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第61話 場所を選ぶ相談
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花嫁としての候補者は呼んでしまった以上、約束通りの期日まで辺境の地に住まうのは継続となった。ただ残りの期間はもう消化試合のようなもの。他家の子息と婚約をしようがブランシル辺境伯家は問題としないと各家に伝えてあると先代辺境伯はアルベルティナに告げた。
「彼女たち本人には言わないんですか?」
「聞き取りはしてある。一番有望株だったリリア嬢が選ばれても応えられるか判らないと返事をして来た。まだ残り2回の面会はあるが感触としては…断ってくるだろう」
「いいんですか?それで」
「構わんよ。リュシアンも子供を作りたい相手は決まっているようで候補者はそれぞれの家に返せと言っておった」
「候補者の中には意中の人はいないって事ですか」
「そうなるな。いるのならこの子だと言うだろう。リュシアンは家に返せ、花嫁選びは辞めろと言ったんだから」
――なるほどぉ。って事は16番目の候補者である私も外れたって事ね――
選ばれても断る気でいたし、そもそもで選ばれないだろう。
選ばれるとすれば91日の間で会えるのは1日しかないのに、その1日リュシアンは来なかったのだ。
――これがWINWINってやつね。誰も嫌な思いはしないわ――
心も晴れやかに屋敷を後にすると、遅れてタイタンが隣に並んだ。
「これでタイタンさんも肩の荷が下りたわね」
「そうなんだが…ベル、ちょっといいかな」
「何?夕食の買い出しに付き合ってってこと?」
「それもあるんだが別件だ」
――うーん。もしかして護衛任務は別手当がついててそれが無くなるからちょっとお金貸して?とかかな――
アルベルティナは一生かかっても使いきれない金が毎月入って来る。
持ちすぎても使えないし、何かあって遺産となれば全てが国庫に入るだろう。ならば寄付をしまくったほうが皆が喜ぶと寄付を選んでいる。
タイタンには世話になったし、貸すというよりも貸すふりをして、ある時払いも不要の催促無し。つまりあげてもいいとアルベルティナは考えていた。
「どうしたの?」
「ここではちょっと…」
――これは間違いなく借金の申し込みね。市井でよく見たわ。大抵はカフェとか微妙なところに連れていかれて頭を下げられるパターンね――
お金の事ならこんな場所では言い難いだろう。
お好き焼きの店も隣の席とは区画されてないし、他人に聞かれるのも嫌だろうから家でゆっくり話を聞いてあげようと思いながら「家に現金、幾らあったかな?」と思案してみる。
何百万、何千万という大きな金額でなければ直ぐになんとかなりそうだし、大きくても明日まで待ってもらえればと思ったアルベルティナはタイタンに手を差し出した。
「帰ろっ。タイタンさんの作った晩御飯が食べたいな」
「お、おぅ。任せとけ。ベルの好きなものを作ってやるよ」
「ホントに?だったらぁ…カワナの塩焼きと大根ソテー、それから――」
「俺っ!」
「え?タイタンさんは作る人よ?まさか…タイタンさん、本当は人食い?」
「ハァーッ?!」
アルベルティナは辺境伯家は人を食うと聞いていたが、実際来てみれば噂は噂。そんなの嘘だと思っていたがまさかタイタンが?!人食いならぬ人に食わせる方だったとは!
タイタンは盛大な勘違いをされている事に直ぐに気が付いた。
アルベルティナが王都で聞いた噂話の事はタイタンも知っていたからである。
「俺っ!」と言いかけたのは何でも作るからアルベルティナの好きなものを全部教えて欲しいと言うつもりだった。
途切れてしまったのはそれが求婚の言葉と受け取られてしまったら、必死で考えた言葉が言えなくなってしまう。兵士仲間からは「とびっきり甘い言葉じゃないとダメだ」と言われていたので食べ物に関する事とは違うだろうとストッパーが効いてしまった。
タイタンはアルベルティナの差し出した手を握った。
2人は途中で買い物をしながら家に帰った。
「彼女たち本人には言わないんですか?」
「聞き取りはしてある。一番有望株だったリリア嬢が選ばれても応えられるか判らないと返事をして来た。まだ残り2回の面会はあるが感触としては…断ってくるだろう」
「いいんですか?それで」
「構わんよ。リュシアンも子供を作りたい相手は決まっているようで候補者はそれぞれの家に返せと言っておった」
「候補者の中には意中の人はいないって事ですか」
「そうなるな。いるのならこの子だと言うだろう。リュシアンは家に返せ、花嫁選びは辞めろと言ったんだから」
――なるほどぉ。って事は16番目の候補者である私も外れたって事ね――
選ばれても断る気でいたし、そもそもで選ばれないだろう。
選ばれるとすれば91日の間で会えるのは1日しかないのに、その1日リュシアンは来なかったのだ。
――これがWINWINってやつね。誰も嫌な思いはしないわ――
心も晴れやかに屋敷を後にすると、遅れてタイタンが隣に並んだ。
「これでタイタンさんも肩の荷が下りたわね」
「そうなんだが…ベル、ちょっといいかな」
「何?夕食の買い出しに付き合ってってこと?」
「それもあるんだが別件だ」
――うーん。もしかして護衛任務は別手当がついててそれが無くなるからちょっとお金貸して?とかかな――
アルベルティナは一生かかっても使いきれない金が毎月入って来る。
持ちすぎても使えないし、何かあって遺産となれば全てが国庫に入るだろう。ならば寄付をしまくったほうが皆が喜ぶと寄付を選んでいる。
タイタンには世話になったし、貸すというよりも貸すふりをして、ある時払いも不要の催促無し。つまりあげてもいいとアルベルティナは考えていた。
「どうしたの?」
「ここではちょっと…」
――これは間違いなく借金の申し込みね。市井でよく見たわ。大抵はカフェとか微妙なところに連れていかれて頭を下げられるパターンね――
お金の事ならこんな場所では言い難いだろう。
お好き焼きの店も隣の席とは区画されてないし、他人に聞かれるのも嫌だろうから家でゆっくり話を聞いてあげようと思いながら「家に現金、幾らあったかな?」と思案してみる。
何百万、何千万という大きな金額でなければ直ぐになんとかなりそうだし、大きくても明日まで待ってもらえればと思ったアルベルティナはタイタンに手を差し出した。
「帰ろっ。タイタンさんの作った晩御飯が食べたいな」
「お、おぅ。任せとけ。ベルの好きなものを作ってやるよ」
「ホントに?だったらぁ…カワナの塩焼きと大根ソテー、それから――」
「俺っ!」
「え?タイタンさんは作る人よ?まさか…タイタンさん、本当は人食い?」
「ハァーッ?!」
アルベルティナは辺境伯家は人を食うと聞いていたが、実際来てみれば噂は噂。そんなの嘘だと思っていたがまさかタイタンが?!人食いならぬ人に食わせる方だったとは!
タイタンは盛大な勘違いをされている事に直ぐに気が付いた。
アルベルティナが王都で聞いた噂話の事はタイタンも知っていたからである。
「俺っ!」と言いかけたのは何でも作るからアルベルティナの好きなものを全部教えて欲しいと言うつもりだった。
途切れてしまったのはそれが求婚の言葉と受け取られてしまったら、必死で考えた言葉が言えなくなってしまう。兵士仲間からは「とびっきり甘い言葉じゃないとダメだ」と言われていたので食べ物に関する事とは違うだろうとストッパーが効いてしまった。
タイタンはアルベルティナの差し出した手を握った。
2人は途中で買い物をしながら家に帰った。
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