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■都内某所 お洒落なカフェ
「美味いか?」
「うん……!」
問えば、ご機嫌なにこにこ顔が元気よく返事をする。
征一郎はそりゃよかった、と軽く答えながらも、楽しんでもらえているようでよかった、と内心とても安堵した。
あれから。
征一郎が身支度を整えている短い間に、宣言通り月華からデートプランが送られてきた。
怒っていても律儀な男だ。否、征一郎への義理を通したのではなく、相手のことを慮ってのことだろう。
今まで付き合った女性に対して、楽しませたいという気持ちがなかったわけではない。
ただ、芳秀の無駄な嫌がらせやその他の危険にさらすかもしれないことを思うと、どうしても一日遊び歩いたりするような気にはなれなかった。
そのせいで、自立していて一人の時間を持て余さなさそうな相手ばかり選んでいたような気がする。
ちびを連れ出すことにそうした不安はもちろんあるが、それよりももっと外の世界を見せたいという気持ちの方が勝った。
プランにはまずは景色のよさそうな場所にドライブ、とあったので、とりあえず海沿いを流した。
もう少し暖かければ砂浜に降りて足くらいは海に入ったりしてもよかったかもしれないが、それはまた次の機会でいいだろう。
そのあとは横文字の覚えられそうもない店名の小洒落たカフェへ。
天気もいいのでテラス席にしてもらい、腹にたまらなさそうなランチセットを頼んだ。
回りはカップルや若い女性ばかり。
謎の二人組は周囲の注目を浴びているが、カタギに見えない征一郎は、ちびを連れていなかったにしても不躾な視線には慣れている。
別に悪事を働いているわけではなく、ちびも気にしていないようなので、気にするのをやめた。
月華からの指示には『カフェでは食事を終えてもゆっくりと会話を楽しむこと』とある。
何か話そうと思ったところで、水を差すように懐のスマホが震えた。
悪い、と断って画面を確かめると、芳秀からの着信だ。
スマホを両断してなかったことにしてしまいたかったが、その場合、素直に電話に出ておけばよかったと思うような事態になる可能性しかない。
通話ボタンを押す以外ないかと諦めた。
「親父から電話だ。すぐ戻る。それ食いながらちょっと待ってろ」
「うん」
ちびは寂しいと訴えることもなく、旬のフルーツのたっぷりのったパンケーキに夢中だ。
ありがたく思いながら、征一郎は客席から離れたところで電話に出た。
『俺だ』
「あんたなのはわかってんだよ。何の用だ。また無理な仕事押し付けようってんじゃねえだろうな」
あんたからかかってくるとろくなことがねえ、と一応文句を言っておく。
『おお、ちびのことで言い忘れてことがあってな』
「……なんだ。さっさと言え」
『ちびは諸事情により男を惹き付ける仕様になってるからな。外出するときは一人にすんなよ。喰われちまうぞ』
驚愕の言い忘れに、ばっと自分が座っていた席の方へ視線を向けると、既に数人の男が取り囲み、何やらちびに話しかけている。
クラブなど、相手を探す目的のある者が集まる場所ならともかく、昼日中のカフェではありえない光景だ。
明らかにカタギではない自分の連れなことはわかっているはずで、またちびも『明らかにウリ専』という風体でもなく、手を出した方がお縄になるような容姿である。
相手が絶世の美少女だとしても、この条件ではこんなにあからさまに声をかけたりはしないだろう。
正直、異様だ。これが人ではないということの片鱗なのか。
「あんたな!そういう大事なことはもっと早く言え!」
『ごめ~ん☆取説に書いてあったの今気付いて』
「あいつはあんたが作ったんだろ取説ってなんだ!?」
本気で意味が分からない。そしてキャラが気持ち悪い。
叫んだ征一郎は、芳秀の返事は待たず慌ててちびの元へと戻った。
「美味いか?」
「うん……!」
問えば、ご機嫌なにこにこ顔が元気よく返事をする。
征一郎はそりゃよかった、と軽く答えながらも、楽しんでもらえているようでよかった、と内心とても安堵した。
あれから。
征一郎が身支度を整えている短い間に、宣言通り月華からデートプランが送られてきた。
怒っていても律儀な男だ。否、征一郎への義理を通したのではなく、相手のことを慮ってのことだろう。
今まで付き合った女性に対して、楽しませたいという気持ちがなかったわけではない。
ただ、芳秀の無駄な嫌がらせやその他の危険にさらすかもしれないことを思うと、どうしても一日遊び歩いたりするような気にはなれなかった。
そのせいで、自立していて一人の時間を持て余さなさそうな相手ばかり選んでいたような気がする。
ちびを連れ出すことにそうした不安はもちろんあるが、それよりももっと外の世界を見せたいという気持ちの方が勝った。
プランにはまずは景色のよさそうな場所にドライブ、とあったので、とりあえず海沿いを流した。
もう少し暖かければ砂浜に降りて足くらいは海に入ったりしてもよかったかもしれないが、それはまた次の機会でいいだろう。
そのあとは横文字の覚えられそうもない店名の小洒落たカフェへ。
天気もいいのでテラス席にしてもらい、腹にたまらなさそうなランチセットを頼んだ。
回りはカップルや若い女性ばかり。
謎の二人組は周囲の注目を浴びているが、カタギに見えない征一郎は、ちびを連れていなかったにしても不躾な視線には慣れている。
別に悪事を働いているわけではなく、ちびも気にしていないようなので、気にするのをやめた。
月華からの指示には『カフェでは食事を終えてもゆっくりと会話を楽しむこと』とある。
何か話そうと思ったところで、水を差すように懐のスマホが震えた。
悪い、と断って画面を確かめると、芳秀からの着信だ。
スマホを両断してなかったことにしてしまいたかったが、その場合、素直に電話に出ておけばよかったと思うような事態になる可能性しかない。
通話ボタンを押す以外ないかと諦めた。
「親父から電話だ。すぐ戻る。それ食いながらちょっと待ってろ」
「うん」
ちびは寂しいと訴えることもなく、旬のフルーツのたっぷりのったパンケーキに夢中だ。
ありがたく思いながら、征一郎は客席から離れたところで電話に出た。
『俺だ』
「あんたなのはわかってんだよ。何の用だ。また無理な仕事押し付けようってんじゃねえだろうな」
あんたからかかってくるとろくなことがねえ、と一応文句を言っておく。
『おお、ちびのことで言い忘れてことがあってな』
「……なんだ。さっさと言え」
『ちびは諸事情により男を惹き付ける仕様になってるからな。外出するときは一人にすんなよ。喰われちまうぞ』
驚愕の言い忘れに、ばっと自分が座っていた席の方へ視線を向けると、既に数人の男が取り囲み、何やらちびに話しかけている。
クラブなど、相手を探す目的のある者が集まる場所ならともかく、昼日中のカフェではありえない光景だ。
明らかにカタギではない自分の連れなことはわかっているはずで、またちびも『明らかにウリ専』という風体でもなく、手を出した方がお縄になるような容姿である。
相手が絶世の美少女だとしても、この条件ではこんなにあからさまに声をかけたりはしないだろう。
正直、異様だ。これが人ではないということの片鱗なのか。
「あんたな!そういう大事なことはもっと早く言え!」
『ごめ~ん☆取説に書いてあったの今気付いて』
「あいつはあんたが作ったんだろ取説ってなんだ!?」
本気で意味が分からない。そしてキャラが気持ち悪い。
叫んだ征一郎は、芳秀の返事は待たず慌ててちびの元へと戻った。
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