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不死鳥といやしの子守歌
8.お礼とおわびと今後の約束
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シロップの身に起きたおそろしい出来事については、メイプルもシロップもあまり言いふらしたりはしないでおきました。治療費も請求さえすれば払うということでしたが、それよりも、タルタルとソースが再びここに来ることの方がこわかったので、連絡を取らないということでメイプルたちの話はまとまりました。
しかし、このおそろしい出来事の話は、ポポからパームへ、パームからカイヤへ、カイヤからデーツへと伝言ゲームのように話が広まっていったようです。そのため、後日、デーツとハニーはハイビスカスの顔を見たいと申し出た際に、お礼とおわびの品をたくさん抱えて預かり屋さんにやってきました。
「この度は申し訳ない。まさか、タルタル君たちがあんなことをするなんて。ハイビスカスのことを守っていただき本当にありがとうございました。しかし、そのせいでシロップさんはたいへんなお怪我をしたと聞きまして」
デーツは青ざめた顔で申し訳なさそうに頭を下げましたが、メイプルもシロップも口々に言いました。
「わたしたちは当然のことをしたまでです」
「ええ、それに。デーツさんが謝るようなことでもないわ」
腕を組みながらシロップはそう言うと、デーツとハニーを安心させるように空中でくるりと一回転して見せました。
「ごらんのとおり、怪我はすっかりいいの。何故だかわかる? あなたの愛するハイビスカスが私をいやしてくれたからよ」
「シロップの怪我を前にどうしようとあたふたしていたら、ハイビスカスが自分に任せるようにってアピールしてくれたんです。そして、歌をうたってくれました。子守歌のようなきれいな歌で、気づいたら桃色の光がシロップの体をすっかりいやしてくれたんです」
メイプルがそう言うと、デーツはほっとしたような笑みを浮かべてうなずきました。
「ああ、それは間違いなく、いやしの子守歌だね」
「いやしの子守歌?」
シロップが首をかしげると、ハニーが続けて言いました。
「ハイビスカスだけじゃなくて、不死鳥っていうのはね、心から信頼できる大好きな人にはいやしの力を子守歌にのせて分けてくれるのよ。つまり、あなた達も、私たちのようにハイビスカスにとって大好きな人になったってことよ」
ハニーがそう言うと、ハイビスカスは同意するようにさえずりました。
「にくいね。とてもいいことだ」
デーツは言いました。
「やっぱり、あなたたちを信じて正解だった。この預かり屋さんがあったからこそ、ハイビスカスは傷つかずに済む。ああ、なんと嬉しい事だろう。……だが、同時に歯がゆさもあるね。私は金持ちではあるが、お金でどうにか出来ることにも限度ってものがある。光の国中の不死鳥を、ハイビスカスのように助けてやる権力なんてないのだ。そう思うとむなしくて心苦しくもあるのだよ」
しょんぼりする彼を見て、ハイビスカスは首をかしげながら美しい声でさえずりました。
なぐさめるようなその声を聞いて、メイプルもまた少し切ない気持ちになりました。そして、デーツの無力感がとてもよく理解できました。
「それはわたしも同じです。全てのモンスターを助けてあげることなんて出来ないもの。でも、デーツさん。少なくともデーツさんは、ハイビスカスのことを助けてあげられている。それってきっと誰も助けられないよりも、ずっといいことなんだと思うんです」
精一杯の言葉でなぐさめようとするメイプルの心に、デーツもまた気づいたのでしょう。力なく笑みを浮かべると、彼は答えました。
「ありがとう。そう言ってくれると、少しは気がまぎれるよ」
そして、彼は立派な背広のポケットから何かを取り出しました。名刺のようです。
「これは私の第二の連絡先だ。ここより遠い外国の別荘のものなんだ。忙しくていつもの連絡先では受け取れない時もあるからね。メイプルさん、今後ひょっとしたら、私の財産があなたたちのお役に立つ時がくるかもしれない。その際は、遠慮なく言って欲しい」
「何か困ったことがあったら、なんでも相談してね」
ハニーもまた明るい声で言いました。
「預かり屋さんを守るためなら、出来る限りのことをするってデーツも張り切っているの」
そんな二人から名刺を受け取りながら、メイプルは心に温かなものを感じました。
「ありがとうございます。とても、心強いです」
そのお礼の言葉を聞いて、安心したように微笑むデーツとハニーの様子に、メイプルは少しだけ明るい心を取り戻しました。
おそろしい出来事はまだまだ忘れられそうにありませんが、この世界にはそのおそろしい事をおおいつくせるくらいには、まだまだ優しい人達がいっぱいいるはずだと、メイプルはあらためて信じることができたのでした。
しかし、このおそろしい出来事の話は、ポポからパームへ、パームからカイヤへ、カイヤからデーツへと伝言ゲームのように話が広まっていったようです。そのため、後日、デーツとハニーはハイビスカスの顔を見たいと申し出た際に、お礼とおわびの品をたくさん抱えて預かり屋さんにやってきました。
「この度は申し訳ない。まさか、タルタル君たちがあんなことをするなんて。ハイビスカスのことを守っていただき本当にありがとうございました。しかし、そのせいでシロップさんはたいへんなお怪我をしたと聞きまして」
デーツは青ざめた顔で申し訳なさそうに頭を下げましたが、メイプルもシロップも口々に言いました。
「わたしたちは当然のことをしたまでです」
「ええ、それに。デーツさんが謝るようなことでもないわ」
腕を組みながらシロップはそう言うと、デーツとハニーを安心させるように空中でくるりと一回転して見せました。
「ごらんのとおり、怪我はすっかりいいの。何故だかわかる? あなたの愛するハイビスカスが私をいやしてくれたからよ」
「シロップの怪我を前にどうしようとあたふたしていたら、ハイビスカスが自分に任せるようにってアピールしてくれたんです。そして、歌をうたってくれました。子守歌のようなきれいな歌で、気づいたら桃色の光がシロップの体をすっかりいやしてくれたんです」
メイプルがそう言うと、デーツはほっとしたような笑みを浮かべてうなずきました。
「ああ、それは間違いなく、いやしの子守歌だね」
「いやしの子守歌?」
シロップが首をかしげると、ハニーが続けて言いました。
「ハイビスカスだけじゃなくて、不死鳥っていうのはね、心から信頼できる大好きな人にはいやしの力を子守歌にのせて分けてくれるのよ。つまり、あなた達も、私たちのようにハイビスカスにとって大好きな人になったってことよ」
ハニーがそう言うと、ハイビスカスは同意するようにさえずりました。
「にくいね。とてもいいことだ」
デーツは言いました。
「やっぱり、あなたたちを信じて正解だった。この預かり屋さんがあったからこそ、ハイビスカスは傷つかずに済む。ああ、なんと嬉しい事だろう。……だが、同時に歯がゆさもあるね。私は金持ちではあるが、お金でどうにか出来ることにも限度ってものがある。光の国中の不死鳥を、ハイビスカスのように助けてやる権力なんてないのだ。そう思うとむなしくて心苦しくもあるのだよ」
しょんぼりする彼を見て、ハイビスカスは首をかしげながら美しい声でさえずりました。
なぐさめるようなその声を聞いて、メイプルもまた少し切ない気持ちになりました。そして、デーツの無力感がとてもよく理解できました。
「それはわたしも同じです。全てのモンスターを助けてあげることなんて出来ないもの。でも、デーツさん。少なくともデーツさんは、ハイビスカスのことを助けてあげられている。それってきっと誰も助けられないよりも、ずっといいことなんだと思うんです」
精一杯の言葉でなぐさめようとするメイプルの心に、デーツもまた気づいたのでしょう。力なく笑みを浮かべると、彼は答えました。
「ありがとう。そう言ってくれると、少しは気がまぎれるよ」
そして、彼は立派な背広のポケットから何かを取り出しました。名刺のようです。
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そのお礼の言葉を聞いて、安心したように微笑むデーツとハニーの様子に、メイプルは少しだけ明るい心を取り戻しました。
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