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cyaru

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第50話  アルベルティナ。キレる

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「タイタン。こんな店でデートか?」

――ゲェェ。ご当主さんじゃん――

「仲がいいんだな。聞いたぞ?毎日会いに行ってるそうじゃないか」

――護衛だからね?仕事だよ?何言ってんのコイツ――

「俺も同席させてくれよ」
「いえ、他にも席は空いてますし…あちらの席の方がゆったり出来ますよ」
「固い事言うな。俺とタイタンの仲だろう?」

――どんな仲?!――

リュシアンはタイタンもアルベルティナも許可はしていないのにタイタンに「寄れ」と言って座り込んできた。

「おーい、こっちだ。空いてるぞ」

リュシアンは入り口に向かって声をかけると取り巻き4人とデロアがぞろぞろやって来た。

「もぉ。こんな店だなんて。他が良いぃー」
「五月蝿いな。黙って座れよ」

――いやいや、許可してないし?何?これって当主権限?――

アルベルティナの隣に腰を下ろしたデロアはテーブルに肘をついてアルベルティナの領域まで浸食してくる。明らかに1人で場所を取り過ぎだ。

そして注文した品が運ばれてくるとデロアが「ここよ」と自分の前を指さし…アルベルティナが注文した烏骨鶏の卵を使ったアオサモドキマシマシのおき焼きにフォークをグサッ!

――ファァァーッ?!私のおき焼き!!――

「何してんの!それ、私の注文した品よ!」
「いいじゃない。減るもんじゃなし。むしろ私の食べかけが出れば食べられるんだからラッキーでしょ?」
「ラッキーなわけ、ねぇわぁーッ!!」

食べ物の恨みは恐ろしい。
夢にまで見たおき焼き。
世界最高峰から飛び降りる気分でチョイスした烏骨鶏の卵で溶いたおき焼き。
どこから食べようかと膨らみ切った想像が他人によってパチンと弾けたアルベルティナはキレた。

許すまじ!!

アルベルティナはデロアが突き刺したフォークを抜き取るとデロアの鼻の穴の下に突きつけた。

「ヒィィっ」
「他人様の物にまで手ぇ出してんじゃないわよ!突き刺すわよ!」
「ヒィィ!やめて…リュシーた、助けて…」
「もう他人頼み?いい?飲食店に来たら自分でッ!メニューから選ぶのよ。他人が頼むものじゃないわ。ましてやッ!他人様の注文した品にフォーク‥‥あり得んわッ!店員さん!これ。テイクアウッ!」
「は、はい!」

突然ブチキレたアルベルティナに全員が動けなくなる中、リカバリーした店員はお持ち帰り用の容器にデロアがフォークを突き刺したおき焼きを詰めた。

「店員さん。もう1枚もお持ち帰りよ」
「は、はい」

容器におき焼きを詰めた店員にタイタンが代金を払うとアルベルティナはデロアの手をグッと掴んでテーブルに手のひらを押し当てる形で置きフォークがキラっと光った。

タンタンタンタン!!

「ぎやぁぁー!!やめて。やめて!」

高速でデロアの指の間をタンタン突き立てるアルベルティナ。
親指から小指、小指から親指と3往復するとフォークを置いた。

「タイタンさん。家で食べましょう」
「あ、う、うん」

嵐のように去って行ったアルベルティナとタイタンだったが、正気に戻ったリュシアンが頬を染めていた事をアルベルティナは知らない。
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