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第69話 暗黒城観光地化計画
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「おバカなの? ねえ、おバカなの? いや待て、お前は正真正銘のおバカだったな……」
あまりの動揺に一方的に疑問を投げかけ、そして自己完結して納得した俺を、
「うう……シュウトさま、酷いです~」
と、涙目で地面にぺたんと座ったレーナが見上げてくる。
暗黒城正門入り口。レーナの悪魔のような所業を確認し、全力疾走で城の中を駆け下りた俺は彼女を目の前に正座させて説教していた。
彼女の背後には看板作りを手伝っていた『雑魚死後』たちが地面にめりこむほど平伏しているが、この所業の主犯がレーナであることは疑いようがないので、責めるつもりはない。
俺は呆れた顔で城の正門に掲げられた骨看板を改めて見返す。
俺が不在の間に形を整えられた正門は、白を基調とした大理石風の素材で作られた立派なものに変わっていた。鉄製の扉を閉めることもできるが、普段は解放されたままになっている。
そんなところに一つの骨看板が設置されていた。しかも目立つように、ご丁寧に金色に塗装されている。
『歓迎! 話題の魔王様、ここにいます!』
どう考えても、敵に位置を教えるデメリットしかないこんなものを作った意図が本気で分からない。
「レーナ、すまない。俺がお前のおバカさを見誤っていたばかりに……。今日からはお前専用の家庭教師モンスターを召喚してやるから、まともな人間に育つよう、一からお勉強しなさい」
「や、やめてください~~! わたしはおバカじゃないって言ってるじゃないですか! この看板だってちゃんと理由があって作ったんですよ!」
「ほう。聞こうじゃないか」
どんな屁理屈が飛び出てくるものかと、俺は腕を組んでレーナを見下ろす。
「ギルダム中央村や峡谷村、その他ギルダム独立自治区内の十数の村には、今回の件でシュウトさまにお会いしてみたいという人が絶賛急増中なんです! なのでここを観光地化し、そしてわたしがモンスターたちと協力してお土産品を作って売ることで、わたしのお小遣いを増やそうという作戦を立てたのですっ。えっへん!」
「……うわぁ」
あまりのドン引きに、口に手を当てて一歩下がる俺。すると、レーナはよろよろとたちがあって二歩近寄ってくる。
「な、なんで逃げるんですか……!」
「来ないでください」
「なんで敬語なんですか~~!」
「ちょ、近寄らないでくださいよ……」
もはや、一緒にいて同類と見なされることを恐怖と感じるレベルである。
だが、いつまでも茶番をやっているわけにもいかない。
俺は黄金に輝く骨看板を指さして、少し後ろで控えていた『地獄骸』に指示を出す。
「――撤去」
「承知いたしました」
と、次の瞬間には目にも止まらぬ速さで刃が振られ、骨看板は一瞬にして粉々になった。
「あ~~~~~わたしと『雑魚死後』ちゃんたちの汗と涙の結晶が~~~!」
「汗はともかく涙はないだろ……」
俺は今日何度目かわからない溜息をついてから、腕を組んでレーナに言い聞かせるように言う。すでにレーナはしょんぼり気味だ。
「あのな、百歩譲って独立自治区の皆と交流を持とうというのはいい」
「はい……」
「お前が非公認のお土産を作って稼いでいても、ちょっとイラッとするが、まあ良しとしよう」
「はい……」
「でも――あの看板はない」
「えー、シュウトさまのケチ! 観光地において重要なのは、そのアクセスのしやすさですよ! この世界では魔法が使えない人は現在地も把握できないんですから、ちゃんと至るところに目的地への目印を立てておくのが大事なんですよ~~!」
確かに地図アプリなどが存在しないこの世界では、知らない場所に行くのは一苦労な気はする。だが、だからといって許すわけにはいかない。
「召喚宮殿の連中や帝国兵の奴らが律儀に『歓迎!』の看板見て寄ってきたらどうすんだ!」
「……こんな大きなお城立てちゃった時点で、そんなに目立ち度は変わらないと思いますけど」
「うっ!」
レーナが目を逸らし、口を尖らして呟いた正論が俺の胸を突き刺す。部下が勝手に立てたものとはいえ、その管理責任は確かに俺にある。
「ま、まぁ……それは置いておくとして、これ以上目立たないようにだな……」
「あー話題逸らした! ずるーい!」
「いや……その…………ん?」
ここぞとばかりのレーナの攻勢に怯む俺は、さっきのレーナの言葉の何かが引っかかった。そこで俺は小首を傾げて考え込む。
なんだ? 何が引っかかってるんだ?
レーナはさっき言った。
この世界では、魔法を使えない人は現在地も把握できない。
いや、この部分じゃない。
――だから、ちゃんと|至る所(・・・)に看板を設置しないといけない……。
至る所?
そうして、俺は何気なく振り返った。暗黒城の前方、広がる草原に。
そして、そこに等間隔に立つのは、暗黒城に向いた矢印が描かれた小さな白い看板。
それが遠く、ギルダム中央村や他の村と思われる方角まで延々と伸びていた。
俺は満面の笑みを浮かべて訊く。
「レーナ?」
「はい、なんでしょう?」
草原に立つ無数の看板に向けて指をさす。
「あれ、立てた?」
「立てました! やっぱり、この場所を観光地にするにはちゃんとした誘導が――」
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」
俺は猛ダッシュで城から駆け出すと、後ろにぴったりとついてきた『地獄骸』と二人で白い看板を抜いて回ることになった。
あまりの動揺に一方的に疑問を投げかけ、そして自己完結して納得した俺を、
「うう……シュウトさま、酷いです~」
と、涙目で地面にぺたんと座ったレーナが見上げてくる。
暗黒城正門入り口。レーナの悪魔のような所業を確認し、全力疾走で城の中を駆け下りた俺は彼女を目の前に正座させて説教していた。
彼女の背後には看板作りを手伝っていた『雑魚死後』たちが地面にめりこむほど平伏しているが、この所業の主犯がレーナであることは疑いようがないので、責めるつもりはない。
俺は呆れた顔で城の正門に掲げられた骨看板を改めて見返す。
俺が不在の間に形を整えられた正門は、白を基調とした大理石風の素材で作られた立派なものに変わっていた。鉄製の扉を閉めることもできるが、普段は解放されたままになっている。
そんなところに一つの骨看板が設置されていた。しかも目立つように、ご丁寧に金色に塗装されている。
『歓迎! 話題の魔王様、ここにいます!』
どう考えても、敵に位置を教えるデメリットしかないこんなものを作った意図が本気で分からない。
「レーナ、すまない。俺がお前のおバカさを見誤っていたばかりに……。今日からはお前専用の家庭教師モンスターを召喚してやるから、まともな人間に育つよう、一からお勉強しなさい」
「や、やめてください~~! わたしはおバカじゃないって言ってるじゃないですか! この看板だってちゃんと理由があって作ったんですよ!」
「ほう。聞こうじゃないか」
どんな屁理屈が飛び出てくるものかと、俺は腕を組んでレーナを見下ろす。
「ギルダム中央村や峡谷村、その他ギルダム独立自治区内の十数の村には、今回の件でシュウトさまにお会いしてみたいという人が絶賛急増中なんです! なのでここを観光地化し、そしてわたしがモンスターたちと協力してお土産品を作って売ることで、わたしのお小遣いを増やそうという作戦を立てたのですっ。えっへん!」
「……うわぁ」
あまりのドン引きに、口に手を当てて一歩下がる俺。すると、レーナはよろよろとたちがあって二歩近寄ってくる。
「な、なんで逃げるんですか……!」
「来ないでください」
「なんで敬語なんですか~~!」
「ちょ、近寄らないでくださいよ……」
もはや、一緒にいて同類と見なされることを恐怖と感じるレベルである。
だが、いつまでも茶番をやっているわけにもいかない。
俺は黄金に輝く骨看板を指さして、少し後ろで控えていた『地獄骸』に指示を出す。
「――撤去」
「承知いたしました」
と、次の瞬間には目にも止まらぬ速さで刃が振られ、骨看板は一瞬にして粉々になった。
「あ~~~~~わたしと『雑魚死後』ちゃんたちの汗と涙の結晶が~~~!」
「汗はともかく涙はないだろ……」
俺は今日何度目かわからない溜息をついてから、腕を組んでレーナに言い聞かせるように言う。すでにレーナはしょんぼり気味だ。
「あのな、百歩譲って独立自治区の皆と交流を持とうというのはいい」
「はい……」
「お前が非公認のお土産を作って稼いでいても、ちょっとイラッとするが、まあ良しとしよう」
「はい……」
「でも――あの看板はない」
「えー、シュウトさまのケチ! 観光地において重要なのは、そのアクセスのしやすさですよ! この世界では魔法が使えない人は現在地も把握できないんですから、ちゃんと至るところに目的地への目印を立てておくのが大事なんですよ~~!」
確かに地図アプリなどが存在しないこの世界では、知らない場所に行くのは一苦労な気はする。だが、だからといって許すわけにはいかない。
「召喚宮殿の連中や帝国兵の奴らが律儀に『歓迎!』の看板見て寄ってきたらどうすんだ!」
「……こんな大きなお城立てちゃった時点で、そんなに目立ち度は変わらないと思いますけど」
「うっ!」
レーナが目を逸らし、口を尖らして呟いた正論が俺の胸を突き刺す。部下が勝手に立てたものとはいえ、その管理責任は確かに俺にある。
「ま、まぁ……それは置いておくとして、これ以上目立たないようにだな……」
「あー話題逸らした! ずるーい!」
「いや……その…………ん?」
ここぞとばかりのレーナの攻勢に怯む俺は、さっきのレーナの言葉の何かが引っかかった。そこで俺は小首を傾げて考え込む。
なんだ? 何が引っかかってるんだ?
レーナはさっき言った。
この世界では、魔法を使えない人は現在地も把握できない。
いや、この部分じゃない。
――だから、ちゃんと|至る所(・・・)に看板を設置しないといけない……。
至る所?
そうして、俺は何気なく振り返った。暗黒城の前方、広がる草原に。
そして、そこに等間隔に立つのは、暗黒城に向いた矢印が描かれた小さな白い看板。
それが遠く、ギルダム中央村や他の村と思われる方角まで延々と伸びていた。
俺は満面の笑みを浮かべて訊く。
「レーナ?」
「はい、なんでしょう?」
草原に立つ無数の看板に向けて指をさす。
「あれ、立てた?」
「立てました! やっぱり、この場所を観光地にするにはちゃんとした誘導が――」
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