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第57話 帰国
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撮影は順調に進みいよいよ日本に戻る事になった私たちはロンドンに到着した。帰りはテレビスタッフたちも一緒だったので大所帯だな。
空港に着いた私たちは搭乗手続きも終わり、後は乗り込むだけとなった。そこにグレイサム男爵ことローレンが見送りに来てくれた。皆とにこやかに挨拶をした後に私の側に来てコソッと耳打ちして来た。異世界言語なので聞かれても誰にも分からないとは思うが、念には念を入れたのだろう。
「タケ、お前が日本に戻って自宅に居る時に俺はそっちに行くからな」
私もその言葉にコソッと返事をした。
「分かった、ローレン。だが余り大っぴらには動けないぞ」
私の言葉に頷きながらもニヤニヤ顔のまま
「まあ、そこは大丈夫だ。俺には考えがあるからな」
そう言ってきた。嫌な予感がするがそれでも一応頷いておく。最後にローレンは皆に向かって挨拶をする。
「みなさん、どうかまたコチラにいらした時は私にお知らせ下さい。穴場をご紹介しますよ。それでは、気をつけてお帰り下さい」
そう言うとそのまま去っていった。そして、搭乗時間になった私たちは飛行機に乗り込んだ。今回は窓際が私で、その横にはカオリちゃんが座っている。桧山さんの機嫌が悪いが、深野さんはニコニコと笑顔だ。
そして、カオリちゃんはと言うと…… ぐっすりと眠っていた。本当に深い眠りについてるようだ。疲れたのかな?
私はカオリちゃんを起こさないように注意して座席での身動きは最低限にしておいた。
そして、他のみんなも寝静まった頃だった。機長のアナウンスが突然ながれたのだ。
「本日は当機にご搭乗いただき誠に有難うございます。只今、管制塔より連絡があり、当機は行先を変更致しております。当機は羽田空港へと向かう予定でしたが、管制塔より進路変更を指示された為、地獄へと行先を変更する事になりました。どうか皆様、残り少ない生を存分に楽しんで下さいませ」
英語、中国語、韓国語、最後に日本語で放送があり、急激に進路変更をした為に客室乗務員の女性が通路で座席に必死にしがみついた。更にはそのままゆっくりと降下し始める機体。
私は【魔力感知】、【魔力流読】を怠っていた事を後悔していた。仕方ないじゃないか、カオリちゃんの寝顔が素敵過ぎていつまでも集中して見ていられるんだから!?
誰だ! 今、オッサン、キモいって言ったのは!? ハッ、空耳か……
今からでもなんら遅くはない。私は持てるスキルをフル回転させてこんな事を企んだ者を探っている。
機内は阿鼻叫喚の様相だが、カオリちゃんは寝たままだし、深野さんと桧山さん夫婦は何故か私をジッと見ている。私と目が合った深野さんはニッコリと微笑んでこう言った。
「頼りにしてますよ、【私たちの】ボディガードさん」
クッ、そこは【私の】と言って欲しかった…… が、それでも私のテンションは爆上がりである。
「お任せ下さい。皆さんが無事に日本に帰れるように手を尽くします!」
私はもちろんだがそう返事をしていた。そして、山に向かってぐんぐん降下している機体を先ずは【重力魔法】と【風魔法】を使用して私の制御下においた。何者がこんな事をしているのか探るのは後だ。
更に【思考感知、解析】でコックピット内の様子を探る。アナウンスをした機長と一緒に副機長が慌てているのが分かる。
機長 「クソッ! 何故だ? 何故コントロール出来ない!」
副機長 「ダメですっ! 出力ゼロでも機体は降下していきませんっ!?」
降下なんてさせるか。このまま羽田まで飛んでやる。そう思って制御下にある機体のコントロールに集中しようとした時に稲光が機体を襲った。
しかし私は慌てない。何故なら機体は金属の箱であるから表面を流れるだけで内部にいる者が感電する事は無いからだ。それに私の結界で覆ってもいるからね。
けれども先程の稲光、中々の威力だったな。私の【雷魔法】の最上位に位置する【神の鉄槌】に匹敵する程だ。
コレは謎の存在がいよいよチョッカイをかけてきたのだと私は推測した。
しかし、そこにカオリちゃんの声が脳内に響いた。
『タケフミさん、まだ探っちゃダメ。どっちにしても今だと逃げられるし日本に戻ったらお話するから』
おっと、遂にカオリちゃんも力の片鱗を見せ始めてくれたようだ。私は脳内で分かったと返事をして稲光は無視する事にした。
そのまま機長と副機長も動けなくして飛行機を順調に日本に向かって飛ばしていく。
騒いでいた人たちもどうやら落ちそうに無いと思ったらしく、徐々に静かになっていった。
管制塔からの連絡を傍受しながら高度を本来の飛行高度に修正し飛行進路も修正した。
応答がないために必死そうな声が聞こえるがここで私が出しゃばる訳にはいかない。
日本に着いたら神の奇跡と言われるだろうなと思いながらも、私は慎重に機体を操作している。その内に私だけでなくもう一つの魔力が機体操作を手伝ってくれ始めた。
カオリちゃん有難う……
私が操作を始めて10数時間後、機体はちゃんと羽田空港上空にたどり着いた。
さて、ここからが腕の見せ所だな……
と、思ったらアッサリと私の制御を外れてカオリちゃんの魔力の制御下の元、滑走路上にフワリと着陸してしまった。
あ、ちょっと、ホントにちょっとだけ残念に思ったのは内緒にしておこう。
私が自分で着陸操作をしたかったな……
空港は大騒ぎである。が、先ずは乗客乗員の無事を確認する為にスタッフが大勢やって来て機体を取り囲む。そして、タラップが取り付けられ機内で既に落ち着いていた乗客から出口へと誘導される事になった。
深野さんと桧山さんは無言だが、何となく察しているようだ。だが、私がやったという証拠も無いからそんな事をメディアで喋ったりはしないだろう。同乗していたが席が違ったテレビ局スタッフとも合流して、先ずは乗客乗員全員が警察からの事情聴取を受ける事になった。
皆が口を揃えて機長のアナウンスを申し立てたので、すぐさまコックピットに向かう警察官たち。機長と副機長は気絶させておいたので簡単に逮捕出来たそうだ。
そしてエンジンが停止していた飛行機が何故飛び続ける事が出来たのかと聞かれても誰も答えられないだろう。しかし、深野さんは違った。堂々たる態度で、
「コレは神様の奇跡です。そうじゃないという説明が出来る人がもしも居たらお会いしたいですね」
と、警察官に言ったとたん周りの人たちもそうだと大きな声で賛同した。中には、
「何故飛べたか調べるのは警察の仕事だろう?」
という人も出てきて、その言葉にも賛同する人たちが多く、結局は短い時間で私たちを含めて解放される事になった。
そして、私は桧山さんから深野さんとカオリちゃんを家まで送ってやってくれと頼まれ、了承してレンタカーで2人を自宅まで送っている。桧山さんはこれからテレビ局に行き編集作業を見守るそうだ。
唐突に深野さんが私にお礼を言ってきた。
「鴉さん、有難うございました。私たちが助かったのは鴉さんのお陰よ」
しかし、私はその言葉を否定しておいた。
「いえ、アレは神の奇跡ですよ、深野さん」
私がその言葉を口にした途端に私の体に鈍痛が起こる。だが耐えられない程ではない。これならもしも他の人に聞かれても【神の奇跡】で押し通せそうだ。私の言葉に深野さんは笑ってこう言った。
「フフフ、そうね…… そうしておく方が無難よね」
何事もなく2人の家に到着し、別れる際にカオリちゃんから
「タケフミさん、明後日、家に来て下さい。母を交えてお話があります」
そう言われたので私は頷いて、2人と別れたのだった。
空港に着いた私たちは搭乗手続きも終わり、後は乗り込むだけとなった。そこにグレイサム男爵ことローレンが見送りに来てくれた。皆とにこやかに挨拶をした後に私の側に来てコソッと耳打ちして来た。異世界言語なので聞かれても誰にも分からないとは思うが、念には念を入れたのだろう。
「タケ、お前が日本に戻って自宅に居る時に俺はそっちに行くからな」
私もその言葉にコソッと返事をした。
「分かった、ローレン。だが余り大っぴらには動けないぞ」
私の言葉に頷きながらもニヤニヤ顔のまま
「まあ、そこは大丈夫だ。俺には考えがあるからな」
そう言ってきた。嫌な予感がするがそれでも一応頷いておく。最後にローレンは皆に向かって挨拶をする。
「みなさん、どうかまたコチラにいらした時は私にお知らせ下さい。穴場をご紹介しますよ。それでは、気をつけてお帰り下さい」
そう言うとそのまま去っていった。そして、搭乗時間になった私たちは飛行機に乗り込んだ。今回は窓際が私で、その横にはカオリちゃんが座っている。桧山さんの機嫌が悪いが、深野さんはニコニコと笑顔だ。
そして、カオリちゃんはと言うと…… ぐっすりと眠っていた。本当に深い眠りについてるようだ。疲れたのかな?
私はカオリちゃんを起こさないように注意して座席での身動きは最低限にしておいた。
そして、他のみんなも寝静まった頃だった。機長のアナウンスが突然ながれたのだ。
「本日は当機にご搭乗いただき誠に有難うございます。只今、管制塔より連絡があり、当機は行先を変更致しております。当機は羽田空港へと向かう予定でしたが、管制塔より進路変更を指示された為、地獄へと行先を変更する事になりました。どうか皆様、残り少ない生を存分に楽しんで下さいませ」
英語、中国語、韓国語、最後に日本語で放送があり、急激に進路変更をした為に客室乗務員の女性が通路で座席に必死にしがみついた。更にはそのままゆっくりと降下し始める機体。
私は【魔力感知】、【魔力流読】を怠っていた事を後悔していた。仕方ないじゃないか、カオリちゃんの寝顔が素敵過ぎていつまでも集中して見ていられるんだから!?
誰だ! 今、オッサン、キモいって言ったのは!? ハッ、空耳か……
今からでもなんら遅くはない。私は持てるスキルをフル回転させてこんな事を企んだ者を探っている。
機内は阿鼻叫喚の様相だが、カオリちゃんは寝たままだし、深野さんと桧山さん夫婦は何故か私をジッと見ている。私と目が合った深野さんはニッコリと微笑んでこう言った。
「頼りにしてますよ、【私たちの】ボディガードさん」
クッ、そこは【私の】と言って欲しかった…… が、それでも私のテンションは爆上がりである。
「お任せ下さい。皆さんが無事に日本に帰れるように手を尽くします!」
私はもちろんだがそう返事をしていた。そして、山に向かってぐんぐん降下している機体を先ずは【重力魔法】と【風魔法】を使用して私の制御下においた。何者がこんな事をしているのか探るのは後だ。
更に【思考感知、解析】でコックピット内の様子を探る。アナウンスをした機長と一緒に副機長が慌てているのが分かる。
機長 「クソッ! 何故だ? 何故コントロール出来ない!」
副機長 「ダメですっ! 出力ゼロでも機体は降下していきませんっ!?」
降下なんてさせるか。このまま羽田まで飛んでやる。そう思って制御下にある機体のコントロールに集中しようとした時に稲光が機体を襲った。
しかし私は慌てない。何故なら機体は金属の箱であるから表面を流れるだけで内部にいる者が感電する事は無いからだ。それに私の結界で覆ってもいるからね。
けれども先程の稲光、中々の威力だったな。私の【雷魔法】の最上位に位置する【神の鉄槌】に匹敵する程だ。
コレは謎の存在がいよいよチョッカイをかけてきたのだと私は推測した。
しかし、そこにカオリちゃんの声が脳内に響いた。
『タケフミさん、まだ探っちゃダメ。どっちにしても今だと逃げられるし日本に戻ったらお話するから』
おっと、遂にカオリちゃんも力の片鱗を見せ始めてくれたようだ。私は脳内で分かったと返事をして稲光は無視する事にした。
そのまま機長と副機長も動けなくして飛行機を順調に日本に向かって飛ばしていく。
騒いでいた人たちもどうやら落ちそうに無いと思ったらしく、徐々に静かになっていった。
管制塔からの連絡を傍受しながら高度を本来の飛行高度に修正し飛行進路も修正した。
応答がないために必死そうな声が聞こえるがここで私が出しゃばる訳にはいかない。
日本に着いたら神の奇跡と言われるだろうなと思いながらも、私は慎重に機体を操作している。その内に私だけでなくもう一つの魔力が機体操作を手伝ってくれ始めた。
カオリちゃん有難う……
私が操作を始めて10数時間後、機体はちゃんと羽田空港上空にたどり着いた。
さて、ここからが腕の見せ所だな……
と、思ったらアッサリと私の制御を外れてカオリちゃんの魔力の制御下の元、滑走路上にフワリと着陸してしまった。
あ、ちょっと、ホントにちょっとだけ残念に思ったのは内緒にしておこう。
私が自分で着陸操作をしたかったな……
空港は大騒ぎである。が、先ずは乗客乗員の無事を確認する為にスタッフが大勢やって来て機体を取り囲む。そして、タラップが取り付けられ機内で既に落ち着いていた乗客から出口へと誘導される事になった。
深野さんと桧山さんは無言だが、何となく察しているようだ。だが、私がやったという証拠も無いからそんな事をメディアで喋ったりはしないだろう。同乗していたが席が違ったテレビ局スタッフとも合流して、先ずは乗客乗員全員が警察からの事情聴取を受ける事になった。
皆が口を揃えて機長のアナウンスを申し立てたので、すぐさまコックピットに向かう警察官たち。機長と副機長は気絶させておいたので簡単に逮捕出来たそうだ。
そしてエンジンが停止していた飛行機が何故飛び続ける事が出来たのかと聞かれても誰も答えられないだろう。しかし、深野さんは違った。堂々たる態度で、
「コレは神様の奇跡です。そうじゃないという説明が出来る人がもしも居たらお会いしたいですね」
と、警察官に言ったとたん周りの人たちもそうだと大きな声で賛同した。中には、
「何故飛べたか調べるのは警察の仕事だろう?」
という人も出てきて、その言葉にも賛同する人たちが多く、結局は短い時間で私たちを含めて解放される事になった。
そして、私は桧山さんから深野さんとカオリちゃんを家まで送ってやってくれと頼まれ、了承してレンタカーで2人を自宅まで送っている。桧山さんはこれからテレビ局に行き編集作業を見守るそうだ。
唐突に深野さんが私にお礼を言ってきた。
「鴉さん、有難うございました。私たちが助かったのは鴉さんのお陰よ」
しかし、私はその言葉を否定しておいた。
「いえ、アレは神の奇跡ですよ、深野さん」
私がその言葉を口にした途端に私の体に鈍痛が起こる。だが耐えられない程ではない。これならもしも他の人に聞かれても【神の奇跡】で押し通せそうだ。私の言葉に深野さんは笑ってこう言った。
「フフフ、そうね…… そうしておく方が無難よね」
何事もなく2人の家に到着し、別れる際にカオリちゃんから
「タケフミさん、明後日、家に来て下さい。母を交えてお話があります」
そう言われたので私は頷いて、2人と別れたのだった。
応援ありがとうございます!
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