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第7話 弥生の話

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 弥生からの眼圧に負けた私は素直に白状した…… 

 何度も言うが私は嘘が吐けない。タケシにした話を弥生にもする事になるとは…… まさか地球に強制送還されてこんな恥ずかしい目にあうとは思わなかったよ。

 それと、スキルがまだ使用出来る事やタケシには言ってないが、かなり強い事も白状してしまった…… 
 けれども聞かれなかったので、地球の人が魔法を使える事は伝えていない。それはタケシだけで十分だ。

 全てを告白し終えた私が、前半部分の告白について恥ずかしそうにしていたら弥生が言った。

「もう、タケ兄! そんなに恥ずかしがる必要は無いって。私だってもう36になるのよ。結婚だってしてるし、子供はまだだけど…… タケ兄がコッチに居たならばタケ兄と結婚したかも知れないけど、居なかったんだから許してね」

 そうか、やはり弥生も既に結婚していたか。ここまで綺麗になったんだ、世の男性が放っておくわけはないよな。私はそう思いながら弥生の最後の言葉に笑って答えた。

「ハハハ、たらればだけどもそう言ってくれて嬉しいよ。だけど、私もアッチの世界で将来を約束した人が居てな。万に一つの可能性にかけて、その人を探してみるつもりなんだ」

「ウフフフ、そうなのね。タケ兄が好きになった人も素敵な人なんだろうな。もしも出会えたらちゃんと私にも紹介してね。それよりもタケ兄が魔法が使えて強いなら、あの娘たちを守って貰えるかな…… うん、そうしよう! タケ兄、用心棒ボディガードの仕事を始めない? うちの事務所から確実に依頼を出すから。事務所の子たちを守って欲しいの」

 私は弥生の突然の言葉にビックリしている。用心棒ボディガードだって? それはアメリカとか海外の物騒な土地ならば仕事として成り立つだろうが、日本では無理じゃないのかと思ってしまう。それが顔に出ていたのだろう、弥生が私を見ながら言った。

「そんなに心配しなくても大丈夫よ。普段は警備会社に依頼してるけど、頼りない人が来る事が多くてうちの事務所社長旦那も困ってたの。だから依頼はちゃんと出すし、支払う金額も警備会社に払うよりは多めに出すわよ」

 所属事務所の社長さんと結婚したのか…… 優しい人なんだろうか? 今の弥生を見てじゃなく、子供の頃にタケ兄と言って懐いてくれた頃を思い出して少しだけその旦那さんに嫉妬してしまった……

「あら、タケ兄。妬いてるの? フフフ、不謹慎だけど少し嬉しいな。旦那はね、顔立ちは似てないけど、性格とか気性がタケ兄に似てたから、19の時にプロポーズされて結婚したの。勿論、その頃は事務所社長じゃないわよ。旦那も私のマネジャーで22だったし。私が売れ始めて個人事務所を立ち上げる時に旦那に社長になってもらったの。今ではそれなりに大きな事務所になったのよ。大御所の梅富辰男さんが所属してくれたりしてね。そうねぇ、タケ兄が知ってる人だと深野涼子さんも所属してるわよ」

 な、何ーっ!! 弥生のその言葉に私の心は一息で中学生時代に戻ってしまった! オタクだった私が3次元で初めて美しいと思った宇宙的美少女だった深野涼子さんが所属しているんだって!! 確か…… 私の3つ上だったから今は43歳の筈。さぞかし美しくなられている事だろう。ひと目、見てみたい! 出来るならばお会いしたい……

「もう! タケ兄ったら! 私が目の前に居るのにそんな顔をして! 私が人妻になってるように深野さんも既に人妻だよ」

 弥生よ! それはまた違うのだよ。近所に住んでた弥生が美しくなり、人妻なのはその旦那さんに嫉妬してしまう事もあるだろうと思う。だがそれは一般人への気持ちなのであって、私が芸能人だと認識している深野涼子さんは人妻であろうとも気にはならないのだよ。何故ならば手の届かない人芸能人だからだ。イカン、脳内で興奮しすぎて自分の思考が無茶苦茶な事を言っているな。

「まあ、深野さんの事は置いといて。うちの事務所で今売り出し中のアイドル2人組が居るんだけど、ストーカーされてるようなの。警察にも相談はしてるんだけど、中々犯人が見つからなくて……」

 ストーカーか。厄介な奴がいるようだな。だけど、アイドルファンの中には後をつけて住んでる場所を特定するような奴も多く居ると思うんだが?

「すまない、弥生。そのストーカーは後をつけてくるだけじゃないのか?」

 あ、つい呼び捨てにしてしまったけど大丈夫か?

「嬉しいな、やっと昔みたいに呼んで貰えた。それにしてもそっか。ストーカーって言っても具体的に何をしてくるか伝えないと分からないよね。言葉自体はタケ兄が拉致される前にも有ったし、その頃は後をつけてくるだけの人の事を言ってたよね。そっか、もう25年にもなるもんね。 
あのね、今のストーカーは自分の好きな人に付きまとって、迷惑行為をする人の事をストーカーって言うの。今回、うちのアイドル2人をストーカーしてる犯人はどうやらその娘たちの部屋にまで侵入して盗聴器まで仕掛けてるみたいだから…… 勿論、既に住む場所は変えて対策をしてるんだけど、やっぱり怖いから…… タケ兄がコッチに居ない時にストーカーに襲われたりした別の事務所のアイドルもいるから、私と旦那も先手を打ってはいるんだけどね」

 ほう、そんな奴が居るんだな。部屋にまで侵入してるなんて不法侵入じゃないか。警察は何をしてるんだ。私はそう思い弥生に聞いたら、証拠としての盗聴器なんかは押収されたけど、実被害が出てないから余り積極的に動いてくれないそうだ。

 それならば私がその娘たちを守ってあげなければ。しかし、勝手にそんな仕事を始めても良いのだろうか? 

「あ、その顔はやってくれる気になったのね。タケ兄、有難う。個人事業主として開業届を出しちゃえば仕事として始められるわよ。その届出なんかはうちの旦那にやって貰えるわ。だから私の家に行きましょう。今なら旦那も居るから」

 何と隣の家に旦那さんが居るのか! 私は勝手に弥生を我が家に連れ込んでしまったのだが…… 怒られないだろうか?
 私のそんな心配をよそにうちの勝手口に向かう弥生。

「タケ兄、早く来てよ」

 言われて私も勝手口に向かう。外に出ると弥生の家の塀があり、そこに昔のままの木戸口きどぐちがあるではないか!

「エヘヘ、建替えた時にココだけはそのままでって大工さんたちにお願いしておいたの。良かった残しておいて、漸く役に立ったわ。あ、父と母は今は海外在住だから居ないの。どうやらかなり向こうの生活が気に入ったらしくて戻ってくるつもりはないみたい。でも、タケ兄が戻ってきた事は伝えてもいいかな?」

 弥生はそう言って木戸口から自宅の敷地に入る。私は勿論だと伝えて後に続いた。

「そうか、おじさんとおばさんは海外に移住したんだな。らしいと言えばらしいな」

 私の言葉に弥生はそうでしょと笑いながら先に進む。

 新しい家は昔と変わってしまっているが、木戸口から入った場所に弥生家の勝手口があるのはそのままだった。勝手口から家に入るように弥生に招かれたので、私はお邪魔しますと言いながら中に入った。

「ああ、初めまして。タケフミさんですね。弥生がよく話してくれてたので初めて会った気がしませんが。私が弥生の夫で新城崇しんじょうたかしと言います。お隣同士、どうか仲良くしてやって下さい」

 ニコニコと笑顔で挨拶してくれた人が弥生の旦那さんか…… 拉致されてなければ私が弥生の横に居た…… かも知れない。が、過ぎた事をいつまでも思い悩むのは止めようと思う。タカシさんは身長が170ちょうどぐらいだろうか? しっかりと引き締まった体をしており、鍛えているのが分かる。

 私も笑顔になりタカシさんに挨拶した。

「初めまして、訳あって暫く不在にしておりましたが、また戻って来ました。鴉武史からすたけふみといいます。こちらこそ、仲良くしてくださいね。よろしくお願いします」

 そうして私の挨拶が終わり、弥生が本題に入ったのだった
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