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第11話 胸がキュン。これが推しへの気持ち
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「あの子、気になります?」
「そうね。重いものを持っているのに凄く姿勢が良いわ」
「流石セレたん!お目が高い!でもあと2か月早かったらあの子も騎士だったんですけどね」
「どういう事?」
「叩きあげ組の超有望株だったんで一時期推しもいたんですけど、ご実家が借金したみたいで武具を売ったんです。それからは配給係に転属したみたいで。勿体ないですよね」
「そうなのね…ねぇ。配給係になるともう騎士には戻れないの?」
「戻れますよ。でも戻るになると色々武具とか揃えないといけないし、配給係になったことで先輩騎士のお下がりも貰えないので実質は無理かな」
「よし!決めたわ。私、あの子を推すわ!名前はなんていうのかしら」
「配給組なら奥に引っ込んで井戸にいると思うので話せると思いますよ」
「でも鍛錬中はダメね。推しは遠くから応援するんでしょう?」
同情する気持ちが無かったとは言えないが、セレナから見て配給係の女の子は何か光る物を持っている気がした。
その事をマーガにいうと‥・。
「推しですね。推しってずらーっと並んでも自分にだけは特別に見えるんです。見た目じゃなくて何か引き付けるものがあるんですよ。育成してみます?」
「育成‥育てるの?」
「そうです。ちょっと名前をリサーチしてきます。先ずは絵姿から行きましょう」
「そうね。頼める?」
「セレたんのお願いなら、サーカスのライオンより上手に火の中に飛び込みますよぅ」
――それは危険だからしなくていいわ――
マーガのリサーチによれば配給係の女の子の名前はメイリーン。
年齢は14歳。
身分は平民で2年前に女性騎士の入団試験を受けてトップ合格。体つきは線が細いように見えるけれど全身がバネのようにしなやかに跳ねて、剣術よりも柔術のほうに才能があると見込まれていたという。
絵師に早速2枚の絵姿を描いてもらい出来栄えに満足していると絵師が言った。
「座って空を眺めている休憩ポーズも描けますよ」
――なんですって?そんな妄想ポーズまで?――
メイリーンは気忙しく動き回っているので全く座ってはいないのだが、こんな楽しみもあるのか!セレナはオプションでそっと絵師にお願いをしてみた。
「座って空を眺めてるのはいい構図なんだけど、そこに目を閉じてハミングしてる風って描けるかしら」
「勿論ですよ。だったら…バックを草原にしてみましょう」
「そんな事も出来るの?!凄いわ!」
実物より絵姿は3割増しになると言うが、腕のいい絵師なのだろう。
出来上がった絵は実物のメイリーンと遜色ない出来栄え。
「なんて可愛いの!」
胸の奥がキュキュッと締め付けられる甘美な苦しみ。
「どうぞ」と手渡されてあまりの可愛さにセレナは「この気持ちがキュンなんだわ」と初恋を自覚した女の子のように頬を染めた。
「ではお代は…3枚で1枚がオプションなので銅貨18枚です」
「いいえ。こんな素敵な絵だもの。受け取って」
セレナは嬉しくなって銅貨100枚に相当する銀貨1枚を絵師に手渡した。
「こんなに頂けません!騎士団に納付する時も何を言われるか!」
「でもメイリーン様にも手渡されるんでしょう?あぁもっと持ってくればよかったわ」
絵師の取り分はあくまでも銅貨18枚。それを超えて貰ってしまうと今後見物客相手に商売が出来なくなるので、銅貨82枚はきちんと騎士団に納付すると絵師は言った。
メイリーンには銅貨50枚が手渡されるだろうと聞き「甘いものでも買ってくれるといいな」セレナはウキウキした気持ちで3枚の絵姿を大事に抱えて帰途についた。
★~★
帰り道で何度も絵姿を広げていると妄想が広がってくる。
「きっと、剣を握ってビシッと構えたらカッコいいわね」
「そうですね。最初は本当に人気ありましたけど塩対応なところがまた可愛かったですよ」
「まぁ、塩対応?」
「はい。”忙しいので” とか お辞儀する時もペコって感じでクールでした」
「こんな可愛い顔なのに?クールな面もあるのね。奥が深いわ」
「もっと知りたいですか?」
「えぇ。でもプライベートに踏み込んではダメね。推し活の心得でもあるけれど解る気がするわ。メイリーン様はこの雰囲気がいいのよ」
「推しを推す私の推し。尊みしかないッ!今夜も良い夢みられそうデッス!」
マーガもリーンも推しはセレナだけではない。
推し活の良いところは唯一と決めて何か1つを推すのもOKだが、グループであったり劇団そのものという多人数でもOKだし、人間でなくてもいいのだ。
そして、あれも、これもとジャンルの違う推しを幾つか推しても構わない。
要は「応援したい!」それでいいのである。
マーガは騎士団の武具を運ぶときに使う木箱に焼き印を押す器具を作っている商会も推している。
「微妙にズレてる。アレが良いんです。でもあの焼き鏝の焼き印はあの商会しか作れません!だから株式商会にした時から毎月給料日には株を買ってるんですよ。セレたん推しっていうオリジナルを作ってくれた時から応援する事に決めたんです」
「そんな焼き印があるの?」
「特注ですよ。自分の服とかに自分で焼き印を押すんです。背中一面に刺繍するのは手間なので。えへっ」
そんなものまで売られていたとは。
自分の知らない事はまだまだあるようだ。
リーンは青果市場で発行されている青果広報に掲載をされている4コマ漫画の脇役。デーコンという大根を模したキャラクターも推している。
きゃっきゃと楽しく歩いてピエロトロ侯爵家まで帰ってきて、流石に正門は閉じている時間だろうと裏口から敷地に入り、正面玄関ではない出入り口から「ただいま戻りましたわ」近くにいた使用人に声をかけると不思議そうな顔をされた。
――あ、彼らには身バレしてないんだったわ――
どうしようかな。「セレナです」と自己紹介をした方がいいか。
考えていると自己紹介の必要が無くなった。
「裏口からコソコソと。侯爵夫人になったらやりたい放題だな。結婚の翌日から間男と逢引とは良いご身分なことで」
そこには仁王立ちになったフェルナンドがいたのだった。
「そうね。重いものを持っているのに凄く姿勢が良いわ」
「流石セレたん!お目が高い!でもあと2か月早かったらあの子も騎士だったんですけどね」
「どういう事?」
「叩きあげ組の超有望株だったんで一時期推しもいたんですけど、ご実家が借金したみたいで武具を売ったんです。それからは配給係に転属したみたいで。勿体ないですよね」
「そうなのね…ねぇ。配給係になるともう騎士には戻れないの?」
「戻れますよ。でも戻るになると色々武具とか揃えないといけないし、配給係になったことで先輩騎士のお下がりも貰えないので実質は無理かな」
「よし!決めたわ。私、あの子を推すわ!名前はなんていうのかしら」
「配給組なら奥に引っ込んで井戸にいると思うので話せると思いますよ」
「でも鍛錬中はダメね。推しは遠くから応援するんでしょう?」
同情する気持ちが無かったとは言えないが、セレナから見て配給係の女の子は何か光る物を持っている気がした。
その事をマーガにいうと‥・。
「推しですね。推しってずらーっと並んでも自分にだけは特別に見えるんです。見た目じゃなくて何か引き付けるものがあるんですよ。育成してみます?」
「育成‥育てるの?」
「そうです。ちょっと名前をリサーチしてきます。先ずは絵姿から行きましょう」
「そうね。頼める?」
「セレたんのお願いなら、サーカスのライオンより上手に火の中に飛び込みますよぅ」
――それは危険だからしなくていいわ――
マーガのリサーチによれば配給係の女の子の名前はメイリーン。
年齢は14歳。
身分は平民で2年前に女性騎士の入団試験を受けてトップ合格。体つきは線が細いように見えるけれど全身がバネのようにしなやかに跳ねて、剣術よりも柔術のほうに才能があると見込まれていたという。
絵師に早速2枚の絵姿を描いてもらい出来栄えに満足していると絵師が言った。
「座って空を眺めている休憩ポーズも描けますよ」
――なんですって?そんな妄想ポーズまで?――
メイリーンは気忙しく動き回っているので全く座ってはいないのだが、こんな楽しみもあるのか!セレナはオプションでそっと絵師にお願いをしてみた。
「座って空を眺めてるのはいい構図なんだけど、そこに目を閉じてハミングしてる風って描けるかしら」
「勿論ですよ。だったら…バックを草原にしてみましょう」
「そんな事も出来るの?!凄いわ!」
実物より絵姿は3割増しになると言うが、腕のいい絵師なのだろう。
出来上がった絵は実物のメイリーンと遜色ない出来栄え。
「なんて可愛いの!」
胸の奥がキュキュッと締め付けられる甘美な苦しみ。
「どうぞ」と手渡されてあまりの可愛さにセレナは「この気持ちがキュンなんだわ」と初恋を自覚した女の子のように頬を染めた。
「ではお代は…3枚で1枚がオプションなので銅貨18枚です」
「いいえ。こんな素敵な絵だもの。受け取って」
セレナは嬉しくなって銅貨100枚に相当する銀貨1枚を絵師に手渡した。
「こんなに頂けません!騎士団に納付する時も何を言われるか!」
「でもメイリーン様にも手渡されるんでしょう?あぁもっと持ってくればよかったわ」
絵師の取り分はあくまでも銅貨18枚。それを超えて貰ってしまうと今後見物客相手に商売が出来なくなるので、銅貨82枚はきちんと騎士団に納付すると絵師は言った。
メイリーンには銅貨50枚が手渡されるだろうと聞き「甘いものでも買ってくれるといいな」セレナはウキウキした気持ちで3枚の絵姿を大事に抱えて帰途についた。
★~★
帰り道で何度も絵姿を広げていると妄想が広がってくる。
「きっと、剣を握ってビシッと構えたらカッコいいわね」
「そうですね。最初は本当に人気ありましたけど塩対応なところがまた可愛かったですよ」
「まぁ、塩対応?」
「はい。”忙しいので” とか お辞儀する時もペコって感じでクールでした」
「こんな可愛い顔なのに?クールな面もあるのね。奥が深いわ」
「もっと知りたいですか?」
「えぇ。でもプライベートに踏み込んではダメね。推し活の心得でもあるけれど解る気がするわ。メイリーン様はこの雰囲気がいいのよ」
「推しを推す私の推し。尊みしかないッ!今夜も良い夢みられそうデッス!」
マーガもリーンも推しはセレナだけではない。
推し活の良いところは唯一と決めて何か1つを推すのもOKだが、グループであったり劇団そのものという多人数でもOKだし、人間でなくてもいいのだ。
そして、あれも、これもとジャンルの違う推しを幾つか推しても構わない。
要は「応援したい!」それでいいのである。
マーガは騎士団の武具を運ぶときに使う木箱に焼き印を押す器具を作っている商会も推している。
「微妙にズレてる。アレが良いんです。でもあの焼き鏝の焼き印はあの商会しか作れません!だから株式商会にした時から毎月給料日には株を買ってるんですよ。セレたん推しっていうオリジナルを作ってくれた時から応援する事に決めたんです」
「そんな焼き印があるの?」
「特注ですよ。自分の服とかに自分で焼き印を押すんです。背中一面に刺繍するのは手間なので。えへっ」
そんなものまで売られていたとは。
自分の知らない事はまだまだあるようだ。
リーンは青果市場で発行されている青果広報に掲載をされている4コマ漫画の脇役。デーコンという大根を模したキャラクターも推している。
きゃっきゃと楽しく歩いてピエロトロ侯爵家まで帰ってきて、流石に正門は閉じている時間だろうと裏口から敷地に入り、正面玄関ではない出入り口から「ただいま戻りましたわ」近くにいた使用人に声をかけると不思議そうな顔をされた。
――あ、彼らには身バレしてないんだったわ――
どうしようかな。「セレナです」と自己紹介をした方がいいか。
考えていると自己紹介の必要が無くなった。
「裏口からコソコソと。侯爵夫人になったらやりたい放題だな。結婚の翌日から間男と逢引とは良いご身分なことで」
そこには仁王立ちになったフェルナンドがいたのだった。
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