負った敵召喚術師の近くまで行って見下ろすと、靴の爪先で傷口をとん、と軽く蹴った。

 敵召喚術師はあまりに激痛にぐるんと瞳を一回転させ、

「ぐぃぁあああああああああああああッ!!!!!」

 と、思わず顔をしかめてしまうような、醜い叫び声を上げた。

 アリカはそれを見て、「ふふっ」と楽しそうに笑みを零す。

「お、お師匠にあんな一面があったなんて……」

 レーナはアンデッド軍の中から出てきて、俺の横に立つと、顔面蒼白で恐ろしそうに呟いた。

「まあ、やっぱ、高位の召喚術師ともなると、どっか人間的におかしいとこあるんだろうな……」

 ひそひそと、俺とレーナは身震いしながら言葉を交わす。

「あのー」

「ひぃ!」

 気づかないうちに、アリカがすぐ背後まで迫っていて、俺は思わず変な声を上げてしまった。

 レーナは一瞬でアンデッドたちの大群の中に隠れたようだ。

 あいつほんと、こういう時は素早いな……。

 アリカは俺の反応を見て、不思議そうに小首を傾げてから、回廊の先を指さす。

「敵は片付きました。さあ、先に進みましょう」

「結構、淡々としてるんだな……」

 俺は顔をしかめて、進行方向に視線をやる。

 辺り一面、召喚術師たちの血と召喚モンスターのまだ消えきっていない鉄の残骸で埋め尽くされている。

「アリカって……ドSなの?」

 俺が恐る恐る尋ねると、アリカは「あはは、まさかー」と乾いた笑いを返してくる。

「そんなわけないじゃないですか。ほら、見てください。どこからどう見ても、ただの純粋、清純な女子です」

 アリカは両手を広げると、俺の前でくるりと一回転してみせた。

「さっき、もう別人みたいになってたからさ……」

「文字召喚術師としての、自らの義務を果たしたまでですよ。そんなこと言ったら、シュウトさんも魔王モードの時は相当やばいですよ、言動」

「え、マジで……」

 改まって「言動ヤバい」とか言われると、すごく恥ずかしいんだが……。

「マジです。あとから見たら、うわってなるレベルですよ」

 うわってなるレベルなの……。

「と、とにかく先に進むとするか。この先の間取りはどうなってる?」

 これ以上会話を続けて、心の傷を深く抉りたくないので、俺は話題を変えることにした。

「この廊下を抜けると、次は三階まで吹き抜けの構造になった大広場に出ます。正直、そこが一番の問題ですね。宮殿を訪れた文字召喚術師たちが集まる場所です。それに……おそらく、そこには高位文字召喚術師がいるでしょう。もしかしたら、私よりも上……第一位、第二位がいる可能性もあります」

「高位文字召喚術師か……気を付けた方が良さそうだな」

 アリカの戦い方を見ていればわかるが、俺がいくら顕現待ちなしで強いモンスターを召喚しようとも、相手のモンスターの練度が高ければ、たった数体でも相当な脅威になるだろう。

 万が一、俺がやられてしまえば、軍の士気にかかわる。
 そのため、十分な警戒が必要だった。

「それで、第一位と第二位ってのは、どんな奴らなんだ?」

 少しでも敵の情報を知っておこうと訊ねると、アリカは表情に影を落として、少し沈黙した。しばらくしてから、重そうな口を開く。

「……一言でいえば、人格破綻者です。アルギア召喚宮殿は力による評価が全て。ですので、上に立つものに良識を求めることはできません」

「人格破綻者、か……」

 こちらの世界に来てから、容易く暴力に訴える人間たちを見てきたが、人格破綻とまで言える人物はいなかった気がする。

 なんだか嫌な予感がして、俺は眉をしかめた。

「ま、とりあえず、進まないと何もわからないか……」

 そうして、俺は前を向く。

 血に塗れた悲惨な廊下の先、まだ目的の宝物は遠い。
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