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第86話 最強の文字召喚術師への道
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「皆、集合したな」
暗黒城一階、未だ文化祭の名残がある大広間に俺は配下たちを集合させていた。
ちなみに営業時間終了という名目で、観光客ご一行と村長たちには先程帰ってもらったところだ。
きちんと丁寧に見送りも済ませ、これで暗黒城の印象は全体的に良くなっただろう。
レーナがさらわれたというにもかかわらず、俺が悠長に順序よく物事を片付けているのには理由がある。
それはアリカの持っていた通信石だ。
念じることでメッセージを送ったり、相手の居場所がわかったりするスマホのような魔道具で、俺は前に一度それを目にしていた。
レーナが暗黒城に来た当初、アリカに向かって家出の連絡をするときに使っていたのが、この通信石である。
つまり、レーナも同じ魔道具を持っている。
「よく聞いてくれ。レーナが敵に連れ去られた。相手は帝国の地下組織だ」
状況を初めて知らされたモンスターも多く、少しばかりどよめきが起こる。しかし、静かにするように片手を挙げると広間は静まり返った。
「だが今回、俺は冷静に行動する。アルギア召喚宮殿のときのような暴走はしないと約束しよう。その理由はアリカの通信石に届いたメッセージだ」
俺はアリカにメッセージを読み上げるよう視線を送る。
「えー、私のところに届いた内容ですが、『お師匠~~、わたしなんだか連れ去られちゃったみたいなんですけど、どうすればいいですか!? お腹空きました~!』というメッセージが五分前に届いています」
あまりに緊迫感のない文面にモンスターたちからもため息が漏れる。
「加えて、レーナの通信石の位置はアリカの通信石でリアルタイムで確認できている。どうやら観光客に混じっていた馬車の一台が、高速でギルダム大峡谷方面に向かっているようだ」
ギルダム大峡谷。
あまり良い思い出のある場所ではない。
だがだからといって、大切な仲間を助けにいかないという選択肢は存在しない。
ギルダム大峡谷には帝国側へ渡ることができる、岩で出来た自然の橋と呼べるものが存在する場所がある。
その手前には、荒々しく陽気な村長ベルギアスが治める村があると、さっきの村長会議で聞いた。
「ひとまず、現在のレーナは腹減ったと言えるほど呑気な状況のようだし、こちらも効率よく動いて馬車を追い詰める」
「編成はどうするんだい? 召喚主」
配下たちをこの場に集めてくれた『地獄射手』が壁にもたれて質問してくる。
「基本的には少人数で行こうと思う。帝国の国境ギリギリでアンデッドの大集団が暴れていたら、それこそ帝国軍が出てきてもおかしくない」
「ま、それもそうだね。でも、敵の戦力もわからないのに少人数でいいのかい?」
「実はこういう時のために、アリカに『遠隔召喚』のやり方を教わっておいた。すでに習得済みだ。必要な人材は適宜呼び出させてもらう」
アリカが横で頭を痛そうに押さえる。
「『遠隔召喚』は普通、何年もかけて覚えるものなんですけどね……ちょっと口頭で説明しただけで使えるようになるなんて……」
文字召喚全般において、俺はその優位性を確保しているらしい。
知らない技術も一度教えられれば使える。これは非常に便利だ。
アリカは軽く劣等感に包まれていて可哀想だが……。
「とにかく、そういうことだ。編成は俺、アリカ、オルビーク、『地獄骸』。それと馬車を曳く『魔地馬』だ。その他の者は暗黒城の片付けをしながら『遠隔召喚』に備えろ。わかったか?」
俺の問いかけに、配下たちは一斉に揃って返事をする。
敵はまた大層な集団のようだし、使っている技術もヤバそうだ。
この世界で最強の文字召喚術師を目指すには、これからもそういう人間たちと戦っていかないといけないのだろう。
しかし、俺は他の誰にも真似できない特殊な文字召喚が可能だ。
この力があれば、これからも問題を解決していけるはずだ。
「待ってろよ、レーナ!」
俺はどんな敵が出てきても倒すという、強い覚悟を持って叫ぶ。
最強の文字召喚術師としての道は、まだ始まったばかりだ。
暗黒城一階、未だ文化祭の名残がある大広間に俺は配下たちを集合させていた。
ちなみに営業時間終了という名目で、観光客ご一行と村長たちには先程帰ってもらったところだ。
きちんと丁寧に見送りも済ませ、これで暗黒城の印象は全体的に良くなっただろう。
レーナがさらわれたというにもかかわらず、俺が悠長に順序よく物事を片付けているのには理由がある。
それはアリカの持っていた通信石だ。
念じることでメッセージを送ったり、相手の居場所がわかったりするスマホのような魔道具で、俺は前に一度それを目にしていた。
レーナが暗黒城に来た当初、アリカに向かって家出の連絡をするときに使っていたのが、この通信石である。
つまり、レーナも同じ魔道具を持っている。
「よく聞いてくれ。レーナが敵に連れ去られた。相手は帝国の地下組織だ」
状況を初めて知らされたモンスターも多く、少しばかりどよめきが起こる。しかし、静かにするように片手を挙げると広間は静まり返った。
「だが今回、俺は冷静に行動する。アルギア召喚宮殿のときのような暴走はしないと約束しよう。その理由はアリカの通信石に届いたメッセージだ」
俺はアリカにメッセージを読み上げるよう視線を送る。
「えー、私のところに届いた内容ですが、『お師匠~~、わたしなんだか連れ去られちゃったみたいなんですけど、どうすればいいですか!? お腹空きました~!』というメッセージが五分前に届いています」
あまりに緊迫感のない文面にモンスターたちからもため息が漏れる。
「加えて、レーナの通信石の位置はアリカの通信石でリアルタイムで確認できている。どうやら観光客に混じっていた馬車の一台が、高速でギルダム大峡谷方面に向かっているようだ」
ギルダム大峡谷。
あまり良い思い出のある場所ではない。
だがだからといって、大切な仲間を助けにいかないという選択肢は存在しない。
ギルダム大峡谷には帝国側へ渡ることができる、岩で出来た自然の橋と呼べるものが存在する場所がある。
その手前には、荒々しく陽気な村長ベルギアスが治める村があると、さっきの村長会議で聞いた。
「ひとまず、現在のレーナは腹減ったと言えるほど呑気な状況のようだし、こちらも効率よく動いて馬車を追い詰める」
「編成はどうするんだい? 召喚主」
配下たちをこの場に集めてくれた『地獄射手』が壁にもたれて質問してくる。
「基本的には少人数で行こうと思う。帝国の国境ギリギリでアンデッドの大集団が暴れていたら、それこそ帝国軍が出てきてもおかしくない」
「ま、それもそうだね。でも、敵の戦力もわからないのに少人数でいいのかい?」
「実はこういう時のために、アリカに『遠隔召喚』のやり方を教わっておいた。すでに習得済みだ。必要な人材は適宜呼び出させてもらう」
アリカが横で頭を痛そうに押さえる。
「『遠隔召喚』は普通、何年もかけて覚えるものなんですけどね……ちょっと口頭で説明しただけで使えるようになるなんて……」
文字召喚全般において、俺はその優位性を確保しているらしい。
知らない技術も一度教えられれば使える。これは非常に便利だ。
アリカは軽く劣等感に包まれていて可哀想だが……。
「とにかく、そういうことだ。編成は俺、アリカ、オルビーク、『地獄骸』。それと馬車を曳く『魔地馬』だ。その他の者は暗黒城の片付けをしながら『遠隔召喚』に備えろ。わかったか?」
俺の問いかけに、配下たちは一斉に揃って返事をする。
敵はまた大層な集団のようだし、使っている技術もヤバそうだ。
この世界で最強の文字召喚術師を目指すには、これからもそういう人間たちと戦っていかないといけないのだろう。
しかし、俺は他の誰にも真似できない特殊な文字召喚が可能だ。
この力があれば、これからも問題を解決していけるはずだ。
「待ってろよ、レーナ!」
俺はどんな敵が出てきても倒すという、強い覚悟を持って叫ぶ。
最強の文字召喚術師としての道は、まだ始まったばかりだ。
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