けなげなホムンクルスは優しい極道に愛されたい

イワキヒロチカ

文字の大きさ
29 / 104

29

しおりを挟む

 想像だにしなさすぎるエネルギー源に正気を失いかけたが、他ならぬちびのことであり、このことに関しては製作者?である芳秀の言うことをきくしかない。
 事実であることが前提で話を進めなければなるまい。……定番は、よくわからないが。
「精液って……念のため確認するが、顔にぶっかけたり中にぶちまけたりするあれか?」
「そうだ。AV撮るとき卵白とかに色々混ぜて水増ししたりするあれだ」
 歯磨き粉を使うことが多いな、などと無駄な業界知識を披露してくる男を無視し、ちびの枕元へと近寄る。

「ちび、お前……何でそんな具合悪くなるまで黙ってた。言ってくれりゃ俺だって」
「あ……だって征一郎は……」
 焦りで、少し強い口調になってしまった。ちびは困った顔で目を泳がせる。
 何だ、と促すと、小さな声がたどたどしく理由を話しだす。

「お、男は好きじゃないって…言ってたから…。征一郎は優しいからエネルギー補給って言ったら、くれたかもしれないけど、そんなの…つけこむみたいで…おれ……嫌だったし…」

 それを聞いて、征一郎はその場に崩れ落ちた。
 何のことはない。
 全て、征一郎自身の業だった。
 彼が……ホムンクルスという存在が、人と違うということをよく考えもせずに、気遣いの上に胡坐をかいて、その命を消費させていたのだ。

「だから、おれのこと好きになってもらおうって思って。それまで頑張ろうって…」

 もう言うなと手で遮った。
 涙が止まらない。

「仕方ねーよな。お前は野郎の、しかもガキなんかにゃ興味ねえんだから」
 芳秀の容赦のない言葉が征一郎を刺し貫く。
 全て自分の口から出た言葉で、何も言い返せなかった。
 何も知ろうともせずにちびを苦しめた自分には、この外道を外道などと罵る資格はもうないのだ。
「ちびも言い出せねえよなあ。のっけから拒否られてるし?」
「よ 芳秀さん…!おれが黙ってただけで、征一郎のせいじゃ…」
「まあでもこういうのは理屈で何とかなるもんじゃねえからな。誰のせいでもないと諦めるしかねえ。かわいそうになあちび。選んじまった相手が征一郎で」
「……………………」
「あとは俺がやっとくから、お前部屋出てていいぞ」
 そうすりゃまたしばらくもつだろ、と軽く言い放ち、芳秀がちびの横たわるベッドの前に立つ。

 任せればいいのだろう。
 そもそもが勝手にこの男に押し付けられたものであり、エネルギーが切れるまで征一郎に黙っていたのはちびの個人的な判断なのだ。
 少し待っていれば、またちびは元気になり、元の生活が戻ってくる。

 ……だが、それで本当に自分は後悔しないのか。
 
 不意に脳裏を過った、芳秀による『エネルギー補給』のイメージ画像に、自分でも説明のつかない強い憤りを感じ、反射的に立ち上がる。

「いいわけねえだろ!こいつは連れて帰る!」

 征一郎は芳秀を押しのけ、ちびを抱き上げると実家を後にした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった

BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。 にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...