私が恋をしたのは吸血鬼

ろあ

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第1章

06.寮母さん

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翠亜はアールグレイたちに駆け寄るが、不知火はじーっと空模様を見ていた。

「今日は、雷雨だね」



ぽつりとそう呟く。アールグレイたちは一斉に空を見上げると、夕焼け空が綺麗に出ていた。

「………人間界ってのは朝・昼・夜あんだね、俺たちの世界にはそういった概念すらないから」

「もしかして貴方たちって………」

不知火は足を咄嗟に急に止める。

「........吸血鬼?」

翠亜は氷魚に軽く肘打ちをする。

「こら、氷魚ちゃん!この世界ではその話は禁止よ」

「……あ、いっけね、わりぃ翠」

人間の世界ではアールグレイたちが住んでいる吸血鬼の世界に関することを学校の授業でやっている。だからむやみにアールグレイたちの世界のことを他言したら不知火が危険に晒されてしまう。



「今の話しは忘れて?灯ちゃん」

「あ、聞いちゃいけないことだった?」

「ん。そうね、私たちのことを知ると貴方は絶対に死ぬ」



翠亜は嘘は言ってない。

(不知火に…赤の他人に、危険を晒すようなことをしてはいけないんだ。俺たち吸血鬼のことを公にすれば、人間たちが死ぬということになる、そういったことは阻止しなければいけない.......)

「なんかごめんね」

不知火はぽつりとそうつぶやいた。

「こちらこそごめんなさい、いつか機会があれば貴方にも話せるわ、その時まで待っていてくれると嬉しいかな」

彼女の足が急に止まった。アールグレイたちの目の前には来栖が立っていて、ニヤニヤしながらくるくる回っている。すると急に立ち止まった来栖。

「不知火さん、どうして、吸血鬼と仲良くしてるの?吸血鬼は君に…いや人間に害をもたらすんだ、それがどうして、、、君にはわからない?」



不知火はぽかーんとした表情で来栖の方を見ていた。ぽかーんというよりきょとんとした表情で。すると不知火は、いきなりむすっとした表情となり、コツコツコツという音と共に来栖に近付いた。

「アンタさ、吸血鬼なんでしょ?」

「え、、いきなり何言ってるの?不知火さ……っはぁ……いつから気付いてたの、俺が吸血鬼だって。」

不知火の言葉に対して、急に表情と口調を変える来栖。

「分かるわよ、それくらい。貴方が私のクラスに転入してきたときに」

「さっすがトップ様は図に乗ってるねぇ…鴉さんに報告しておいてよかったよ」

来栖は端末を手に取った後、その端末を操作し始めると、アールグレイたちに画面を見せてきた。その画面に写っているのは、不知火のクラスメイトと思わしき人物。結晶の餌食になっているが、辛うじて息はある。そして彼女らの近くにいるのは蝙蝠だろう。

「兄貴がとっ捕まえてるのはお前のクラスメイトだよ、分かるかな、不知火さん」



ふつふつと怒りがこみ上げてるのが、アールグレイには分かった。急に天気が悪くなり、雷がなるほどの雨が一気に降り始める。

「お。キレ始めたね、不知火さん。自分のお友達が結晶の餌食になって……今どういう感情なのかなァ?」

ニマニマ笑い始めた来栖。不知火は涙を浮かべながらぽつりとこう呟く。

「……………して…」

「なんだい?不知火さん」

「………離してよ、返してよ、私の友達を!!!!!!!」



ゴロゴロゴロ……ピシャーーーッ!!!



来栖の目の前に雷が落ちる。

「!!!!」

「今のはわざと外したの。今度はアンタ本体に直接電撃を流す」

「あ、兄貴に聞いてみるよ……す…少しだけ時間が、、、欲しい」

「分かった。それじゃあ明日のこの時間に、そこの路地裏で待ってるから。あと1人で来てね」

怒りに満ちた目で来栖をじっと見ていた。その目に殺意を感じたのか、来栖は紫の蝶となり、一瞬で消えていった。

来栖が居なくなったのを確認した不知火は、天候を雷雨から綺麗な夕焼け空に戻した。

「いやあびっくりしたよ不知火さん、君天気を操れるんだね」

「私の感情で雷雨にも出来るし、雪にも出来るよ。少しだけマリョクを消費するけど、私にとっては天候操作なんて造作ないのよ」



「来栖さんは、何の目的で、何が理由で、灯さんに近づいたんですか」

裏路地の背もたれに自分の背を当てながら、不知火にそう問う杉咲。

「それは、分からない…元々普くんが人間じゃないって気付いてたけど、吸血鬼だなんて知らなかったし………」

『私はあの人嫌い、昔私の契約者が“シン・モンカ”に殺された、そして....................』



シン・モンカ.....?



『―――――ごめん、あーるぐれい、ひお、みどりあ、とうま.....私は...もう.............』

何度も何度も繰り返しアールグレイたちに謝っていくヒストリア。

(精霊もそんな顔するのか.....)



ヒストリアは涙を浮かべながら、杉咲にしか聞こえない声で、"契約を解除する"という言葉を言いながら消えていった。




「ヒストリア、君は嘘つきです...勝手に契約して、勝手に契約解除して.....俺を守るって言ったじゃないか.....」

杉咲の指についていた契約の指輪が、パァンという音と共に空に消えていった。頬を涙で濡らす杉咲は、ぽつりとつぶやく。

「先に行っていてください、3人共。俺は....ヒストリアを探してきます」

「杉咲くん、1人じゃ危ないよ」

「灯さん、ご心配ありがとうございます。俺、貴方よりきっと強いです、だから絶対に...絶っっ対に、、、生きて帰ってきます」



杉咲はお辞儀をして、アールグレイたちに背を向けて歩き出した。だけどこれだけは分かる、アイツは覚悟を決めている。アールグレイはそう感じた。



「大丈夫よ、冬真ちゃんなら大丈夫....彼の力を、信じましょう」

くるっと方向転換する翠亜は、不知火に目線を戻した。

「ん、あぁ....もうすぐそこだよ、アンタたちの部屋番号と鍵は寮母さんに聞いてね」

不知火は指を差す。大きな屋敷みたいなでっかい寮だ。入学料高いんだろうな........。

「あら、意外とでかいのね」

「?どこを見ているの?このお屋敷は晋くんの家だよ。私たちの寮はこっち」

前言撤回。

でも翠亜の言うとおりでかい寮だ、もっと小さいものかと思ったけど...。すぐ隣には各階に続く長い螺旋階段。アールグレイはどこまで階段が続いているのか気になった為、上を見上げた。8階…いや10階くらいまであるのか。。結構縦に長い寮なんだな。不知火に寮母さんが住んでる部屋番号を教えてもらった。彼女の部屋番号は105号室らしい。

「それじゃあ私は自分の部屋に戻るから、何かあったら寮母さんに聞いてね」

「ありがと、灯ちゃん」

不知火はアールグレイたちに向かってお辞儀をし、くるっと背を向ける。ぼそっと何かを言っていたが、風が急に吹いたために、その言葉は全部風にかき消された。



「確か寮母さんの部屋番号は……101号室だったわね」

「何紅茶、緊張してんの?」



冷や汗を大量にかいてるアールグレイを見て、氷魚は笑いながらそう呟いた。2人を見ていた翠亜は溜め息をつきながら、101号室の扉をノックした。

「はーい」

中から若い女性の声が聞こえた。翠亜は身だしなみを少しだけ整えると、ガチャ。という音と共に20代前半の女性が出てきた。



「あの、どちら様で?」

「わ、、、んんっ…明日から魔導学校に転入することになった者…です……?」

アールグレイは翠亜の方を見ると、冷や汗だらだらで、緊張しまくってるのが見て伺える。そしてまさかの語尾に疑問形って…。

「あー…君たちが……担任の先生から話しは聞いてますよ!」

にっこり笑う女性にボフンという音を立てて、翠亜が急に倒れてしまった。

「翠亜が倒れた!!!」

「あー…コイツ、人見知り兼あがり症なんだよな」

目がくるくる回ってる翠亜を見ながら氷魚はそう言った。

「なんかそんなことを翠亜から聞いたような聞いてないような………」

「あはは…君たちの部屋番号は205号室。ちゃんと指示通り3人部屋になってるよ。これが部屋の鍵、ここにエレベーターがないから横の螺旋階段を使ってね」

アールグレイたちは寮母さんからルームキーを貰い、言われた通り螺旋階段で自分たちの部屋に向かった。
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