11 / 27
10:アガリスタ王妃からの手紙
しおりを挟む「だから言ってるじゃない。
あなたは王妃になれる素質があるのよ」
確かに、アガリスタでは王太子の婚約者だったけど、婚約解消になったから両親共々アガリスタの全てを捨て、マリナーレ王国で子爵代理の娘(後に平民になる予定)になるはずが、紆余曲折あって、なぜか国王陛下に求婚され、両親が代理をやってる子爵家は二階級特進で侯爵家になったらしい。
…いや、伯父様死んでないよ?
むしろ伯父様の働きで子爵から伯爵への陞爵が考えられていたが、そのせいで伯父様は体を壊した事もあり、一旦ストップがかかっていた。
しかし、私が陛下に見そめられたことで、やはりバッキローニ子爵は陞爵をすることにし、さらには陛下の外戚になることから箔をつける意味で侯爵にしてしまおうとなったらしい。
レイ、あなた子爵嫡男どころか、侯爵家の跡取りになってしまったわよ。
そして、私が手紙を出して、着いたくらいかなーなんて思って過ごしていたら、お母様が突撃してきて、「チャリで来た(ドヤァ)」とか私の客間の入り口で宣ったので、ドアをそっ閉じしようとしたら、ヒールをドアに挟まれたので、入れざるを得なかった。
ど根性の行商人かな?
そして、陛下の気が狂ったとしか思えないプロポーズを気の迷いで承諾したことを伝えたところ、返ってきたのが「王妃の素質」発言だ。
「お姉様から、歴史だけは長かったバッキローニがようやく日の目を…と嬉し泣きまでされたのよ?
あなたは素敵な結婚相手がいて、バッキローニは伯爵どころか侯爵にまでなり、私と旦那様は義兄様が回復なされば領地の代官兼行政官管理人として仕事までもらえて。
マリナーレの国王陛下は、アガリスタの王太子みたいにあなたを蔑ろにするような方ではなさそうだし…どうせなら、前王妃が地の底まで落とした、王妃って立場も天の上まで昇らせるくらいの気概でいなさいな」
そう言って、お母様は笑いました。
なるほどなー、確かに今、マリナーレの「王妃」という立場は前任者の立ち振る舞いのせいで、これ以上ないくらい悪い。
そこにすでにアガリスタの王妃教育をほとんど終わらせ、しかも王太子から婚約を解消された私がマリナーレの王妃としてその悪名を払拭することで、私の汚名も払拭できるのではないか、とは考えている。
「馬鹿ね…あの王太子は見る目がないの。
アガリスタじゃ、最近王太子の人気は何かするごとに下がって、一部の太鼓持ちの高位貴族以外からは、王太子は見る目がなくて、そこに恩を着せる形でマリナーレで国王からプロポーズされたキャシーは幸運の女神だったとまで言われてるわよ」
「」
何も言えねぇ。
なんで王太子に婚約を破棄されそうだからと、彼が別の女性に執着した瞬間、彼女に全てを押し付けて親子共々アガリスタに居られなくなり、マリナーレに逃げ込んだ私が幸運の女神扱いされなきゃいけないのか。
「…というかそんな話、誰から?」
そう言えば話の出どころはどこなのか。
信用できない出どころの話をしてほしくはないのだが…。
「アガリスタの王妃様からお手紙で」
「」
前言撤回、信用できないとか言ったら不敬だわ。
お母様はその手紙を見せてくれたが…まぁ、酷い話だった。
まず王妃マリア様、そして、マリア様の実家の侯爵家に嫁入りしたメリー・サンダース様、そしてメリー様の妹で私とも友人でミリエッタ商会の商会長・ミリエッタ・ジュレミー公爵令嬢様と、「アガリスタ(で敵に回してはいけない)三大美人」のお歴々が、親キャシー・反王太子・反国王として国王陛下や王太子殿下をやり込め、白雪姫様にもあまりいい扱いはしていないらしい。
それだけならまぁ、集団いじめにも見えなくはないが、そもそもこの三人は私が王妃になることを心待ちにしていた人たちだし、婚約解消の全て責任は王太子殿下にあるから王太子殿下と、それをよしとした国王陛下はもはや王妃様には敵にしか見えないらしい。
さらに新たな王太子殿下の婚約者になった白雪姫様にも問題があって、王妃様が、王太子殿下の結婚を早くしてもらいたいというリクエストから、王妃になるべくすでに家庭教師についてある程度先んじて王子妃教育を受けていた私と同じところからスタートした。
なにしろしばらく追われる身になっていたとは言えマリナーレの王女だ。
だからある程度の教養はあると言う前提でレベルの高い王妃教育をしたのだが(とは言え伯爵令嬢のキャシーでも学べる程度)、全くもってついていけなかったため。王太子殿下に泣きついて、王妃様を講師からおろしてしまったらしい。
仕方なく、最初に施したキャシー同等の王妃教育の中級から、まずはレベルを見るため王妃教育の初級、王子妃教育の中級、初級、貴族教育の学院卒業レベル…と落としていったが全く歯が立たず、最終的に学院入学前の最低限のマナーや教養を学ばせる講師につけたところで、「難しいけれど、なんとか着いていけます」と言われてホッとしたところ、今度は国王陛下から結婚はいつできるかと言われて彼女の努力次第で数年と答えたところ、早くしろと言われてさすがの王妃様も呆れてしまっているらしい。
早く結婚したいからと、常識の範囲でレベルを最大のレベルにしたら、難しすぎると責められ、逆にレベルに合った講師をつければ結婚まで時間がかかりすぎると責められ…とまぁ、愚痴らしき中に国王陛下や王太子殿下の横暴を散りばめられ、王妃様への同情と同時に、「あぁ、あのまま王太子殿下に嫁がなくて良かった」と思ったのは内緒である。
そして、その手紙にはさらなる爆弾発言が記されていた。
そのまま、私は王妃様の苦労が偲ばれる文章に目を走らせると、最後の一文があまりに衝撃的なことが記され、一度は見なかったことにしようとしてしまい、二度見したがそれを見て思わず苦笑しているお母様を見たあと、さらに三度見までしてしまった。
「は?」
その様子にお母様は諦めと呆れが含まれた苦笑を浮かべた。
「…どゆこと?」
148
あなたにおすすめの小説
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のない、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。
幼馴染最優先の婚約者に愛想が尽きたので、笑って家出しました ― 笑顔で去っただけなのに、なぜ泣いているのですか
ラムネ
恋愛
侯爵令嬢リオナは、婚約者アルベルトが「幼馴染が可哀想だから」と約束を破り続ける日々に耐えていた。領地再建の帳簿も契約も、実はリオナが陰で支えていたのに、彼は「君は強いから」と当然のように扱う。決定的な侮辱の夜、リオナは怒らず泣かず、完璧な笑顔で婚約指輪だけを返して屋敷を去った――引継ぎは、何一つ残さずに。
翌日から止まる交易、崩れる資金繰り、露出する不正。追いすがるアルベルトを置き去りに、リオナは王立監査院の臨時任官で辺境へ。冷徹と噂される監察騎士レオンハルトと共に、数字と契約で不正を断ち、交易路を再生していく。
笑顔で去っただけなのに、泣くのは捨てた側だった。
結婚から数ヶ月が経った頃、夫が裏でこそこそ女性と会っていることを知りました。その話はどうやら事実のようなので、離婚します。
四季
恋愛
結婚から数ヶ月が経った頃、夫が裏でこそこそ女性と会っていることを知りました。その話はどうやら事実のようなので、離婚します。
「やはり鍛えることは、大切だな」
イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」
その日、一つのお見合いがあった。
ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。
クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。
そして互いに挨拶を交わすその場にて。
ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。
けれども……――。
「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる