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2回目の人生
最終話 どんな君でも
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帝国の第一王女夫妻が統治する事になり貴族社会に激震が走った。
夜逃げをしたものなどはもう戻る事も出来ないが、残った貴族も【潔癖症】と言われる新国王の審査に通らなければ爵位は取り上げられ、平民に落ちる。
勿論それまでの財産など全て没収をされるのである。
中には妻と離縁し、隠した財産で生き抜こうとする者も現れたが金融機関を押えられてしまい、闇社会のほうも帝国から来た【住人】により押さえられてしまった。
血よりも実力を重視する帝国流は若い世代には大いに歓迎をされた。
取り残された世代も常に勉強をしなくては今までのような内輪だけでの話し合いでは落ちぶれるだけだ。
1年経つ頃にはおおよその勢力も固まってきており億劫に感じたコルストレイ侯爵家は爵位を返上し、今では広い侯爵領の屋敷に移って商会を始めようとしている。
マレフォス侯爵家はそのまま貴族として残り、騎士団の他に憲兵団にも騎士を派遣している。
ヴィオレッタの兄エヴァンスは文系であるため、編成、調整、養成などのプログラムを担当している。
婚約者となったブリンダはまだ中等部の3学年。高等部を卒業するまでのあと3年は独身である。
年の離れた2人だか仲もよく、もう高等部には行かずに結婚もどうかと両家で話をしている。
ヴィオレッタはカイゼルと学生結婚となり今はドレヴァンツ公爵家で生活をしている。
学生なので卒業するまでのあと2年弱(1年半ほどか)は夫婦としての性交渉はないが兎に角仲が良い。
放課後になれば2人でセレイナの屋敷に行き、ヴィオレッタは歌劇で劇中歌を練習。
カイゼルは体幹トレーニングを主にこなしている。
「カイゼル様、お待たせいたしました」
「あ、うん…そんなに待ってないけどな」
「嘘を吐くな、嘘を。こいつ30分も前からここで待ってるしね」
「言うな!そういうケルスラーはなんでここにいるんだ」
「決まってるじゃないか。揶揄うためだ」
「は?」
ユーダリスは帝国にいるため、3人であの離宮に花を献花に行くのである。
未だに焼け残ったままの離宮跡には献花される花が途切れることなく置かれている。
3人以外は、ここでアレクセイによって亡くなった者への献花だが3人はそれも含めアレクセイとレクシーにも花を供える。
王家に関わらなければアレクセイは生まれていなかっただろう。
レクシーも亡き夫を偲んで今も生きていたかもしれない。
王や王妃、そしてレオンもどこかに埋葬はされたと聞いたがまだその地を聞く気にはなれない。
レオンは確かに色々と残念な所はあったがヴィオレッタ自身も距離を取り過ぎたのかも知れない。
しかし、前世も今世もレオンは寄り道と脇道にそれてしまった。
「もし‥‥殿下がヴィリーだけなら違ったか?」
「さぁ、判りませんわ」
「うわぁ、そこは違うって言わないとカイゼルが泣くよ?面倒だよーこいつ」
「俺は泣かないぞ。何言ってんだ」
「あら?泣いてくれませんの?」
「いや、泣く。大泣きだ」
「やめてください。面倒なのでしょう?」
「そんなに面倒でもないと思うけど…面倒かな…いや、やっぱり泣かないから大丈夫だ」
少し歩き、100名を超える遺体が見つかったという沼にも献花を捧げる。
昼間でも少し薄暗い湿地帯にある沼である。不気味さは否めない。
「アレクセイ殿下‥‥本当はどうだったのかな」
「兄貴分みたいなのがいれば違ったかもね。1人だから遊び方を知らなかったんだろう」
「そうかも知れませんね。今でもあの幼い笑顔からは想像できませんもの」
「レクシー様も結局のところ被害者だしな」
「全てを容認は出来ないが、逆らえなかったのもあるかもなぁ」
ケルスラーを屋敷の前に下ろすと、馬車の中には2人きりになる。
もう籍は入っている2人だが結婚式でのキスが現在一番進んでいる部分である。
「ヴィリー。大好きだ」
「どうしました?急に」
「いや、なんか嬉しくて…って変なんだけど。不思議だなぁと思うんだ」
「そうですね。今は初めての人生ですけど‥‥少し前は既視感ばかりで」
「そこは俺には判らない感覚だけど、あの日は緊張した」
「上着を脱ぎ捨てた日ですか?」
「いや?階段を駆け下りた日」
「えっ‥‥」
そっとカイゼルはヴィオレッタの手を取る。以前と違うのは薬指に指輪がある事だ。
指先に唇と落とすと、ヴィオレッタの指がピクリと動く。
「一生俺の隣にいてくれよ」
「えぇ。生涯カイゼル様と一緒です」
「どうして3人だけだったんだろう」
「きっと‥‥愛する人と離れるのが嫌だったのではないでしょうか。それと愛する人を残して逝くことに」
「だとしたらまた同じ人生を送れるのかな」
「どうしてです?」
「だってヴィリーを置いては逝けないし、ヴィリーだってそうだろう?」
「それは‥‥遠慮申し上げますわ」
「何故?」
「皺くちゃのおばあちゃんになってからかも知れないもの」
「大丈夫。どんな君でも大好きだ。何歳でも愛しぬいてやるよ」
「なら、大丈夫…かな?」
「仰せのままに。愛しい奥様」
Fin
夜逃げをしたものなどはもう戻る事も出来ないが、残った貴族も【潔癖症】と言われる新国王の審査に通らなければ爵位は取り上げられ、平民に落ちる。
勿論それまでの財産など全て没収をされるのである。
中には妻と離縁し、隠した財産で生き抜こうとする者も現れたが金融機関を押えられてしまい、闇社会のほうも帝国から来た【住人】により押さえられてしまった。
血よりも実力を重視する帝国流は若い世代には大いに歓迎をされた。
取り残された世代も常に勉強をしなくては今までのような内輪だけでの話し合いでは落ちぶれるだけだ。
1年経つ頃にはおおよその勢力も固まってきており億劫に感じたコルストレイ侯爵家は爵位を返上し、今では広い侯爵領の屋敷に移って商会を始めようとしている。
マレフォス侯爵家はそのまま貴族として残り、騎士団の他に憲兵団にも騎士を派遣している。
ヴィオレッタの兄エヴァンスは文系であるため、編成、調整、養成などのプログラムを担当している。
婚約者となったブリンダはまだ中等部の3学年。高等部を卒業するまでのあと3年は独身である。
年の離れた2人だか仲もよく、もう高等部には行かずに結婚もどうかと両家で話をしている。
ヴィオレッタはカイゼルと学生結婚となり今はドレヴァンツ公爵家で生活をしている。
学生なので卒業するまでのあと2年弱(1年半ほどか)は夫婦としての性交渉はないが兎に角仲が良い。
放課後になれば2人でセレイナの屋敷に行き、ヴィオレッタは歌劇で劇中歌を練習。
カイゼルは体幹トレーニングを主にこなしている。
「カイゼル様、お待たせいたしました」
「あ、うん…そんなに待ってないけどな」
「嘘を吐くな、嘘を。こいつ30分も前からここで待ってるしね」
「言うな!そういうケルスラーはなんでここにいるんだ」
「決まってるじゃないか。揶揄うためだ」
「は?」
ユーダリスは帝国にいるため、3人であの離宮に花を献花に行くのである。
未だに焼け残ったままの離宮跡には献花される花が途切れることなく置かれている。
3人以外は、ここでアレクセイによって亡くなった者への献花だが3人はそれも含めアレクセイとレクシーにも花を供える。
王家に関わらなければアレクセイは生まれていなかっただろう。
レクシーも亡き夫を偲んで今も生きていたかもしれない。
王や王妃、そしてレオンもどこかに埋葬はされたと聞いたがまだその地を聞く気にはなれない。
レオンは確かに色々と残念な所はあったがヴィオレッタ自身も距離を取り過ぎたのかも知れない。
しかし、前世も今世もレオンは寄り道と脇道にそれてしまった。
「もし‥‥殿下がヴィリーだけなら違ったか?」
「さぁ、判りませんわ」
「うわぁ、そこは違うって言わないとカイゼルが泣くよ?面倒だよーこいつ」
「俺は泣かないぞ。何言ってんだ」
「あら?泣いてくれませんの?」
「いや、泣く。大泣きだ」
「やめてください。面倒なのでしょう?」
「そんなに面倒でもないと思うけど…面倒かな…いや、やっぱり泣かないから大丈夫だ」
少し歩き、100名を超える遺体が見つかったという沼にも献花を捧げる。
昼間でも少し薄暗い湿地帯にある沼である。不気味さは否めない。
「アレクセイ殿下‥‥本当はどうだったのかな」
「兄貴分みたいなのがいれば違ったかもね。1人だから遊び方を知らなかったんだろう」
「そうかも知れませんね。今でもあの幼い笑顔からは想像できませんもの」
「レクシー様も結局のところ被害者だしな」
「全てを容認は出来ないが、逆らえなかったのもあるかもなぁ」
ケルスラーを屋敷の前に下ろすと、馬車の中には2人きりになる。
もう籍は入っている2人だが結婚式でのキスが現在一番進んでいる部分である。
「ヴィリー。大好きだ」
「どうしました?急に」
「いや、なんか嬉しくて…って変なんだけど。不思議だなぁと思うんだ」
「そうですね。今は初めての人生ですけど‥‥少し前は既視感ばかりで」
「そこは俺には判らない感覚だけど、あの日は緊張した」
「上着を脱ぎ捨てた日ですか?」
「いや?階段を駆け下りた日」
「えっ‥‥」
そっとカイゼルはヴィオレッタの手を取る。以前と違うのは薬指に指輪がある事だ。
指先に唇と落とすと、ヴィオレッタの指がピクリと動く。
「一生俺の隣にいてくれよ」
「えぇ。生涯カイゼル様と一緒です」
「どうして3人だけだったんだろう」
「きっと‥‥愛する人と離れるのが嫌だったのではないでしょうか。それと愛する人を残して逝くことに」
「だとしたらまた同じ人生を送れるのかな」
「どうしてです?」
「だってヴィリーを置いては逝けないし、ヴィリーだってそうだろう?」
「それは‥‥遠慮申し上げますわ」
「何故?」
「皺くちゃのおばあちゃんになってからかも知れないもの」
「大丈夫。どんな君でも大好きだ。何歳でも愛しぬいてやるよ」
「なら、大丈夫…かな?」
「仰せのままに。愛しい奥様」
Fin
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産まれた環境が場違い過ぎた王子とそもそも産まれちゃいけなかった王子、王室が詰み過ぎててそういう意味でもハラハラしました…
定番とは違う展開の連続で面白かったです、ありがとうございました!
コメントありがとうございます。<(_ _)>
レオンとアレクセイは同じ王子でありながらも育った環境が全く違いました(;^_^A
アレクセイの母が我が子には王位を望まなかったというのもあるんですけども、何かに興味を持ち始めた時に歪んだ方向に行かないように…そうしなきゃいけなかったのですけども、誰もがレオンをまず!と考えた事でアレクセイはある意味…自由を超えてしまった??
1度目も2度目もレオンは自分の手で安泰な未来を捨ててしまうんですけども、アレクセイは1度目よりも更に状態が加速(@ ̄□ ̄@;)!!
ヒロインのヴィオレッタは1度目を知っているからこそ、状況を判断し大きく変えないように動きまます(*^_^*)
定番のお話ではいきなり状況を変えるために動くヒロインも多いんですけども、立ち位置が高位貴族であったり王族に近い位置だと世の中が変わってしまう危険性もあるので、一般の民に大きく影響を与えます。
良い方に転がればいいんですけども、議会とかが混乱したら国内も混乱してしまいますからね(*^_^*)
今の時代なら様子見をする諸外国って前提になるけど、馬車が走っているように時代なら即座に周辺国は攻め込んでくるでしょうし。
長い話になってしま他のですけども、読んで頂けてとても嬉しいです(*^_^*)
ラストまでお付き合いいただきありがとうございました<(_ _)>
このサスペンス感が、ラノベのレベルではないわ。
仕事休みの丸2日かけて読みましたが、ドキドキありの、グロありの、謎ありの、本当に楽しい2日間でした。ありがとうございます。
ところでこれ誰?あーやっぱりこんな面白いのはcyaruさんだよねーと納得の作品でした。
コメントありがとうございます。<(_ _)>
フォッ!?そ…それは…そうですねぇ…ライトノベルって感じではないんですよねぇ‥。
王道展開と思いきや、おいおいそれは不味いだろ?!ってのもぶち込んだりしちゃうんですよ~(;^_^A
2回目の人生でいきなり「これは展開を知ってるから大きく変える!!」ってのもアリだと思うんですけど、それが出来るのは1回だけじゃないか?ここで大きく変わったらその後の展開なんか読めないだろ?って思ったので、小さいことしか変えられないヴィオレッタ。
記憶持ちはヴィオレッタだけじゃなく、他にもいるんですがそれぞれが違う生き方なので考え方も似てる所もあったとしても違いをつけてみました(*^▽^*)
あとは個人的にはアレクセイなんですよねぇ…。病んでいくのを判っていてここは誰も止めない。知っているからこそ回避した関わり合いにならない事を望む人もいたりと(;^_^A
記憶を持っている人に共通している事もありきたりの中に「え?この人も?」ってのを入れてみたいなと思ったり、人間だから未来を知っていれば変えたいというのもあるけど、ちょっと考えればここで違う行動をしたとして…と考えられるなら「地位が無くなる」っていう事にも怯えてそのままであろうとする「不変」を願いながらも、知っているからこそやってみたいという「期待」?みたいなのもあると思うので、その度合いも悩んだ話です(*^-^*)
面白いと言って頂けてとっても嬉しいです\(^0^)/ホメラレター
ラストまでお付き合いいただきありがとうございました。<(_ _)>
王様がね~。わかっていたのに未来を変えることができなくて残念だったねー。
もう少し王子を教育するとかさ。
イロイロできたはずなのにね。
う~ん残念。
2周目😁
コメントありがとうございます。<(_ _)>
未来を知っているので小さな事でもやってしまうと変わってしまうと判らなくなる恐怖ですかねぇ(笑)
1つを変えた事で起こるはずだった2つ目が起こらないとか、起こっても知っているのとちょっと違うとなると未来を変えてしまった→その先が判らない!!って感じ。
でも、以前は知らなかった事を2回目は知ってるのでその時点で「違う」んですよね(笑)
ならあの息子をなんとかしなきゃ!なんですけども、王妃の子も側妃の子もダメにしちゃった。
この王様もダメ父なんですよねぇ(笑)
2回目もラストまでお付き合いいただきありがとうございました。<(_ _)>