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8:少年は恋をして大人になった
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「こんな事も出来ないのか。立て。剣を取れ」
立てるわけがないだろうが!何時間相手をしてると思ってるんだ。
朝からもう4時間だぞ?打ち込まれて手は震えるし体も痛いんだぞ!
アーカンソー公爵家は筆頭公爵家でもある。
生まれたくて生まれた訳じゃないし、長子になりたかったわけでもない。
弟妹が母上と遊んでいる間も勉強!マナー!ダンス!
なんで俺だけこんな事をしなくちゃならないんだ。
だいたい騎士団長相手に俺が勝てる筈がないだろう。
常識を考えろ!バカ親父!バカジジィ!
生傷が絶えない日々。剣の稽古が終われば座学。座れるだけマシだと思えば大間違い。問題を1つ間違えれば5問連続で正解するまで立って答えねばならない。
こんなやり方で何が身につくと言うんだろう。
体つきも同じ年齢の騎士見習いで来ているヤツからすると細くて貧弱な俺はいつも彼らから「指名」をされていた。理由は簡単。勝ちやすいからだ。
11歳のある日、騎士団の鍛錬上でいつものように滅多打ちにされた俺はヘロヘロになって井戸に向かった。
「はい。オリバー」
「姉上、こんな所にまでどうされたんですか」
「どうって…オリバーを見に来たのよ?」
そこにいたのは5歳年上。16歳で近衛隊に入隊をしたオリバー殿だった。
爵位は伯爵位だから、公爵家の俺よりは格下となるが騎士団は実力主義。
例え王子殿下であっても、実戦形式の練習試合で子爵家の出自である騎士に負ければ荷物持ちになる。そんな中でオリバー殿は憧れでもあった。
「姉上か…いいなぁ。俺にも兄か姉がいればなぁ」
13歳の入隊までにはそれなりの実力を身につける事を要求されている俺は焦っていた。オリバー殿の姉上はとても優しそうで確か20歳になったばかりだと聞いた気がする。
「あら?井戸を使うの?ほら、オリバー交代してあげないと」
「僕は…あとでいいですから」
「何を言ってるの。こんなに土も付いて」
オリバー殿の姉上は俺の服についた土を優しく払い落してくれた。
そして・・・。
「ちょっとここにお座りなさいな」
裏口の入り口。5段の階段になった段に腰掛けると俺に膝の上に座れという。
「姉上は言い出したら聞かないから。黙ってはいはい言っとけ」
「あ、はい」
俺を膝の上に横向きに座らせると、靴を脱がせオリバー殿に汲ませた水の入った桶で俺の足を綺麗に洗ってくれたのだ。指の間も丁寧に細い指が汚れを落としていく。
「小さいのに偉いのね。大きくなったら立派な騎士さんになってね」
母上にもこんなに優しくされた事のない俺は、悔しいのと体が痛いのとで涙がポロポロ零れてしまった。
「痛かった?ごめんなさいね?」
「違う」
「そうね。違うのよね」
「うわぁぁん!うわぁぁん!」
口から出た言葉に肯定をされたのも初めてだった。
俺は声をあげて泣いてしまったのだ。そんな俺をオリバー殿の姉上はそっと抱きしめて背中をトントン優しく叩いてくれた。
「僕、騎士になんかなりたくない」
「そう。それも一つの生き方ね」
「姉上!またそんな甘い事を!」
「いいじゃない。ほんの一時でも許されるならその時だけは」
オリバー殿を振り返る時、ふわりとマロン色の髪が俺の頬を撫でた。
その時は、言葉の意味が解らなかったが、その時に涙を吸わせたハンカチは俺の宝物になった。
2年後、入隊試験をクリアした俺はオリバー殿の姉上が婚約破棄になった事を知った。
あんな素晴らしい女性を望まない男がいる事が信じられなかった。
しかしすぐに別の子息と婚約が結ばれたことも知った。
――悔しい――
何故だか判らなかったが、物凄く悔しくて俺は剣の腕を磨く事に没頭した。やり場のない怒りと悔しさを何処にぶつければいいのか判らなかったからだ。
そんな時、街でオリバー殿の姉上を見かけた。
街角に立っている娼婦のような女と身なりの良い男が姉上を顎で使っていた。
表情の抜け落ちたような顔をした姉上を見て、全身の毛が逆立つ怒りを覚えた。
胸ポケットにしまったハンカチが濡れているような気がした。
噂では婚約者には愛人がいて、姉上は冷遇されているという。
――俺なら絶対にそんな事はしないのに!――
ダメで元々。俺は父上と祖父に直談判をした。「あの婚約をやめさせてくれ」と。
しかし他家の事に口を挟む事は出来ないと突き放された。
そして知ったのだ。
家長が決めた事に従うしか令嬢には生きる術がない事を。
だから【ほんの一時でも許されるならその時だけは】彼女は違う生き方が出来る夢を見ても、思いを抱いてもいいんじゃないかと言った意味を知った。
女性が家を継ぐという事は、建前は当主となるが実権は男性が持つ。
父上は言った。婿養子を取り実権は伯爵のまま。子が生まれればその子に爵位を渡す。女性の長子はそうやって飾りとして生きていくのだと。
そんなバカな話があるか。
俺なら彼女の望むままの人生を過ごさせてやるのに。
「父上、お爺様、マクベル伯爵家のリーゼロッテ殿を娶りたい」
「これはまた思い切った事を言うなぁ。年は9つも違うし婚約者もいるんだぞ?」
「あれを婚約者と言うのならこの国を捨てて彼女を連れて出国する」
「14歳の小童が寝言か?」
「寝言なんかじゃない!」
「ならば行動で示せ。そうだな近衛隊にトップ成績で入隊出来ればマクベル伯爵に話をしてみよう」
「本当だな?結果を出した後で覆すなよ?」
「出来る物ならやってみろ。尻から数えたほうが早いお前の寝言に付き合うんだ。それくらいの条件は必要だろう」
11歳の初恋。実は母親への思慕にも似た感情だったのかも知れない。
月日と共に拗れた思いに俺はバカになったのかも知れない。
でもはっきり言える事がある。
俺は男としてリーゼロッテを守りたい。
俺を初めて肯定してくれたリーゼロッテのやりたい事をさせてやれる男になりたい。
有言実行で近衛隊にトップの成績で入隊を決めた俺への褒美だろうか。
あのゲスな男と婚約はなくなりそうだという噂が流れ始めた。
「お前はまだ16歳。かの令嬢は25歳だ。この先お前の心を奪う女性が現れたらどうする」
「そんなものは現れない。リーゼロッテ以外は全てメスだ。女性じゃない」
「母上は違うのか?」
「母上を女として見た事などない。母上は母上だ」
気持ちが変わらない事に父上は怪訝な顔をしたが、当主のお爺様と母上は認めてくれた。
拗らせ切った俺は遂に両親も、祖父も認めさせてリーゼロッテとの結婚にこぎつけた。
変装をしたってすぐにわかる。
何をしても可愛くて悶えてしまいそうだ。
俺の愛は変わらない。押し付ける事になっても手放す事は出来ない。
あとはリーゼロッテに好きになって貰う事だけだ。
なのに…どうしてこうなった?
熱を出してしまったリーゼロッテ。
回復したとの知らせは来たのだが一向に会ってくれない。
――俺は何処で、何を間違ってしまったんだ?――
立てるわけがないだろうが!何時間相手をしてると思ってるんだ。
朝からもう4時間だぞ?打ち込まれて手は震えるし体も痛いんだぞ!
アーカンソー公爵家は筆頭公爵家でもある。
生まれたくて生まれた訳じゃないし、長子になりたかったわけでもない。
弟妹が母上と遊んでいる間も勉強!マナー!ダンス!
なんで俺だけこんな事をしなくちゃならないんだ。
だいたい騎士団長相手に俺が勝てる筈がないだろう。
常識を考えろ!バカ親父!バカジジィ!
生傷が絶えない日々。剣の稽古が終われば座学。座れるだけマシだと思えば大間違い。問題を1つ間違えれば5問連続で正解するまで立って答えねばならない。
こんなやり方で何が身につくと言うんだろう。
体つきも同じ年齢の騎士見習いで来ているヤツからすると細くて貧弱な俺はいつも彼らから「指名」をされていた。理由は簡単。勝ちやすいからだ。
11歳のある日、騎士団の鍛錬上でいつものように滅多打ちにされた俺はヘロヘロになって井戸に向かった。
「はい。オリバー」
「姉上、こんな所にまでどうされたんですか」
「どうって…オリバーを見に来たのよ?」
そこにいたのは5歳年上。16歳で近衛隊に入隊をしたオリバー殿だった。
爵位は伯爵位だから、公爵家の俺よりは格下となるが騎士団は実力主義。
例え王子殿下であっても、実戦形式の練習試合で子爵家の出自である騎士に負ければ荷物持ちになる。そんな中でオリバー殿は憧れでもあった。
「姉上か…いいなぁ。俺にも兄か姉がいればなぁ」
13歳の入隊までにはそれなりの実力を身につける事を要求されている俺は焦っていた。オリバー殿の姉上はとても優しそうで確か20歳になったばかりだと聞いた気がする。
「あら?井戸を使うの?ほら、オリバー交代してあげないと」
「僕は…あとでいいですから」
「何を言ってるの。こんなに土も付いて」
オリバー殿の姉上は俺の服についた土を優しく払い落してくれた。
そして・・・。
「ちょっとここにお座りなさいな」
裏口の入り口。5段の階段になった段に腰掛けると俺に膝の上に座れという。
「姉上は言い出したら聞かないから。黙ってはいはい言っとけ」
「あ、はい」
俺を膝の上に横向きに座らせると、靴を脱がせオリバー殿に汲ませた水の入った桶で俺の足を綺麗に洗ってくれたのだ。指の間も丁寧に細い指が汚れを落としていく。
「小さいのに偉いのね。大きくなったら立派な騎士さんになってね」
母上にもこんなに優しくされた事のない俺は、悔しいのと体が痛いのとで涙がポロポロ零れてしまった。
「痛かった?ごめんなさいね?」
「違う」
「そうね。違うのよね」
「うわぁぁん!うわぁぁん!」
口から出た言葉に肯定をされたのも初めてだった。
俺は声をあげて泣いてしまったのだ。そんな俺をオリバー殿の姉上はそっと抱きしめて背中をトントン優しく叩いてくれた。
「僕、騎士になんかなりたくない」
「そう。それも一つの生き方ね」
「姉上!またそんな甘い事を!」
「いいじゃない。ほんの一時でも許されるならその時だけは」
オリバー殿を振り返る時、ふわりとマロン色の髪が俺の頬を撫でた。
その時は、言葉の意味が解らなかったが、その時に涙を吸わせたハンカチは俺の宝物になった。
2年後、入隊試験をクリアした俺はオリバー殿の姉上が婚約破棄になった事を知った。
あんな素晴らしい女性を望まない男がいる事が信じられなかった。
しかしすぐに別の子息と婚約が結ばれたことも知った。
――悔しい――
何故だか判らなかったが、物凄く悔しくて俺は剣の腕を磨く事に没頭した。やり場のない怒りと悔しさを何処にぶつければいいのか判らなかったからだ。
そんな時、街でオリバー殿の姉上を見かけた。
街角に立っている娼婦のような女と身なりの良い男が姉上を顎で使っていた。
表情の抜け落ちたような顔をした姉上を見て、全身の毛が逆立つ怒りを覚えた。
胸ポケットにしまったハンカチが濡れているような気がした。
噂では婚約者には愛人がいて、姉上は冷遇されているという。
――俺なら絶対にそんな事はしないのに!――
ダメで元々。俺は父上と祖父に直談判をした。「あの婚約をやめさせてくれ」と。
しかし他家の事に口を挟む事は出来ないと突き放された。
そして知ったのだ。
家長が決めた事に従うしか令嬢には生きる術がない事を。
だから【ほんの一時でも許されるならその時だけは】彼女は違う生き方が出来る夢を見ても、思いを抱いてもいいんじゃないかと言った意味を知った。
女性が家を継ぐという事は、建前は当主となるが実権は男性が持つ。
父上は言った。婿養子を取り実権は伯爵のまま。子が生まれればその子に爵位を渡す。女性の長子はそうやって飾りとして生きていくのだと。
そんなバカな話があるか。
俺なら彼女の望むままの人生を過ごさせてやるのに。
「父上、お爺様、マクベル伯爵家のリーゼロッテ殿を娶りたい」
「これはまた思い切った事を言うなぁ。年は9つも違うし婚約者もいるんだぞ?」
「あれを婚約者と言うのならこの国を捨てて彼女を連れて出国する」
「14歳の小童が寝言か?」
「寝言なんかじゃない!」
「ならば行動で示せ。そうだな近衛隊にトップ成績で入隊出来ればマクベル伯爵に話をしてみよう」
「本当だな?結果を出した後で覆すなよ?」
「出来る物ならやってみろ。尻から数えたほうが早いお前の寝言に付き合うんだ。それくらいの条件は必要だろう」
11歳の初恋。実は母親への思慕にも似た感情だったのかも知れない。
月日と共に拗れた思いに俺はバカになったのかも知れない。
でもはっきり言える事がある。
俺は男としてリーゼロッテを守りたい。
俺を初めて肯定してくれたリーゼロッテのやりたい事をさせてやれる男になりたい。
有言実行で近衛隊にトップの成績で入隊を決めた俺への褒美だろうか。
あのゲスな男と婚約はなくなりそうだという噂が流れ始めた。
「お前はまだ16歳。かの令嬢は25歳だ。この先お前の心を奪う女性が現れたらどうする」
「そんなものは現れない。リーゼロッテ以外は全てメスだ。女性じゃない」
「母上は違うのか?」
「母上を女として見た事などない。母上は母上だ」
気持ちが変わらない事に父上は怪訝な顔をしたが、当主のお爺様と母上は認めてくれた。
拗らせ切った俺は遂に両親も、祖父も認めさせてリーゼロッテとの結婚にこぎつけた。
変装をしたってすぐにわかる。
何をしても可愛くて悶えてしまいそうだ。
俺の愛は変わらない。押し付ける事になっても手放す事は出来ない。
あとはリーゼロッテに好きになって貰う事だけだ。
なのに…どうしてこうなった?
熱を出してしまったリーゼロッテ。
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――俺は何処で、何を間違ってしまったんだ?――
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