あの頃の君に…

百千藤(もちと)

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第三話

友達

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葉「ねぇ…とりあえず保健室行こうよ!制服も濡れちゃってるし気持ち悪いでしょ?」
そう言って彼女に手を差し伸べたが、彼女は手を振り払らい真っ直ぐな瞳で僕を睨みつけ言葉を発した。

百合依「そんな気休めの優しさなんて要らない、どうせアンタも一緒でしょ?同情なんて要らない。」
そう言葉を残した彼女は自分で立ち上がりその場を去ろうとしたが、僕は彼女の手を掴み自分の体に引き寄せてそのまま彼女を抱き抱えた。

百合依「えっ?ちょっと何してんの!!降ろしてよ。」

葉「良いから黙って一緒に保健室にいくよ。」

百合依「アンタ何言って!」葉「みんな彼女を保健室連れて行ってくるから先に教室に行ってて。」
百合依「ちょっとアンタ話聞いてんの?」葉「ん?ごめん聞いてなかったわww」

葉「じゃあ行ってくるよ!」
そう言って僕は、ジタバタと動く彼女を抱えながらその場を後にし、保健室へと足を運んだ。

真白「…行っちゃったよ。」

佑「めんどくさい事起きなきゃいいけどな。」

薺「きっと葉は昔の自分をあの子に重ねたんじゃないかな。」

星「……」

剣「まぁ僕らは葉が困っている時に手を貸してあげればいいんじゃない。」

薺「そうだね。とりあえず教室行こっか。」


百合依「ねぇ!ほんとに降ろして欲しいんだけど。」
   
葉「どうして?」

百合依「どうしてって!もうほんとに大丈夫だから。」
    
   「それに…」

葉「ん?それに?」

百合依「それに…もう!恥ずかしいからに決まってんでしょ!!馬鹿じゃないのアンタ。」

葉「あぁ!そうだったの?でも大丈夫だよ、僕はなんとも思わないし!それにもう周りに誰もいないし。」

百合依「そうゆう事じゃなくて…もういいや。」
(何こいつ、全然読めないし何考えてるのか分からない。)

葉「あ!保健室に着いたよ!」

(ガラガラッ)

葉「先生は…居ないよな。」

百合依「どうしていないの?」

葉「椛(もみじ)先生はいつも出勤して来るのが遅いんだよ!あと酒臭いしw」

百合依「え?いつも二日酔いで仕事しに来てるの?それってどうなの社会人として。」

葉「いやー毎回酒臭いわけではでは無いんだけどねw」

 「あっこの体操服に着替えなよ。」

百合依「でもこれアンタの」

葉「良いって!どうせこんな暑い中体育なんてやりたくなかったから。だから僕からしたらラッキーて感じ?あっゴメン君に失礼だったね。」

百合依「別にどうでも良い…」

葉「そっか…じゃあカーテン閉めて着替えなよ!待ってるから。」

百合依「あんたが待つ必要なくない?もう私に用なんて無いでしょ!洗って明日返すからもう教室戻りなよ。」

葉「だからやりたくないって言ったじゃん!一時限目なんだよ体育が!それにまだ終わってないから。」

百合依「何が?」

葉「怪我の手当て」

百合依「そんな事しなくて良いから」

葉「でも顔にキズが残ったら」
僕がそう言うと彼女が僕の言葉を遮りながら声を荒げた。

百合依「ほんっとにウザイんだけど!マジでなんなの?さっきも言ったけどそんな優しさも同情もいらない!私には必要ないの。それにさっきからヘラヘラしたその笑顔バカじゃないの。」

僕は、彼女の顔を何も言い返さずにただ見つめているだけだった。
声を荒げながら真っ直ぐ僕を見る少し切れ長の大きなその瞳を見つめながら僕は、これが彼女本来の姿なのだろうと思った。
誰一人として信用しておらず、彼女の目に映るもの全てがおそらく敵なのだろう。
それに、僕は彼女に対して何か違和感をずっと感じていた。

なぜ、彼女を助けてしまったのか?
らしくもない、普段こんな事したりしない自分が不思議で仕方なかった。
気がつくと無意識に彼女のことを助けていた。

…そうか!そういう事か…
彼女をトイレで初めて見た時に抱いたこの感情のワケは…



そして、僕はクスッと笑い声を荒げ呼吸を整えてる彼女の目を見つめこう言った。

葉「ねぇ…僕等友達にならない?」

百合依「…は!?」

僕が言った言葉に目を見開きびっくりしたのか、それとも呆れているのかなんとも言えないような顔をしている彼女に思わず笑意が出てしまった。

百合依「アンタ私を馬鹿にしてんの?それとも喧嘩売ってる?」
そう言って彼女は、また睨んできた。

葉「馬鹿になんてしてないし喧嘩も売ってなんかないよ。だだ、僕は本当に君と友達になりたいだけだよ。」

百合依「なんで私なんかと?」

葉「そうだね…それはまだ教えてあげない!それよりさ、名前教えてよ!」
 
 「僕は、楸葉!一年一組」

百合依「別に聞いてないし教えない。」

葉「そんなこと言わずに教えてよ!ね…」

(なんなのコイツ、読めないしなんか調子狂わされる…でも、別に嫌な気分なんかじゃなかった。今までの男子達みたいに下心で近寄ってくる連中とは違うなんか雰囲気をまとってるし、それに…なにか暖かい気持ちに自分自身がなってる。こんな人に会った事なんて一度もない。彼なら、私を変えてくれる?救ってくれる?明るい場所へ導いてくれるの?)

葉「おーい!聞いてる?」

百合依「え?」

葉「だから、名前教えてって言ってんじゃん。」

百合依「そうだね…いいよ!教えてあげても。一応助けてくれたし、まぁ頼んでないんだけどね。」
   
   「それに、少しだけ懸けてみようと思って。」

葉「え?懸ける?」

百合依「何でもない、独り言だから。」
   
   「あ!名前だったね、私の名前は百合依!!一本百合依。クラスは一年六組」

葉「一本百合依…うん、覚えた!よろしく、一本さん。」





少しだけ懸けてみようと思う。あの時君が言ったこの意味を今なら理解できると思う。
ねぇ百合依、覚えてるかな?ここから始まったんだよ。
ここから僕らは、傷つきながらそれでも楽しくて、苦しみながらでも嬉しくて
こんな日々が、いつまでもずっと続いてくことを僕は祈ってたんだ。


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