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今日も家に彼がいる
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スマホのアラームで目を覚ます。喉が痛いくらいでさほどしんどくはない。今日は仕事できそうだな。リビングへと向かうと彼はいなくてホッとする。
朝食を軽く済ませて、自室へと戻る。着替えてからPCを立ち上げて仕事の準備を始めると、社用スマホが震えた。上司の国枝さんから体調を気遣うメッセージがきた。体調は回復したので今日は大丈夫ですと返信しておく。幸い打ち合わせの予定は入っていないから1日部屋に籠もっていられる。
「うわ、メール溜まってるなー」
1件1件確認したり返信をしたりしながら仕事をスタートさせた。
――「ふぅ、今日もお疲れ様でしたっと」
PCをシャットダウンして、夕飯のことを考える。昼食は面倒くさくてカップラーメンにした。夜も……同じでいいか。リビングへ向かい、買い貯めしてあるラーメンが入った引き出しの中を漁る。うーん、塩にするか。お湯を沸かそうとポットに手をかけるとガチャッという音が聞こえた。ガチャ?その後に鍵をロックする音。んん?扉が開いて史弥さんが入ってきた。
「あれ?どうしたんですか?」
「心配で」
「別に大丈夫ですよ?ピンピンしてます」
「それは?」
「それ?」
「夕飯?」
キッチンに置かれたカップラーメンに視線をやる。
「あぁ、そうです」
「食材買ってきたからそれはしまって?」
「史弥さんが作るんですか?」
「他に誰かいる?」
「……いないですね」
「座ってて」
「はい」
カップラーメンを元の場所に戻してダイニングテーブルに向かった。椅子に腰掛けると、入れ違いでキッチンに入った彼が手を洗い、袋から食材を取り出す音が聞こえた。心配されているのだろうか。
「テレビ見ないの?」
「そうですね。見るとしてもアニメだし。史弥さん見ないでしょう?」
「アニメか。そうだね、見ない。好きなの?」
「好きですね。映像きれいだし面白いし。漫画に嵌ってるんですけど、好きな漫画がアニメ化されたりするんですよ」
「なるほど」
由弥くんは漫画好きだけど、史弥さんはそうでもないんだろうか。グツグツと煮込む音が聞こえて、何だかいい匂いが漂ってきた。
彼がこっちにやってきて卓上のIHコンロをセッティングし始めた。こんなのあったのか、知らなかった。
「今日は鍋だから」
「おお、鍋」
1人ではあまりやろうと思わない鍋。楽しみだ。
「お待たせ」
ドンと置かれた鍋。中には野菜や肉、豆腐が入っていて、食欲がわいてくる。テキパキと食事の準備を終えた彼が席についた。
「ごめんなさい。お皿とか出すの手伝えばよかった」
「別にいいよ。さぁ、食べよう」
「いただきます」
お椀に野菜や肉をよそって口に運ぶ。醤油ベースのだしが染みて美味しい。
「美味しいです」
「たくさん食べて」
「ありがとうございます」
お肉だけ取ろうとすると「野菜もね」と言われた。「取ろうとしてました」と言い訳をして追加すると、彼がくくっと笑った。すごく美味しくて、箸が進む。〆に雑炊を作ってくれた。それがまた美味しかった。
「鍋って食べることがないんですけど、いいですね」
「それはよかった」
「ありがとうございました。心配かけちゃってすみません」
「いや、謝ることはない」
「今日は僕が後片付けしますね。史弥さんは……」
今日もここにいるんだろうか。それとも今日は誰かのところに行くのかな。
「シャワー浴びようかな」
いるんだ。まぁ、2日くらい帰らなくても大丈夫か。
「分かりました。ごゆっくり」
「うん」
さてと、さっさと片付けよう。今日は金曜日だし夜更かしできる。病み上がりだけど、やめられないんだよな。
シャワーを浴び漫画を持ってリビングへ戻ると彼はノートPCを開いて何かしていた。
「何か飲みますか?」
「いや、大丈夫」
「そうですか」
牛乳を淹れてレンジで温め、ココアの粉をいれる。夜ふかしのお供はココアだ。ルンルン気分でソファに寝転んで漫画を開く。静かな部屋でキーボードを打つ音だけが聞こえる。
「まだ寝ないの?」
区切りがついたのか彼が問いかけてきた。
「もう少し読んでから」
「そう。先に寝るよ」
「はーい、おやすみなさい」
「おやすみ」
まだまだ夜は長い。今日はオールして、昼間寝てやるんだ。あー、自由って最高。よし、読むぞ。
「――んあ?」
気づいたら朝だった。またやってしまった。
「あれ?毛布?」
いつの間にか僕は毛布に包まって眠っていた。彼がかけてくれたのだろうか。それしかないじゃないか。
「よく寝てたね」
「ふぁ!?」
飛び起きると既に起きてダイニングテーブルに座っている彼と目があった。
「おおおおはようございます」
動揺してものすごく吃ってしまった。いつからそこにいたんだ!?
「おはよう。いつも寝落ちしてるの?」
「そう……ですね。お恥ずかしい」
「別にいいんじゃない?」
「実家だとこういう事できなかったので、その反動がすごく出てまして。子供みたいだなって思うんですけど止められなくて」
「俺も寝落ちすることはあるし」
「そうなんですか?」
「でも……」
「でも?」
「ソファで漫画を読む時は毛布を被ること。また風邪を引いてしまうよ?」
「あ……はい。気をつけます」
優しく微笑まれて居た堪れなくなってしまう。
「それ面白い?」
「めちゃくちゃ面白いです!よかったら貸しますよ?まぁ、僕もおすすめされたんですけどね」
「友達に?」
「由弥くんです」
「由弥?」
「はい。今度実家に伺う時貸してもらおうと思ってて」
「仲良いんだ?」
「そうですね。よく遊んでもらってます」
「そう」
「朝ご飯食べました?てか、何食べるんですか?僕はいつも菓子パンなんですけど」
「いつも?」
「はい。変ですか?」
「いや、変じゃないよ。何というか、反動がすごいね」
「へ?」
「ご実家とは違うだろ?」
「そうですね、全然違う。確かに、これも反動かも」
「面白いね、聡真くんは」
「そうですかね?」
「うん。いいと思うよ」
「それは、どうも」
褒められてる?何だか少しこそばゆい。
「俺も食べようかな。菓子パン」
「食べましょう!」
受け入れてもらえるって嬉しいかもしれない。少し心が暖かくなるのを感じた。
朝食を軽く済ませて、自室へと戻る。着替えてからPCを立ち上げて仕事の準備を始めると、社用スマホが震えた。上司の国枝さんから体調を気遣うメッセージがきた。体調は回復したので今日は大丈夫ですと返信しておく。幸い打ち合わせの予定は入っていないから1日部屋に籠もっていられる。
「うわ、メール溜まってるなー」
1件1件確認したり返信をしたりしながら仕事をスタートさせた。
――「ふぅ、今日もお疲れ様でしたっと」
PCをシャットダウンして、夕飯のことを考える。昼食は面倒くさくてカップラーメンにした。夜も……同じでいいか。リビングへ向かい、買い貯めしてあるラーメンが入った引き出しの中を漁る。うーん、塩にするか。お湯を沸かそうとポットに手をかけるとガチャッという音が聞こえた。ガチャ?その後に鍵をロックする音。んん?扉が開いて史弥さんが入ってきた。
「あれ?どうしたんですか?」
「心配で」
「別に大丈夫ですよ?ピンピンしてます」
「それは?」
「それ?」
「夕飯?」
キッチンに置かれたカップラーメンに視線をやる。
「あぁ、そうです」
「食材買ってきたからそれはしまって?」
「史弥さんが作るんですか?」
「他に誰かいる?」
「……いないですね」
「座ってて」
「はい」
カップラーメンを元の場所に戻してダイニングテーブルに向かった。椅子に腰掛けると、入れ違いでキッチンに入った彼が手を洗い、袋から食材を取り出す音が聞こえた。心配されているのだろうか。
「テレビ見ないの?」
「そうですね。見るとしてもアニメだし。史弥さん見ないでしょう?」
「アニメか。そうだね、見ない。好きなの?」
「好きですね。映像きれいだし面白いし。漫画に嵌ってるんですけど、好きな漫画がアニメ化されたりするんですよ」
「なるほど」
由弥くんは漫画好きだけど、史弥さんはそうでもないんだろうか。グツグツと煮込む音が聞こえて、何だかいい匂いが漂ってきた。
彼がこっちにやってきて卓上のIHコンロをセッティングし始めた。こんなのあったのか、知らなかった。
「今日は鍋だから」
「おお、鍋」
1人ではあまりやろうと思わない鍋。楽しみだ。
「お待たせ」
ドンと置かれた鍋。中には野菜や肉、豆腐が入っていて、食欲がわいてくる。テキパキと食事の準備を終えた彼が席についた。
「ごめんなさい。お皿とか出すの手伝えばよかった」
「別にいいよ。さぁ、食べよう」
「いただきます」
お椀に野菜や肉をよそって口に運ぶ。醤油ベースのだしが染みて美味しい。
「美味しいです」
「たくさん食べて」
「ありがとうございます」
お肉だけ取ろうとすると「野菜もね」と言われた。「取ろうとしてました」と言い訳をして追加すると、彼がくくっと笑った。すごく美味しくて、箸が進む。〆に雑炊を作ってくれた。それがまた美味しかった。
「鍋って食べることがないんですけど、いいですね」
「それはよかった」
「ありがとうございました。心配かけちゃってすみません」
「いや、謝ることはない」
「今日は僕が後片付けしますね。史弥さんは……」
今日もここにいるんだろうか。それとも今日は誰かのところに行くのかな。
「シャワー浴びようかな」
いるんだ。まぁ、2日くらい帰らなくても大丈夫か。
「分かりました。ごゆっくり」
「うん」
さてと、さっさと片付けよう。今日は金曜日だし夜更かしできる。病み上がりだけど、やめられないんだよな。
シャワーを浴び漫画を持ってリビングへ戻ると彼はノートPCを開いて何かしていた。
「何か飲みますか?」
「いや、大丈夫」
「そうですか」
牛乳を淹れてレンジで温め、ココアの粉をいれる。夜ふかしのお供はココアだ。ルンルン気分でソファに寝転んで漫画を開く。静かな部屋でキーボードを打つ音だけが聞こえる。
「まだ寝ないの?」
区切りがついたのか彼が問いかけてきた。
「もう少し読んでから」
「そう。先に寝るよ」
「はーい、おやすみなさい」
「おやすみ」
まだまだ夜は長い。今日はオールして、昼間寝てやるんだ。あー、自由って最高。よし、読むぞ。
「――んあ?」
気づいたら朝だった。またやってしまった。
「あれ?毛布?」
いつの間にか僕は毛布に包まって眠っていた。彼がかけてくれたのだろうか。それしかないじゃないか。
「よく寝てたね」
「ふぁ!?」
飛び起きると既に起きてダイニングテーブルに座っている彼と目があった。
「おおおおはようございます」
動揺してものすごく吃ってしまった。いつからそこにいたんだ!?
「おはよう。いつも寝落ちしてるの?」
「そう……ですね。お恥ずかしい」
「別にいいんじゃない?」
「実家だとこういう事できなかったので、その反動がすごく出てまして。子供みたいだなって思うんですけど止められなくて」
「俺も寝落ちすることはあるし」
「そうなんですか?」
「でも……」
「でも?」
「ソファで漫画を読む時は毛布を被ること。また風邪を引いてしまうよ?」
「あ……はい。気をつけます」
優しく微笑まれて居た堪れなくなってしまう。
「それ面白い?」
「めちゃくちゃ面白いです!よかったら貸しますよ?まぁ、僕もおすすめされたんですけどね」
「友達に?」
「由弥くんです」
「由弥?」
「はい。今度実家に伺う時貸してもらおうと思ってて」
「仲良いんだ?」
「そうですね。よく遊んでもらってます」
「そう」
「朝ご飯食べました?てか、何食べるんですか?僕はいつも菓子パンなんですけど」
「いつも?」
「はい。変ですか?」
「いや、変じゃないよ。何というか、反動がすごいね」
「へ?」
「ご実家とは違うだろ?」
「そうですね、全然違う。確かに、これも反動かも」
「面白いね、聡真くんは」
「そうですかね?」
「うん。いいと思うよ」
「それは、どうも」
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