伯爵令嬢の懐刀 ~私の覚悟は何だったんでしょうか、殿下~

aihara

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23:元婚約者と久しぶりの対面

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 ミリエッタお姉様と伯母様が救出され、元婚約者アガリスタ王太子が拘束されてからしばらくは、私・キャシー・バッキローニにはゆったりした時間が流れていた。
 伯母様は怪我一つなく、ミリエッタお姉様も怪我と言える怪我は縛られ続けたための足の捻挫くらいで、それも治ったことで、心配が無くなったことが大きい。
 あ、犯人の元婚約者には何の思いもないけど、アガリスタ王国は国王陛下がアレだし、王太子がこうなると、どうなってしまうのか、については少し心配。
 何しろ、一応友好国である隣国だし、出身地でもあるし。
「気にすることないわよ、キャシー。
 いざとなればあなたの今の婚約者様が国ごと併合してくれるわ」
「マリアお姉様…」
「そうそう、それに、お父様や叔父様もいるわよ」
「ミリエッタお姉様まで…」
「マリナーレ王国の将来の王妃だからって、気負わなくていいのよ、キャシー」
「お母様…」
 そんなわけで、今はお母様の他、ミリエッタ様、元王妃のマリア様とお茶会中。
 ミリエッタ様は私がこちらにきたのと前後して、商会の本店機能をマリナーレ王国に移し、アガリスタ王国には支店しか残していない。
 ついでに元王妃で今はサンダース侯爵令嬢に戻ったマリア・サンダース様は、「王家原理主義で酷い男尊女卑のアガリスタ国王を見限り自身を取り戻した元王妃」という肩書きの元、強いアガリスタ女性の代表として、ミリエッタ商会の特別顧問として、マリナーレ王国のミリエッタ商会長が所有する屋敷で女主人の役割をもらいイキイキしてます。
 私としても、実家であるバッキローニ家だけでは新興侯爵家であり後ろ盾が弱いかなとは思っていたので、ミリエッタ商会がマリナーレに本部を置き、かつ商会長と仲良くしていることで、世界でも有名なアパレルブランドが味方につき、ようやく王妃候補として認められ、一安心。
 そんな中でミリエッタ商会長とバッキローニ侯爵夫人の誘拐事件が起こり、さらに犯人がアガリスタ王太子殿下、かつ動機が私との復縁だという供述があったことで、王太子殿下のみならずアガリスタ王家自体が女性軽視だと、マリナーレ王国のみならず周辺各国からも白眼視され始めています。
「皆様、お揃いですな。
 アガリスタの勇者様方」
「陛下」
 本来女性の社交であるはずの茶会に男性の声が入ってきた。
 私の婚約者、マリナーレ国王陛下だ。
 この、アガリスタの三女傑(と私が勝手に呼んでるお三方)のうちの二人を陛下は大層気に入っており、勇者様方と呼んでいる。
 マリア・サンダース様、王妃という立場にも関わらず、王家至上主義を否定して、離縁という勇気ある決断をした侯爵令嬢。
 ミリエッタ・ジュレミー様、公爵令嬢の地位にも関わらず商才を発揮し、ミリエッタ商会をアパレルのトップブランドにのし上げた才女。
 ちなみに私が三女傑と呼んでいるもう一人は、ミリエッタ様の姉君でマリア様の兄嫁であるメリー・サンダース様である。
 ここに、ミリエッタ様の義姉であるジュレミー公爵夫人を加えて四天女と言ってもいいとミリエッタお姉様に言ったら、「あなたも加えて、五賢女よ」と冗談まじりに言われた。
 
 閑話休題。
 
  マリア様、ミリエッタ様もマリナーレ国王陛下は賢帝だと評され、全て自己中心の愚帝・アガリスタ国王と比較されてアガリスタ貴族家の間でも評判になっている。
 実際、王家の気まぐれで振り回されて経営が立ち行かなくなった男爵家が領地と爵位を返上し、マリナーレ王国に逃れてきて平民として暮らし始めたケースが出た。
 また、アガリスタ王国の平民は仕事を求めてマリナーレ王国に出稼ぎに来ることも多く、その出稼ぎ先に家族を呼んでマリナーレ王国に移住する人も増えてきた。
 さらに、アガリスタ王家が貴族家までマリナーレ王国に移住されてはいけないと、貴族家保護政策は打つ癖に、平民に対して対策しないため、平民のマリナーレ移住が盛んになってきており、医療の進歩はあり、国民一人当たり平均の出生率はあまり変わらないが、移民がいるため出生数が下がり続けている。
 対するマリナーレ王国は、前王妃の悪政から立ち直って現王家に期待する貴族家、平民の出生数が上がって、安心して子育てができる国になりつつある。
 結果、人口が増えつつあるマリナーレ王国と、人口減少に歯止めが効かないアガリスタ王国という対比の中で、アガリスタ王太子の醜聞。
 確保された王太子は一旦王城の貴賓牢に収監され、保護者であるアガリスタ王国からの迎えがき次第引き渡して、マリナーレ王国への入国禁止の措置と、破った場合にはアガリスタ王国の宣戦布告であるとみなすという書簡を持たせると国王陛下は仰っていた。
 
「それにしても…やっぱり、マリナーレね。
 やっぱりアガリスタにはもういい男はいなかったわ」
 ミリエッタ様はヤレヤレとばかりに肩をすくめた。
 アガリスタ三賢女の他二人も深くうなづいて賛同した。
 確かにマリナーレ国王陛下は、アガリスタ王太子の数段上の男性だし、さらに国の格もマリナーレ王国の方が上…だと思う。
 そんな陛下に婚約者にしてもらえたのは幸運以外の何者でもない。
「いいおとこ? マリナーレにはいるの?」
「当然よ、ミレイユ嬢!
 それどころか、ミレイユ嬢はキャシー並にいい男捕まえてるわ!
 手放しちゃだめよ!」
 自分は行き遅…仕事に生きる割に人の色恋にはうるさいミリエッタ様が興奮しながら、御年10歳で、正式に幼馴染の侯爵令息と婚約の整ったミレイユ様にそう言うと「べ、べつにそんなんじゃ」と可愛らしく頬を赤くそめた。
 こんな妹欲しかったなぁ…バッキローニ家のレイは可愛いけど男の子だし。
 というか、このメンツに臆することなくお茶会でアイドルになってるミレイユ嬢は将来いい貴族夫人になるわね。
 そんなことを思いながらマリナーレ王城特製ブレンドのハーブティーをすする。
 思い返せば、女の子が少ないからと伯爵家に生まれた私がアガリスタで王太子の婚約者をやってたのが婚約解消されて、それを両親に言ったらマリナーレ行きが決まり、子爵代理の娘になったかと思えば最近クーデター的に成り上がって婚約者のいなかったマリナーレ国王陛下に、王妃教育を受けたことがあるという理由で見初められ?て、いつのまにか伯爵令嬢どころか、侯爵家の娘になってる、不思議なものだ。
 そんなことを思っているとふとお守りがわりに持っている懐刀が気になった。
 胸騒ぎがした…と同時に、城の入り口が騒がしくなったのがわかった。
「ラミル公爵様、何かありましたの?」
 ここは城のエントランスが見渡せる2階のテラスなのだが、そのエントランスで何やら揉め事が起こっているようだ。
 なぜかそんなエントランスから素知らぬ顔でテラスに向かってきたラミル公爵に私はわざと聞いてみた。
「ああ、キャシー嬢か。
 いやな、君の旧友仇敵がここに護送されてきたんだが、いやぁ、君が陛下の婚約者だから会わせろと騒ぎ出してな。
 私は力に自信もない年寄りだからな、逃げてきたわけだ」
 その言葉に、私とミレイユ嬢は困惑しただけだが、残る2人、マリア様とミリエッタ様の顔がまぁ…ミレイユ嬢のトラウマにならなきゃいいのだけど。
「ま、姿くらい見ときましょ」
 とまぁそれを聞いて単純な興味でエントランスに私は向かうことにした。
 マリア様とミリエッタ様はいい顔してなかったけど。
 
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