幼なじみは絶対人質の許嫁

青香

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 ワンピースは妹のボディラインを強調していた。
 いや、強調し過ぎていた。

 「少し?キツそうだな」
 「ーーうん」

 自分でも分かっているのか、困った顔をするプリシラ。
 そういう俺も、シャツを着たはいいが、サイズが少しキツイ。

 「俺のシャツも、少しキツイな」
 「そうなの?」
 「あぁ」

 思えば俺達が兄妹が、この服を貰ったのは二年程前。
 この村の住人達のお下がりだ。
 今回も同様に、大きいサイズを探してきて貰わなければならない時期なのかもしれん。
 しかしアレだ。
 一緒に暮らしているから気が付かなかったが、いつのまにか二人とも成長し、大きくなっていたんだな。

 感慨しく思うカイルは、とりあえずどうするか考える。

 さて、どうしたものか。
 俺の白シャツは、少しだけ着る余裕がありそうだから、今回は着れると思うが。
 問題は妹だな。

 プリシラに問いかける。

 「俺は何とかいけそうだが、プリシラは?」
 「うぅん。なんか、この辺が特にーー」

 そう言い、妹は胸の辺りに手をやった。

 「あ!」
 「どうしたの?お兄ちゃん」

 思わず声を上げてしまった。

 「いや、すまん。大した事じゃないんだ。プリシラが大きくなったなって思ってな」
 「えへへ!お兄ちゃんもね?」
 「あぁ、そうだな」

 プリシラは無邪気に笑う。

 そんな笑顔に笑みを返しながらも、俺は気付いてしまった。
 普段緩めの服を着てるから、まったく気にもならなかったが、妹の胸に、小さな膨らみが出来ている事に。

 「うぅん。ちょっとズラしたらーー。あんまり変わらない、かな?」

 プリシラは布地を引っ張ってみたり、胸の位置をズラしたりしている。
 そんな姿に、俺は考えさせられていた。

 そうか、プリシラも十歳。
 女性特有の特徴が出てくる頃なのか。
 そうなると、自分が女性であると自覚してもらわないとな。
 うむ。
 別に俺の裸が見られるのは、何とも思わないが、これから着替えをするときには、配慮してあげないと、だな。

 プリシラも大人になっていく。
 いずれ異性に惹かれ、恋に落ちるだろう。
 そんな時の為に、一人の女性として、異性に対しての恥じらいとかを学んでいかなければな。

 そう思うと、今、この時から、プリシラを一人の女性として扱う事にした。

 いや、変な意味はないぞ?
 天使の様に可愛い女の子だとしても、あくまで妹なのだから、恋愛対象という事ではないんだからな?
 『一人の女性』というワードに、変な含みはないからな?
 勘違いされても困るから説明したが、あくまで俺は、ティナ一筋のナイスガイなんだから。
 いやいや、ちょっと待て。
 なんだ『ナイスガイ』って。
 それに誰に対して弁解しているんだ、俺は。

 脱線した思考を正し、サイズが合わないワンピースと格闘するプリシラに声をかける。

 「プリシラ、ちょっと母さんに聞いてくるよ」
 「え?」
 「サイズが小さくて合わなくなったって」
 「うん!じゃあ、コレは脱いでおくね」

 プリシラはそう言いながら、すぐに脱ぎだした。
 俺は視線をそらし、背中を向ける。

 突然俺の前で、『着替えをするな』と伝えても困惑するだろう。
 俺が見ない様に気をつけていれば、それでいい。
 いずれ恥じらう心が芽生えるだろうし。

 そうだ!

 俺も、プリシラの前では裸を見せないようにしないと、な。
 一緒にお風呂も、今後は入らない方がいいだろう。
 そうしないとな。

 記憶の引き出しから、髪の毛を洗ってやると喜ぶ、プリシラの笑顔が出てくる。

 髪が濡れてぺちゃんこになると、小顔が余計に際立ち、とても可愛らしい微笑み。
 それが見られなくなると思うと、少し寂しく感じる。
 しかし、それは我慢しないとな。

 「じゃあ、母さんに聞いてくる」
 「うん!」

 決意を新たに、俺は部屋を出た。
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