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看病してくれたのは
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「おはようございます……」
『おはよう。どうした?』
「すみません。熱が出まして今日は休ませて頂きたく」
『分かった。ゆっくり休んで』
「すみません……」
『やっておくことある?』
「いえ、急ぎのものはないので、大丈夫かと……」
『じゃあ、お大事ね』
「失礼します」
通話を切ってソファに倒れ込む。数日前から喉の調子が悪いなと思っていたのだが、まさか熱が出るとは……。とりあえずベッドに行かなきゃ。こういう時、一人だと心細くなる。トキさん今日は無理かな。ダメ元でメッセージを送って、リビングを出た。あと少しのところで歩くのが辛くなって倒れ込んだ。廊下ひんやりしてて気持ちいい。そのまま目を閉じて意識を手放した。
――「大丈夫ですよ、すぐに良くなりますからね」体調が悪い時にいつもそばにいて看病してくれたのはトキさんだった。体調を崩した時ですら両親に気にかけてもらえることはなくて、いつしかそれが普通になっていた。
おでこがひんやりと冷たい。トキさんが来てくれたんだ。朦朧とする意識の中でトキさんに呼びかける。
「トキさん……来てくれたんだね。ありがと……」
だけどトキさんからの返事はない。怒ってるのかな?呆れてるのかな?風邪はひかないなんて大口を叩いていたのに。
「怒っている?突然だったもんね。ごめんね。ねぇ、トキさん?」
どうして何も言ってくれないんだよ。トキさんにまで見捨てられたら僕には頼れる人がいなくなってしまう。
「トキさん……ごめんね」
目頭が熱くなって涙が零れ落ちた。熱のせいなのか心まで弱くなっている気がする。
「いなくならないで。迷惑かけないようにするから」
目を閉じたまま泣いていると頭をそっと撫でられた。そう言えば、こうして頭を撫でてもらったことあったな。とても安心する。
「ありがとう」
そばにトキさんがいることが分かってまた眠りについた。
どれぐらい眠っていたのだろうか。目が覚めたときには体が随分軽くなっていて、大量に汗をかいたのが分かる。体を起こして辺りを見回したけれどトキさんはいなかった。その時にベッドまで運んでくれたんだという事に気付いた。重かっただろう。本当に申し訳ないことをした。ベッドからおりて、リビングへ向かうと明かりがついていた。
「トキさん……ごめんね」
扉を開けて開口一番謝罪の言葉を述べた僕の目に飛び込んできたのはトキさんではなく、史弥さんだった。
「……あれ?どうしたんですか?トキさん帰っちゃったのかな」
「トキさんはいないよ」
「そうですか」
「今日は来ていないよ」
「ん??」
今日は来ていない?でも、ベッドで寝ていたし。おでこにはヒンヤリするシートが貼られていたし、頭も撫でてもらったけど?
「勘違いしていたみたいだけど、トキさんじゃなくて俺だよ。メッセージ送ってきただろう?」
「は!?」
待って待って、どうして!?スマホを見て血の気が引いた。なぜか送り先が史弥さんになっている。
「ごめんなさい。ご迷惑をおかけしました」
「玄関を開けたら君が倒れていたから驚いた」
「ですよね。すみません。ちょっと力尽きてしまいまして」
「気にすることはない。熱は下がっていそうだけど、測った方がいいんじゃない?」
「あっ、そうですね」
机の上に置きっぱなしにしていた体温計を脇に挟んで、ピピピと電子音がなったあとに確認すると37℃になっていた。
「熱は下がりました」
「それは、よかった」
「色々とありがとうございました」
頭を下げるとまた「気にしなくてもいい」と言われた。
「食欲は?」
「少しお腹が空きました」
「おかゆでもいい?」
「えっ、あっ、はい」
「座ってて」
そう言って彼はキッチンへ向かった。
「冷凍のご飯とレトルトのご飯がありますので」
「分かった」
彼がご飯を作ってくれている。何だか変な感じだ。結婚して1年以上経つというのに、この家で彼と食事をしたことはない。
「お待たせ」
机の上にシンプルなおかゆを置いてくれた。白い艶々のおかゆを見ていたらグゥっとお腹がなった。
「いただきます」
レンゲで掬ったおかゆを口元に運び息を吹きかけて口の中に入れた。塩加減がちょうどよくて美味しい。
「美味しいです」
「そう、良かった」
素直にそう告げると僕の前に座った彼が優しく微笑んだ。あまり向かい合って座ることがないから少し戸惑ってしまう。視線をお椀に移して黙々と食べ進めた。
「ご馳走様でした。あの、もう大丈夫ですから」
「ん?」
「帰ってもらっても大丈夫です」
「ここ、俺の家なんだけど」
「まあ、そうなんですけどね?」
「おかしな事を言うね」
いや、だっていつもいないじゃないですかと言おうと思ったけれどやめた。
「食器片付けておくから」
「ありがとうございます」
気まずい。非常に気まずい。
「シャワー浴びて寝ます。おやすみなさい」
あまりにも気まずくて立ち上がって部屋を出た。会話をすることがないからどうしていいのかわからない。まぁ、今日だけだろう。気を取り直してシャワーを浴び、布団に潜り込んだ。日中ほとんど眠っていたのにすぐに睡魔はやってきて、目を閉じた。
『おはよう。どうした?』
「すみません。熱が出まして今日は休ませて頂きたく」
『分かった。ゆっくり休んで』
「すみません……」
『やっておくことある?』
「いえ、急ぎのものはないので、大丈夫かと……」
『じゃあ、お大事ね』
「失礼します」
通話を切ってソファに倒れ込む。数日前から喉の調子が悪いなと思っていたのだが、まさか熱が出るとは……。とりあえずベッドに行かなきゃ。こういう時、一人だと心細くなる。トキさん今日は無理かな。ダメ元でメッセージを送って、リビングを出た。あと少しのところで歩くのが辛くなって倒れ込んだ。廊下ひんやりしてて気持ちいい。そのまま目を閉じて意識を手放した。
――「大丈夫ですよ、すぐに良くなりますからね」体調が悪い時にいつもそばにいて看病してくれたのはトキさんだった。体調を崩した時ですら両親に気にかけてもらえることはなくて、いつしかそれが普通になっていた。
おでこがひんやりと冷たい。トキさんが来てくれたんだ。朦朧とする意識の中でトキさんに呼びかける。
「トキさん……来てくれたんだね。ありがと……」
だけどトキさんからの返事はない。怒ってるのかな?呆れてるのかな?風邪はひかないなんて大口を叩いていたのに。
「怒っている?突然だったもんね。ごめんね。ねぇ、トキさん?」
どうして何も言ってくれないんだよ。トキさんにまで見捨てられたら僕には頼れる人がいなくなってしまう。
「トキさん……ごめんね」
目頭が熱くなって涙が零れ落ちた。熱のせいなのか心まで弱くなっている気がする。
「いなくならないで。迷惑かけないようにするから」
目を閉じたまま泣いていると頭をそっと撫でられた。そう言えば、こうして頭を撫でてもらったことあったな。とても安心する。
「ありがとう」
そばにトキさんがいることが分かってまた眠りについた。
どれぐらい眠っていたのだろうか。目が覚めたときには体が随分軽くなっていて、大量に汗をかいたのが分かる。体を起こして辺りを見回したけれどトキさんはいなかった。その時にベッドまで運んでくれたんだという事に気付いた。重かっただろう。本当に申し訳ないことをした。ベッドからおりて、リビングへ向かうと明かりがついていた。
「トキさん……ごめんね」
扉を開けて開口一番謝罪の言葉を述べた僕の目に飛び込んできたのはトキさんではなく、史弥さんだった。
「……あれ?どうしたんですか?トキさん帰っちゃったのかな」
「トキさんはいないよ」
「そうですか」
「今日は来ていないよ」
「ん??」
今日は来ていない?でも、ベッドで寝ていたし。おでこにはヒンヤリするシートが貼られていたし、頭も撫でてもらったけど?
「勘違いしていたみたいだけど、トキさんじゃなくて俺だよ。メッセージ送ってきただろう?」
「は!?」
待って待って、どうして!?スマホを見て血の気が引いた。なぜか送り先が史弥さんになっている。
「ごめんなさい。ご迷惑をおかけしました」
「玄関を開けたら君が倒れていたから驚いた」
「ですよね。すみません。ちょっと力尽きてしまいまして」
「気にすることはない。熱は下がっていそうだけど、測った方がいいんじゃない?」
「あっ、そうですね」
机の上に置きっぱなしにしていた体温計を脇に挟んで、ピピピと電子音がなったあとに確認すると37℃になっていた。
「熱は下がりました」
「それは、よかった」
「色々とありがとうございました」
頭を下げるとまた「気にしなくてもいい」と言われた。
「食欲は?」
「少しお腹が空きました」
「おかゆでもいい?」
「えっ、あっ、はい」
「座ってて」
そう言って彼はキッチンへ向かった。
「冷凍のご飯とレトルトのご飯がありますので」
「分かった」
彼がご飯を作ってくれている。何だか変な感じだ。結婚して1年以上経つというのに、この家で彼と食事をしたことはない。
「お待たせ」
机の上にシンプルなおかゆを置いてくれた。白い艶々のおかゆを見ていたらグゥっとお腹がなった。
「いただきます」
レンゲで掬ったおかゆを口元に運び息を吹きかけて口の中に入れた。塩加減がちょうどよくて美味しい。
「美味しいです」
「そう、良かった」
素直にそう告げると僕の前に座った彼が優しく微笑んだ。あまり向かい合って座ることがないから少し戸惑ってしまう。視線をお椀に移して黙々と食べ進めた。
「ご馳走様でした。あの、もう大丈夫ですから」
「ん?」
「帰ってもらっても大丈夫です」
「ここ、俺の家なんだけど」
「まあ、そうなんですけどね?」
「おかしな事を言うね」
いや、だっていつもいないじゃないですかと言おうと思ったけれどやめた。
「食器片付けておくから」
「ありがとうございます」
気まずい。非常に気まずい。
「シャワー浴びて寝ます。おやすみなさい」
あまりにも気まずくて立ち上がって部屋を出た。会話をすることがないからどうしていいのかわからない。まぁ、今日だけだろう。気を取り直してシャワーを浴び、布団に潜り込んだ。日中ほとんど眠っていたのにすぐに睡魔はやってきて、目を閉じた。
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