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しおりを挟む想像だにしなさすぎるエネルギー源に正気を失いかけたが、他ならぬちびのことであり、このことに関しては製作者?である芳秀の言うことをきくしかない。
事実であることが前提で話を進めなければなるまい。……定番は、よくわからないが。
「精液って……念のため確認するが、顔にぶっかけたり中にぶちまけたりするあれか?」
「そうだ。AV撮るとき卵白とかに色々混ぜて水増ししたりするあれだ」
歯磨き粉を使うことが多いな、などと無駄な業界知識を披露してくる男を無視し、ちびの枕元へと近寄る。
「ちび、お前……何でそんな具合悪くなるまで黙ってた。言ってくれりゃ俺だって」
「あ……だって征一郎は……」
焦りで、少し強い口調になってしまった。ちびは困った顔で目を泳がせる。
何だ、と促すと、小さな声がたどたどしく理由を話しだす。
「お、男は好きじゃないって…言ってたから…。征一郎は優しいからエネルギー補給って言ったら、くれたかもしれないけど、そんなの…つけこむみたいで…おれ……嫌だったし…」
それを聞いて、征一郎はその場に崩れ落ちた。
何のことはない。
全て、征一郎自身の業だった。
彼が……ホムンクルスという存在が、人と違うということをよく考えもせずに、気遣いの上に胡坐をかいて、その命を消費させていたのだ。
「だから、おれのこと好きになってもらおうって思って。それまで頑張ろうって…」
もう言うなと手で遮った。
涙が止まらない。
「仕方ねーよな。お前は野郎の、しかもガキなんかにゃ興味ねえんだから」
芳秀の容赦のない言葉が征一郎を刺し貫く。
全て自分の口から出た言葉で、何も言い返せなかった。
何も知ろうともせずにちびを苦しめた自分には、この外道を外道などと罵る資格はもうないのだ。
「ちびも言い出せねえよなあ。のっけから拒否られてるし?」
「よ 芳秀さん…!おれが黙ってただけで、征一郎のせいじゃ…」
「まあでもこういうのは理屈で何とかなるもんじゃねえからな。誰のせいでもないと諦めるしかねえ。かわいそうになあちび。選んじまった相手が征一郎で」
「……………………」
「あとは俺がやっとくから、お前部屋出てていいぞ」
そうすりゃまたしばらくもつだろ、と軽く言い放ち、芳秀がちびの横たわるベッドの前に立つ。
任せればいいのだろう。
そもそもが勝手にこの男に押し付けられたものであり、エネルギーが切れるまで征一郎に黙っていたのはちびの個人的な判断なのだ。
少し待っていれば、またちびは元気になり、元の生活が戻ってくる。
……だが、それで本当に自分は後悔しないのか。
不意に脳裏を過った、芳秀による『エネルギー補給』のイメージ画像に、自分でも説明のつかない強い憤りを感じ、反射的に立ち上がる。
「いいわけねえだろ!こいつは連れて帰る!」
征一郎は芳秀を押しのけ、ちびを抱き上げると実家を後にした。
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