伯爵令嬢の懐刀 ~私の覚悟は何だったんでしょうか、殿下~

aihara

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10:アガリスタ王妃からの手紙

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「だから言ってるじゃない。
 あなたは王妃になれる素質があるのよ」
 確かに、アガリスタでは王太子の婚約者だったけど、婚約解消になったから両親共々アガリスタの全てを捨て、マリナーレ王国で子爵代理の娘(後に平民になる予定)になるはずが、紆余曲折あって罷り間違って、なぜか国王陛下に求婚され、両親が代理をやってる子爵家は二階級特進で侯爵家になったらしい。
 …いや、伯父様死んでないよ?
 むしろ伯父様の働きで子爵から伯爵への陞爵が考えられていたが、そのせいで伯父様は体を壊した事もあり、一旦ストップがかかっていた。
 しかし、私が陛下に見そめられたことで、やはりバッキローニ子爵は陞爵をすることにし、さらには陛下の外戚になることから箔をつける意味で侯爵にしてしまおうとなったらしい。
 レイ、あなた子爵嫡男どころか、侯爵家の跡取りになってしまったわよ。
 そして、私が手紙を出して、着いたくらいかなーなんて思って過ごしていたら、お母様が突撃してきて、「チャリ早馬で来た(ドヤァ)」とか私の客間の入り口で宣ったので、ドアをそっ閉じしようとしたら、ヒールをドアに挟まれたので、入れざるを得なかった。
 ど根性の行商人かな?
 そして、陛下の気が狂ったとしか思えないプロポーズを気の迷いで承諾したことを伝えたところ、返ってきたのが「王妃の素質」発言だ。
「お姉様から、歴史だけは長かったバッキローニがようやく日の目を…と嬉し泣きまでされたのよ?
 あなたは素敵な結婚相手がいて、バッキローニは伯爵どころか侯爵にまでなり、私と旦那様は義兄様が回復なされば領地の代官兼行政官管理人として仕事までもらえて。
 マリナーレの国王陛下は、アガリスタの王太子みたいにあなたを蔑ろにするような方ではなさそうだし…どうせなら、前王妃が地の底まで落とした、王妃って立場も天の上まで昇らせるくらいの気概でいなさいな」
 そう言って、お母様は笑いました。
 なるほどなー、確かに今、マリナーレの「王妃」という立場は前任者の立ち振る舞いのせいで、これ以上ないくらい悪い。
 そこにすでにアガリスタの王妃教育をほとんど終わらせ、しかも王太子から婚約を解消された女性として魅力がないと王太子に断ぜられた私がマリナーレの王妃としてその悪名を払拭することで、私の汚名も払拭できるのではないか、とは考えている。
「馬鹿ね…あの王太子は見る目がないの。
 アガリスタじゃ、最近王太子の人気は何かするごとに下がって、一部の太鼓持ちの名ばかり高位貴族以外からは、王太子は見る目がなくて、そこに恩を着せる形でマリナーレで国王からプロポーズされたキャシーは幸運の女神だったとまで言われてるわよ」
「」
 何も言えねぇ。
 なんで王太子に婚約を破棄されそうだからと、彼が別の女性に執着した瞬間、彼女に全てを押し付けて親子共々アガリスタに居られなくなり、マリナーレに逃げ込んだ私が幸運の女神扱いされなきゃいけないのか。
「…というかそんな話、誰から?」
 そう言えば話の出どころはどこなのか。
 信用できない出どころの話をしてほしくはないのだが…。
「アガリスタの王妃様からお手紙で」
「」
 前言撤回、信用できないとか言ったら不敬だわ。
 
 お母様はその手紙を見せてくれたが…まぁ、酷い話だった。
 まず王妃マリア様、そして、マリア様の実家の侯爵家に嫁入りしたメリー・サンダース様、そしてメリー様の妹で私とも友人でミリエッタ商会の商会長・ミリエッタ・ジュレミー公爵令嬢様と、「アガリスタ(で敵に回してはいけない)三大美人」のお歴々が、親キャシー・反王太子・反国王として国王陛下や王太子殿下をやり込め、白雪姫様にもあまりいい扱いはしていないらしい。
 それだけならまぁ、集団いじめにも見えなくはないが、そもそもこの三人は私が王妃になることを心待ちにしていた人たちだし、婚約解消の全て責任は王太子殿下にあるから王太子殿下と、それをよしとした国王陛下はもはや王妃様には敵にしか見えないらしい。
 さらに新たな王太子殿下の婚約者になった白雪姫様にも問題があって、王妃様が、王太子殿下の結婚を早くしてもらいたいというリクエストから、王妃になるべくすでに家庭教師についてある程度先んじて王子妃教育を受けていた私と同じところからスタートした。
 なにしろしばらく追われる身になっていたとは言えマリナーレの王女だ。
 だからある程度の教養はあると言う前提でレベルの高い王妃教育をしたのだが(とは言え伯爵令嬢のキャシーでも学べる程度)、全くもってついていけなかったため。王太子殿下に泣きついて、王妃様を講師からおろしてしまったらしい。
 仕方なく、最初に施したキャシー同等の王妃教育の中級から、まずはレベルを見るため王妃教育の初級、王子妃教育の中級、初級、貴族教育の学院卒業レベル…と落としていったが全く歯が立たず、最終的に学院入学前の最低限のマナーや教養を学ばせる講師につけたところで、「難しいけれど、なんとか着いていけます」と言われてホッとしたところ、今度は国王陛下から結婚はいつできるかと言われて彼女の努力次第で数年と答えたところ、早くしろと言われてさすがの王妃様も呆れてしまっているらしい。
 早く結婚したいからと、常識の範囲でレベルを最大のレベルにしたら、難しすぎると責められ、逆にレベルに合った講師をつければ結婚まで時間がかかりすぎると責められ…とまぁ、愚痴らしき中に国王陛下や王太子殿下の横暴を散りばめられ、王妃様への同情と同時に、「あぁ、あのまま王太子殿下に嫁がなくて良かった」と思ったのは内緒である。
 そして、その手紙にはさらなる爆弾発言が記されていた。
 
 そのまま、私は王妃様の苦労が偲ばれる文章に目を走らせると、最後の一文があまりに衝撃的なことが記され、一度は見なかったことにしようとしてしまい、二度見したがそれを見て思わず苦笑しているお母様を見たあと、さらに三度見までしてしまった。
「は?」
 その様子にお母様は諦めと呆れが含まれた苦笑を浮かべた。
「…どゆこと?」
 
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