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本編
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眠れぬ夜を過ごし、いつものように朝が来た。
『顔色が悪い』と心配し、『一晩中膝枕させちまったせいで…すまない』と謝るウェストを無理矢理笑って森へ送り出す。
ウェストの寝顔を見ながら、たくさんたくさん考えた結果…オレは、占い師のばあさんの元へもう一度話を聴きに行くことにした。
銅貨5枚をギュッと握りしめ、足は自然と急ぎ足になる。
旅の占い師だ。ばあさんは気まぐれに、今すぐにでも旅立ってしまうかもしれないからな。
「え…、」
いない?
嘘だろ?
昨日占ってもらった広場には露店ひとつ開かれていなかった。
いや、昨日ばあさんに会ったのは…確か午後…夕方だった筈。
畑仕事を終えたらまた来てみよう。
落ち着かない気持ちのまま、畑に新しい苗を植えていく。
お昼にそわそわとサンドイッチを食べ、午後の作業を再開したところで…
「いっ!! ってぇ…」
ついていない。鋭くて硬い石が土の中に残っていたらしい。指を思いっきり切ってしまった。
ぽたぽた垂れる血、破けてしまった手袋。
「ウェストが買ってくれたものなのに…」
「大丈夫か? うわぁ、そりゃ痛てぇな」
フィールズさんが魔法で出してくれた綺麗な水で手を洗わせてもらい、ぐっと傷口を押さえる。
目を閉じて祈り、目を開くと傷口は塞がっていた。
ズキズキした痛みが治ると、昨日の夜から感じていた焦りのような気持ちがすっと落ち着いていく。
穴を繕えば、手袋はまだ使えそうだ。
「残りの苗はオレが植えとくから、今日は帰ったらどうだ」
その言葉の温かさに、枯れたと思っていた涙で目の前が滲む。
「…ありがとうございます」
明日は彼の畑にいつもの3倍祈りを捧げることに決める。
せっかくの好意に甘えて、オレは占い師のばあさんを探すことにした。
「子を成せば歳をとり始めますぞい」
「へ…?」
あっさりと、実にあっさりと、ばあさんは答えてくれた。
『昨日も言った筈じゃが、聞いとらんかったんかの…』とやや呆れ顔だ。
そうだったのか…。ショックで聞いていなかったみたいだ。ごめんなさい。
「あなた様が女を孕ませる分には何も変わりませぬが、男に種を注いでもらい、あなた様自身が子を成せば、その番となった男と同じ時を生きることが出来ましょう」
「子を…成す? 男に…たねを? …注いでもらう?」
子どもを産むってこと?
何を言ってるんだ。
「オレ、男だけど」
「もちろん存じておりますとも。あなた様に女の性器はありませぬが、代わりに尻の穴へ精を注いでもらうのですぞ」
「は…?」
思わず間の抜けた声が漏れてしまう。尻? 尻ってまさか、出す方の、あの尻?
精を…注いでもらうって…何?!
「お相手の種族にもよりまするが、腹の中で大きく育てば赤子は自然に外へと出てくるそうですじゃ」
そういう話じゃなくて…。いや…、そういう話、なのか?
え、尻の穴が広がって、赤ん坊が出てくんの?
裂けない? 赤ん坊が病気にならない?
…え、大丈夫?
大丈夫なんだ。
…そう。
へぇー。
古代種って何でもありだな?!
「ちなみにですが、古代種様はどのような生き物を相手にしても子を成し、番うことが出来ますのでのう。間違えてもネズミなど、短き命の者に孕まされませぬようご注意くださりませ」
ネズミ…? いやいや冗談だろ?
え、『ネズミを愛して短命になった古代種の伝説』がある?
まじかぁ…。
って、どうやったの?!
テーブルに銅貨を5枚置くと、ばあさんは『ふむ…』と考え込む。た…足りない…かな?
「お代はいりませぬよ」
え…? いやいや、そんな訳には…。
「その代わりに、あなた様の光を賜りたく…」
光? 畑を元気にする力のこと?
「オレの力、大したことないけどいいの?」
「とんでもないことでございまするのじゃ。古代種様のお力を与えていただけるなど、大変光栄なこと…」
「そうなの? じゃあ、手を貸して」
枯れ枝のような細い手指をオレの手のひらに乗せてもらい、目を瞑る。
ー 元気になぁれ。長生きしてね。
ばあさんだから健康と長寿を祈ってみた。
瞼を通していつものように眩しい光を感じる。
…よし、いいかな。
「…ん?」
目を開いた瞬間、ぱちぱちと瞬きを繰り返していた。
何故かって?
目の前にいたのは、まつ毛ばさばさ、ぱっちりおめめ、ボンッキュッボンッって感じのグラマラス美女だったからだ。
艶やかな黒髪には可憐な白い花飾りをいくつも着けている。
しかもオレの手のひらに乗っていたのはしっとりすべすべ、美しくもたおやかな手。
「誰…?」
手品…?
「あなた様の光はとても暖かく気持ちいいですじゃ」
“あなた様”“ですじゃ”って、この変な話し方は……ばあさん?! ばあさんが若返ったの?!!
オレ、人を若返らせる力なんてあったっけ?!!
「いえいえ。あなた様に人の寿命を延ばすお力はありませぬよ」
ばあさん…いや、お姉さん。オレの心が読めるの?
「はい。私は“人”ではありませぬので…」
え…? …えぇ…? …ま…、まじか。
人じゃない…なら何?
「れでぃのことを詮索するのものではありませぬぞ」
あ、ハイ。すみません。
『顔色が悪い』と心配し、『一晩中膝枕させちまったせいで…すまない』と謝るウェストを無理矢理笑って森へ送り出す。
ウェストの寝顔を見ながら、たくさんたくさん考えた結果…オレは、占い師のばあさんの元へもう一度話を聴きに行くことにした。
銅貨5枚をギュッと握りしめ、足は自然と急ぎ足になる。
旅の占い師だ。ばあさんは気まぐれに、今すぐにでも旅立ってしまうかもしれないからな。
「え…、」
いない?
嘘だろ?
昨日占ってもらった広場には露店ひとつ開かれていなかった。
いや、昨日ばあさんに会ったのは…確か午後…夕方だった筈。
畑仕事を終えたらまた来てみよう。
落ち着かない気持ちのまま、畑に新しい苗を植えていく。
お昼にそわそわとサンドイッチを食べ、午後の作業を再開したところで…
「いっ!! ってぇ…」
ついていない。鋭くて硬い石が土の中に残っていたらしい。指を思いっきり切ってしまった。
ぽたぽた垂れる血、破けてしまった手袋。
「ウェストが買ってくれたものなのに…」
「大丈夫か? うわぁ、そりゃ痛てぇな」
フィールズさんが魔法で出してくれた綺麗な水で手を洗わせてもらい、ぐっと傷口を押さえる。
目を閉じて祈り、目を開くと傷口は塞がっていた。
ズキズキした痛みが治ると、昨日の夜から感じていた焦りのような気持ちがすっと落ち着いていく。
穴を繕えば、手袋はまだ使えそうだ。
「残りの苗はオレが植えとくから、今日は帰ったらどうだ」
その言葉の温かさに、枯れたと思っていた涙で目の前が滲む。
「…ありがとうございます」
明日は彼の畑にいつもの3倍祈りを捧げることに決める。
せっかくの好意に甘えて、オレは占い師のばあさんを探すことにした。
「子を成せば歳をとり始めますぞい」
「へ…?」
あっさりと、実にあっさりと、ばあさんは答えてくれた。
『昨日も言った筈じゃが、聞いとらんかったんかの…』とやや呆れ顔だ。
そうだったのか…。ショックで聞いていなかったみたいだ。ごめんなさい。
「あなた様が女を孕ませる分には何も変わりませぬが、男に種を注いでもらい、あなた様自身が子を成せば、その番となった男と同じ時を生きることが出来ましょう」
「子を…成す? 男に…たねを? …注いでもらう?」
子どもを産むってこと?
何を言ってるんだ。
「オレ、男だけど」
「もちろん存じておりますとも。あなた様に女の性器はありませぬが、代わりに尻の穴へ精を注いでもらうのですぞ」
「は…?」
思わず間の抜けた声が漏れてしまう。尻? 尻ってまさか、出す方の、あの尻?
精を…注いでもらうって…何?!
「お相手の種族にもよりまするが、腹の中で大きく育てば赤子は自然に外へと出てくるそうですじゃ」
そういう話じゃなくて…。いや…、そういう話、なのか?
え、尻の穴が広がって、赤ん坊が出てくんの?
裂けない? 赤ん坊が病気にならない?
…え、大丈夫?
大丈夫なんだ。
…そう。
へぇー。
古代種って何でもありだな?!
「ちなみにですが、古代種様はどのような生き物を相手にしても子を成し、番うことが出来ますのでのう。間違えてもネズミなど、短き命の者に孕まされませぬようご注意くださりませ」
ネズミ…? いやいや冗談だろ?
え、『ネズミを愛して短命になった古代種の伝説』がある?
まじかぁ…。
って、どうやったの?!
テーブルに銅貨を5枚置くと、ばあさんは『ふむ…』と考え込む。た…足りない…かな?
「お代はいりませぬよ」
え…? いやいや、そんな訳には…。
「その代わりに、あなた様の光を賜りたく…」
光? 畑を元気にする力のこと?
「オレの力、大したことないけどいいの?」
「とんでもないことでございまするのじゃ。古代種様のお力を与えていただけるなど、大変光栄なこと…」
「そうなの? じゃあ、手を貸して」
枯れ枝のような細い手指をオレの手のひらに乗せてもらい、目を瞑る。
ー 元気になぁれ。長生きしてね。
ばあさんだから健康と長寿を祈ってみた。
瞼を通していつものように眩しい光を感じる。
…よし、いいかな。
「…ん?」
目を開いた瞬間、ぱちぱちと瞬きを繰り返していた。
何故かって?
目の前にいたのは、まつ毛ばさばさ、ぱっちりおめめ、ボンッキュッボンッって感じのグラマラス美女だったからだ。
艶やかな黒髪には可憐な白い花飾りをいくつも着けている。
しかもオレの手のひらに乗っていたのはしっとりすべすべ、美しくもたおやかな手。
「誰…?」
手品…?
「あなた様の光はとても暖かく気持ちいいですじゃ」
“あなた様”“ですじゃ”って、この変な話し方は……ばあさん?! ばあさんが若返ったの?!!
オレ、人を若返らせる力なんてあったっけ?!!
「いえいえ。あなた様に人の寿命を延ばすお力はありませぬよ」
ばあさん…いや、お姉さん。オレの心が読めるの?
「はい。私は“人”ではありませぬので…」
え…? …えぇ…? …ま…、まじか。
人じゃない…なら何?
「れでぃのことを詮索するのものではありませぬぞ」
あ、ハイ。すみません。
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