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第47話 こうみえては余計
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翌日、クラークに案内をされて隣国(砂地の国)の商人たちに紹介をされたアルベルティナは明らかに商人たちに見下されていた。
彼らもいずれは若い世代に追い越されていくことはわかっていても、まだ20歳にも足らない女性に何が出来る、クラークも遂に引退か?そんな空気が部屋には漂っていた。
――フン。最初から揉み手で迎えてくれるなんて思ってないわ――
言葉にするならビフォーアフター。魔石の粉に何の期待も持っていない彼らをギャフンと言わせてやる。アルベルティナは闘志を燃やした。
「では、皆様のお手元には5つの植木鉢、そしてここに5つの小袋を用意させて頂きましたが、それに先立って皆様には幼い頃を思い出す草むしりを体験して頂きました。植木鉢の草。見覚えがあると思います」
魔石の粉の効果は高いが、仕込みと思われてしまうのは心外だ。
アルベルティナはクラークに頼んで周囲にある「枯れていると思う草を抜いてくれ」と頼み、彼らの目の前にある植木鉢には彼ら自身が選んで抜いた草が植えられている。
「先ずここにある木箱。1、2、3の番号が振られた袋が入っておりますが直ぐに効果は見えません。3は…2,3時間ほど、2は明日の朝、1は4、5日後に成果が見えますが、そこまでは待てないと思いますし、商談をするにあたって効果、効能が不明なままで高額の契約をするのも二の足を踏んでしまいます」
「お嬢さん、それは当たり前のことだ」
「YES!そうなんです。でも皆様には我先にと契約を結ぶことを考えて頂きたいので…。こちらにある木箱。私が選んでお渡しすると仕込みと思われてしまいかねませんので、植木鉢に撒いて頂く小袋も皆様に任意でお選び頂きたく」
番号が振られた木箱には1つ辺り100を超える小袋が入っている。一番上にあるのを取るのもよし、底に手を入れて取るもよし。どの小袋にするかを選ぶのも彼らだ。
ムスっとした顔で彼らが5つの木箱からそれぞれ1袋を手に取り、自分で毟り取った草が植え替えられた植木鉢に撒いていく。
1、2、3の小袋については何の声も聞こえなかった。事前に「効果が見えるのには時間が掛かる」と説明をしているので揶揄する者もいない。
しかし、4の袋を撒いた時1人が「え?!」小さく驚きの声をあげた。
全員がそちらに注視をしたがアルベルティナは「お手元の鉢をご覧ください」と促す。
「5つ目の袋もお試しくださいませね」
言い終わるが早いか、数人が植木鉢とアルベルティナを交互に見た。
5つ目の袋は効果を薄めていないので、直ぐに反応が見られ萎びた草が生き生きと葉を持ち上げて見る間につぼみがついてゆっくりと花びらを開いた。
「ご覧いただけました?この場での契約も承っておりますが、急がなくて結構です。2週間後に皆様には2の番号が振られた小袋をそれぞれ10kg無償で提供させて頂きます。その効果をみてか――」
「契約する!私は契約するぞ!」
「私もだ!」
――私の話を聞けぇぇーっ!――
我先に、ウチと独占契約を!とそれぞれが手を挙げて契約をしたいと言い出してしまった。
それはそれで有難い事だがアルベルティナは彼らの内、誰を選ぶかは決めていない。全員と契約してもいいのだ。納得をしてくれた商会と契約すればいいだけだ。
「お待ちください」
「待てない!これは素晴らしい。これなら我が国の食料自給率を爆発的にあげられる!画期的だ」
「話はまだ終わってな――」
「どうだ?そちらの言い値で契約をする。なんなら明日にでも先に代金を払ってもいい!」
「ですから、話しはまだ終わ――」
「私は王家とも縁があるんだ。国家事業にしないかと話をする。是非ウチと契約を!」
まだ話の続きはあるのにウチと、自分ととアルベルティナに詰め寄る商人たちがアルベルティナとの距離がかなり近くなるとタイタンが間に体を滑り込ませた。
「皆様、席にお戻りください。こう見えて彼女はまだ年若いんです」
――タイタンさん、こうみえては余計よ――
場を落ち着かせて、再度仕切り直し。
もう彼らがアルベルティナに向ける視線は全く違うものになっていた。
――ビフォーアフター大成功ね――
アルベルティナは契約をしてくれる商会とはもれなく契約する事を告げると静かになった。
「さて、ここからが本日の本題です」
「まだあるのか?!」
「これ以上の驚きがまだあるというのか?!」
「勿論です。時は金なり!何度も足を運ぶのは無駄です。そんな時間があるなら他に有効に使うべきです」
アルベルティナはこの場に来るまでの馬車の中でクラークにも同意を得た内容を彼らにも協力してもらうため本題を切り出した。
彼らもいずれは若い世代に追い越されていくことはわかっていても、まだ20歳にも足らない女性に何が出来る、クラークも遂に引退か?そんな空気が部屋には漂っていた。
――フン。最初から揉み手で迎えてくれるなんて思ってないわ――
言葉にするならビフォーアフター。魔石の粉に何の期待も持っていない彼らをギャフンと言わせてやる。アルベルティナは闘志を燃やした。
「では、皆様のお手元には5つの植木鉢、そしてここに5つの小袋を用意させて頂きましたが、それに先立って皆様には幼い頃を思い出す草むしりを体験して頂きました。植木鉢の草。見覚えがあると思います」
魔石の粉の効果は高いが、仕込みと思われてしまうのは心外だ。
アルベルティナはクラークに頼んで周囲にある「枯れていると思う草を抜いてくれ」と頼み、彼らの目の前にある植木鉢には彼ら自身が選んで抜いた草が植えられている。
「先ずここにある木箱。1、2、3の番号が振られた袋が入っておりますが直ぐに効果は見えません。3は…2,3時間ほど、2は明日の朝、1は4、5日後に成果が見えますが、そこまでは待てないと思いますし、商談をするにあたって効果、効能が不明なままで高額の契約をするのも二の足を踏んでしまいます」
「お嬢さん、それは当たり前のことだ」
「YES!そうなんです。でも皆様には我先にと契約を結ぶことを考えて頂きたいので…。こちらにある木箱。私が選んでお渡しすると仕込みと思われてしまいかねませんので、植木鉢に撒いて頂く小袋も皆様に任意でお選び頂きたく」
番号が振られた木箱には1つ辺り100を超える小袋が入っている。一番上にあるのを取るのもよし、底に手を入れて取るもよし。どの小袋にするかを選ぶのも彼らだ。
ムスっとした顔で彼らが5つの木箱からそれぞれ1袋を手に取り、自分で毟り取った草が植え替えられた植木鉢に撒いていく。
1、2、3の小袋については何の声も聞こえなかった。事前に「効果が見えるのには時間が掛かる」と説明をしているので揶揄する者もいない。
しかし、4の袋を撒いた時1人が「え?!」小さく驚きの声をあげた。
全員がそちらに注視をしたがアルベルティナは「お手元の鉢をご覧ください」と促す。
「5つ目の袋もお試しくださいませね」
言い終わるが早いか、数人が植木鉢とアルベルティナを交互に見た。
5つ目の袋は効果を薄めていないので、直ぐに反応が見られ萎びた草が生き生きと葉を持ち上げて見る間につぼみがついてゆっくりと花びらを開いた。
「ご覧いただけました?この場での契約も承っておりますが、急がなくて結構です。2週間後に皆様には2の番号が振られた小袋をそれぞれ10kg無償で提供させて頂きます。その効果をみてか――」
「契約する!私は契約するぞ!」
「私もだ!」
――私の話を聞けぇぇーっ!――
我先に、ウチと独占契約を!とそれぞれが手を挙げて契約をしたいと言い出してしまった。
それはそれで有難い事だがアルベルティナは彼らの内、誰を選ぶかは決めていない。全員と契約してもいいのだ。納得をしてくれた商会と契約すればいいだけだ。
「お待ちください」
「待てない!これは素晴らしい。これなら我が国の食料自給率を爆発的にあげられる!画期的だ」
「話はまだ終わってな――」
「どうだ?そちらの言い値で契約をする。なんなら明日にでも先に代金を払ってもいい!」
「ですから、話しはまだ終わ――」
「私は王家とも縁があるんだ。国家事業にしないかと話をする。是非ウチと契約を!」
まだ話の続きはあるのにウチと、自分ととアルベルティナに詰め寄る商人たちがアルベルティナとの距離がかなり近くなるとタイタンが間に体を滑り込ませた。
「皆様、席にお戻りください。こう見えて彼女はまだ年若いんです」
――タイタンさん、こうみえては余計よ――
場を落ち着かせて、再度仕切り直し。
もう彼らがアルベルティナに向ける視線は全く違うものになっていた。
――ビフォーアフター大成功ね――
アルベルティナは契約をしてくれる商会とはもれなく契約する事を告げると静かになった。
「さて、ここからが本日の本題です」
「まだあるのか?!」
「これ以上の驚きがまだあるというのか?!」
「勿論です。時は金なり!何度も足を運ぶのは無駄です。そんな時間があるなら他に有効に使うべきです」
アルベルティナはこの場に来るまでの馬車の中でクラークにも同意を得た内容を彼らにも協力してもらうため本題を切り出した。
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