27 / 36
第27話 話が違う
しおりを挟む
赤子を抱いて窓の外を虚ろな目で眺めているエベリーは「どうしてこんな事に」と誰も答えを返してくれない問いかけを口にした。
第1王子の妃と言っても単なるお飾りに過ぎない事が今更に身に染みる。。
今更だがダグラスに誘われた時に「仕事中」と断れば良かった。
ダグラスが王子と知った時、は既に関係を何度か持った後でエベリーに邪な気持ちが無かったとは言えない。
エベリーも思ったのだ。
「王子様の子供が出来たら、私、王妃になれるんじゃない?」
だから腕に抱く子供が「当たった」と感じた日をエベリーは覚えている。
店主からは「子流しの薬湯は忘れずに飲むように」と言われていたけれど、エベリーは回数を重ねるごとに自分の体調を万全に持って行くようにした。
月のものが終わり10日目。
ダグラスは避妊をしてくれるような男ではなかったのでエベリーは狙ったのだ。
その甲斐あってエベリーは妊娠をした。
喜んだのは最初の内だけだった。
まだ腹の中に子供がいる時は講師が付いて勉強を教えてもらったけれどさっぱり内容が理解できない。
勉強しなきゃいけないなんて聞いてない。
どうしてダグラスのように面倒な事は従者にしろと言ってはいけないのか。
ダグラスに許されて自分には許されないなんてあり得ない!
エベリーは学ぶことを悪阻を理由に拒否した。
不機嫌さを隠さないダグラスの隣ですべすべの柔らかい布で作った豪奢なドレスを着て夜でも昼間のように明るく煌びやかな夜会にも出席をした。
妊娠しているので酒は飲めなかったけれど、周囲の女性たちと違って腹回りがゆったりとしているエベリーは誰も手を付けない豪華な食事が並べられたテーブルを占領し、食欲のままに食べまくった。
悪阻の時は水を飲んでも吐いてしまったいたけれど、悪阻が収まると猛烈な食欲が襲う。
食べ過ぎはいけないと言われていても食欲が止まらない。
最初は「はしたない」と咎められたが、そのうち誰も何も言わなくなった。
「子供はせいぜい3kg、他に色々と入れても体重の増加は10kgまでにしてください」と医師に言われたがエベリーには意味が解らない。
「1日あたり10kgにしろってこと?1週間?1か月?そもそも10kgって何?」
長さをメートルや時にフィートなどで示す事も、重さをキロなどで示す事も、単位がある事すらエベリーは知らなかったのである。
知っているのはニンジンや大根の絵が付いた看板があるのは青果店で、花の模様は生花店、パン屋はパンの模様だしそもそもいい香りがする。
品物の前には丸印の書かれた札があって、丸印と同じ数だけ銅貨を出せばよかった。生きていくのに単位を知らなくても問題はなかったのだ。
「この程度も判らないんですか」講師はそう言う。
エベリーは思った。
あなた達は子供の時から勉強したから読み書きできるだけよ!
一緒にしないで!
最初の頃は王妃も「困っているんです」と相談をすればお茶と菓子を出してくれて愚痴を聞いてくれたがそれも最近はない。
ダグラスは顔を見るたびに悪態を吐いてきて、エスコートで手を差し出すと嫌そうな顔をしてエスコートをする。入場するとエベリーの触れた個所をパンパン叩いてまるで汚いかのように扱う。
妊娠が解った時、周囲が流産を望んでいる事は解っていた。
だから意固地になって「この子には手を出させない」「流れてしまったら悠々自適な生活が出来ないじゃない!」と神経をビリビリに尖らせた。
けれど生まれた今は、産んで良かったのかの悩んでしまう。
貴族になれば食べる事、寝る場所、着るものには困らないから贅沢な暮らしが出来ると皆言っていた。
その言葉に嘘はなかった。
3食は食べられるし、寝る場所にはフカフカの寝具がある。着る物だって以前の生活なら店のショーウィンドウにすら飾られていない高価な品。
しかし、平民には当たり前に合って、王族貴族にないものがあった。
「王子そのものもだけど、王子の子供も母親が生活全般の面倒をみるのよ」
そう言われて絶句した。
平民は子供が生まれると隣近所も助け合う。困っている事はないかと聞いてくれて乳の出が悪いと言えば同じ時期に出産をした産婦の元に子供を連れて行って乳を分けてもらえることもあるし、ヤギの乳が貰えたりする。
子供が夜泣きをすれば「五月蝿い」と怒鳴る人もいるけど「みんな子供の時は同じ」と交代してあやしてくれたりする。
宮には使用人がいない。文官などはいるが身の回りの世話をするのは床上げをすると誰もいなくなった。1日中子供と2人。子供が泣こうか喚こうが誰も手を貸してはくれないのだ。
頼みの綱はダグラスだが、ダグラスは「お前が勝手に産んだ子」といって未だに子供を抱いてもくれない。無理に渡せば床に叩きつけてもおかしくない。
日々の食事は宮の経費が支給されるとダグラスが持って行ってしまうので「国王陛下から頼まれました」と用意をされたものだけ。足らない訳ではないけれど、妊娠が解った時からずっと思う。
「温かいものが食べたいな」
国王からの食事もだが毒味を何人も介するので食事は冷え切っていて美味しくない。
味云々ではなく、空腹を誤魔化すために腹の中にいれるのが食事だった。
「聞いてた話と全然違うじゃない。こんなことなら掃除係してた方がずっとマシだったのに」
ぐすぐすと泣いても何も変わらない。
今日も帰らないダグラスを小さな物音がすると帰ってきたのでは?と期待してしまう。
帰って来ても顔を合わせれば怒声を浴びるだけだが、それでもエベリーは子供とずっと2人だけの生活に気が狂いそうだった。
カタン。
「あ!帰ってきた」
子供を抱いたままで扉を開けるが廊下には誰もいない。
締まりが悪い窓から風が吹き込んだだけだった。
「いい加減にしてよ!なんで私だけが子供の面倒みなきゃいけないのよ!」
「うわーんうわーん」
「五月蝿い!泣くな!泣くなぁ!!」
エベリーと赤子の声が虚しく廊下を抜けて行った。
第1王子の妃と言っても単なるお飾りに過ぎない事が今更に身に染みる。。
今更だがダグラスに誘われた時に「仕事中」と断れば良かった。
ダグラスが王子と知った時、は既に関係を何度か持った後でエベリーに邪な気持ちが無かったとは言えない。
エベリーも思ったのだ。
「王子様の子供が出来たら、私、王妃になれるんじゃない?」
だから腕に抱く子供が「当たった」と感じた日をエベリーは覚えている。
店主からは「子流しの薬湯は忘れずに飲むように」と言われていたけれど、エベリーは回数を重ねるごとに自分の体調を万全に持って行くようにした。
月のものが終わり10日目。
ダグラスは避妊をしてくれるような男ではなかったのでエベリーは狙ったのだ。
その甲斐あってエベリーは妊娠をした。
喜んだのは最初の内だけだった。
まだ腹の中に子供がいる時は講師が付いて勉強を教えてもらったけれどさっぱり内容が理解できない。
勉強しなきゃいけないなんて聞いてない。
どうしてダグラスのように面倒な事は従者にしろと言ってはいけないのか。
ダグラスに許されて自分には許されないなんてあり得ない!
エベリーは学ぶことを悪阻を理由に拒否した。
不機嫌さを隠さないダグラスの隣ですべすべの柔らかい布で作った豪奢なドレスを着て夜でも昼間のように明るく煌びやかな夜会にも出席をした。
妊娠しているので酒は飲めなかったけれど、周囲の女性たちと違って腹回りがゆったりとしているエベリーは誰も手を付けない豪華な食事が並べられたテーブルを占領し、食欲のままに食べまくった。
悪阻の時は水を飲んでも吐いてしまったいたけれど、悪阻が収まると猛烈な食欲が襲う。
食べ過ぎはいけないと言われていても食欲が止まらない。
最初は「はしたない」と咎められたが、そのうち誰も何も言わなくなった。
「子供はせいぜい3kg、他に色々と入れても体重の増加は10kgまでにしてください」と医師に言われたがエベリーには意味が解らない。
「1日あたり10kgにしろってこと?1週間?1か月?そもそも10kgって何?」
長さをメートルや時にフィートなどで示す事も、重さをキロなどで示す事も、単位がある事すらエベリーは知らなかったのである。
知っているのはニンジンや大根の絵が付いた看板があるのは青果店で、花の模様は生花店、パン屋はパンの模様だしそもそもいい香りがする。
品物の前には丸印の書かれた札があって、丸印と同じ数だけ銅貨を出せばよかった。生きていくのに単位を知らなくても問題はなかったのだ。
「この程度も判らないんですか」講師はそう言う。
エベリーは思った。
あなた達は子供の時から勉強したから読み書きできるだけよ!
一緒にしないで!
最初の頃は王妃も「困っているんです」と相談をすればお茶と菓子を出してくれて愚痴を聞いてくれたがそれも最近はない。
ダグラスは顔を見るたびに悪態を吐いてきて、エスコートで手を差し出すと嫌そうな顔をしてエスコートをする。入場するとエベリーの触れた個所をパンパン叩いてまるで汚いかのように扱う。
妊娠が解った時、周囲が流産を望んでいる事は解っていた。
だから意固地になって「この子には手を出させない」「流れてしまったら悠々自適な生活が出来ないじゃない!」と神経をビリビリに尖らせた。
けれど生まれた今は、産んで良かったのかの悩んでしまう。
貴族になれば食べる事、寝る場所、着るものには困らないから贅沢な暮らしが出来ると皆言っていた。
その言葉に嘘はなかった。
3食は食べられるし、寝る場所にはフカフカの寝具がある。着る物だって以前の生活なら店のショーウィンドウにすら飾られていない高価な品。
しかし、平民には当たり前に合って、王族貴族にないものがあった。
「王子そのものもだけど、王子の子供も母親が生活全般の面倒をみるのよ」
そう言われて絶句した。
平民は子供が生まれると隣近所も助け合う。困っている事はないかと聞いてくれて乳の出が悪いと言えば同じ時期に出産をした産婦の元に子供を連れて行って乳を分けてもらえることもあるし、ヤギの乳が貰えたりする。
子供が夜泣きをすれば「五月蝿い」と怒鳴る人もいるけど「みんな子供の時は同じ」と交代してあやしてくれたりする。
宮には使用人がいない。文官などはいるが身の回りの世話をするのは床上げをすると誰もいなくなった。1日中子供と2人。子供が泣こうか喚こうが誰も手を貸してはくれないのだ。
頼みの綱はダグラスだが、ダグラスは「お前が勝手に産んだ子」といって未だに子供を抱いてもくれない。無理に渡せば床に叩きつけてもおかしくない。
日々の食事は宮の経費が支給されるとダグラスが持って行ってしまうので「国王陛下から頼まれました」と用意をされたものだけ。足らない訳ではないけれど、妊娠が解った時からずっと思う。
「温かいものが食べたいな」
国王からの食事もだが毒味を何人も介するので食事は冷え切っていて美味しくない。
味云々ではなく、空腹を誤魔化すために腹の中にいれるのが食事だった。
「聞いてた話と全然違うじゃない。こんなことなら掃除係してた方がずっとマシだったのに」
ぐすぐすと泣いても何も変わらない。
今日も帰らないダグラスを小さな物音がすると帰ってきたのでは?と期待してしまう。
帰って来ても顔を合わせれば怒声を浴びるだけだが、それでもエベリーは子供とずっと2人だけの生活に気が狂いそうだった。
カタン。
「あ!帰ってきた」
子供を抱いたままで扉を開けるが廊下には誰もいない。
締まりが悪い窓から風が吹き込んだだけだった。
「いい加減にしてよ!なんで私だけが子供の面倒みなきゃいけないのよ!」
「うわーんうわーん」
「五月蝿い!泣くな!泣くなぁ!!」
エベリーと赤子の声が虚しく廊下を抜けて行った。
1,476
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
「君は大丈夫だろ?」と可哀想な元恋人を選択した夫。~今さら復縁を迫っても、愛は既に錆び付いています~
水上
恋愛
夫と白い結婚をして、傾いた領地を努力と苦労の末に立て直した伯爵令嬢ヴィクトリア。
夫との関係も良好……、のように見えていた。
だが夫は「君は強いから」と、めそめそ泣く元恋人を優先し、ヴィクトリアの献身を踏みにじった。
その瞬間、彼女の恋心は錆び付き始めた。
「私が去ったら、この領地は終わりですが?」
愛想を尽かした彼女は、完璧な微笑みの裏で淡々と離縁の準備を始める。
これは、有能な妻が去り、無能な夫が泥沼に沈むまでを描く、冷徹な断罪劇。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる