君と秘密の食堂で

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初めての*

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 彼と付き合うことになった事を山口さんにはきちんと報告をした。
 山口さんは以前から蓮くんの気持ちを知っていたようで「本当に良かった、佐野さんなら安心です」と若干涙ぐみながら言ってくれたから大切にしようと改めて決意した。

 1週間後、彼のマンション前。
 彼から来てほしいと言われてから、一応できないなんて事にならないように準備はしてきた。
 この引き締まっていない体はどうにもならなかったけれど。
 
 合鍵を使ってエントランスを通り抜け、彼の部屋を目指す。
 ドアを開けると彼が立っていて思わず声が出た。

「びっくりした」

「早く来ないかなーと思ってウロウロしてた」

 恥ずかしそうに笑う彼が愛おしくて、荷物を持ったまま抱きしめた。

「会いたかったよ、蓮くん」

「俺も」

 体を離して靴を脱いだ。

 いつものように買ってきた食材を持ってキッチンに入る。「キッチン使うよ」と声をかけると、「うーん」というのんびりとした返事が返ってきた。
 一応友人から恋人に昇格したけれど、彼の為にご飯を作ることは変わらない。
 タッパーに詰めていると、ジトッとした蓮くんの視線を感じた。

「まだ?」

「うーん、もう少しで終わると思う」

「分かった」

 終わると言いながら、まだあとちょっと作りたいなと思ってまた食材を刻みはじめると「もうちょっとって言わなかったっけ? 」と言う蓮くんの若干苛立ちを含んだ声が聞こえた。
 慌てて刻んだ食材をフライパンに移して調理に取りかかった。
 全部終わらせてリビングへ行くとご機嫌斜めな蓮くんがソファで座っていた。

「ごめんね、遅くなって」

 言い終わらないうちに蓮くんが服を脱ぎ始めた。

「もうするの!?」

「ずっと待ってたんだけど」

「しかもここで?」

「うん、もう待てない
 こっち来て」

 引き締まった蓮くんの体。
 それに引き換え……。

「あの半年後とかにならない?」

「は?何言ってんの?」
 
「脱ぐの恥ずかしくなってきた」

 見かねた蓮くんが立ち上がって俺の方に近づいてきた。

「はい万歳」

「えー……」

 仕方なく手を挙げて脱がせてもらう。

「普通じゃん? 何が嫌なの?」

「絶対にジム行くから」

「このままでいいって
 俺しか見ないんだから」

「蓮くんに見られるから引き締めたいんだよ
 ちょっとでもよく見られたいんだって」

「あー、マジか
 なにそれ、可愛すぎでしょ」

 身ぐるみを剥がされ、手を引かれてソファに押し倒される。

「あのさ、恥ずかしいんだけどめちゃくちゃ久しぶりでさ、一応準備はしてきたんだけど
 うまくできなかったらごめん……」

 目をパチパチとさせた後、微笑んでキスをされた。

「1人でしたってこと?」

「まぁ……そう」

「今日のために?」

「ちゃんと蓮くんとしたいし」

「嬉しい
 佐野さん好きだよ
 痛かったら無理に挿れないから言って?」

 少し緊張してきた……。
 彼の顔が近づき、何度も口づけを交わす。
 入ってきた舌に自分の舌を絡めて、彼の腔内を味わうように舌を這わせた。

 彼の指が優しく俺の乳首をなぞる。
 摘まれ、舐められてどんどん敏感になっていく。

「ハァ……」

 漏れる吐息を感じたのか、さらにじっくりと愛撫を始めた。

「ンッ……」

「声出してよ」

 チュウっと俺の乳首に吸い付きながら言った。

「アァッ……」

 そうは言われても出す事に抵抗を感じる。

「聞きたくないでしょ、こんな声」

「聞きたいに決まってるじゃん
 もっと感じさせて出させてやる」

 硬くなり始めたペニスに手が伸びる。
 上下に扱かれて、その快感に声が出そうになる。

「気持ちよさそうにしてるくせに」

「アッ……ハァ……」

「指挿れてみていい?」

「ん……」

 ローションを纏わせる仕草すら色気があってドキリとしてしまう。
 足を広げられて、指が入ってきた。
 久しぶりに感じるその感覚に背筋がゾクゾクとした。

「きついけど、このまま解してたらいけそうな気がする
 指増やしてくね」

 バラバラと動く指に感じてしまって、はしたなく喘いでしまう。

「あぁッ……」

「ここだ、ここだろ?」

 容赦なく刺激され、どんどんと忘れていた感覚が蘇る。
 ペニスにも手をかけられて同時に刺激され、呆気なく射精した。

「めちゃくちゃエロい」

 そう言って舌舐めずりをする蓮くんの方がめちゃくちゃエロい。

「もう入る?」

「挿れてほしいんだ?」

「挿れて欲しい」

 体が疼いてたまらなくなり縋るようにそう言うとキスをしながらゆっくりと挿入された。

「アッ……ウゥッ……」

「大丈夫?
 痛くない?」

「大丈夫だよ
 好きにしてくれていいから」

「そんな事言って、どうなっても責任取れないよ?」

「明日は休みだからね
 ちょっとくらい平気だよ」

「煽ったのは佐野さんだから」

 一気に奥まで突かれて体がのけ反った。
 そんな俺に構うことなく激しい律動は続く。
 彼の首に手を回して快感に溺れていく。
 パンパンと激しくぶつかり合う音が響いて、その動きに合わせるように声を上げる。
 何度も何度も突かれて、その間に「好きだよ」と囁きながらキスをする彼に愛しさが募っていく。

「蓮くん……アッ……激しッ……
 好きだよ……蓮くん」

 何度も彼の名前を呼んで襲い来る快感の渦に身を委ねる。
 さらに動きを激しくしたあとに、彼は俺の中で果てた。
 荒い呼吸を繰り返しながら、貪るようにキスをする。

「痛くなかった?」

 また心配そうに彼が問いかけてきた。

「全然、気持ちよかったよ」

「良かった」

「少し疲れたけど」

「え……もうしないとか言わないよな?」

「ん?まだするの?」

「1回で足りるわけないじゃん」

「あぁ、そうなの?」

「付き合ってもらうからな?」

「お手柔らかにお願いします」

 にっこり笑う彼に組み敷かれて、また快楽に誘われた。

「お手柔らかにって言わなかったっけ?」

 あれから寝室へ移動し、何度目になるか分からない彼の射精が終わって俺はぐったりと横たわる。

「ずっと抱きたいと思ってた人との初エッチなんだから、そりゃこうなるでしょ」

「いやいや……ちょっと労ってよ」

「んー?チューッ」

 寝ている俺の頬にキスをする。

「佐野さんかわいいんだもん」

「まぁ、いいけど」

 気だるさに包まれて、愛されていると実感してこの上なく幸せだ。

「ちょっと落ち着いたらシャワー浴びよ?」

「先に浴びていいよ」

 隣に寝転んで俺の顔を見ながら「一緒に」と言って彼は微笑んだ。
 そんな彼に「分かった」と言うと嬉しそうに笑うから、彼を抱きしめて耳元で「好きだよ」と囁いた。
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