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実戦訓練
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「さて、属性の変換までできたの、次は攻撃に転用するやり方じゃな。」
アレン先生はエイダの魔力の属性転換の出来栄えを見て満足したのかすぐ様、次の課題へと進める。
「火球を出したところでこのままでは攻撃に転用できん。相手にぶつけようにも、接近するのはリスクがありすぎる。じゃから攻撃用にその火球を遠くへ放出せねばならん。」
アレン先生は「見ておれ」というと再び詠唱を始める。
「火球よ、空を焼け。」
そういうと火球は放物線を描きながら、放たれ草原に着弾した。
「このように単純な詠唱で、魔法は放つことができる。慣れれば、口に出さずともできるようになるぞ。」
「先生!草原が燃えてる!」
「あ…いかん、マリデー!火を消してくれー!」
マリデは燃える草原を見ても、慌てず指を鳴らした、アレン先生の慌てる姿が珍しいのか半笑いだ。
草原から火が消えていく。
「ふぅ、そうじゃったな、夢の中とはいえここはかなり現実に近い構造をしているのじゃったな。忘れていたわい。」
アレン先生は前足で額を拭いながら息をつく。
「とりあえずエイダよ、今の魔法を真似してみよ。あ、できるなら炎の属性でない方が良いの。」
「わかった!」
エイダはそういうと、念じ始める。炎以外の属性の変換は初めてやるが、炎に変換させた時のイメージをそのまま他の属性に当てはめれば良いのだ。
エイダは念じる。氷よ、とエイダの手のひらの上に氷の塊が浮かんだ。
「やはり他の属性変換もできるか…」
アレン先生は小さく呟いた。その呟きに気づくことなくエイダはアレン先生に話しかける。
「詠唱はどうすればいいの?先生?」
「そうじゃな、流派によって色々な詠唱があるからの、ワシならば、氷よ、風を凍てつかせよとでもいうかの。」
「じゃあその通りにやるね、先生。」
エイダは、アレン先生の言った詠唱をそのまま言った。
エイダの手元にあった氷の塊は砕け冷気となり草原の草は白く染まっていった、成功だ。
「やはり難なくやってのけたの。」
アレン先生はこの結果を予見していたようだった。
「これで魔法の基礎は終わりじゃ。」
アレン先生の口からそう告げられた。エイダはなんとなく長かったような、短かったような訓練が終わり、気を抜いた。実際は2日ほどしか経っていなかったが、それでも厳しい訓練には違いなかった。
「さて、次は実戦訓練じゃ。明日またやるぞ。」
そして訓練は次の段階へと進む。
「はい!」
エイダはそう力強く返事をした。
ここ、夢の世界は時間の感覚がないに等しい、常に空は青いままで雲もないからだ。そんな中、時間をどう正確に知るのかというとそこもやはり、夢の管理者たるマリデに頼る他ない。
「もうそろそろ1日たつね。」
休んでいたエイダは、マリデのその言葉を聞くと跳ね起き、アレン先生の元に駆け寄る。
「先生!訓練を受けに来たよ!」
アレン先生はあくびをしながらエイダに話しかけた。
「おお、もうそんな時間か?すまんのエイダ、どうも夢の中というものは調子が悪くなる。では始めるかの?ドンキホーテ!お主の出番じゃ!」
呼ばれたドンキーホーテは、準備運動をしながら、待ってましたと言わんばかりに駆けてきた。
「おう、先生、何すればいいんだ?」
「単純じゃお前さんは的になってくれれば良い。」
「なるほどわかったぜ。」とそれだけの説明でドンキーホーテは理解したようだ。エイダから距離を取り、対峙するように彼女の方を向く。
状況飲み込めていないのはエイダだこれから何が始まろうというのだろか。
アレン先生はエイダの肩に乗り、耳元で囁く。
「ドンキーホーテに魔法を撃つのじゃ。」
エイダは一瞬、アレン先生が何を言っているのか理解が追いつかなかった。今まで習ってきたのは人を傷つける魔法だ。それをドンキーホーテに…仲間に向かってうつなど、エイダにはできなかった。
「無理だよ!先生!」
アレン先生はエイダの思っていることをすぐに見抜く。
「案ずるな、お主の魔法ではまだドンキーに傷一つつけることはできん。まだな、それにドンキーホーテに魔法をぶつけられるかどうかそれが一番の問題じゃ。とりあえず撃ってみよ。」
ぶつけられるかどうか、それはエイダの覚悟を、つまり人に向かって放てるかという覚悟を問いているのだろうか。エイダは抵抗があったが、アレン先生を信じ、何よりドンキホーテを信じて、先ほどの冷気の魔法を放つことにした。
「寒かったらごめん!」
そう言って、ドンキホーテに向かってエイダは魔法を放つ準備をする。当の本人であるドンキーホーテは「いいぜ!」などと言い、どこか気楽そうだ。そうして冷気の魔法は放たれた。草を白く染め上げ、空気さえも白に染めてしまう、冷気がドンキーホーテを襲う。
しかしドンキーホーテは襲いかかる冷気を難なくかわしてしまった。
「嘘…」
冷気の速度は決して遅くはなかった。むしろまるで空を飛ぶ、はやぶさのごとく早かったはずだ。それ以上の速度でドンキーホーテは冷気を避けたのだ。ここで初めてアレン先生の言葉の意味がわかった。
魔法をぶつけられるかどうかそれが一番の問題じゃ。
なるほどたしかにこれでは、魔法を命中させることは難しい。というか動いてよかったのだろうか。
「先生、避けちまったけどこれでいいか?」
「構わん。良いかエイダ、あれでもドンキホーテはまだ本気で避けておらん。手加減したドンキホーテに魔法を当てることこれが。今回の課題じゃ。」
実戦訓練がこうして幕を開けた。
アレン先生はエイダの魔力の属性転換の出来栄えを見て満足したのかすぐ様、次の課題へと進める。
「火球を出したところでこのままでは攻撃に転用できん。相手にぶつけようにも、接近するのはリスクがありすぎる。じゃから攻撃用にその火球を遠くへ放出せねばならん。」
アレン先生は「見ておれ」というと再び詠唱を始める。
「火球よ、空を焼け。」
そういうと火球は放物線を描きながら、放たれ草原に着弾した。
「このように単純な詠唱で、魔法は放つことができる。慣れれば、口に出さずともできるようになるぞ。」
「先生!草原が燃えてる!」
「あ…いかん、マリデー!火を消してくれー!」
マリデは燃える草原を見ても、慌てず指を鳴らした、アレン先生の慌てる姿が珍しいのか半笑いだ。
草原から火が消えていく。
「ふぅ、そうじゃったな、夢の中とはいえここはかなり現実に近い構造をしているのじゃったな。忘れていたわい。」
アレン先生は前足で額を拭いながら息をつく。
「とりあえずエイダよ、今の魔法を真似してみよ。あ、できるなら炎の属性でない方が良いの。」
「わかった!」
エイダはそういうと、念じ始める。炎以外の属性の変換は初めてやるが、炎に変換させた時のイメージをそのまま他の属性に当てはめれば良いのだ。
エイダは念じる。氷よ、とエイダの手のひらの上に氷の塊が浮かんだ。
「やはり他の属性変換もできるか…」
アレン先生は小さく呟いた。その呟きに気づくことなくエイダはアレン先生に話しかける。
「詠唱はどうすればいいの?先生?」
「そうじゃな、流派によって色々な詠唱があるからの、ワシならば、氷よ、風を凍てつかせよとでもいうかの。」
「じゃあその通りにやるね、先生。」
エイダは、アレン先生の言った詠唱をそのまま言った。
エイダの手元にあった氷の塊は砕け冷気となり草原の草は白く染まっていった、成功だ。
「やはり難なくやってのけたの。」
アレン先生はこの結果を予見していたようだった。
「これで魔法の基礎は終わりじゃ。」
アレン先生の口からそう告げられた。エイダはなんとなく長かったような、短かったような訓練が終わり、気を抜いた。実際は2日ほどしか経っていなかったが、それでも厳しい訓練には違いなかった。
「さて、次は実戦訓練じゃ。明日またやるぞ。」
そして訓練は次の段階へと進む。
「はい!」
エイダはそう力強く返事をした。
ここ、夢の世界は時間の感覚がないに等しい、常に空は青いままで雲もないからだ。そんな中、時間をどう正確に知るのかというとそこもやはり、夢の管理者たるマリデに頼る他ない。
「もうそろそろ1日たつね。」
休んでいたエイダは、マリデのその言葉を聞くと跳ね起き、アレン先生の元に駆け寄る。
「先生!訓練を受けに来たよ!」
アレン先生はあくびをしながらエイダに話しかけた。
「おお、もうそんな時間か?すまんのエイダ、どうも夢の中というものは調子が悪くなる。では始めるかの?ドンキホーテ!お主の出番じゃ!」
呼ばれたドンキーホーテは、準備運動をしながら、待ってましたと言わんばかりに駆けてきた。
「おう、先生、何すればいいんだ?」
「単純じゃお前さんは的になってくれれば良い。」
「なるほどわかったぜ。」とそれだけの説明でドンキーホーテは理解したようだ。エイダから距離を取り、対峙するように彼女の方を向く。
状況飲み込めていないのはエイダだこれから何が始まろうというのだろか。
アレン先生はエイダの肩に乗り、耳元で囁く。
「ドンキーホーテに魔法を撃つのじゃ。」
エイダは一瞬、アレン先生が何を言っているのか理解が追いつかなかった。今まで習ってきたのは人を傷つける魔法だ。それをドンキーホーテに…仲間に向かってうつなど、エイダにはできなかった。
「無理だよ!先生!」
アレン先生はエイダの思っていることをすぐに見抜く。
「案ずるな、お主の魔法ではまだドンキーに傷一つつけることはできん。まだな、それにドンキーホーテに魔法をぶつけられるかどうかそれが一番の問題じゃ。とりあえず撃ってみよ。」
ぶつけられるかどうか、それはエイダの覚悟を、つまり人に向かって放てるかという覚悟を問いているのだろうか。エイダは抵抗があったが、アレン先生を信じ、何よりドンキホーテを信じて、先ほどの冷気の魔法を放つことにした。
「寒かったらごめん!」
そう言って、ドンキホーテに向かってエイダは魔法を放つ準備をする。当の本人であるドンキーホーテは「いいぜ!」などと言い、どこか気楽そうだ。そうして冷気の魔法は放たれた。草を白く染め上げ、空気さえも白に染めてしまう、冷気がドンキーホーテを襲う。
しかしドンキーホーテは襲いかかる冷気を難なくかわしてしまった。
「嘘…」
冷気の速度は決して遅くはなかった。むしろまるで空を飛ぶ、はやぶさのごとく早かったはずだ。それ以上の速度でドンキーホーテは冷気を避けたのだ。ここで初めてアレン先生の言葉の意味がわかった。
魔法をぶつけられるかどうかそれが一番の問題じゃ。
なるほどたしかにこれでは、魔法を命中させることは難しい。というか動いてよかったのだろうか。
「先生、避けちまったけどこれでいいか?」
「構わん。良いかエイダ、あれでもドンキホーテはまだ本気で避けておらん。手加減したドンキホーテに魔法を当てることこれが。今回の課題じゃ。」
実戦訓練がこうして幕を開けた。
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