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第12話 行きたいト・コ・ロ♡
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「申し遅れました。私からで申し訳ございません。私はアルベルティナと申します」
「‥‥(ん?)あ、あぁ…私は…タイッ、タイタンと申します」
「ぐぁっぐぁっ!」
「おぉこれは申し訳ない。君たちのベッド…ベッド…」
見回しても馬車の中には家鴨の巣に出来そうな入れ物はない。タイタンと名乗った使者は小窓を開けると身を乗り出して箱乗り状態になって馬車の屋根に載せた荷物の中から大きめの鍋を引っ張り出すと、今度は座面をあげてシーツを取り出し、家鴨が床に寝なくてもいいスペースを作ってくれた。
「ありがとうございます。この子たち元気が良いんですけど大丈夫かしら」
「途中、水場のある休憩所を選んで立ち寄るようにいたしましょう」
「まぁ、そんな事まで?ですが…少しお願いがあるのですが」
「なんでしょう?」
「貴族院に寄って頂けます?」
「貴族院に?何か申請でも?」
「えぇ。折角迎えに来て頂いたんですけど、私、放逐されたんです。籍も抜かれてしまったので貴族じゃないんです」
「え?えぇーっ?!」
アルベルティナは目の前で盛大に驚いてくれる使者にケーニス伯爵が書いてくれた永久的な縁切りの書面を見せた。
「辺境伯様ですから、相手は貴族の娘でないとなりませんよね。なので…ごめんなさい。私には資格がないんです」
神妙な面持ちで使者タイタンに語るアルベルティナだが、心では「ごめんね?」と舌をペロッと出している。
「それでですね。辺境伯領とまでは申しません。王都の外郭の壁の関所まで私と家鴨を同乗させて頂きたいんです。お代は少ないですけども辻馬車より少し多めに払いますので」
アルベルティナは庭で採取できる草花や木の皮などを煎じて薬や茶を作り、ゼルバたち気の置けない使用人を通じて品を売り、背中にたすき掛けとした襤褸のショールからコツコツと貯めた金の入った袋を取り出した。
「銀貨1枚…で、いいですかね?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいね?突然のことで混乱しておりましてね」
「まぁ。急かしてしまいました?」
「あ、いや、なんて言うか…その…」
しどろもどろになってしまう使者のタイタン。
馬車の中にいるだけなのに何故かタイタンは汗びっしょりになって袖に吸わせた汗が搾れそうになっていた。
「あ、停めてください」
「貴族院はまだ先では?」
「貴族院の前は馬車を停めるスペースが空いてる事が少ないんですよ。役所はそういうところ、気が利きませんからね。ここなら…停車していても注意されることもないです。出してくるだけなのでちょっと待っててくださいましね。この子たちは…取り敢えず鴨質?」
人質ならぬ鴨質。
アルベルティナはステップも取り付けていないのに扉を開けると「とぉ!」勢いよく飛び出して令嬢らしからぬ全力ダッシュで駆けていった。
貴族院の入り口に向かって走るアルベルティナの背中を見てタイタンの胸の奥が騒がしくなった。
――キュン♡――
「ハッ!私は…なんてことだ…奥方様になるかも知れない方にこんな気持ちを持つなんて。はぁーっ」
今まで感じた事の無い胸の痛みを感じ、胸に手を当て深いため息を吐いた。
「どうしよう。なんて言えばいいんだろう」
「‥‥(ん?)あ、あぁ…私は…タイッ、タイタンと申します」
「ぐぁっぐぁっ!」
「おぉこれは申し訳ない。君たちのベッド…ベッド…」
見回しても馬車の中には家鴨の巣に出来そうな入れ物はない。タイタンと名乗った使者は小窓を開けると身を乗り出して箱乗り状態になって馬車の屋根に載せた荷物の中から大きめの鍋を引っ張り出すと、今度は座面をあげてシーツを取り出し、家鴨が床に寝なくてもいいスペースを作ってくれた。
「ありがとうございます。この子たち元気が良いんですけど大丈夫かしら」
「途中、水場のある休憩所を選んで立ち寄るようにいたしましょう」
「まぁ、そんな事まで?ですが…少しお願いがあるのですが」
「なんでしょう?」
「貴族院に寄って頂けます?」
「貴族院に?何か申請でも?」
「えぇ。折角迎えに来て頂いたんですけど、私、放逐されたんです。籍も抜かれてしまったので貴族じゃないんです」
「え?えぇーっ?!」
アルベルティナは目の前で盛大に驚いてくれる使者にケーニス伯爵が書いてくれた永久的な縁切りの書面を見せた。
「辺境伯様ですから、相手は貴族の娘でないとなりませんよね。なので…ごめんなさい。私には資格がないんです」
神妙な面持ちで使者タイタンに語るアルベルティナだが、心では「ごめんね?」と舌をペロッと出している。
「それでですね。辺境伯領とまでは申しません。王都の外郭の壁の関所まで私と家鴨を同乗させて頂きたいんです。お代は少ないですけども辻馬車より少し多めに払いますので」
アルベルティナは庭で採取できる草花や木の皮などを煎じて薬や茶を作り、ゼルバたち気の置けない使用人を通じて品を売り、背中にたすき掛けとした襤褸のショールからコツコツと貯めた金の入った袋を取り出した。
「銀貨1枚…で、いいですかね?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいね?突然のことで混乱しておりましてね」
「まぁ。急かしてしまいました?」
「あ、いや、なんて言うか…その…」
しどろもどろになってしまう使者のタイタン。
馬車の中にいるだけなのに何故かタイタンは汗びっしょりになって袖に吸わせた汗が搾れそうになっていた。
「あ、停めてください」
「貴族院はまだ先では?」
「貴族院の前は馬車を停めるスペースが空いてる事が少ないんですよ。役所はそういうところ、気が利きませんからね。ここなら…停車していても注意されることもないです。出してくるだけなのでちょっと待っててくださいましね。この子たちは…取り敢えず鴨質?」
人質ならぬ鴨質。
アルベルティナはステップも取り付けていないのに扉を開けると「とぉ!」勢いよく飛び出して令嬢らしからぬ全力ダッシュで駆けていった。
貴族院の入り口に向かって走るアルベルティナの背中を見てタイタンの胸の奥が騒がしくなった。
――キュン♡――
「ハッ!私は…なんてことだ…奥方様になるかも知れない方にこんな気持ちを持つなんて。はぁーっ」
今まで感じた事の無い胸の痛みを感じ、胸に手を当て深いため息を吐いた。
「どうしよう。なんて言えばいいんだろう」
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