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第20話 面接(2)

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 更に2週間後の事だ。私は既に準中型免許を取得済で、真理ちゃんも教習所を退職している。

 2週間前と同じ時間に事務所に向かった私は馴染みある魔力を見つけた…… まさか、面接に来たのか? もしそうならタケシよ、何を考えているんだ? 私はそう思いながらタケシとタカシさんとの会話を聞く。

「ほう、するとタケフミは別にそちらと専属契約を結んでいる訳ではないと?」

「はい。あくまでウチがタケフミさんに依頼を出して、それを受けて貰っているという関係です」

 何だ? 私の仕事についての話か?

「それならば良いか…… 分かりました。貴重なお時間を取らせてしまって申し訳ない。私はコレで失礼します」

 そう言ってタケシは部屋を出ていった。そしてタカシさんが奥に入ってきた。

「いやー、ビビリました。まさか、県警の方が来るとは思わなくて。聞いてましたか? タケフミさんとの契約について聞いてこられて素直に答えましたけど問題ないですよね?」

「はい、大丈夫ですよ。そもそもアイツは私の友人ですから」

「えっ、そうなんですか? そんな素振りはなかったんですけど?」

 私も訝しくは思ったが、今は仕事を優先させて休憩の時にタケシに連絡を入れてみようと思いますとタカシさんに答えた。
 タケシは一体どんな用事でココに来たのかはその時に確認すればいいと思ったのだ。

 そして、午前の面接が始まった。今日は午前と午後に分けてあるそうだ。午前は2人とも男性でそれも1人は50代の方だったがこの人は絶対に雇うべきだと私は思った。
 元刑事だが、40後半からは足を悪くされて事務方仕事を主にやられていたみたいだ。そして、捜査に協力出来ない自分を歯がゆく思い自主退職されたみたいだがかなり引き止められたようだ。
 今でも後輩の刑事さんたちには顔が利くようだし何かしらの問題が起こり警察の世話になる際に居て貰えればスムーズに事を進められるだろう。
 もう1人の男性は単なる好奇心で受けに来たようなのでこの男性は落としても大丈夫だろう。

 私は面接が終わったタカシさんにその旨を伝えた。タカシさんは頷きながら

「そうですか。経歴は嘘じゃないんですね。先ほどの面接でも40後半になって簿記の勉強は辛かったですと笑っておられましたし人柄も良さそうなので雇う事にします。では午後もよろしくお願いします」

 そして私は昼食を食べる為に表に出た。

 タケシがそこに立っているのには気がついていたがワザと無視して歩くとタケシも私と同じ方向に歩き出す。
 私は中学の頃に良く行ってたお好み焼き屋さんに入る。タケシも後から入ってきた。そして、

「レイさん、コイツと話があるから奥の個室を使ってもいいかな?」

 タケシが今や店の女将さんになってる私たちより2つ先輩のレイさんにそう聞くと一瞬私をチラ見して驚いた顔をしたが、レイさんは黙って頷いた。私に気がついたようだが昔から物静かな先輩だったレイさんは今も変わってないようだ。

 私はタケシと2人で奥の個室に入った。注文しても無いのにレイさんがタケシにはミックスを、私には豚玉を持ってくる。

 まだ、覚えててくれたとは…… 私がレイさんを見て頭を下げるとレイさんは微笑みながら出ていった。

 そして私はタケシと目を合わせた。さて、どういう話なんだろうか?

 身構える私の目を見たタケシが苦笑いしながら言う。

「そんなに睨むなよタケフミ。お前の仕事にイチャモンをつけに行った訳じゃ無いんだ」

 そう言うが私はまだタケシを疑いの目で見ていた。

「いやいやまだ睨んでるのか、タケフミ。そんなに俺は信用ないのか? まあいい実はな、今日あの事務所に行ったのは俺の恩人でもある先輩と娘の真理が面接を受けるからなんだよ……」

 ん? 先輩とはもしかしてあの人の事か。

「先輩とは午前中に面接に来た東郷さんの事か?」

 私が豚玉を焼きながらそう聞くとタケシは頷いた。

「そうだ。東郷公人とうごうこうと先輩。人呼んでカウント伯爵東郷先輩だ。俺たちより16歳上で、お前が15歳で異世界に拉致されて消えた時に捜査に当たってくれた人でもある」

「ちょっ、ちょっと待て。その名称は東郷さんに言っても大丈夫なのか? 勝手にお前がつけたあだ名とかじゃ無いよな?」

 私は不覚にもカウント伯爵東郷に反応してしまった。何故ならばあの天才的スナイパーでもあるゴル○13の別名がデューク公爵東郷だからだ。私の質問に笑いながらタケシは答えた。

「ハッハッハ、心配するなタケフミ。あの漫画からじゃない、とは本人の談だが、名前の【こうと】をもじったって東郷さん自身が言っているからな。しかし、残念ながらそれは嘘だと俺たちは分かってるんだが…… ご本人はあの漫画の影響を多大に受けられているのは間違いないな……」 

 最後だけ心配な要素があるが、本人が名乗ってるならば問題無いか…… 無いよな。
 私は話を始めたタケシに遠慮なく焼き始めた豚玉を片面が焼けたのでひっくり返しながら更に聞く。

「で、その東郷さんと真理ちゃんが面接を受けるのに何でお前が事務所に来たんだ?」

「いや、タケフミよ。いくら弥生さんの所属する事務所だって言ってもやっぱり心配じゃないか。芸能事務所なんてのは俺も仕事関係で関わりが無い訳じゃ無いしな。今ではかなり少なくなったが、その筋との関係がある事務所もまだまだあるしな。それを探りに行ったのもあるし、東郷さんを雇ってくれるかなと思ったのもある」

 私はそのタケシの不安を払拭してやった。

「タケシ、心配するな。あの事務所はその筋とは全く関係が無いし東郷さんは雇う事に決まった」

 私がそう言うとタケシは安心したのか、やっとミックスを焼き始めた。

「そうか、タケフミが言うなら間違いないな。それなら安心だ。それと、タケフミ」

「ん? 何だ?」

 私はタケシに聞く。

「東郷先輩には異世界に拉致されていた事と異世界で得た力の事を打ち明けろ。あの先輩ならば悪いようには絶対にしないと俺が誓う。むしろお前の助けになってくれる筈だ」

 いきなりな言葉だが、タケシがそこまで信頼している人なのか……

「安心しろ、東郷先輩は頭の固い馬鹿じゃない。お前の話を信じてくれる筈だ。階級で言えば俺より下だったが、俺はあの人には頭が上がらない。捜査のイロハをキャリアの俺に惜しげもなく叩き込んでくれた先輩だ。あの先輩のお陰で俺は叩き上げの刑事たちから馬鹿にされずに済んでいるんだ。そんな尊敬出来る先輩だから俺を信じて打ち明けてみろ」

「分かった、タケシの言葉を信用しよう。東郷さんには俺の事を打ち明けてみるよ」

 そう返事をしたらタケシは嬉しそうな顔をした後に、真面目な表情に戻り言った。

「で、真理の事なんだが……」

「おお、真理ちゃんも昼から面接を受けるからな。ただし依怙贔屓えこひいき無しでちゃんと面接をする社長さんだからな。俺の知り合いだからといって採用になるとは限らないからな」

 私が先制してそう釘をさすとタケシはすぐさま否定した。

「違う、違う、タケフミ。逆だよ。俺としては不採用にして欲しいんだよ」

「何だって? 何故だ?」

 タケシからの意外な言葉に私は豚玉にソースを塗り青のりをふりかけながら聞く。
 タケシもミックスをひっくり返しながら返事をした。

「よっと! 上手くいった。真理はな、ほら可愛いだろ? 間違えて事務じゃなく芸能人としてテレビとかに出されてしまうと親としては心配だからな」

 確かに真理ちゃんは可愛い。ランドールの2人と並んでも十分に可愛いと言われるぐらいの顔立ちだが私はタケシのその心配を否定した。

「タケシ、安心しろ。タカシさんは本人や親の同意も無しに事務員で雇った人を芸能人としてテレビに出したりはしない。そこは俺を信用してくれ」

 私の言葉にタケシが笑顔を見せた。

「そうか、タケフミがそう言うなら…… だがやっぱり心配だなぁ」

 まあ多少親バカ気味だが、何やかや言ってもタケシも子を持つ親なんだな。私がそう感慨深く思っていたら、次の言葉でぶち壊された。

「真理が芸能人になったら俺は県警を辞めてマネジャーをしないとダメだしなー…… でもそうすると安定した生活が…… だがそれで色んな芸能人に会えるしなぁ……」

 おい! お前は真理ちゃんを芸能人にしたいのか、したくないのか、どっちなんだ?

 タケシの大きめの独り言を聞いて私が心の中で突っ込んだのは言うまでもない。そして私は先に食べ終えタケシに言った。

「タケシ、仕事だから先に行くぞ。東郷さんの事は教えてくれて有難う。真理ちゃんについては余り心配しなくても大丈夫だと思うぞ」

 私がそう言って立ち上がると、タケシは口一杯にミックスを頬張っていたので頷く事で了承を表した。

 私は個室を出てレイさんに精算をお願いした。2人ぶんを払おうとしたが、レイさんに止められた。

「タケシくんは県警にお勤めしてるから些細なことでも奢られたりすると賄賂と取られかねないの。だからタケフミくんのだけ受け取っておくね。それと、お帰りなさい、タケフミくん」

 そうか、それが日本の常識ならば従わないとな。タケシに迷惑をかける訳にはいかないし。私はレイさんに有難うと今度ゆっくりと食べに来ますと伝えて、店を出た。

 事務所に戻った私は昼からの面接者がまだ来てないのを確認してからカップ麺を食べているタカシさんと話をした。
 今のところ、採用予定は東郷さんだけで、昨日来た若い男性も雇うつもりはあるとの事。だが、今日の昼からの面接で来る人次第だとも言っている。
 
 雇う予定は3人なので1人は東郷さんに決まり残りは2人。昼からの面接で来た2人を雇う事になったら、昨日の若い男性は雇わない方向になる。
 私は分かりましたと言って奥に引っ込んだ。さあ、仕事だ。
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