モンスターの預かり屋さん

ねこじゃ・じぇねこ

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居場所のないモンスターたち

1.ピリピリとした空気の中で

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 ローズマリーが水の国へと帰ってからさらに半月くらいの時間がたちました。
 メイプルたちは時たま彼女の事を思い出しては元気にしているか心配したものでした。しかし、時がたつにつれ、そうした心のゆとりが段々だんだんとなくなっていくことに気づきました。
 毎日預かり屋さんに届く新聞には、光の国とその同盟国の戦士たちがいかに戦地で活躍しているのかという記事が掲載けいさいされていましたが、それと同時に未来への不安について語る記事もるようになっていました。

 特に何度も報道されるのが水の国の人魚たちによるスパイ行為こういと、王さまに会いに来た水の国からの使節団の一部が行方不明になったというものでした。
 メイプルたちはその背景にローズマリーたちが受けた襲撃しゅうげきがあったことを知っているのですが、そのことは何故だか記事に載りません。
 不思議に思ったフェンネルがとても素直な疑問を口にしていた事を聞いて、ある日、ポポは匿名とくめいで新聞社に電話をかけ、ローズマリーが被害ひがいにあったあの襲撃の話をぼかしながら語り、「そういうウワサを聞いたのだが本当だろうか」とたずねてみました。しかし、新聞社の人達はあまり関わりたくなかったようで、適当てきとうにあしらうと、すぐにガチャンと電話を切ってしまいました。
 そのため、世間ではやっぱり人魚をおそれる人達が大多数でした。行方不明になった使節団の人魚たちも隠れてどこかでスパイをしているとまことしやかに語る人々がたくさんいました。
 かといって、メイプルたちもまた人魚の女王や姫の率いた使節団はそんな人達じゃないと堂々どうどうと主張することもできませんでした。だって、預かり屋さんの地下にローズマリーがいたことだってヒミツなのですから。

 ともあれ、メイプルたちはしばらくの間、歯がゆい思いをしながら、預かり屋さんを続けていました。
 このようなご時勢であっても、モンスター愛好家たちの様子はあまり変わりません。戦争があってもなくても、モンスターをあずかり、お世話をする日々は一緒です。
 それでも、モンスターを取り巻く環境にも、いやな変化の波がじわじわと押し寄せてきていたのです。
 ある日、こんな事がありました。
 光の国の都会に暮らすある男性が、閉店間際におどおどとしながら大きなバスケットを持ち込んできました。開けてみれば中には手まりネコというモンスターがなんと五匹も入っていました。
 ただのネコによく似ていますが、丸くなるとまりのようになり、ぽんぽんはずむことができる、ペットとして人気の高いモンスターのことです。
 年齢はバラバラで、中にはお年寄りもいました。そんな手まりネコたちを前に、彼は言いました。

「すみません、実はこの子たちの里親を探しているんです……」

 おどろきながらメイプルたちが事情を聞いたところ、このネコたちはある兵隊さんのお家の家族だったことを男性は語りました。
 兵隊さんにはおくさんと子どもさんがいました。平和な時代はみんなでなごやかにネコたちに囲まれながら暮らしていたのですが、悲しい事にその兵隊さんは戦地でなくなり、ひとりきりで必死にはたらいていた奥さんもまた病気で倒れてしまったのです。
 そこで、子どもたちは親せきのお家にあずけられることになったのですが、ただのネコならばまだしもモンスターまでは面倒を見切れないと引き取りを断られてしまったというのです。
 ここに連れてきてくれたのはその亡くなった兵隊さんのお友達でした。彼もまたモンスターはきらいではないものの五匹も引き取れないと困り果てていたのです。
 メイプルたちも困ってしまいました。だって、モンスターをやしなうのだってお金はいるのです。手まりネコはペットとして飼いやすい部類のモンスターでしたが、何も考えずに引き取るというのは、いかにモンスター好きのメイプルであっても、ためらってしまったのです。
 しかし、この度の手まりネコたちは幸運にめぐまれていました。
 というのも、たまたまその場にはハイビスカスのことでこっそり相談に来ていたデーツたちがいたのです。彼は行き場を失ったこの手まりネコたちのことをとても可哀想かわいそうに思い、その場で提案ていあんしたのです。

「ならば、私が引き受けましょう。お金ならば心配いらないよ。私が払うからね。だからメイプルさん、どうかこの子たちを預かってくれないだろうか?」

 そういうわけで、その日以降、預かり屋さんには五匹の手まりネコたちが暮らすようになりました。
 若いネコはすぐになれましたが、お年寄りのネコは夜になると悲しそうになき始めるので大変です。それでも、預かり屋さんのみんながやさしく見守り続け、時にはハイビスカスがネコたちにちょっかいをかけられない高い場所からやさしい子守歌を聞かせてあげたおかげか、数日もすると落ち着いていきました。

 こうした事情をかかえていたのは、この手まりネコたちだけではありません。
 この日をさかいに、メイプルたちのもとには、ふくざつな事情で預けられるモンスターたちが増えていきました。里親を見つけるための一時的な預かりが多く、すぐに次の里親は見つかりましたが、預けられるモンスターたちはいずれも悲しそうな目をしていました。言葉を理解りかいできるモンスターばかりではなかったので、自分の身に何が起きていることや、どうして今まで暮らしていた家や家族と離れなくてはいけないのかが分からず、不安のままに落ち込んでいる思っているモンスターも多かったのです。
 そんな彼らにメイプルたちは出来る限りの愛情をこめてお世話をしました。
 平和になれば、きっと前みたいな暮らしがもどるはず。その希望だけはどうしても捨てたくなかったのです。そんなメイプルのことを、パートナーであるシロップはもちろん、ポポやフェンネルもできるかぎりささえました。
 とくにフェンネルは積極的に角の力を使い、心の図書館を利用して情報を集めていました。
 そう、それは、フェンネルの調べ物が多くなってきたころのことでした。手まりネコについてもっと調べようと図書館に意識いしきを向けたフェンネルは、そこで、思わぬ交流をすることになったのです。
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