王子殿下にはわからない

cyaru

文字の大きさ
1 / 42

第00話  プロローグ

しおりを挟む
ガラガラ、ガタン。

小石を跳ねるたびに揺れて体が座面から浮いてしまう馬車の庫内。
そろそろ王都を出立して70日。

2か月以上もかけてやっと目的の地に到着をした隊列はお世辞にも豪華とは言えない。
貴族の中でも中堅の伯爵家クラスが中古で購入する馬車に揺られてやってきたのはマジョリカ・エフクール。

ノースレスト王国のエフクール侯爵家の娘だが実母はメイド。
侯爵である父親が使用人に手を付けて…というアレだ。

異母兄が1人、異母姉が2人いるが、この度めでたく下の異母姉エミリアの代わりに隣国ウェストレスト王国の第3王子ルシファーに嫁ぐことになった。

エフクール侯爵夫人は現国王の実妹。異母兄姉は王家の血も引いているので順番としてはなかり後ろになるが王位継承権も持っている。

エフクール侯爵家の子であっても元王女である夫人の産んだ子ではないマジョリカには継承権はない。

元王女の娘だからこそ選ばれていたエミリア。
ウェストレスト王国の第3王子ルシファーと婚約をしていたのだが、交代せざるを得ない理由が出来てしまった。

両国の国益を考えての婚約、そして結婚は敢行されたのだった。


ウェストレスト王国に到着をしても土壇場になって嫁ぐことになったマジョリカに出迎えてくれる人たちはいない。

女嫌いでもあるルシファーもこの結婚には納得をしておらず、教会で結婚式を挙げてしまうと司祭の前で出家を言い出し兼ねない事態に結婚式も行わない。

ルシファーの宮に到着をしたマジョリカに手渡されたのはルシファーからの手紙のみ。
会おうともしないルシファーにマジョリカは微笑んだ。

「ま、いっか」

気にしても仕方がないし、捨て置かれる妃として嫁ぐのも解っていた事だ。

屋根も壁もツタでビッシリと覆われた宮の敷地内にある離れでマジョリカはのんびりと暮らす事に決めた。

絵姿すら見たことのない夫のルシファーからの手紙を手にマジョリカは「ふふふ」と笑う。
何故か。

ウェストレスト王国の公用語は嫁ぐ事が決まって出立まで3日。学ぶ機会もなかったので辛うじて道中で日常に必要な挨拶に付随する会話は教えてもらったが、文字は読めるに至っていないのだ。

何を書いているかさっぱり解らないので額に入れて飾ることにした。

ちなみにその手紙には…。

1つ。3年経てば離縁する
1つ。お互いの生活には干渉しない
1つ。王子妃としての仕事をする必要はない

と、この3点が書かれているのだが、額に入れて玄関ホールに飾ったばかりに離れを訪れる執事の心を凍らせる事になる。

これは制限のある自由であっても満喫する捨て置かれた王子妃マジョリカと、初手を間違ったばかりに信頼回復に奔走する第3王子ルシファーの物語である。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

あなたを愛する心は珠の中

れもんぴーる
恋愛
侯爵令嬢のアリエルは仲の良い婚約者セドリックと、両親と幸せに暮らしていたが、父の事故死をきっかけに次々と不幸に見舞われる。 母は行方不明、侯爵家は叔父が継承し、セドリックまで留学生と仲良くし、学院の中でも四面楚歌。 アリエルの味方は侍従兼護衛のクロウだけになってしまった。 傷ついた心を癒すために、神秘の国ドラゴナ神国に行くが、そこでアリエルはシャルルという王族に出会い、衝撃の事実を知る。 ドラゴナ神国王家の一族と判明したアリエルだったが、ある事件がきっかけでアリエルのセドリックを想う気持ちは、珠の中に封じ込められた。 記憶を失ったアリエルに縋りつくセドリックだが、アリエルは婚約解消を望む。 アリエルを襲った様々な不幸は偶然なのか?アリエルを大切に思うシャルルとクロウが動き出す。 アリエルは珠に封じられた恋心を忘れたまま新しい恋に向かうのか。それとも恋心を取り戻すのか。 *なろう様、カクヨム様にも投稿を予定しております

『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』

鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」 幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された 公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。 その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、 彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。 目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。 だが、中身は何ひとつ変わっていない。 にもかかわらず、 かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、 「やり直したい」とすり寄ってくる。 「見かけが変わっても、中身は同じです。 それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」 静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。 やがて彼女に興味を示したのは、 隣国ノルディアの王太子エドワルド。 彼が見ていたのは、美貌ではなく―― 対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。 これは、 外見で価値を決められた令嬢が、 「選ばれる人生」をやめ、 自分の意思で未来を選び直す物語。 静かなざまぁと、 対等な関係から始まる大人の恋。 そして―― 自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。 ---

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

夫に愛想が尽きたので離婚します

しゃーりん
恋愛
次期侯爵のエステルは、3年前に結婚した夫マークとの離婚を決意した。 マークは優しいがお人好しで、度々エステルを困らせたが我慢の限界となった。 このままマークがそばに居れば侯爵家が馬鹿にされる。 夫を捨ててスッキリしたお話です。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

処理中です...