上司や女子社員がイイ意味で迫って来る件

草薙銀之助 second

文字の大きさ
1 / 1

安息の昼休みがヘビーになった件

しおりを挟む
安息の昼休みがヘビーになった件


 すでに課のオフィスには誰もいなかったので、昼休みになったと思って、キリのいい辺りでイスをゆっくりと立つ。

 普通の人の様に素早くこなせないから、何か思う人が在るとしても、目をつぶってもらっていると改めて思いながら――。

 そして、いつも通りコッソリとひとけのない辺りで、ありもしない人の気配に神経を砕きながら深い息を吐く。

 パンの包装やボトル缶の音にすらビクビクして、袋系は僅かに尖った様な感覚が、脳にブチブチと刺さって堪らない。

 仕事の進捗も鈍い上に、少しでもストレスがあるとミスも増えて、余計に神経が研ぎ澄まされてどうのしょうもない。

 それでも課長には長い目で流してもらっているし、課の人々は特に良くしてもらっていて、どうやっても頭が上がらない。

 それが更に僕の状態やパフォーマンスが、最早どうにもならないレベルに達して、パンをかじったまま沈殿する。

 そうしていると、頭の上から僕の後頭部に向けて、いつの間にかフワフワした気配から、天使声が耳許に吹きかかった。

「どうかしましたか……?」

 もうここも避難地に出来ないと諦めて、何ともないと返しながら、無理やり予備バッテリーに切り替える。

 それだけかと聞かれればその通りで、まあとだけ曖昧に逃げると、「ふーん」と流されては立つ瀬が無い。

 オフ時も目撃されれば真富居課長に報告されるか、これからの安息地をどうするか、午後も仕事が待っている。

 あらゆるリスクがのしかかってくるのを無理に耐えて、再度目を向けると先の女子社員はどこかへ消えていた。

 そんなもんだと、体力バッテリーのチャージを一応は再開しながら、ボトル缶のブラックコーヒーを呑む。

 豆の質感やローストの苦味に、含有水分の甘味と全体的な奥行を確認して、僅かな何かを補給してアンパンをかじる。

 しかし、強めの糖分に繊細な旨味が弱まって、今朝購入直後のようではなかったが、そう悪くはないと再考する。

 帰りは特に何も無かったが、翌日の昼にまた例の女子社員が出現して、その後ろには更に二人ほど覗いている。

 陽キャ軍団かとやや観念して済ましていると、やたらニコニコしながら横に陣取って、問答を要求してくるのをどうするか。

 何かの手配師の如くにするかと思えば、自分も疲れたとか、ひとりでいるのはつまらないとか始まって仕舞った。

 安息にもなるか分からない環境でも、多少でも充電したいのをフニフニと進撃して、こちらをじっと視ている。

 あとのふたりも続いて正面にしゃがみ込んで、艶っぽい様な深刻そうな、うち一人は無難に済ましている。

 それよりもこの状況は何かといっても、ひとりで少しでも息継ぎしたかっただけで、午後になれば残業も待っている。

 確かに性質的にうつに似たような状態だが、真富居課長には色々と背負わせていて、残業も看てもらっている。

 それも併せて人並みにならないのは、
苦にもしながらもマイペースでなければ、より追い込むからだろう。

 すでに課長くらいには話していて、証明関係も提出済みの上で、仕事量もコントロールしてもらっている。

 ただ、ひとは初めのうちは同情するも、直ぐにてのひらを返すリスクがある事は、親を看ればこれでもかと判る。

 今の新世代世帯は分からないかもしれないが、数ヶ月中にはイジメられたくらいだから、僕は他人を信用できない。

 その日は状況に流されておいたが、やはり今後のうちに何時また余計に苦しむか、そう思えば安息の地を探し直しだ。

 その後も毎日昼呑みならず、残業まで僕の作業に参加してまで待つようになって、包囲網を貼っているのか。

「見つけたぜ?」
「アイツいた?」
「見つかったの?」

 昼はどこへ逃げても必ず誰かに見つかって、スマホで通報し合うと分かってからは、基本的に観念している。

 残業に参加する社員もさらに増えて、頭が上がらないくらいだったが、僕以外の方が圧倒的に作業が速い。

 コッソリと大規模な残業が直ぐに終わって、課長は白い新型プリウスでニコニコしながら、スルリとお帰りになる。

「これからどぉ―しよっかぁ」

 フニフニと声が吹きかかったには驚いて、僕はつい「おっおぅいぇい」と反応して仕舞ったが、腕にしがみついて来た。

 やぁ~らかいナンカがフニフニ圧し付けられては、「ズルい」と反対側でも同じことが起きて、僕は少し固まった。

――どうしてこうなったぁぁぁ……――

 もうひとりはアタマを後ろに手を組んで、特に何も無さそうにして、僕から目を逸らして横について来ている。

 さらにはカラオケに行こうという事になって、とりつけた部屋で女子社員たちは、色々と注文を取り始めている。

――どうしてこうなったぁぁぁ……――


#HSP 

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...