鎖でつないで、ここにとどめて

青埜澄

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5話

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   玄関の鍵を開けると、甘ったるいドラマのメロディがリビングに静かに流れていた。

──「俺は、お前を、誰にも渡さないって決めたんだ……!」

 靖一は眉をひそめる。荷物を置く足を止め、ふとソファに目をやれば、ノラがクッションを抱えてテレビに集中していた。白いシャツの薄布越しに見える背中のラインは、あまりにも無防備だ。
 靖一は無言でリモコンを手に取り、テレビの電源を切った。

「今、すごくいいところだったのに」

 ノラは靖一の顔を見上げ、特に何を訴えるでもない口調で言った。

「興味ない」

 短く冷たく返し、キッチンへ向かおうとしたが、背後からノラの声が追いかけてくる。

「今ね、主演の俳優が幼なじみと──」

 だが、最後まで言わせるつもりはなかった。踵を返し、ノラの前に立つ。

「俺の言うことに反抗せずに従うって、約束したよな?」
「うん、したよ」
「なら、黙れ」

 その声は命令そのものだった。静かに従うノラの表情は、どこか嬉しそうにも見える。それが靖一には癪に障った。掴めそうで掴めない、その曖昧さが鬱陶しくて、だからこそ壊したくなる衝動が胸を騒がせた。

「服を脱げ」

 ノラはゆっくりとTシャツの裾を掴み、上へと脱ぎ始めた。肌が露になる。羞恥と期待の混ざったその表情に、ためらいはなかった。靖一の視線がそれに絡め取られる。
 ズボンを脱がせ、両手首に革のベルトを巻きつけて、ベッドの背に引き上げ固定する。

「これ、なに……?」
「……しつけだ」

 ノラがわずかに微笑む。その余裕を奪って壊してやろうと、更に両脚も開かせてベルトで縛った。

「後ろを使った経験は?」

 ノラが喉を鳴らし、ごくりと飲み込む。

「……あるよ。前に一緒にいた人が、そういうの好きだったから」

 靖一の眉がわずかに動く。胸の奥に刺さった棘が熱を帯びた。ノラの身体に視線を落とすと、胸の辺りの火傷のような跡と脇腹の大きな傷跡が目に入る。誰に傷つけられたのか──問い詰めたくなる衝動を抑え込んだ。
 靖一は引き出しから黒い袋を取り出した。ノラの視線がその袋に吸い寄せられるのを感じる。

「なに、それ?」

 それには答えず、袋からリモコン式のローターを取り出す。スイッチを入れると、微かなモーター音が部屋に溶け込んだ。

「……ちょっと待って、それ、どうするの──」

 ノラの声を遮り、膝を押さえつけてさらに脚を開かせる。肌を擦り合わせるような距離。ローターの先端を中心に押し当てると、ノラの身体が小さく震えた。

「っ、ん……あ……!」

 その声に靖一の口元がわずかに緩む。身体中に熱が巡り、背に汗が滲む。

 ベルトで固定されたノラの膝が小刻みに震え、指先でシーツを掴んでいる。ローターをゆっくり押し込む。羞恥、快感、戸惑い、様々な色彩がノラの瞳に揺れる。

「や……あの、ちょっと……変、すご……っ」

「何が“変”なんだ?ちゃんと言え」

 首を振るノラを見下ろしながら、靖一は胸の奥の焦燥と支配欲に呑まれていた。
モーター音と浅い呼吸音だけが部屋に満ちる。

「だめ……っ、これ、イッ……!」

 ノラの腰が跳ね、足の指が丸まり、震える身体から声にならない声が洩れる。
 靖一はその様子をじっと見つめ、ノラの額にかかる髪を指先で梳き、そっとスイッチを切った。
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