12 / 15
12話
しおりを挟む
「で、ここで一体なにがしたいんだ?」
靖一はラブホテルの一室、大きなベッドの縁に腰掛けながら腕時計を外した。
「エッチだよ。ラブホテルだもん」
ノラは小悪魔っぽく笑った。つやのある唇と細められた目が、まるで挑発しているようだった。その笑みに飲み込まれそうになる。靖一は平静を装うため、わざと冷たく言い返した。
「……そうじゃなくて、家でもできるだろ?」
「家じゃできないことやるんだよ」
ノラは立ったまま、真っ直ぐな声で言った。
「今日は俺が主導権握って、靖一は何も考えないで気持ちよくなってもらうだけ。どう?」
「どうって……」
そんなことを考えていたのか、と思う。自分のことを「気持ちよくさせたい」なんて言われるのは、どこかむず痒くて、同時に胸の奥がざらつく。
「気持ちはありがたいけど、俺は……相手を支配してるって感覚がないと駄目なんだ。誰かにされるって状況だと、どうしても……勃たない。というか、気持ち悪くなる」
「そっか。……わかった。じゃあ主導権は靖一に譲るよ」
あっさりと折れるノラに、逆に動揺する。優しさなのか、それとも駆け引きなのか。靖一は言葉を濁しながら立ち上がった。
「ああ……先にシャワー浴びてくる」
シャワーを浴びながら、靖一はぼんやりと考えていた。ノラの気持ちを無下にしたくはない。だが、自分の嗜好もまた、否定できない。どうすれば──。
体を拭きながら部屋を見渡すと、ベッドサイドに「コスチュームレンタル」の案内が目に入った。数分後、彼はある一点に目を留め、「これだ」と確信した。
ノラがシャワーから上がると、靖一は小さな袋を手渡した。
「ほら、これ着ろよ」
ノラが袋の中を覗くと、中から出てきたのはレースのついた黒いメイド服だった。
「やだよ……これ、女物じゃん……」
眉をひそめながらも、ノラは服をまじまじと見つめた。その様子がいつになく慎重で、ちょっと面白い。
「それ着るなら、今日はノラに主導権渡してやる。どうだ?」
言葉を聞いて、ノラの動きが一瞬止まった。そして数秒の沈黙ののち、小さな声で言った。
「……じゃあ、着る」
現れたノラは、想像以上に似合っていた。肩をすぼめ、頬を赤く染めながら「ほら、やっぱ変だよ」と言ったが、靖一はそれを見るなり、明確な反応を覚えた。
ノラの方も、それに気づいたらしい。
「……靖一が、なにもできないようにしていい?」
「……ああ」
返事を聞くと、ノラは備え付けの手錠を手に取り、ベッドのフレームに靖一の片手を繋げた。もう片方も軽く拘束され、身動きが少しだけ制限される。
「これで……逃げられない」
ノラはメイド服の裾をひるがえし、靖一の上に跨るようにしてしゃがんだ。
そして両手を使って、靖一の胸元に顔を近づける。
「……ずっとこうしてみたかった」
そう囁くと、乳首に唇を寄せ、軽く吸い、舌で撫でる。
「……く、っ……」
くすぐったさに思わず声が漏れる。けれどその姿があまりにも健気で、真剣で、靖一の身体はむしろ熱を帯びていく。
「ちょっと硬くなってきた……可愛い」
ノラの声に、今度は心臓が跳ねた。
指が下腹部へと滑り込み、そこにも熱い触れ方で触れてくる。上と下、同時に快感を与えられて、さすがに靖一も息が乱れ始めた。
「……っ、ノラ……」
呼ぶとノラは顔を上げる。瞳の奥にまっすぐな愛情と欲望が入り混じっていた。
靖一は舌を突き出し、合図をした。ノラがそこに自分の舌を絡める。湿った音が重なり、息が漏れ、熱が、部屋に充満していく。
「‥‥ん…ふ、っ……ぅん……」
甘ったるく、粘り気のある口づけの最中、靖一はふいに手錠の鍵を抜き取り、片方だけを外した。
「えっ……?」
驚いたノラに、靖一は反対の手で頭を掴み、ぐっと自分の下へ押し倒した。
いつもの癖のように静かに、でも確実に力を込めて身体を支配する。
「ノラ。……主導権、返してもらうぞ」
そう低く囁いて、ベッドのスイッチを消した。部屋がほんのりと赤く染まる。
これから先は、ノラの身体がどこまで耐えられるか──それを試す時間だ。
靖一はラブホテルの一室、大きなベッドの縁に腰掛けながら腕時計を外した。
「エッチだよ。ラブホテルだもん」
ノラは小悪魔っぽく笑った。つやのある唇と細められた目が、まるで挑発しているようだった。その笑みに飲み込まれそうになる。靖一は平静を装うため、わざと冷たく言い返した。
「……そうじゃなくて、家でもできるだろ?」
「家じゃできないことやるんだよ」
ノラは立ったまま、真っ直ぐな声で言った。
「今日は俺が主導権握って、靖一は何も考えないで気持ちよくなってもらうだけ。どう?」
「どうって……」
そんなことを考えていたのか、と思う。自分のことを「気持ちよくさせたい」なんて言われるのは、どこかむず痒くて、同時に胸の奥がざらつく。
「気持ちはありがたいけど、俺は……相手を支配してるって感覚がないと駄目なんだ。誰かにされるって状況だと、どうしても……勃たない。というか、気持ち悪くなる」
「そっか。……わかった。じゃあ主導権は靖一に譲るよ」
あっさりと折れるノラに、逆に動揺する。優しさなのか、それとも駆け引きなのか。靖一は言葉を濁しながら立ち上がった。
「ああ……先にシャワー浴びてくる」
シャワーを浴びながら、靖一はぼんやりと考えていた。ノラの気持ちを無下にしたくはない。だが、自分の嗜好もまた、否定できない。どうすれば──。
体を拭きながら部屋を見渡すと、ベッドサイドに「コスチュームレンタル」の案内が目に入った。数分後、彼はある一点に目を留め、「これだ」と確信した。
ノラがシャワーから上がると、靖一は小さな袋を手渡した。
「ほら、これ着ろよ」
ノラが袋の中を覗くと、中から出てきたのはレースのついた黒いメイド服だった。
「やだよ……これ、女物じゃん……」
眉をひそめながらも、ノラは服をまじまじと見つめた。その様子がいつになく慎重で、ちょっと面白い。
「それ着るなら、今日はノラに主導権渡してやる。どうだ?」
言葉を聞いて、ノラの動きが一瞬止まった。そして数秒の沈黙ののち、小さな声で言った。
「……じゃあ、着る」
現れたノラは、想像以上に似合っていた。肩をすぼめ、頬を赤く染めながら「ほら、やっぱ変だよ」と言ったが、靖一はそれを見るなり、明確な反応を覚えた。
ノラの方も、それに気づいたらしい。
「……靖一が、なにもできないようにしていい?」
「……ああ」
返事を聞くと、ノラは備え付けの手錠を手に取り、ベッドのフレームに靖一の片手を繋げた。もう片方も軽く拘束され、身動きが少しだけ制限される。
「これで……逃げられない」
ノラはメイド服の裾をひるがえし、靖一の上に跨るようにしてしゃがんだ。
そして両手を使って、靖一の胸元に顔を近づける。
「……ずっとこうしてみたかった」
そう囁くと、乳首に唇を寄せ、軽く吸い、舌で撫でる。
「……く、っ……」
くすぐったさに思わず声が漏れる。けれどその姿があまりにも健気で、真剣で、靖一の身体はむしろ熱を帯びていく。
「ちょっと硬くなってきた……可愛い」
ノラの声に、今度は心臓が跳ねた。
指が下腹部へと滑り込み、そこにも熱い触れ方で触れてくる。上と下、同時に快感を与えられて、さすがに靖一も息が乱れ始めた。
「……っ、ノラ……」
呼ぶとノラは顔を上げる。瞳の奥にまっすぐな愛情と欲望が入り混じっていた。
靖一は舌を突き出し、合図をした。ノラがそこに自分の舌を絡める。湿った音が重なり、息が漏れ、熱が、部屋に充満していく。
「‥‥ん…ふ、っ……ぅん……」
甘ったるく、粘り気のある口づけの最中、靖一はふいに手錠の鍵を抜き取り、片方だけを外した。
「えっ……?」
驚いたノラに、靖一は反対の手で頭を掴み、ぐっと自分の下へ押し倒した。
いつもの癖のように静かに、でも確実に力を込めて身体を支配する。
「ノラ。……主導権、返してもらうぞ」
そう低く囁いて、ベッドのスイッチを消した。部屋がほんのりと赤く染まる。
これから先は、ノラの身体がどこまで耐えられるか──それを試す時間だ。
5
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
おれの超ブラコンでちょっと変態な兄がかっこよすぎるので
しち
BL
兄(バスケ選手)の顔が大好きな弟(ファッションモデル)の話。
これの弟ver.です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/557561084/460952903
冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。
丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。
イケメン青年×オッサン。
リクエストをくださった棗様に捧げます!
【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。
楽しいリクエストをありがとうございました!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる