英雄伝承~森人の章2~ 落ちこぼれと言われて追放された私、いつの間にか英雄になったようです。

大田シンヤ

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終編

第48話

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 一の砦から脱出し、ウニレと二人で里へと駆ける。
 見上げれば青があった空は、今は灰色の分厚い雲が覆っており、緑豊かだった大森林は炎によって赤く染まっている。
 何が起こったのか分からなかった。いや、理解したくなかった。
 私とウニレは師匠の命令で味方であるはずのルクリア王国の軍を迎える使者の護衛をしていた。
 軍を迎え入れること自体は上手く行った。
 だが、師匠に連絡を入れようとした所で、ルクリア軍が何故か私たちを攻撃してきた。
 完全に味方だと思っていた所への不意打ち。
 私もウニレも応戦したが、一万もの数に対処はできなかった。
 砦にいた戦士団は全滅しかけた所で、私たちは何とか師匠に伝書鳩を飛ばし、一の砦を脱出した。
 しつこく追い掛けて来るルクリア王国の兵士のせいで里に上手く近づくことができなかったが、天から槍が落ちて来るとルクリア王国は怯んだのでその隙に撒くことができた。
 だが、喜んではいられない。
 あの槍は里に落ちたことは方角から分かっていた。
 そして、この火災だ。
 結界に守られていたとは言え、広範囲に渡ってこれだけの被害を齎すものだ。里が酷くなっていても可笑しくはない。

 両親と過ごした日々、師匠と出会った日、妹分ウニレと競い合った日、アルバ様に忠義を捧げると決めた日。
 悲しいことも、楽しいことも全てがあそこにあった。
 だから、守りたい。
 そして、また、アルバ様の家でお茶をしたい。師匠と話したい。皆で笑って過ごしたい。

 大丈夫。まだ、大丈夫。
 きっとまだ――そう願って走り続け、里へと辿り着く。













 そこで私たちは泣き叫ぶ森人を喰らう獣人たちを見た。

「「――このっ畜生共がッ!!」」

 一瞬で頭に血が昇った。
 腹の奥から火でも噴き出そうな程に怒りが湧き出て来る。
 ウニレも私と同じく、目を血走らせて喉が裂けそうな怒声を上げていた。
 一匹、二匹、三匹――続々と獣人族が姿を現す。
 構うものか、全員殺す。殺してやる。
 あんなに楽しそうに人を喰らう怪物が同じ人であるものか!!

 突いて、輝術で殺して、突いて、また輝術で殺して――。
 それでも数に限りはなくて、私たちは手足を折られ、爪で裂かれ、牙を突き立てられていた。
 目をギラギラと光らせ、涎を垂らし、飢えを満たすことしか考えていない怪物たちが、私たちを見下ろす。

 ウニレの手を握る。ウニレも私の手を握ってくれた。
 ごめんなさい。
 誰にともなく呟いた言葉は、肉の裂ける音にかき消された。
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