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第七話
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次の日から、クリスティーナはジェームズ達と一緒に馬車に乗るようになった。
「クリスティーナは馬車で良いのかい?私はその方が安心なんだけどね…」
ジェームズに尋ねられて、クリスティーナは作った笑顔で答える。
「良いのです。私が外にいては足手まといになってしまうもの」
移動は順調で、何事も無く進んで行く。
少し馬を休ませようと、少し休憩を取ることになり
外に出て身体を伸ばすクリスティーナ。
ウィルがすかさず声を掛けてきた。
「ずっと馬車で座ってるのも退屈だろう?俺が稽古を付けてやろうか?」
上から物を言う態度に苛立ったが、もっと強くなりたいクリスティーナは頼むことにする。
ウィルの稽古は斬新で、剣とは関係の無い突飛な物だった。
洋服を丸めて作った障害物をウィルが勢い良く投げて、それを躱す訓練。
岩の上などの高い所から飛び降りる訓練。
障害物の数はどんどん増えて行き、飛び降りる高さも上がっていった。
それから一週間
自分は何をさせられているんだろう?
そう思いながら障害物を避けていたクリスティーナだったが
「今日は剣を使おうか」と、ようやくウィルに剣の稽古をつけてもらえた。
ウィルの剣の動きがよく見える。
何処から来るのか、どう避ければ良いのか
足のバネが柔らかくなったのか、楽に動ける。
粗野な言動は頂けないが、ウィルの実力は確かだ。
クリスティーナはウィルを師匠と仰ぐようになり、子供扱いされても気にならなくなった。
それでも、鬱陶しく感じると「子供扱いしないで」と怒る。
そして、無事に王都に辿り着いた。
「ウィル、世話になったね」
「いや、俺もこっちの方に用があったから…。クリスも元気でな」
ウィルはクリスに手を差し出した。
「ありがとう。ウィルのお陰で有意義な時間になったわ」
握手を交わし、ウィルが人混みの中に消えていく。
クリスティーナ達は宿に向かった。
ジェームズの知り合いに会う前に、湯浴みをして身だしなみを整える為だ。
翌日、クリスティーナ達は馬車に乗って目的地まで行く。
案内の者に通されて入ったのは、謁見の間。
ジェームズの知り合いとは、フォーリュの国王ランダースだった。
「よく来たね。待っていたよ。君がクリスティーナかな?いやぁ、息子の歳が近かったら相手になって欲しかったけどね…。残念だなぁ」
ランダースは王とは思えない口調で話し出す。
「お戯れを。王子殿下は既にお子様もいらっしゃるではないですか…」
ジェームズがそう返すと、ランダースは愉快そうに笑った。
「勿体ない事をしたね。じゃぁ、オリバーの息子はどうかな?確か、お前の放浪息子は婚約者がいないだろう?」
「願ってもない事ですが…、何分息子は何処にいるかもわかりませんので……」
オリバーは真面目な顔で答えた。
「まぁ、仕方がないか。あの男は何処にいるんだ?」
「わかりかねます。連絡も寄越さない不甲斐ない息子ですので…」
ランダースとオリバーのやり取りを黙って聞いているクリスティーナ達。
「ジェームズ、君にはこのオリバーの助手として働いて貰いたい。前もって伝えたように、君には伯爵位を授ける。領地は小さな所だが、オリバーの治める領の隣だよ。本当はもう少し良いものが良かったんだけどね…。他の者に示しがつかないから、許してくれ」
ランダースの謝罪に、ジェームズは慌てた。
「とんでもございません。爵位を頂けるだけで充分にございます。領地まで賜ることができ、これ以上にない程の幸せにございます」
「ジェームズ・ターナー伯爵。貴殿の活躍に期待しているぞ」
ランダースはニヤッと笑い、ジェームズは家臣の礼をした。
「あ、そうそう。もう既に領民がいるから、後はよろしくね」
ジェームズ達がその場を後にしようとすると、ランダースが声をかける。
「本当にありがとうございます」
ランダースへの挨拶を終え、クリスティーナ達はターナー伯爵領へと向かった。
オリバーは宰相を務めるロンバート公爵家の当主。
王都の隣にある領を賜り、ジェームズが授かった領地はその隣にある。
小一時間も馬車を走らせると領地に着いた。
目の前に広がるのは想像を絶するほど荒れた土地だった。
「話には聞いていたが、これ程とは…」
愕然と立ち尽くしていると、領民たちがやって来た。
「旦那様、奥様、それにお嬢様も。ご無事で何よりです」
出迎えたのは公爵家で勤めていた使用人達。
元公爵領の領民たちもいる。
クリスティーナ達が移住を決めた時
ジェームズが使用人や領民達と話し合いをして
半数は残り、半数が共に移住することを決めた。
ランダースから荒れた土地だが伯爵位と小さな領地を授けると言われ、先立って使用人達は移動していたのだ。
「今までのようには行かないが、これからみんなで頑張って行こう」
ジェームズは出迎えた使用人達に声を掛け、今後の計画を練る。
オリバーの補佐の仕事。荒れた土地の開拓。
他の貴族た達に受け入れてもらえるように
コネ作りや功績を作るなど、やることは山積みだ。
「一ヶ月は登城しないで領地開拓に専念していい」
ランダースに言われ、ジェームズは出来る限りのことをしていた。
荒れた畑を耕し、肥料を混ぜて育てやすい作物を植える。
近くに小川が流れていたので、水を引く工事をする。
時間が掛かるが焦りは禁物だ。
他に何ができるだろうか?
ジェームズが思い悩んでいると、王家から手紙が届いた。
「クリスティーナが危惧していた通りになるとは…」
手紙を読み終えたジェームズはクリスティーナを呼んだ。
「お父様、何か御用でしょうか?」
クリスティーナが訪ねてくると、ジェームズは手紙を渡した。
「クリスティーナ言った通り、ウィルフレッド殿下が動いたようだ。少しでも遅れていれば、我々は出国出来なかったかも知れない」
手紙には
クリスティーナはウィルフレッドの側室になるので、出国させないように動いていること
クリスティーナを見つけた者には報奨金が与えられること
そして見つけ次第、丁重に保護すること
そんな御触書がイディオ国で回っていると書かれていた。
「何でも願いを叶えると言っていたのに、撤回するおつもりなのかしら?」
クリスティーナはそっとため息を吐く。
(困るわ。せっかくここまで来たというのに…。何年も掛けて計画したの。邪魔はさせないわ)
クリスティーナは今までの自分の努力を思い返していた。
「クリスティーナは馬車で良いのかい?私はその方が安心なんだけどね…」
ジェームズに尋ねられて、クリスティーナは作った笑顔で答える。
「良いのです。私が外にいては足手まといになってしまうもの」
移動は順調で、何事も無く進んで行く。
少し馬を休ませようと、少し休憩を取ることになり
外に出て身体を伸ばすクリスティーナ。
ウィルがすかさず声を掛けてきた。
「ずっと馬車で座ってるのも退屈だろう?俺が稽古を付けてやろうか?」
上から物を言う態度に苛立ったが、もっと強くなりたいクリスティーナは頼むことにする。
ウィルの稽古は斬新で、剣とは関係の無い突飛な物だった。
洋服を丸めて作った障害物をウィルが勢い良く投げて、それを躱す訓練。
岩の上などの高い所から飛び降りる訓練。
障害物の数はどんどん増えて行き、飛び降りる高さも上がっていった。
それから一週間
自分は何をさせられているんだろう?
そう思いながら障害物を避けていたクリスティーナだったが
「今日は剣を使おうか」と、ようやくウィルに剣の稽古をつけてもらえた。
ウィルの剣の動きがよく見える。
何処から来るのか、どう避ければ良いのか
足のバネが柔らかくなったのか、楽に動ける。
粗野な言動は頂けないが、ウィルの実力は確かだ。
クリスティーナはウィルを師匠と仰ぐようになり、子供扱いされても気にならなくなった。
それでも、鬱陶しく感じると「子供扱いしないで」と怒る。
そして、無事に王都に辿り着いた。
「ウィル、世話になったね」
「いや、俺もこっちの方に用があったから…。クリスも元気でな」
ウィルはクリスに手を差し出した。
「ありがとう。ウィルのお陰で有意義な時間になったわ」
握手を交わし、ウィルが人混みの中に消えていく。
クリスティーナ達は宿に向かった。
ジェームズの知り合いに会う前に、湯浴みをして身だしなみを整える為だ。
翌日、クリスティーナ達は馬車に乗って目的地まで行く。
案内の者に通されて入ったのは、謁見の間。
ジェームズの知り合いとは、フォーリュの国王ランダースだった。
「よく来たね。待っていたよ。君がクリスティーナかな?いやぁ、息子の歳が近かったら相手になって欲しかったけどね…。残念だなぁ」
ランダースは王とは思えない口調で話し出す。
「お戯れを。王子殿下は既にお子様もいらっしゃるではないですか…」
ジェームズがそう返すと、ランダースは愉快そうに笑った。
「勿体ない事をしたね。じゃぁ、オリバーの息子はどうかな?確か、お前の放浪息子は婚約者がいないだろう?」
「願ってもない事ですが…、何分息子は何処にいるかもわかりませんので……」
オリバーは真面目な顔で答えた。
「まぁ、仕方がないか。あの男は何処にいるんだ?」
「わかりかねます。連絡も寄越さない不甲斐ない息子ですので…」
ランダースとオリバーのやり取りを黙って聞いているクリスティーナ達。
「ジェームズ、君にはこのオリバーの助手として働いて貰いたい。前もって伝えたように、君には伯爵位を授ける。領地は小さな所だが、オリバーの治める領の隣だよ。本当はもう少し良いものが良かったんだけどね…。他の者に示しがつかないから、許してくれ」
ランダースの謝罪に、ジェームズは慌てた。
「とんでもございません。爵位を頂けるだけで充分にございます。領地まで賜ることができ、これ以上にない程の幸せにございます」
「ジェームズ・ターナー伯爵。貴殿の活躍に期待しているぞ」
ランダースはニヤッと笑い、ジェームズは家臣の礼をした。
「あ、そうそう。もう既に領民がいるから、後はよろしくね」
ジェームズ達がその場を後にしようとすると、ランダースが声をかける。
「本当にありがとうございます」
ランダースへの挨拶を終え、クリスティーナ達はターナー伯爵領へと向かった。
オリバーは宰相を務めるロンバート公爵家の当主。
王都の隣にある領を賜り、ジェームズが授かった領地はその隣にある。
小一時間も馬車を走らせると領地に着いた。
目の前に広がるのは想像を絶するほど荒れた土地だった。
「話には聞いていたが、これ程とは…」
愕然と立ち尽くしていると、領民たちがやって来た。
「旦那様、奥様、それにお嬢様も。ご無事で何よりです」
出迎えたのは公爵家で勤めていた使用人達。
元公爵領の領民たちもいる。
クリスティーナ達が移住を決めた時
ジェームズが使用人や領民達と話し合いをして
半数は残り、半数が共に移住することを決めた。
ランダースから荒れた土地だが伯爵位と小さな領地を授けると言われ、先立って使用人達は移動していたのだ。
「今までのようには行かないが、これからみんなで頑張って行こう」
ジェームズは出迎えた使用人達に声を掛け、今後の計画を練る。
オリバーの補佐の仕事。荒れた土地の開拓。
他の貴族た達に受け入れてもらえるように
コネ作りや功績を作るなど、やることは山積みだ。
「一ヶ月は登城しないで領地開拓に専念していい」
ランダースに言われ、ジェームズは出来る限りのことをしていた。
荒れた畑を耕し、肥料を混ぜて育てやすい作物を植える。
近くに小川が流れていたので、水を引く工事をする。
時間が掛かるが焦りは禁物だ。
他に何ができるだろうか?
ジェームズが思い悩んでいると、王家から手紙が届いた。
「クリスティーナが危惧していた通りになるとは…」
手紙を読み終えたジェームズはクリスティーナを呼んだ。
「お父様、何か御用でしょうか?」
クリスティーナが訪ねてくると、ジェームズは手紙を渡した。
「クリスティーナ言った通り、ウィルフレッド殿下が動いたようだ。少しでも遅れていれば、我々は出国出来なかったかも知れない」
手紙には
クリスティーナはウィルフレッドの側室になるので、出国させないように動いていること
クリスティーナを見つけた者には報奨金が与えられること
そして見つけ次第、丁重に保護すること
そんな御触書がイディオ国で回っていると書かれていた。
「何でも願いを叶えると言っていたのに、撤回するおつもりなのかしら?」
クリスティーナはそっとため息を吐く。
(困るわ。せっかくここまで来たというのに…。何年も掛けて計画したの。邪魔はさせないわ)
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