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友達のような義弟
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夫と確実に会う日は月に一度だけ。食事会後、毎回僕が満足するまで抱いてもらう。あとは時々、ふらっとやってきてすぐ帰る事がある。何をしに来ているのかはよく分からない。彼の両親や由弥くんは相変わらず友好的で、いつも温かく迎えてくれる。それが少し嬉しい。何一つ不満のない自由な暮らし。結婚していなければ得られなかった自由。だから彼がどこで何をしているかなんて詮索しない。
由弥くんとは史弥さんよりもよく会うようになった。彼は話しやすくて、買い物に出かけたり、美術館や展示会についてきてもらったり、一緒にご飯を食べたり。友達のようないい関係を築いている。
そうして月日はあっという間に流れ、無事に大学を卒業した僕は、ほぼリモートで仕事ができるWEBデザインの会社で働き始めた。由弥くんは、義父が経営する会社に勤めている。
「あぁ、聡真さん。またこんなにも菓子パンを買い込んで。カップラーメンも」
「別にいいじゃん。美味しいよ?トキさんも食べる?」
「ちゃんと食べてますか?」
「うん。前にトキさんに教えてもらったの作ったし。毎日カップラーメンじゃないから安心して」
「体を壊さないか心配になりますよ」
「大丈夫だよ。風邪引かないし。アハハ」
「気をつけてくださいね。作り置きしておきますからね」
「トキさんいつもありがとう」
「いいんですよ」
トキさんがいなくなったら本当に困る。今一番信頼している人だ。
「旦那様は今日もいらっしゃらないのですね」
「うん、いないよ。もういい加減諦めなよ。僕たちの関係は普通じゃないんだから」
「聡真さんには普通に幸せになってほしいんですよ、私は」
「幸せだけどね。トキさんもいるし」
にっこり笑うとはぁっとため息をつかれた。だって実家にいたときには得られなかった安らぎを感じられるだけで幸せなのだ。それに月に一度は会ってセックスしてるんだし、別に仲が悪いというわけでもない。僕にとってはこれ以上ないほどの夫であると言える。
「そうだ、今日は由弥くんが来るんだった」
「弟さんでしたか?」
「うん、そう」
「ご飯はどうされるんですか?」
「ん?由弥くんが何か買ってきてくれるから大丈夫」
「そうですか」
「何?」
「旦那様よりも弟の由弥さんと結婚されたほうが幸せだったのではないかと」
「由弥くんと?ないない。大切な友達だもん」
「そうですかね」
「そうなんです。さてと、もうひと頑張りするかな」
「あんまり無理されませんように」
「分かってるよ」
自室に戻って仕事に取り掛かった。一度始めると集中してしまって、気づけば18時になろうとしていた。うーんっと伸びをしてリビングに向かう。机の上には冷蔵庫におかずを入れてあるという達筆なトキさんのメモが置いてあった。冷蔵庫を開けるとタッパーが並んでいて思わず拝んでしまう。
インターホンが鳴って画面を見ると満面の笑みを浮かべた由弥くんが手を降っていた。解錠してしばらく待つとまたインターホンが鳴ったから玄関のドアを開けに行った。
「いらっしゃい。今日は仕事早く終わったの?」
「早く終わらせた。聡くんが美味しいって言ってたハンバーグ買ってきたよ」
「やったね。入って」
「お邪魔します。兄貴は最近来てる?」
「うーん、先週来てたよ?」
「そっか」
義理の両親には言っていないけれど、由弥くんは僕達の関係を知っている。
「わっ、まだ暖かい」
「早く食べちゃお」
「そうだね。お茶淹れるね」
「うん。ありがと」
机の上に置かれたデミグラスソースがたっぷりかかったハンバーグ。添えてあるポテトとバターコーンがまた美味しいのだ。
「いただきまーす」
「うーん、美味しい~」
「やっぱ美味しいよね」
口の中いっぱいに広がる肉の旨味を堪能しつつ、白飯も頬張る。幸せすぎる。
「今度さ」
「うん?」
「市立美術館でやる絵画展のチケットもらったんだ」
「えっ、そうなの!?いいなー」
「一緒に行く?」
「いいの?」
「聡くん行きたいだろうなって思ったから」
「ありがとう!でもさ、他に誘う人いたんじゃないの?」
「どういう事?」
「由弥くん好きな人とかいないの?」
「別に?」
「結婚しろとか言われない?」
「全然。俺まだ社会人1年目だし。結婚とか考えられないな」
「そっかー。どんな人なんだろうな」
「もうこの話おしまい」
「あぁ、ごめん」
若干怒っているように感じて口を閉ざした。恋愛のことにはあまり触れられたくないのかもしれない。気をつけよう。
「ふぅ、美味しかった。ご馳走様でした。今日もありがとね」
「聡くんは放っておくとカップラーメンばっかり食べるからな」
「いやいや、そんな事ないって」
由弥くんにまで心配されているなんて、しっかりしないとだな。
「トキさんが色々作ってくれたし。たまーに自分でも作ってるし」
「たまーにね」
「いや、結構……」
「嘘つくな」
「バレた」
こんな風に軽口を叩けるから由弥くんと過ごすのは楽だ。
「そうだ、前におすすめしてくれた漫画読んだよ」
「もう?買ったの?」
「うん、買った」
「言ってくれれば貸したのに」
「持ってきてもらうのも悪いし」
「別にいいのに」
「あっ、そうか。月一で由弥くんの家行くんだからその時に借りればいいじゃん」
「いつでも言って?持ってくるから。月一とか我慢出来ないでしょ?」
「優しいなー、由弥くんは」
「聡くん限定でね」
「いい弟がいて幸せだよ」
「弟ね……」
「何?」
「なんでもない」
時々由弥くんは少し寂しそうな表情をする。それが何故なのか分からなくてもどかしくなる。
「さてと、片付けて帰ろうかな」
「片付けは僕がやっておくからいいよ?」
「ふたりでやったほうが早いし」
「ありがとうございます」
笑って立ち上がる由弥くんにつられて、僕も席を立った。
由弥くんとは史弥さんよりもよく会うようになった。彼は話しやすくて、買い物に出かけたり、美術館や展示会についてきてもらったり、一緒にご飯を食べたり。友達のようないい関係を築いている。
そうして月日はあっという間に流れ、無事に大学を卒業した僕は、ほぼリモートで仕事ができるWEBデザインの会社で働き始めた。由弥くんは、義父が経営する会社に勤めている。
「あぁ、聡真さん。またこんなにも菓子パンを買い込んで。カップラーメンも」
「別にいいじゃん。美味しいよ?トキさんも食べる?」
「ちゃんと食べてますか?」
「うん。前にトキさんに教えてもらったの作ったし。毎日カップラーメンじゃないから安心して」
「体を壊さないか心配になりますよ」
「大丈夫だよ。風邪引かないし。アハハ」
「気をつけてくださいね。作り置きしておきますからね」
「トキさんいつもありがとう」
「いいんですよ」
トキさんがいなくなったら本当に困る。今一番信頼している人だ。
「旦那様は今日もいらっしゃらないのですね」
「うん、いないよ。もういい加減諦めなよ。僕たちの関係は普通じゃないんだから」
「聡真さんには普通に幸せになってほしいんですよ、私は」
「幸せだけどね。トキさんもいるし」
にっこり笑うとはぁっとため息をつかれた。だって実家にいたときには得られなかった安らぎを感じられるだけで幸せなのだ。それに月に一度は会ってセックスしてるんだし、別に仲が悪いというわけでもない。僕にとってはこれ以上ないほどの夫であると言える。
「そうだ、今日は由弥くんが来るんだった」
「弟さんでしたか?」
「うん、そう」
「ご飯はどうされるんですか?」
「ん?由弥くんが何か買ってきてくれるから大丈夫」
「そうですか」
「何?」
「旦那様よりも弟の由弥さんと結婚されたほうが幸せだったのではないかと」
「由弥くんと?ないない。大切な友達だもん」
「そうですかね」
「そうなんです。さてと、もうひと頑張りするかな」
「あんまり無理されませんように」
「分かってるよ」
自室に戻って仕事に取り掛かった。一度始めると集中してしまって、気づけば18時になろうとしていた。うーんっと伸びをしてリビングに向かう。机の上には冷蔵庫におかずを入れてあるという達筆なトキさんのメモが置いてあった。冷蔵庫を開けるとタッパーが並んでいて思わず拝んでしまう。
インターホンが鳴って画面を見ると満面の笑みを浮かべた由弥くんが手を降っていた。解錠してしばらく待つとまたインターホンが鳴ったから玄関のドアを開けに行った。
「いらっしゃい。今日は仕事早く終わったの?」
「早く終わらせた。聡くんが美味しいって言ってたハンバーグ買ってきたよ」
「やったね。入って」
「お邪魔します。兄貴は最近来てる?」
「うーん、先週来てたよ?」
「そっか」
義理の両親には言っていないけれど、由弥くんは僕達の関係を知っている。
「わっ、まだ暖かい」
「早く食べちゃお」
「そうだね。お茶淹れるね」
「うん。ありがと」
机の上に置かれたデミグラスソースがたっぷりかかったハンバーグ。添えてあるポテトとバターコーンがまた美味しいのだ。
「いただきまーす」
「うーん、美味しい~」
「やっぱ美味しいよね」
口の中いっぱいに広がる肉の旨味を堪能しつつ、白飯も頬張る。幸せすぎる。
「今度さ」
「うん?」
「市立美術館でやる絵画展のチケットもらったんだ」
「えっ、そうなの!?いいなー」
「一緒に行く?」
「いいの?」
「聡くん行きたいだろうなって思ったから」
「ありがとう!でもさ、他に誘う人いたんじゃないの?」
「どういう事?」
「由弥くん好きな人とかいないの?」
「別に?」
「結婚しろとか言われない?」
「全然。俺まだ社会人1年目だし。結婚とか考えられないな」
「そっかー。どんな人なんだろうな」
「もうこの話おしまい」
「あぁ、ごめん」
若干怒っているように感じて口を閉ざした。恋愛のことにはあまり触れられたくないのかもしれない。気をつけよう。
「ふぅ、美味しかった。ご馳走様でした。今日もありがとね」
「聡くんは放っておくとカップラーメンばっかり食べるからな」
「いやいや、そんな事ないって」
由弥くんにまで心配されているなんて、しっかりしないとだな。
「トキさんが色々作ってくれたし。たまーに自分でも作ってるし」
「たまーにね」
「いや、結構……」
「嘘つくな」
「バレた」
こんな風に軽口を叩けるから由弥くんと過ごすのは楽だ。
「そうだ、前におすすめしてくれた漫画読んだよ」
「もう?買ったの?」
「うん、買った」
「言ってくれれば貸したのに」
「持ってきてもらうのも悪いし」
「別にいいのに」
「あっ、そうか。月一で由弥くんの家行くんだからその時に借りればいいじゃん」
「いつでも言って?持ってくるから。月一とか我慢出来ないでしょ?」
「優しいなー、由弥くんは」
「聡くん限定でね」
「いい弟がいて幸せだよ」
「弟ね……」
「何?」
「なんでもない」
時々由弥くんは少し寂しそうな表情をする。それが何故なのか分からなくてもどかしくなる。
「さてと、片付けて帰ろうかな」
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「ありがとうございます」
笑って立ち上がる由弥くんにつられて、僕も席を立った。
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