チキンライスは恋の味

谷地

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好きな人に可愛いって言われて嬉しくない人なんていない、 なんて嘘。

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「今日も可愛かったです!」

好きな人に可愛いって言われて嬉しくない人なんていない、

なんて嘘。


僕の片思いの可能性が出てきた今、彼の言葉は残酷な響きへ変わってしまった。
ただの好意から出る、可愛いになんの意味があるんだろう。


「どれくらい?」
「僕が出逢ってきた人で1番です」
「…」
「すみません、僕の中だけじゃ足りないですね。全世界、いや、全宇宙で1番です」
「…ありがとう」

どうしよう。嬉しいのに嬉しくない。

たとえ本当に全宇宙で1番可愛くても、1番好きじゃなきゃ意味がない。
でも、中野くんの中で1番可愛いって言葉は嬉しい。

恋する心は複雑だ。

「本当ですよ!そもそも、いっちーは顔が可愛いのに、肌ももちもちで可愛いし、瞳も魅力的で可愛いです。それに、その短い前髪もよく似合ってますし………」

僕のどこか可愛いのか熱弁し始めた中野くん。
僕だって、中野くんの好きなところやかっこいいところをたくさん言える。

だけど、こんな風に本人へ熱弁することなんて恥ずかしくて出来ない。


――やっぱり、僕だけが好きなんだ。


好きな人から自分の可愛いところをずっと教えて貰っているのに、僕の心はずっと曇っていた。


「手も本当に可愛いし、ケチャップを握った手を開いて触って舐め…触りたいと思いましたもん!」
「待って?なんて言った?舐めたいって言わなかった?」
「手が可愛いって言いました」
「…ほんと?」
「はい、誓って」
「………じゃあお願い聞いてくれたら信じる」


僕、こんなにわがままだったっけ?
ずるい僕がまた乗り移っちゃったのかな、それとも図々しい僕?


わかんないけど、もう好きだと言う気持ちがずっと僕に居座っちゃって、それが苦しくておかしくなっちゃったのかもしれない。

舐めたい、なんて彼が言うはずがないのに耳までおかしくなっちゃったのかな。

「はい!なんでも聞きます!」
「じゃあ、僕の仕事が終わるまで待ってて?」
「…え?」
「お願い聞いてくれるんでしょ?」
「え、えと、はい」
「19時までだから…待っててほしいな」
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