アメイジングな恋をあなたと

cyaru

文字の大きさ
上 下
9 / 41

この気持ちはなんだ?!

しおりを挟む
この回はアルフォンソ視点です

★~★

その日はいつもと変りない朝だった。
暴行を受けた令嬢を屋敷に緊急避難させ、殿下の待つパルカス侯爵家に戻り持ち場に復帰した。

帰りの馬車に乗り込む殿下。私は馬車の後方を騎乗し王城まで殿下を護衛する。
城に到着し、持ち場を離れた報告をせよと殿下が仰せになるので殿下の着替えの最中に報告を行った。

「で?どこのご令嬢が被害に?」
「申し訳ございません。余程に怖かったのか保護をするため屋敷に戻る途中で気を飛ばしたようです」
「そうか。暴行となれば令嬢もさぞかし恐ろしかった事だろう。目覚め次第聴取をして再度報告をしてくれ」
「畏まりました」
「ところで…今夜のパーティ。主役とも言える2人は結局挨拶もなかったな」
「そうでしたか」
「ん?あぁアルは持ち場が会場内ではなかったな。そうだった。そうだった。じゃ、下がっていいよ」


従弟となるレオン殿下は幼い頃は後をついてきて可愛い弟分のようだったが、成長に従い主従関係をはっきりとさせるようになった。
同じ王位継承権を持つが、レオン殿下は第1位、私は13位。
格の違いを見せつけられるようでもの寂しさも感じながら私は屋敷に戻ったのだった。


「ご令嬢の具合はどうだ?」
「旦那様、このロカルドは今、喜びで声が出ません。遂に旦那様が!意中の女性をこのような形でお連れ下さり聊か問題になろう事も御座いますけれど、いいえ、いいえ、良いのです。このロカルド、身命に変えても旦那様の思いを遂げさせてみせますとも!例えどんな厳しい障害が前に立ちはだかろうとも!!」

――ガッツリ声が出ている気がするが気のせいか?――

待てよ。ロカルドはなにか勘違いをしているのではないか?そう思った私はロカルドの言葉に疑問を抱いた。

「ロカルド、何か思い違いをしていないか?」
「思い違いですか?いいえ?なにも」
「言っておくが彼女は今日、初見だ」
「なんと一目惚れ!これは激しい恋になりそうですね!」
「ロカルド、やはりお前は思い違いをしている。イロコイではなく彼女は暴行魔から暴行を受け、緊急避難のためにここに連れてきたのだ。事の大小はあれ暴行を受けたと広く知られてしまえばこの先彼女は生きづらくなるだろう」


どうしてロカルドはそんな驚いた顔をしているんだ?
おまけに隊服を片付けようとしているメイドもハンガーにかける前に隊服を落としてしまっているのは何故だ。

「えぇっと…旦那様。少々お聞きしたい事が」
「なんだ」
「その…ご令嬢は…旦那様の意中の女性では…」
「ないな」

<< エェーッ!? >>

周囲で盛大に驚く使用人に私が驚く。
何故かがっくりと肩を落とし「もう上がります」というロカルドを引き留める事が出来なかった。

その日はいつも通り、真夜中になったが湯を浴び就寝したのだが、翌朝になっても使用人は肩を落とし私が「おはよう」と声を掛けてもため息交じりに挨拶を返すのみ。

きっとこの屋敷に女性と言えば母上くらいだったので勘違いをしたのだろうと朝食を済ませた。


「彼女はまだ起きないのか?」
「はい。侍女の方はもう目覚められておりますが起こしますか?」
「いや、疲れもあるだろう。今日は遅番だから目覚めまで待つことにする」
「左様でございますか。承知致しました」

彼女には誰がパルカス侯爵家で暴行をしたのかを聴取しなければならない。
人生でもそう何度もない恐怖を思い出させる事になると思うと気が重いがこれも仕事と彼女を待った。


★~★

――これはなんだ?!――

貴族の朝食、いや朝食に限らず食事の時間は総じて長い。
私が軍属のため、長い時で5分。短い時は20秒ほどで終わるのが変わっているのだ。それは何度も母上に叱られた。「ちょっとゆっくり食べる事が出来ないの?」と。

何時敵が襲ってきて対峙せねばならないかを考えれば食事は何かをするついでに済ませるのが当たり前。10歳で剣を本格的に握り出してから17年。体に染みついた食事の方法だ。そう簡単には変えられない。

しかし、それを令嬢にまで強要するのは違うだろうといつもは全て2,3分で読み終わる新聞を手に彼女の食事が終わるのを待った。

「美味しい~。甘ぁい」

ついつい声がする度に彼女を見てしまう。
目が合うと、盗み見をしているような気がして視線を逸らせたが、私は何時の間にか彼女を見てしまっていた。

私はセロリやニンジンは苦手なのだが、小さな口でポリポリ。シャクシャクとまるで子栗鼠のように生野菜を食べる姿をチラ見するとセロリも次は食べてみるかと思えてしまう。

パンを千切っては口の中に放り込み、頬に手を当てて食事をしている彼女を見ていると、こちらまで口の中にない食材の味がするような気がしてとても幸せな気持ちになったのだ。

――ふふっ。可愛いな――

ハッ!!何を!なんて事を考えてしまったのだ。
しかし、可愛いと一度思ってしまうと気になって仕方がない。

――この気持ちはなんだ?まさか――


表情筋が死んでいて良かったと神に感謝をした。
私の心臓はそれほどまでに激しく鼓動し、全身に熱い血液を送り出したからだ。


本能とは恐ろしい。
思ってもいない、いや、思っているからこそ口を突いて出てしまう。

彼女から聴取をしている時に、彼女が昨日のパーティの主役である事を知り「叶わぬ思い」と判っても音となって口から飛び出してしまったのだ。

「では、貴女に暴行を加えたのは婚約者となったブラウリオ殿だと?」
「はい」
「そんな…だとしても女性に暴行をするなんて。男の風上にも置けないそんな男との婚約は破棄すればいい。私も殿下に進言し力になろう」
「でも…よくよく考えれば…訳アリの婚約ですからこの先、顔を合わせずにいるわけですし戻るしかないですね」
「訳アリ?」
「はい、この婚約は離縁ありきの結婚を前提としたものなので、半年の婚約期間をおいた後、私は侯爵家の別邸で別居生活をする事になっているんです」

――そんな!!3年も貴女は!それでいいのか?いや、良くない!――

「だ、だったら・・・ここで暮らせばいい。別居なのならどこだって一緒だ。少なくともここなら私が貴女を守ってやれる」

その言葉を発した時、部屋の空気が揺れた。
使用人全員が<< 旦那様っ! >>と熱いエールを送ってくれたからだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

田舎で師匠にボコされ続けた結果、気づいたら世界最強になっていました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:937pt お気に入り:581

あなたならどう生きますか?両想いを確認した直後の「余命半年」宣告

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,640pt お気に入り:37

異世界で新生活〜スローライフ?は精霊と本当は優しいエルフと共に〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:20,424pt お気に入り:745

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:61,364pt お気に入り:3,680

【完結】え?王太子妃になりたい?どうぞどうぞ。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:509

処理中です...