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二人で過ごす幸せな日々*
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彼の家に行くと「佐野さん、好き好き」と俺にすり寄ってくる彼は大型犬のようで、初めて出会ったときのあの態度の悪い彼からは想像もできないくらいに俺に愛を伝え、俺を求めてくれる。
そんな彼が愛おしくて仕方がない俺もまた負けじと愛を伝えるようにしている。
「最近いい事ありました?」
感の鋭い佐伯さんがジトッとした目でこちらを見てきた。
「まぁ、そうだね
いい事あった」
「えー、ずるいー
私にもいい事降ってこないかなー?」
「佐伯さんはいい事ないの?」
「ありません
飲み会もいまいちだし、出会いはないし……
どっかに川瀬蓮みたいな人いないかなー?」
「ゴホッゴホッ」
彼の名前が出てきて、飲んでいたコーヒーが変なところに入った。
「大丈夫っすか?」
「平気」
「彼もきっとうまくいってるんだろうなー」
「どうしてそう思うの?」
「最近雰囲気がすっごい柔らかくなったんですよ
あれは否定してたけど、絶対に付き合ってる」
すごい観察眼。
ちょっと当たってるところがまたすごい。
「また映画決まったんですよ
沖縄が舞台なんですって」
あぁ、しばらく会えないって泣いてたのはこれが理由か。
仕事のことは未だによく知らない。
「相変わらず推しなんだね」
「まぁカッコいいし、芝居もうまいんで
あっ、また話しちゃってごめんなさい
どうして佐野さんがそんな嬉しそうなんですか?」
「えっ、いやそんな事ないけど」
彼のことを褒められると嬉しい。
顔に出ていたとは……。
「はぁ、頑張ろ」
そう呟いて、ものすごい勢いでキーボードを叩き始めた。
俺もやるか。
伸びをして、作りかけの報告書に文字を打ち込んでいった。
お互いにまめに連絡を取り合うということをあまりしないけれど、沖縄に行ってる間はたまに写真が送られてきたり、電話がかかってきたりした。
この日に帰るから会いたいと連絡が来た。
帰ったその日に会ってくれるのか。
年甲斐もなく喜んでしまった。
今日は3時には家に着いてるとの連絡がきた。
仕事が終わったら行くよと返信しておく。
金曜日だからゆっくりできる。
佐伯さんに続いて、俺も定時で退社した。
彼の家に着き、合鍵を使ってオートロックを解除する。
ガチャリという音が聞こえたのか、玄関にやってきて飛びついてきた彼を受け止める。
「おかえり、沖縄どうだった?」
感想を言わずに唇を塞がれる。
何度もキスを求めてくる彼に付き合ってしばらく深い口づけを交わした。
そのまま股間に手を這わしてきたから、慌てて引き剥がす。
「こら、ここでするの?」
「したい
もういますぐに抱きたい」
「分かったから落ち着いて
ベッドでしよう、ね?
あぁ、その前に買ってきたもの冷蔵庫に入れないと」
「早くして」
慌てて冷蔵庫に食材をしまい、寝室へ入るとキスをしながらベッドへ倒れ込んだ。
服を脱ぎ、全身をくまなく愛撫し終えると俺のペニスを舐め始めた。
口に含みながら指を孔に差し挿れて両方を刺激される。
あまりにも気持ちよくてそのまま射精してしまうと、俺の精液を飲み込み、指を引き抜いてかわりに自身のペニスを挿れた。
佐野さん好きだよと耳元で囁かれながら突き動かされて、射精せずにイってしまう。
容赦なく攻められて、何度もイキながら最後は彼の精を受け入れた。
もちろん一度で終わることはなくて、すぐに復活する彼を何度も受け入れて、ようやく開放された頃には動けない状態になっていた。
そんな俺を彼は優しく抱きしめて、会いたかった、大好きと延々と囁き続けた。
少し微睡んで目が覚めると、彼がジッと俺を見つめていた。
「ごめん、寝てた?」
「いいよ
ごめん、また無理させた」
「謝ることないよ
それだけ俺を求めてくれて嬉しいから」
「好きだよ」
「俺も好きだよ
ご飯は? シャワー浴びて食べる?」
「食べたいけど、佐野さん動ける?
俺が作ろうか?」
「できるの?」
「便利な相棒がいるから」
「あぁ、あの自動で作ってくれるやつか」
「そうそれ」
「俺もやってみたいから一緒にやろうよ」
「じゃあシャワー浴びよっか?」
軽く一緒にシャワーを浴びて、キッチンへ向かった。
付属のレシピ本を見ながら、何をしようかと考える。
「パスタもできるんだね」
「そうなんだよ
この前ナポリタン作ったんだけど美味かったよ」
「じゃあそれにしよう
材料はたぶん大丈夫だろう」
「すぐできるしな」
「蓮くんが何回もするからね
すっかり遅くなっちゃったよね」
「俺を夢中にさせる佐野さんが悪い」
「えー、俺のせい?」
「そうだよ」
「なんだよそれ」
パスタと切った材料、調味料を入れてスイッチを入れる。
「これだけでいいんだ
パスタを茹でなくていいってすごいなー」
「サラダは俺がやるから佐野さん座ってていいよ」
「ありがとう」
こんなものも作れるのかとパラパラとレシピ本を眺める。
出来上がった事を知らせる電子音が鳴り、キッチンへ向かった。
「開けるよ?」
「うん」
蓋を開けるとケチャップのいい香りが鼻腔をくすぐる。
「すごい、できてる」
「だろ? 俺の相棒はすごいんだよ」
「何か嫉妬しちゃうな」
「佐野さんが1番だよ、もちろん」
「ならいい」
笑いながら皿に盛り付けてテーブルに運ぶ。
「いただきまーす」
「うん、美味しいね」
あまりにも便利で欲しくなってしまう。
次のボーナスで買おうかな。
「あのさ、ずっと考えてたんだけど佐野さんここに引っ越してこない?」
「ここに?」
「佐野さんにはさ、俺が帰ってくるところにいてほしくて」
「なんだか嬉しい言葉だね」
「どう?」
「いいの? 俺がここにいて」
「うん、いて欲しい」
「分かった」
拒否する理由などどこにもない。
「よし!
ゆくゆくはもっと広いマンションに引っ越してもいいかなって思ってるんだけど」
当たり前のように未来の話をしてくれる彼の姿に嬉しさと幸せを感じながら、相槌をうった。
それから数ヶ月後、俺は彼の住むこの部屋に引っ越した。
当然すれ違いが多くて、一緒に住んでいるのに会えない事はざらにある。
一緒にご飯を食べたり、一緒に湯船に浸かってのんびり話をしたり、お互いの存在を感じながら自分のやりたい事をやって、飽きることなく愛しあう。
なかなか時間が合わないからこそ、二人で過ごす何気ない日常がとても大切に思える。
小説を読む俺の膝の上に頭を乗せて彼は台本を読んでいる。
バサリと音を立てて台本が彼の手から滑り落ちた。
寝てる……。
台本をソファの肘掛けに置いて、気持ちよさそうに眠る彼の頭をそっと撫でる。
彼が起きないようにまた小説を手にして、静かにページを捲り始めた。
昼下がりの幸せなひとときを今日も目一杯堪能する。
そんな彼が愛おしくて仕方がない俺もまた負けじと愛を伝えるようにしている。
「最近いい事ありました?」
感の鋭い佐伯さんがジトッとした目でこちらを見てきた。
「まぁ、そうだね
いい事あった」
「えー、ずるいー
私にもいい事降ってこないかなー?」
「佐伯さんはいい事ないの?」
「ありません
飲み会もいまいちだし、出会いはないし……
どっかに川瀬蓮みたいな人いないかなー?」
「ゴホッゴホッ」
彼の名前が出てきて、飲んでいたコーヒーが変なところに入った。
「大丈夫っすか?」
「平気」
「彼もきっとうまくいってるんだろうなー」
「どうしてそう思うの?」
「最近雰囲気がすっごい柔らかくなったんですよ
あれは否定してたけど、絶対に付き合ってる」
すごい観察眼。
ちょっと当たってるところがまたすごい。
「また映画決まったんですよ
沖縄が舞台なんですって」
あぁ、しばらく会えないって泣いてたのはこれが理由か。
仕事のことは未だによく知らない。
「相変わらず推しなんだね」
「まぁカッコいいし、芝居もうまいんで
あっ、また話しちゃってごめんなさい
どうして佐野さんがそんな嬉しそうなんですか?」
「えっ、いやそんな事ないけど」
彼のことを褒められると嬉しい。
顔に出ていたとは……。
「はぁ、頑張ろ」
そう呟いて、ものすごい勢いでキーボードを叩き始めた。
俺もやるか。
伸びをして、作りかけの報告書に文字を打ち込んでいった。
お互いにまめに連絡を取り合うということをあまりしないけれど、沖縄に行ってる間はたまに写真が送られてきたり、電話がかかってきたりした。
この日に帰るから会いたいと連絡が来た。
帰ったその日に会ってくれるのか。
年甲斐もなく喜んでしまった。
今日は3時には家に着いてるとの連絡がきた。
仕事が終わったら行くよと返信しておく。
金曜日だからゆっくりできる。
佐伯さんに続いて、俺も定時で退社した。
彼の家に着き、合鍵を使ってオートロックを解除する。
ガチャリという音が聞こえたのか、玄関にやってきて飛びついてきた彼を受け止める。
「おかえり、沖縄どうだった?」
感想を言わずに唇を塞がれる。
何度もキスを求めてくる彼に付き合ってしばらく深い口づけを交わした。
そのまま股間に手を這わしてきたから、慌てて引き剥がす。
「こら、ここでするの?」
「したい
もういますぐに抱きたい」
「分かったから落ち着いて
ベッドでしよう、ね?
あぁ、その前に買ってきたもの冷蔵庫に入れないと」
「早くして」
慌てて冷蔵庫に食材をしまい、寝室へ入るとキスをしながらベッドへ倒れ込んだ。
服を脱ぎ、全身をくまなく愛撫し終えると俺のペニスを舐め始めた。
口に含みながら指を孔に差し挿れて両方を刺激される。
あまりにも気持ちよくてそのまま射精してしまうと、俺の精液を飲み込み、指を引き抜いてかわりに自身のペニスを挿れた。
佐野さん好きだよと耳元で囁かれながら突き動かされて、射精せずにイってしまう。
容赦なく攻められて、何度もイキながら最後は彼の精を受け入れた。
もちろん一度で終わることはなくて、すぐに復活する彼を何度も受け入れて、ようやく開放された頃には動けない状態になっていた。
そんな俺を彼は優しく抱きしめて、会いたかった、大好きと延々と囁き続けた。
少し微睡んで目が覚めると、彼がジッと俺を見つめていた。
「ごめん、寝てた?」
「いいよ
ごめん、また無理させた」
「謝ることないよ
それだけ俺を求めてくれて嬉しいから」
「好きだよ」
「俺も好きだよ
ご飯は? シャワー浴びて食べる?」
「食べたいけど、佐野さん動ける?
俺が作ろうか?」
「できるの?」
「便利な相棒がいるから」
「あぁ、あの自動で作ってくれるやつか」
「そうそれ」
「俺もやってみたいから一緒にやろうよ」
「じゃあシャワー浴びよっか?」
軽く一緒にシャワーを浴びて、キッチンへ向かった。
付属のレシピ本を見ながら、何をしようかと考える。
「パスタもできるんだね」
「そうなんだよ
この前ナポリタン作ったんだけど美味かったよ」
「じゃあそれにしよう
材料はたぶん大丈夫だろう」
「すぐできるしな」
「蓮くんが何回もするからね
すっかり遅くなっちゃったよね」
「俺を夢中にさせる佐野さんが悪い」
「えー、俺のせい?」
「そうだよ」
「なんだよそれ」
パスタと切った材料、調味料を入れてスイッチを入れる。
「これだけでいいんだ
パスタを茹でなくていいってすごいなー」
「サラダは俺がやるから佐野さん座ってていいよ」
「ありがとう」
こんなものも作れるのかとパラパラとレシピ本を眺める。
出来上がった事を知らせる電子音が鳴り、キッチンへ向かった。
「開けるよ?」
「うん」
蓋を開けるとケチャップのいい香りが鼻腔をくすぐる。
「すごい、できてる」
「だろ? 俺の相棒はすごいんだよ」
「何か嫉妬しちゃうな」
「佐野さんが1番だよ、もちろん」
「ならいい」
笑いながら皿に盛り付けてテーブルに運ぶ。
「いただきまーす」
「うん、美味しいね」
あまりにも便利で欲しくなってしまう。
次のボーナスで買おうかな。
「あのさ、ずっと考えてたんだけど佐野さんここに引っ越してこない?」
「ここに?」
「佐野さんにはさ、俺が帰ってくるところにいてほしくて」
「なんだか嬉しい言葉だね」
「どう?」
「いいの? 俺がここにいて」
「うん、いて欲しい」
「分かった」
拒否する理由などどこにもない。
「よし!
ゆくゆくはもっと広いマンションに引っ越してもいいかなって思ってるんだけど」
当たり前のように未来の話をしてくれる彼の姿に嬉しさと幸せを感じながら、相槌をうった。
それから数ヶ月後、俺は彼の住むこの部屋に引っ越した。
当然すれ違いが多くて、一緒に住んでいるのに会えない事はざらにある。
一緒にご飯を食べたり、一緒に湯船に浸かってのんびり話をしたり、お互いの存在を感じながら自分のやりたい事をやって、飽きることなく愛しあう。
なかなか時間が合わないからこそ、二人で過ごす何気ない日常がとても大切に思える。
小説を読む俺の膝の上に頭を乗せて彼は台本を読んでいる。
バサリと音を立てて台本が彼の手から滑り落ちた。
寝てる……。
台本をソファの肘掛けに置いて、気持ちよさそうに眠る彼の頭をそっと撫でる。
彼が起きないようにまた小説を手にして、静かにページを捲り始めた。
昼下がりの幸せなひとときを今日も目一杯堪能する。
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