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第45話 せっかく買ったのに
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アメリが帰ったあと、エミリアはケーニス家が懇意にしている魔導士を呼べと使用人に命じた。
「魔導士ですか?無理だと思いますが」
「何で無理なの?ケーニス家は魔塔に毎年寄付をしてるのよ?来るわよ、呼びなさい」
魔導士が来る前に家鴨を買いに行かねばならないエミリアには問答をしている時間すら勿体ない。
「どうでもいいから!呼ぶの!私が帰るまでに呼んでおきなさいよ!」
「そんなお嬢様。無理ですって」
「無理無理って呼ぶ前から無理ってお前は何様なの!」
使用人を𠮟りつけたエミリアはソフィアの部屋に行くと歌劇のパンフレットを鼻歌混じりに眺めているソフィアの腕をむんずと掴み、馬車の中に押し込んだ。
「なんなの?いきなり!」
「どうでもいいわ。お金出しなさいよ」
「はぁ?なんで?お姉様が欲しいものはお姉様が買いなさいよ」
「あんたが買えばいいって言ったの!アンタの言葉通りにするんだからアンタが金を出すのよ」
従者を急き立ててソフィアと共に馬車に乗り込み向かった先は家畜市場。
エミリアは家畜市場で家鴨を2羽買った。
この時期は家鴨はあまり市場に出回っておらず、オスかメスかも確かめずその場にいた唯一の2羽をエミリアは買った。
「ちょっと!屋敷に帰ったらお金返してよ?明後日歌劇に行く約束があるんだから!」
「歌劇どころじゃないわ。それよりもうお金ないの?足環も買わないと!」
「はぁ?食べるための家鴨に足環?馬鹿じゃないの?」
いきなり腕を掴まれ馬車に押し込まれると酷い臭いのする家畜市場に連れていかれて財布をブン取られ家鴨代を奪われたと思ったら家鴨に宝飾品?もう付き合ってられないとソフィアは馬車の中で怒りだした。
帰り道で宝飾品店に立ち寄り、色目の似た足環をかって祈る気持ちで馬車に揺られて屋敷に戻ったのだがあれほど頼んでおいたのに屋敷に魔導士は来ていなかった。
「まだ来てないの!?」
「はい。それが…10日程前から王都を覆っている結界に綻びがでたと。お嬢様ご存じないのですか?」
「知る訳ないでしょ!」
エミリアは毎日を遊んで暮らしていて、両親が気にするような時事などは全く興味が無かった。
まして結界に綻びが出るなんて20年ぶりくらいのことで、エミリアも記憶にあるような無いような昔の話だ。
それすらリアルタイムで知ったのではなく、「以前こんな事があった」と話題になった事で知った程度。どんなふうに綻びが出たのかなんて知りもしないし、知る必要があるかもエミリアは考えたことが無かった。
「今回は酷いらしくて修復作業と原因究明に全員出払っているそうで暫くは戻れないそうです」
「それじゃダメなの!どこなの?結界ってどのあたり?!」
「まさかお嬢様が向かうつもりですか?いえいえ。お止めください。結界を修復せねばならないという事は魔獣だって出て来るんです。そんな危険なところに行かせることは出来ません!」
メイドとエミリアは行く、行かせないで揉み合いになってしまった。
「邪魔よ!退きなさいって!」
思いっきりメイドを突き飛ばすと不気味な声がした。
「ギョゲェーッ…」
何か踏んでしまったような、潰れたような気がしたメイドは体をバネのようにしてその場を飛びのいた。
「きゃぁぁー!」
玄関ホールにエミリアの声が響き渡った。
突き飛ばしたメイドは買ってきたばかりの家鴨の足を踏んでしまい、家鴨はバサバサと羽根をばたつかせて暴れ始めた。
「いやぁぁ。嘘、嘘、嘘よぉぉ!!なんてことしてくれたの!」
エミリアは失神し、後頭部から倒れた。
「魔導士ですか?無理だと思いますが」
「何で無理なの?ケーニス家は魔塔に毎年寄付をしてるのよ?来るわよ、呼びなさい」
魔導士が来る前に家鴨を買いに行かねばならないエミリアには問答をしている時間すら勿体ない。
「どうでもいいから!呼ぶの!私が帰るまでに呼んでおきなさいよ!」
「そんなお嬢様。無理ですって」
「無理無理って呼ぶ前から無理ってお前は何様なの!」
使用人を𠮟りつけたエミリアはソフィアの部屋に行くと歌劇のパンフレットを鼻歌混じりに眺めているソフィアの腕をむんずと掴み、馬車の中に押し込んだ。
「なんなの?いきなり!」
「どうでもいいわ。お金出しなさいよ」
「はぁ?なんで?お姉様が欲しいものはお姉様が買いなさいよ」
「あんたが買えばいいって言ったの!アンタの言葉通りにするんだからアンタが金を出すのよ」
従者を急き立ててソフィアと共に馬車に乗り込み向かった先は家畜市場。
エミリアは家畜市場で家鴨を2羽買った。
この時期は家鴨はあまり市場に出回っておらず、オスかメスかも確かめずその場にいた唯一の2羽をエミリアは買った。
「ちょっと!屋敷に帰ったらお金返してよ?明後日歌劇に行く約束があるんだから!」
「歌劇どころじゃないわ。それよりもうお金ないの?足環も買わないと!」
「はぁ?食べるための家鴨に足環?馬鹿じゃないの?」
いきなり腕を掴まれ馬車に押し込まれると酷い臭いのする家畜市場に連れていかれて財布をブン取られ家鴨代を奪われたと思ったら家鴨に宝飾品?もう付き合ってられないとソフィアは馬車の中で怒りだした。
帰り道で宝飾品店に立ち寄り、色目の似た足環をかって祈る気持ちで馬車に揺られて屋敷に戻ったのだがあれほど頼んでおいたのに屋敷に魔導士は来ていなかった。
「まだ来てないの!?」
「はい。それが…10日程前から王都を覆っている結界に綻びがでたと。お嬢様ご存じないのですか?」
「知る訳ないでしょ!」
エミリアは毎日を遊んで暮らしていて、両親が気にするような時事などは全く興味が無かった。
まして結界に綻びが出るなんて20年ぶりくらいのことで、エミリアも記憶にあるような無いような昔の話だ。
それすらリアルタイムで知ったのではなく、「以前こんな事があった」と話題になった事で知った程度。どんなふうに綻びが出たのかなんて知りもしないし、知る必要があるかもエミリアは考えたことが無かった。
「今回は酷いらしくて修復作業と原因究明に全員出払っているそうで暫くは戻れないそうです」
「それじゃダメなの!どこなの?結界ってどのあたり?!」
「まさかお嬢様が向かうつもりですか?いえいえ。お止めください。結界を修復せねばならないという事は魔獣だって出て来るんです。そんな危険なところに行かせることは出来ません!」
メイドとエミリアは行く、行かせないで揉み合いになってしまった。
「邪魔よ!退きなさいって!」
思いっきりメイドを突き飛ばすと不気味な声がした。
「ギョゲェーッ…」
何か踏んでしまったような、潰れたような気がしたメイドは体をバネのようにしてその場を飛びのいた。
「きゃぁぁー!」
玄関ホールにエミリアの声が響き渡った。
突き飛ばしたメイドは買ってきたばかりの家鴨の足を踏んでしまい、家鴨はバサバサと羽根をばたつかせて暴れ始めた。
「いやぁぁ。嘘、嘘、嘘よぉぉ!!なんてことしてくれたの!」
エミリアは失神し、後頭部から倒れた。
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