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臭いと匂い 〜プロキオ視点
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街の酒場。
いつものドアを開けると、給仕の女性が僕を見て嫌な顔をした。
アルト。やっぱり僕は醜いんだよ。
臭いだけじゃないんだ。
悲しい気持ちで彼のことを思った時、
食事をテーブルに置こうと近くに来た彼女が、僕のことを見て不思議そうな顔をした。
代金を支払う時、『2階へ行かない?』って大きな胸を押し当てられた。
初めての性的なお誘い…。
僕は逃げるように宿へ戻った。
その足取りは軽く、顔は笑っていたと思う。
隣の席で食べていた男と、肘同士が触れ合った。でも、違う席に移動されなかった。
向かいに座った男は僕と目が合うと『このパン美味しいですね』って、にっこり笑ってくれた。
『ちゃんと服を洗濯して、湯と石鹸で身体を洗ってみろよ。絶対にモテるから』
アルト!
君が言ってくれたことは正しかったよ!
モテたわけじゃないけど、そんなことはいいんだ!
人に避けられなかったのがとっても嬉しい!
いつもは町に着くとすぐご飯を食べに行っちゃってたんだ。
でも今夜は宿でお湯を使わせてもらってから酒場へ向かった。
小屋を出発する時に君がくれた石鹸をさっそく使ってみたくて。
薬草みたいな香りが混ざっているのに、泡立てると甘くなってとても良い匂いだった…。
『お前に合う香りを見つけた!』って渡してくれた、嬉しそうな君の顔が頭から離れないんだ。
僕のためにずっと香りを探してくれていて、態々手作りまでしてくれたんだって。
酒場や街中で意識して周りを見てみると、なるほど距離を取られている男は明らかに不潔そうだった。
「…はぁ。僕がこれまで生きてきた24年は何だったんだろう…」
生まれ育った家は、父も母も弟たちも、身体の臭いなんて気にしていなかった。
それはそうだよね。みんな同じ臭いだったんだから。
ヴェダはまるで花のような香りがするし、
アルトはもぎたてのアプレの実みたいな香りがする。
以前のヴェダとの行為は、口淫もキスもセックスもあっという間に終わってしまった。
いつも外で済ませて、彼の部屋には入れてもらえなかった。
夜は食堂の長椅子に毛皮を敷いて眠った。
笑顔で接してくれてはいたけれど、あの夜アルトに言われて改めて見たヴェダの顔色を思い出せば、
『早く終わらせたい』
『部屋や寝具に臭いを付けられたくない』
心のうちは恐らくそんなところだったのだろう。
馬車が到着すると必ず出迎えてくれて、僕はその嬉しさで何も見えていなかったんだ。
彼は僕にお湯を使わせたがっていたのに。
長い間、本当に悪いことをしてしまった…。
でも、ちゃんと身体を洗うようになってからは違う。
部屋に、ベッドに入れてくれる。
ゆっくり、ねっとりと、味わうように舐めてくれる。
歯もちゃんと磨いているから、キスも舌を絡めてくれる。
身体を舐めても身を任せてくれるようになった。
お尻にも後ろからじゃなく、抱き合うように受け入れてくれるようになった。
『きもちいい』って、蕩けた顔で微笑んで…。
「でもやっぱり“お仕事”なんだよね…」
虚しい。
ヴェダが微笑みかけてくれてたのは、僕のことが好きだからじゃない。
アルトの言葉。
『仕事だからに決まってるだろうが!!』
まさにその通りだった。
ヴェダが好きなのはアルト。
アルトが好きなのはヴェダ。
この石鹸を使ったら、僕のことも好きになってくれないかな?
……無理だよね。
目が合っただけで嬉しそうに微笑み合う2人。
そこに、僕なんかが入り込む場所はない。
「…でもいいか。2人とも抱かせてくれるから…」
僕は空っぽな自身の言葉に肩を落とした。
◇
「プロキオ!! ありがとう!! 砂糖とバターめちゃくちゃ嬉しい!!」
アルトが僕の馬車が着くのを待っていてくれた。
まぁ、彼が待っていたのは僕じゃなくて、
砂糖とバターなんだよね…。
「君が来るのを待っていたんだよ。全員揃わないと意味がないからね」
ウルスもアルトの後ろにいた。
僕が来るのを待ってた…?
届く荷物だけじゃなくて…?
「お湯で身体を洗って来なよ。用意してあるから。疲れが取れるようにしっかり温まってね」
クサいから洗って来いじゃなくて…?
「アルトォォォ!!!」
「うわ!! 来るなって!! 土埃が僕に付いたら小麦粉に混ざるだろ!!」
嬉しさに抱きつこうとしたら、避けられた…。
土埃はともかく、僕の体臭は彼にとってそんなに気になるものではないらしい。
『ヴェダを抱く時だけはちゃんとしろ!』とは言われるけど…。
身体を清め終えて食堂へ向かえば、
「さっぱりしたらお腹が空いただろ?」
と、アルトがたっぷりキノコの入ったスープと木の実入りのパンを、ヴェダが雉肉のグリルを出してくれた。
いい匂い…。うん。お腹がすっごく空いてる。
お肉、ハーブが効いてて美味しい…。皮も香ばしくて最高…。
あの酒場で食べるパンも美味しいけど、やっぱりアルトが焼いてくれたのが一番好きだ…。
何このスープ。キノコの出汁がすっごく美味しい…。幸せ…。
なんでだろう? 僕の顔を見て、ヴェダとアルトがニコニコしてる。
はぁ、お腹が満たされたら…眠い。
「食べ終わったなら、僕の部屋でちょっとだけ寝て来いよ」
え…。アルト、今日も僕にベッドを貸してくれるの? 嬉しい…。
「起きる頃にはデザートが出来てる筈だから、楽しみにしてなよ」
…優しい。…アルト、好き。
「よく眠れたか? 顔を洗って来いよ。出来てるから」
何が出来てるんだろう?
起きた瞬間から気になってた!
すごく良い香り!
バターと、甘酸っぱい…アプレの匂いだ!
アプレ…アルトの匂い。
今夜は僕が彼を抱かせてもらう番。
楽しみ…。
「やっぱり八等分は小さかったな…」
そう呟きながら彼が慎重に切り分けてくれたのは、美味しそうなアプレのパイだった!
早く! 早く食べたい!
サクサクして、ジュワッと甘酸っぱくて美味しい!!
あ……、もう無くなっちゃった。
◇
「なんか最近のプロキオって子犬みたいで可愛いな」
子犬?
アルトに言われて僕は首を傾げる。
「そういうとこだって」
ベッドの上。
シーツのシワが、さっきまで見ていたアルトの痴態を思い出させる。
僕のでナカを擦ってあげるたび、
この布をギュッと握って、
『あっ…、プロキオの…、やっぱり…太くて…イイとこ当たる…』って。
僕のをキュウキュウ締め付けながら、堪えるみたいに寄せられた眉がエッチだった。
以前のヴェダみたいに、吐き気を堪えてる訳じゃないんだ。
僕はどんなに身体を洗っても、独特の『体臭』というものが残っているらしい。
君の喘ぐ声が聴きたくていっぱい腰を振ったから、汗もかいちゃったし…。
でもアルトは、
「例えば…山羊のチーズはニオイの癖が強いけど、好きな人間にとっては良い香りだろ?」
そう言って、僕の匂いをすぅっと嗅いだ。
僕って山羊のチーズと同じ感じ?
やっぱりクサいのかな…。
でも、君が僕を褒めてくれてるのはなんとなく分かるよ!
「うん。やっぱりこの香りはお前に合うね」
僕の体臭と石鹸の香りが合わさると、いい感じの匂いになるらしい。
アルトがもう一度、深呼吸するみたいに僕の首元を嗅いでくれた。
「いい匂い。これ…好きだ」
その顔は穏やかで、決してお世辞の言葉なんかじゃないと分かった。
お返しに僕もアルトの首に鼻を寄せる。
あぁ、やっぱり。
「…僕もアルトの匂い、好きだよ。…いつもはもぎたてのアプレだけど、今日の君はアプレのパイみたいな甘い匂いがする」
あまりにクンクン嗅ぎすぎて、僕の鼻先が首を擽ってしまったらしい。
「っ…! ははっ…お前本当に、犬みたいだ」
アルトは僕のことを“お前”って呼ぶ。
最初“アンタ”だったことを考えると、君の近くに入れてもらえたみたいで嬉しい。
「うん。僕は君の犬でいいよ。君が『取ってこい!』って言ったものを僕は手に入れて必ず戻ってくる」
「『取ってこい』って…。僕、そんなふうに見える? でも、ありがとう。アプレの季節が終わる前にもう一度パイが作りたいから、またバターを買ってきて」
「分かった。僕にも食べさせてね」
「当たり前だろ!」
あぁ、本当にいい匂い。
食べちゃいたい…。
「あ…、」
僕は目の前にある美味しそうに熟れた、真っ赤な2つの実を食べることにした。さっきまでたっぷり時間をかけて育てたからぷっくり膨れて可愛い。
「んんっ…、プロキオ。また明日、みんなでするんだから」
明日は全員でする日だ。
アルトの身体を休ませてあげた方がいいし、僕も寝た方がいいのは分かってる。
でも、
「今は僕だけのアルトでしょう。もう少しだけご褒美がほしい」
「…全く、仕方ないなぁ」
そうため息を吐きながらも君は、乳首を舐める僕の頭を優しく撫でてくれるのだ。
大好き…。
朝までは僕だけのアルトイールでいてね。
いつものドアを開けると、給仕の女性が僕を見て嫌な顔をした。
アルト。やっぱり僕は醜いんだよ。
臭いだけじゃないんだ。
悲しい気持ちで彼のことを思った時、
食事をテーブルに置こうと近くに来た彼女が、僕のことを見て不思議そうな顔をした。
代金を支払う時、『2階へ行かない?』って大きな胸を押し当てられた。
初めての性的なお誘い…。
僕は逃げるように宿へ戻った。
その足取りは軽く、顔は笑っていたと思う。
隣の席で食べていた男と、肘同士が触れ合った。でも、違う席に移動されなかった。
向かいに座った男は僕と目が合うと『このパン美味しいですね』って、にっこり笑ってくれた。
『ちゃんと服を洗濯して、湯と石鹸で身体を洗ってみろよ。絶対にモテるから』
アルト!
君が言ってくれたことは正しかったよ!
モテたわけじゃないけど、そんなことはいいんだ!
人に避けられなかったのがとっても嬉しい!
いつもは町に着くとすぐご飯を食べに行っちゃってたんだ。
でも今夜は宿でお湯を使わせてもらってから酒場へ向かった。
小屋を出発する時に君がくれた石鹸をさっそく使ってみたくて。
薬草みたいな香りが混ざっているのに、泡立てると甘くなってとても良い匂いだった…。
『お前に合う香りを見つけた!』って渡してくれた、嬉しそうな君の顔が頭から離れないんだ。
僕のためにずっと香りを探してくれていて、態々手作りまでしてくれたんだって。
酒場や街中で意識して周りを見てみると、なるほど距離を取られている男は明らかに不潔そうだった。
「…はぁ。僕がこれまで生きてきた24年は何だったんだろう…」
生まれ育った家は、父も母も弟たちも、身体の臭いなんて気にしていなかった。
それはそうだよね。みんな同じ臭いだったんだから。
ヴェダはまるで花のような香りがするし、
アルトはもぎたてのアプレの実みたいな香りがする。
以前のヴェダとの行為は、口淫もキスもセックスもあっという間に終わってしまった。
いつも外で済ませて、彼の部屋には入れてもらえなかった。
夜は食堂の長椅子に毛皮を敷いて眠った。
笑顔で接してくれてはいたけれど、あの夜アルトに言われて改めて見たヴェダの顔色を思い出せば、
『早く終わらせたい』
『部屋や寝具に臭いを付けられたくない』
心のうちは恐らくそんなところだったのだろう。
馬車が到着すると必ず出迎えてくれて、僕はその嬉しさで何も見えていなかったんだ。
彼は僕にお湯を使わせたがっていたのに。
長い間、本当に悪いことをしてしまった…。
でも、ちゃんと身体を洗うようになってからは違う。
部屋に、ベッドに入れてくれる。
ゆっくり、ねっとりと、味わうように舐めてくれる。
歯もちゃんと磨いているから、キスも舌を絡めてくれる。
身体を舐めても身を任せてくれるようになった。
お尻にも後ろからじゃなく、抱き合うように受け入れてくれるようになった。
『きもちいい』って、蕩けた顔で微笑んで…。
「でもやっぱり“お仕事”なんだよね…」
虚しい。
ヴェダが微笑みかけてくれてたのは、僕のことが好きだからじゃない。
アルトの言葉。
『仕事だからに決まってるだろうが!!』
まさにその通りだった。
ヴェダが好きなのはアルト。
アルトが好きなのはヴェダ。
この石鹸を使ったら、僕のことも好きになってくれないかな?
……無理だよね。
目が合っただけで嬉しそうに微笑み合う2人。
そこに、僕なんかが入り込む場所はない。
「…でもいいか。2人とも抱かせてくれるから…」
僕は空っぽな自身の言葉に肩を落とした。
◇
「プロキオ!! ありがとう!! 砂糖とバターめちゃくちゃ嬉しい!!」
アルトが僕の馬車が着くのを待っていてくれた。
まぁ、彼が待っていたのは僕じゃなくて、
砂糖とバターなんだよね…。
「君が来るのを待っていたんだよ。全員揃わないと意味がないからね」
ウルスもアルトの後ろにいた。
僕が来るのを待ってた…?
届く荷物だけじゃなくて…?
「お湯で身体を洗って来なよ。用意してあるから。疲れが取れるようにしっかり温まってね」
クサいから洗って来いじゃなくて…?
「アルトォォォ!!!」
「うわ!! 来るなって!! 土埃が僕に付いたら小麦粉に混ざるだろ!!」
嬉しさに抱きつこうとしたら、避けられた…。
土埃はともかく、僕の体臭は彼にとってそんなに気になるものではないらしい。
『ヴェダを抱く時だけはちゃんとしろ!』とは言われるけど…。
身体を清め終えて食堂へ向かえば、
「さっぱりしたらお腹が空いただろ?」
と、アルトがたっぷりキノコの入ったスープと木の実入りのパンを、ヴェダが雉肉のグリルを出してくれた。
いい匂い…。うん。お腹がすっごく空いてる。
お肉、ハーブが効いてて美味しい…。皮も香ばしくて最高…。
あの酒場で食べるパンも美味しいけど、やっぱりアルトが焼いてくれたのが一番好きだ…。
何このスープ。キノコの出汁がすっごく美味しい…。幸せ…。
なんでだろう? 僕の顔を見て、ヴェダとアルトがニコニコしてる。
はぁ、お腹が満たされたら…眠い。
「食べ終わったなら、僕の部屋でちょっとだけ寝て来いよ」
え…。アルト、今日も僕にベッドを貸してくれるの? 嬉しい…。
「起きる頃にはデザートが出来てる筈だから、楽しみにしてなよ」
…優しい。…アルト、好き。
「よく眠れたか? 顔を洗って来いよ。出来てるから」
何が出来てるんだろう?
起きた瞬間から気になってた!
すごく良い香り!
バターと、甘酸っぱい…アプレの匂いだ!
アプレ…アルトの匂い。
今夜は僕が彼を抱かせてもらう番。
楽しみ…。
「やっぱり八等分は小さかったな…」
そう呟きながら彼が慎重に切り分けてくれたのは、美味しそうなアプレのパイだった!
早く! 早く食べたい!
サクサクして、ジュワッと甘酸っぱくて美味しい!!
あ……、もう無くなっちゃった。
◇
「なんか最近のプロキオって子犬みたいで可愛いな」
子犬?
アルトに言われて僕は首を傾げる。
「そういうとこだって」
ベッドの上。
シーツのシワが、さっきまで見ていたアルトの痴態を思い出させる。
僕のでナカを擦ってあげるたび、
この布をギュッと握って、
『あっ…、プロキオの…、やっぱり…太くて…イイとこ当たる…』って。
僕のをキュウキュウ締め付けながら、堪えるみたいに寄せられた眉がエッチだった。
以前のヴェダみたいに、吐き気を堪えてる訳じゃないんだ。
僕はどんなに身体を洗っても、独特の『体臭』というものが残っているらしい。
君の喘ぐ声が聴きたくていっぱい腰を振ったから、汗もかいちゃったし…。
でもアルトは、
「例えば…山羊のチーズはニオイの癖が強いけど、好きな人間にとっては良い香りだろ?」
そう言って、僕の匂いをすぅっと嗅いだ。
僕って山羊のチーズと同じ感じ?
やっぱりクサいのかな…。
でも、君が僕を褒めてくれてるのはなんとなく分かるよ!
「うん。やっぱりこの香りはお前に合うね」
僕の体臭と石鹸の香りが合わさると、いい感じの匂いになるらしい。
アルトがもう一度、深呼吸するみたいに僕の首元を嗅いでくれた。
「いい匂い。これ…好きだ」
その顔は穏やかで、決してお世辞の言葉なんかじゃないと分かった。
お返しに僕もアルトの首に鼻を寄せる。
あぁ、やっぱり。
「…僕もアルトの匂い、好きだよ。…いつもはもぎたてのアプレだけど、今日の君はアプレのパイみたいな甘い匂いがする」
あまりにクンクン嗅ぎすぎて、僕の鼻先が首を擽ってしまったらしい。
「っ…! ははっ…お前本当に、犬みたいだ」
アルトは僕のことを“お前”って呼ぶ。
最初“アンタ”だったことを考えると、君の近くに入れてもらえたみたいで嬉しい。
「うん。僕は君の犬でいいよ。君が『取ってこい!』って言ったものを僕は手に入れて必ず戻ってくる」
「『取ってこい』って…。僕、そんなふうに見える? でも、ありがとう。アプレの季節が終わる前にもう一度パイが作りたいから、またバターを買ってきて」
「分かった。僕にも食べさせてね」
「当たり前だろ!」
あぁ、本当にいい匂い。
食べちゃいたい…。
「あ…、」
僕は目の前にある美味しそうに熟れた、真っ赤な2つの実を食べることにした。さっきまでたっぷり時間をかけて育てたからぷっくり膨れて可愛い。
「んんっ…、プロキオ。また明日、みんなでするんだから」
明日は全員でする日だ。
アルトの身体を休ませてあげた方がいいし、僕も寝た方がいいのは分かってる。
でも、
「今は僕だけのアルトでしょう。もう少しだけご褒美がほしい」
「…全く、仕方ないなぁ」
そうため息を吐きながらも君は、乳首を舐める僕の頭を優しく撫でてくれるのだ。
大好き…。
朝までは僕だけのアルトイールでいてね。
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